5月13日に東京・六本木ヒルズのVIRGIN TOHO CINEMASで開催されたイベント「次世代Xboxプレビュー」では、Xbox向けソフトの開発メーカーとしてゲームリパブリック、キューエンタテインメント、ミストウォーカーの3社が登場。開発中のソフトの概要などを紹介した。
■ ゲームリパブリックは「パーティー」「アクション」2ジャンルを開発
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ゲームリパブリックの岡本吉起氏。カプコンで「ファイナルファイト」「ストリートファイター」シリーズ、「バイオハザード」シリーズなどを手がけたのち、2003年7月にゲームリパブリックを設立
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ゲームリパブリック代表取締役兼CEOの岡本吉起氏は、同社について「元気がなくなってきているゲーム業界に活を入れたいという気持ちで立ち上げた」と紹介。「シリーズものが多いと言われる業界で新しいものに挑戦したい」との気持ちを示した。
Xbox 360向けには現在2タイトルを開発中で、1つは「得意じゃないだろうと思われているかもしれないが、ワイワイ楽しめるパーティーゲーム」。開発は順調で、近日中に発表できるという。もう1作品はアクションゲームで、「まったく新しいアクションゲームで、日本で受け入れられるかという心配もあるが、あえて挑戦したいし、自信はある」と語った。
Xbox 360については「非常に開発しやすいハード」とし、「開発中の2タイトルはそれぞれ違うジャンルで必要なスペックも異なるが、それが問題なく収まるだけの幅広さを持っている」と評価。最後に「みなさんの期待をいい方向で裏切れるよう、開発を頑張っています」と締めくくった。
■ 「大軍勢感」がテーマのアクション「NINETY-NINE NIGHTS」
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NINETY-NINE NIGHTS
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続いて登壇したキューエンタテインメントCCOの水口哲也氏は、自身が14年間かかわってきたゲーム業界を振り返り、「ゲーム業界に入ったばかりの1990年頃は、映像は2Dで音もビープ音のようなもの。それが1993年頃にはCGテクノロジーが登場し、アーケード向けには「セガラリー」というゲームをプロデュースした。さらに90年代後半は音楽を取り込む技術が上がってきて、音を題材にしたゲームも扱ってきた」とコメント。「技術の変化は新しいインスピレーションと想像力を与えてくれる。Xbox 360で新たな想像力を刺激されている自分がいる」とした。
キューエンタテインメントでは、「Kingdom Under Fire」を開発した韓国ファンタグラムと共同で、ファンタジーアクション「NINETY-NINE NIGHTS」を開発中。水口氏はファンタグラムを「日本での本格的な紹介は初めてかもしれないが、Kingdom Under Fireは韓国で大統領賞などさまざまな賞を受賞している」と紹介、「現場では日本語と韓国語、英語が入り乱れており、今まで体験したことのないようなエキサイティングな環境」とした。
NINETY-NINE NIGHTSの特徴の1つは「大軍勢感」。「映画で見られるような数万人の兵士が出てくるシーン(ファンタグラムのサンユン リー氏)」をコンセプトに、1つの画面に1,000~2,000人のキャラクターが登場するという。シナリオにも力を入れており、キャラクターごとにシナリオが変化する「マルチアングル・シナリオ」を採用する。「アクションゲームとドラマを融合したい。ほぼシナリオはでき上がっている(水口氏)」。
水口氏は最後に「次世代機によってゲームの作り方も技術も変わる。15年くらいゲーム業界にいるが、これからゲームの作り方は国際的に変わっていくだろう。今回のような(日韓協力による)チャレンジを成功に結びつけていきたい」との目標を示した。
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左からファンタグラムのサンユン リー氏とキューエンタテインメントの水口哲也氏。本作では水口氏がプロデューサーを、ファンタグラムがディレクターを務める
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「NINETY-NINE NIGHTS」は「大軍勢感」がテーマ
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■ 鳥山明氏がデザインを担当する「ブルードラゴン」
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ブルードラゴン
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最後に登場したミストウォーカーの坂口博信氏は、「1年半ほど前からXbox 360のプロジェクトを進めている。今年で43にもなると非常に体が辛いが、日々ムチを打ってプロジェクトを進めている」とコメント。Xbox 360については「作り手にとって大きな特徴はHD映像(ハイビジョン)。今回は2つの作品の映像をHDで作ってきました。そのまま実機で動く映像ではないが、モデリングやキャラは実機用のもので、解像度を含めてユーザーに楽しんでいただけるものに近い」とした。
