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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
FCC戦略計画局弁護士のカーター氏が語る米国のWiMAX動向

米国連邦通信委員会 戦略計画局の弁護士を務めるケネス・R.カーター氏
 甲南大学情報通信研究所(KITI)とブロードバンド推進協議会(BBA)は6日、米国内通信サービスに関する研究セミナーを開催した。セミナーでは、WiMAX免許制度や地方自治体による通信サービスの参入問題について解説が行なわれた。

 WiMAXとは、現在も策定作業が進行中の新しい無線規格。「IEEE 802.16」と呼ばれる規格をベースに、数kmから数10kmという比較的広範囲なエリアでの無線アクセスを実現するための技術だ。

 WiMAXは、実際の用途に応じて数種類の規格がさらに存在する。「IEEE 802.16-2004」がその1つで、これは特定地点間での無線通信を行なうための規格。ADSLやFTTH回線の宅内引き込みが困難な地域における「ラスト1マイル問題」の解消に期待される。1つの基地局で半径5km以上~数10km程度のエリアをカバーし、75Mbps程度の通信が可能だという。すでにインテルや富士通が、IEEE 802.16-2004準拠のチップセットを発表しており、YOZANも2005年内にIEEE 802.16-2004準拠のフィールドテストを行なう予定だ。

 また、「IEEE 802.16e」は、クライアントが移動しながらでも使える規格。通信速度は30Mbps程度ながら、時速120km程度での高速移動時であってもエリア間ハンドオーバーによる連続通信が実現される見込みだ。こちらは正式策定にむけて現在作業中で、9月頃には正式化が終了する予定だという。


WiMAXは免許制にすべき?

 今回のセミナーは、KITIが主催、BBAが後援で、「ブロードバンド・ワイヤレス: WiMAXライセンス制度化とアメリカにおける地方自治体のワイヤレスネットワークについて」というテーマで開催された。講師を務めたのは、米国連邦通信委員会(FCC) 戦略計画局の弁護士を務めるケネス・R.カーター氏。なお、休暇を利用して来日していることもあり、「今回の通信はあくまでも個人的意見であって、(周波数割当などの実務面で権限を持っている)FCCの総意ではない」と前置いた上で、解説を行なった。

 カーター氏がまず取り上げたのが、WiMAXの利用にあたって免許を必要とするか否かについて。現状では米国でのWiMAXの利用に際して「3615」と呼ばれる文書に基づき、政府側へ利用者情報を事前申請しなければならないというルールが発表されているものの、具体的な登録手段についてはなんら定義されていない状況だという。

 カーター氏は、米国における現在の周波数政策について「さまざまなルールが多岐に渡って絡み合い、非常に複雑になっている」と指摘。政府による規制が多く、柔軟な周波数の割り当てができていないと説明する。これに対し「免許を不要とし、市場原理に任せること」で、より現実的な電波運用を模索すべきというのがカーター氏の意見だ。

 ただ免許を一律に不要とする制度下では、電波の出力を上げることが難しく、通信エリアなどが極端に制限される可能性もある。そのため、一定の利便性を確保する目的で、用途によっては免許を必要とする複合的な案が適切ではないかと解説した。


地方自治体が通信事業を行なうという考えも

地方自治体の通信事業参入によって、様々な影響が予想される
 セミナーにおいて、もう1つの大きな話題となったのが、地方自治体による通信事業への参入だ。ペンシルバニア州フィラデルフィアでは、自治体自らが「Wireless Philadelphia」という名称で公衆無線LANサービスをすでに開始しているという。またフロリダ州のセントクラウドという街でも、無料のインターネット接続サービスをやはり自治体が提供中だとカーター氏は説明する。

 これらの多くは地元産業の発展などを目的に掲げている。フィラデルフィアでは、ホームレスの管理に無線LANを応用するといった新種の行政サービスへの展開にもつなげたい狙いがある。

 ただし、通信事業への参入そのものについては各州とも判断が分かれており、米国内14州では自治体による通信事業の参入を規制するかについて論議されているという。この背景としてカーター氏は、事業資金の調達面などで民間企業よりも自治体が圧倒的に優位な点を挙げる。また米国では、通信事業者が民間企業であることが通例であり、政府側である自治体の参入が、ひいては「言論の自由」を制限しかねないという懸念もある。

「米国では小包の配達など、政府と民間企業が競争する市場が多数ある」とカーター氏が説明するように、解決策としては明快なルール作りが求められる。続けて「自治体の優位を利用し、不当なアクセスチャージを請求するといった行為を防ぐため、なんらかの枠組みが必要不可欠だ」とまとめている。


関連情報

URL
  甲南大学
  http://www.konan-u.ac.jp/
  ブロードバンド推進協議会
  http://www.bbassociation.org/


(森田秀一)
2005/06/06 16:09
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