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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
ソフトバンク決算「おとくラインを除いた営業損益は黒字を達成」

 ソフトバンクは10日、2004年度の決算説明会を開催した。第4四半期では四半期レベルで初めてブロードバンド事業が黒字を達成。今後は「インフラ」「ポータル」「コンテンツ」でNo.1を目指す戦略だという。


ブロードバンド事業の営業損益が四半期レベルで初の黒字化

ソフトバンクの孫正義代表取締役社長
 ソフトバンクの孫正義代表取締役社長は、決算の説明に入る前に2004年度の決算を総括。「さまざまな先行投資の山場は抜け、着実に顧客基盤が増えて収益の見通しが立つようになった」としたのち、「顧客基盤が複数のサービスにまたがって相乗効果を出すステージに来ている」と語った。

 2004年度の連結業績は、売上高が前年から3,196億円増の8,370億円で、営業損益はマイナス548億円から295億円改善のマイナス253億円、経常損益はマイナス719億円から266億円改善のマイナス452億円。当期損益はマイナス1,070億円から472億円改善のマイナス598億円となった。

 損益は改善しているものの結果としてマイナスになっているが、孫社長によればこのマイナスはおとくラインの影響だという。おとくラインを除いた連結営業損益は前年から710億円増加、161億円の黒字を達成しており、さらにブロードバンドと固定通信事業を除いた営業損益は644億円の黒字。従来まで赤字の原因であったブロードバンド事業単独の営業損益も、マイナス846億円からマイナス276億円へと改善しているという。

 さらに2004年度第4四半期では、ブロードバンド事業の営業損益が19億円と四半期で初めて黒字化を達成したほか、ブロードバンド事業と固定通信事業を除く四半期の営業損益は173億円の黒字と好調だという。一方で第4四半期の連結営業損益は110億円の赤字だが、孫社長は「第3四半期の75億円の赤字も含め、おとくラインへの先行投資が原因」と説明した。

 孫社長は「おとくラインを始めなければ何百億という利益を達成できた」と振り返ったのち、「なぜおとくラインを始めたのかと言われるかもしれないが、これはより高い次元で成功したいという思いであり、更なる攻めの展開としておとくラインを考えている」とした。

 また、現在赤字の原因となっているおとくラインについても、早い段階での黒字化を見込む。「ADSLは黒字化に3年かかったが、おとくラインは2005年中に月次で黒字化できるのではないか」。孫社長は第4四半期の連結売上を4倍した数値では1兆円を超える売上規模となる点を指摘し、「通期での営業黒字は2005年度で達成できるだろう」との予測を示した。


2004年度の連結業績 おとくラインを除いた営業損益は黒字化

2004年度第4四半期の連結業績 ブロードバンド事業の営業損益は四半期レベルで初の黒字化

「インフラ」「ポータル」「コンテンツ」でNo.1を目指す

インフラ事業は「種蒔き期」から「収穫期」に
 孫社長が今後の戦略として掲げたのが「3つのNo.1戦略」。インフラ、ポータル、コンテンツでそれぞれNo.1を目指すという。孫社長は「アナログ回線には興味はない。考えているのはデジタルでIPを利用したネットワークであり、これまでアナログの世界では別々に提供されていたテレビや電話やインターネットを1つの回線で提供する時代がやってくる」とインフラの方向性を示したほか、「ポータルはすでにYahoo! JAPANが圧倒的なNo.1であり、これをさらに強化していく」とコメント。さらに「今後は広い意味でサービスも含めたコンテンツが重要になる」との考えを示した。

 インフラに関しては、買収した日本テレコムを含めたソフトバンクグループの回線数が1,100万規模に達し、ADSL事業が黒字に転じたことから「種蒔き期から収穫期への転換点にある」とコメント。ユーザー1人あたりの平均月収入(ARPU)は増加傾向にあり、ユーザー増によって変動利益も伸びている一方で固定費は横ばい状態にあることから、「理論通りのインフラビジネスの結果が出せている」と自信を示した。

 日本テレコムの買収によって通信事業の規模も拡大し、ソフトバンクBBのみの2004年度の売上約1,910億円に対して、日本テレコム、日本テレコムIDCを含むグループ合計の売上は約5,380億円と大幅に拡大。また、個人ユーザーの比率が高いソフトバンクBBに対して、日本テレコムの買収によって個人と法人の回線比率もほぼ50%ずつとなり、孫社長は「バランスのよい収益の分散ができている」とした。

 現在もっとも注力しているというおとくラインは2005年4月現在で44万件が開通。ADSL事業による経験の蓄積により、順調にサービスが立ち上がっているという。一方で加入に必要な電話回線の名義人手続きの煩雑さなどが影響し、孫社長は「現在も申し込みのうち開通に至るのは約半数程度」とコメント。ただし、おとくラインの開局局舎数も加入回線カバー率が約83%に達するなど増加傾向にあり、「2005年9月までにYahoo! BBとおとくライン合計で650万加入を目指す」との目標が改めて示された。