開発中タイトル2作品はどちらもRPGで、坂口氏は先にキャラクターデザインに鳥山明氏を迎えた「ブルードラゴン」を紹介。「影」が1つのモチーフになっており、5人の主人公の影がドラゴンやフェニックス、ミノタウロスなどの姿に変化する。影は職業のように切り替えることが可能で、200以上のスキルを組み合わせが可能。坂口氏は「自分のキャラクターを好きな方向に育てていくやりこみ系」と評した。
先に挙げたXbox 360の高度なグラフィックも特徴の1つ。「水や煙や影の生々しい動きを映像に取り込みつつ、ゲームとしていかに面白くなるか。ゲームの中で触ったら反応するようなリアクション、ワクワク感をめいっぱい詰め込んでいる(坂口氏)」。
音楽はこれまでファイナルファンタジーシリーズを手がけた植松伸夫氏が担当。植松氏は「ブルードラゴンは独立してから初めて誘われたプロジェクト」とした上で、「ファイナルファンタジーの第1作目を手がけたのは27歳ぐらい。ゲームの開発は非常に体力が必要だが、あれから20年経った今、心機一転がんばりたい」との決意を示した。
デザイン担当の鳥山明氏からは、自画像つきのメッセージが会場で紹介された。鳥山氏は「ドラゴンボール、ドラゴンクエスト、そしてブルードラゴンと、ドラゴンによほど縁があるようです」と前置いた上で、「ブルードラゴンはシナリオも世界観も斬新ですばらしく、これなら楽しく仕事できそうだと確信してデザインさせていただくことにしました」との経緯を紹介した。シナリオは「とても少年誌的でハラハラドキドキの大冒険SFストーリーで、ものすごくワクワクする」ものであり、「このワクワクがないと僕はだめなんです」と評価。坂口氏は「プロットの段階で鳥山さんには大変アイディアをいただいており、その結果シナリオも良くなっていて、鳥山さんの絵のエネルギー感にもつながっているのでは」と語った。
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主人公の影がモンスターに変化して戦う
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坂口の家宝だという鳥山明氏による似顔絵
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■ 重松清シナリオ、井上雄彦デザインによる「1,000年死なない男」のRPG
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ロストオデッセイ
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2つ目の作品は、「スラムダンク」「バガボンド」などの作品で知られる井上雄彦氏がデザインを担当した「ロストオデッセイ」。シナリオは直木賞受賞作家の重松清氏を迎え、「1,000年間死なずに生き続ける男」を描く。坂口氏は「1,000年の中で何回も家族を持ち、恋も死に別れも体験して心が渇いているという、成長物語であるべきRPGにはふさわしくない主人公」とした上で、「その設定を逆に活かして、実験的な色合いではあるが今までにない要素を盛り込んでいきたい」とした。
重松氏に関しては「1,000年の歴史の派手なできごとを紹介するのではなく、家族の些細な日常や、エンディングに向かうとホロっと涙が流れるような感動を取り入れたい」との考えからシナリオをお願いしたという。重松氏は「自分の本で泣いたりはしないが、ゲームでは不覚にも涙ぐんだ。このゲームでは文章を大事にしてもらいながらも、文章を超えた深みや感動が感じられた」と高く評価。「坂口さんの仕事のお手伝いを超えて、自分自身の新しい作品の可能性を探りたい」と意気込みを示した。
井上雄彦氏は、「衝撃発言かもしれないけれど、ドラクエやFFといったRPGをやったことがない」と前置いた上で、「これからゲームの仕事をやることもないと思っていたけれど、人間を描きたいという話を坂口さんに聞かされ、シナリオを重松さんが担当するということで、熟慮の末にすることになりました」とコメント。「僕は今、漫画をどんどんアナログっぽく書いていて、バガボンドは筆で書いている。それがゲームにはミスマッチかもしれないが、逆にいい方向へ作用することを期待したい」と語った。
音楽はブルードラゴンと同じく植松氏が担当。「ブルードラゴンはポップを意識していて、ロストオデッセイはドラマティックなイメージとサウンドの色分けをしていきたい。これまでやったことはないが、ジャズボーカルの取り込みなども考えている」。坂口氏は「最初の植松さんとの打ち合わせで、2作とも自分で曲を作りたいと言っていただいた。ゲームでは2作品ともなると100曲を超えるが、それだけのエネルギーを注いでいただいて感謝している」と語った。
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シナリオを担当する重松清氏(左)
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キャラクターデザインを手がける井上雄彦氏
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■ URL
ニュースリリース(「ブルードラゴン」「ロストオデッセイ」)
http://www.xbox.com/ja-JP/press/release/20050513-2.htm
ニュースリリース(NINETY-NINE NIGHTS)
http://www.xbox.com/ja-JP/press/release/20050513-3.htm
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