ADSL事業の固定費と変動利益の推移 おとくラインは4月で44万回線が開通

FTTH事業は「中長期的にはADSLと同程度のコストに」

 デジタルなIPネットワークを展開するという方針に対して、現在おとくラインはアナログの電話回線を利用しているが、孫社長によれば、すでにおとくラインの設備はIPに対応しているという。孫社長は続けて「まずは法人を含めて安定的な品質を実現し、オプションサービスを含めたトータルな電話サービスでNTTに負けないものを提供するために一部アナログを使っている」と説明。バックボーンのIP化を謳うKDDIのメタルプラスに対して、「KDDIは初めからIP化を考えており、我々はじっくりとIP化を進めていくが、我々の“じっくり”はKDDIよりも早いかもしれない。単に言葉のものさしが違うだけ」との意見を示した。

 FTTHサービスの「Yahoo! BB 光」の加入者数は現在約2万件で、開通待ちの申し込みユーザー数は約5万件という。孫社長はYahoo! BB 光について「光ファイバは1つの地域にまとめて回線を提供しなければ効率が悪く、現在は工事費用や機器手配など、コストや性能などのデータをとっているテストマーケティング段階」とした上で、「大事なことはADSLでブロードバンドユーザーのボリュームを積み上げておくこと。ユーザーのボリュームが増え、地域ごと集中工事を行なっていくことで、5、6年後にはFTTHの提供価格もADSLと同程度になっていくだろう。その時にユーザー数を持っているところがボリューム効果で競争上優位に立つ」とした。

 携帯電話事業に関しても、4月28日付で1.7GHz帯実験局本免許を総務省から取得。「800MHzにこだわって訴訟まで起こして努力したが、結局認可されなかった」とした上で、「いつまでも800MHzを引きずっていても仕方がないこと。今は1.7GHz帯に集中している」との方針を語った。


Yahoo! BB 光は2005年度に本格始動 携帯電話事業では1.7GHz帯の実験局本免許を取得

「インフラが線路、ポータルが駅、コンテンツが駅ビル店舗」

ポータル事業のマルチブランド戦略
 ポータル戦略は、Yahoo! JAPANを中心として複数のポータルをソフトバンクグループで展開していく方針。孫社長はこの戦略を鉄道に例え、「インフラが線路とするならば、ポータルが駅であり、コンテンツサービスは駅ビルに開店した店舗」と説明。「線路と駅、駅ビルや駅周辺の商店街を一貫してソフトバンクグループでNo.1集団を構築する」との意気込みを示した。

 こうしたソフトバンクグループの戦略を踏まえた上で孫社長は、「ライブドアや楽天などはこの戦略に似た“相似形ビジネスモデル”」と指摘。「良いビジネス戦略があれば似たことをするのは批判されるべきではないし、大いに結構なこと」とした一方、「ソフトバンクグループの企業集団はほぼすべての分野のNo.1。インフラもポータルもオンライン証券でもNo.1の地位を築いている」と自信を見せたのち、「野球でもNo.1といきたい」とコメント、会場の笑いを誘った。

 コンテンツ戦略では、「ほんの数カ月前まで、投資家にもアナリストにも会社の存在さえ認識されていなかったのでは」と前置いた上で、3月にヘラクレス市場へ上場、2,000億円を超える時価総額をつけたガンホー・オンライン・エンターテイメントを紹介。ソフトバンクグループの持ち分比率は45%であり、さらにMMORPG「リネージュ」で知られるエヌ・シー・ジャパンでもソフトバンクグループの持ち分比率が40%である点を挙げ、「オンラインゲームのNo.1もNo.2もソフトバンクグループ」と説明。「ガンホーのように未上場であっても上場すれば大きな企業価値が認識されるような起業がグループには数百社もある」とした。

 2005年から「福岡ソフトバンクホークス」として参入した野球業界に関しては、「球団効果によりソフトバンクの認知度が98%に向上するという副次効果があった」とコメント。Yahoo! BBやBBTVを通じたライブ中継、チケット販売などソフトバンクグループのコンテンツとして活用していく方針だ。また、BBTVに関しても7月以降は本格展開を開始。セキュリティサービス「BBセキュリティ」やソフト配信サービス「BBソフト」など、インフラだけでなくコンテンツサービスも積極的に提供している点を指摘し、「インフラだけを提供しているNTTやKDDIとの違いはここにある」との自信を示した。

 孫社長はソフトバンクグループの歴史を振り返り、「広告に頼っていた単一の収益源から多様な収益源へと変化している」とコメント。「5年、10年後には100社単位の上場企業集団を目指す。それも各分野のNo.1ばかりで、それぞれが先駆者メリットを得られる。インフラ、ポータル、コンテンツでのNo.1集団を築いていく」との目標を掲げた。


ポータルにコンテンツが集まる ソフトバンクグループのゲーム事業

ガンホー、エヌ・シー・ジャパンともにソフトバンクグループの持分比率は40%以上


インフラ・ポータル・コンテンツ/サービスでNo.1を目指す


関連情報

URL
  ソフトバンク
  http://www.softbank.co.jp/

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(甲斐祐樹)
2005/05/10 21:17
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