ライブドアは15日、公衆無線LANサービス「D-cubic」の事業説明会を開催した。説明会にはライブドアの堀江貴文代表取締役社長のほか、パワードコムやフジテレビジョンなどの提携企業も出席、D-cubicを利用したサービス展開などについて講演した。
■ 「サービスエリア」「低価格」「高速」がキーワード
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ライブドアの堀江貴文代表取締役社長
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堀江社長は説明会の冒頭、「今回のサービスは我々がかねてより考えていた、インターネットの使い方やビジネスのスタイルを大きく変えてしまうかもしれない、大変に大きな事業」とコメント。「これまで多くの関連企業に多大な協力をいただいてこのプロジェクトを進めてきたが、本日このような形でサービスを紹介できることをとても嬉しく思っている」と語った。
堀江社長は続けて、「昨今ブロードバンドが当たり前になっており、これからは外でも中でも同じ環境で簡単にインターネットが使えるようになっていかなければならない」と指摘。「本当はどこかの会社がやってくれると思っていたが、なかなかそうなっていかないので、だったら自分たちでやってみようと考えた」とサービス参入の経緯を説明した。
D-cubicの中で最も重視した点はサービスエリアだという。「私もそうだが、いろんなところで繋がる環境をユーザーは求めているが、今はどこでも繋がる状況ではない。繋がるためにはアクセスポイントを増やせばいいが、それには膨大なコストが必要で、その結果、料金が高くなってはユーザーは使わなくなる(堀江社長)」。
この解決策としてライブドアが考えたのが、「アクセスポイントを電柱に設置する」というアイディアだという。「電柱であればもともと電線も通っているし、ほとんどの電柱には光ファイバが設定されている。しかもどこにでもある電柱であればほぼエリアをカバーできる」。この考えからライブドアはパワードコムに交渉し、D-cubicのサービスにこぎ着けたという。
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アイコム製の無線LANアクセスポイント「AP5500」。Atheros Communicationsの無線LANチップを採用、高速化技術「Super G」、距離延長技術「eXtended Range」もサポート
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D-cubicの特徴
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一方で、電柱は屋外設備のために全天候型のアクセスポイントである必要があり、電柱に取り付けるためには小型化も必要だったという。堀江社長は「技術的な面も含めて苦労した」と述べたのち、「メーカーに協力いただいて、全天候型の小型アクセスポイントを開発した」とコメント、会場内で機器を紹介した。
D-cubicの第2の特徴として堀江社長が挙げたのが「圧倒的な低料金」。月額料金が1,575~2,100円程度の公衆無線LANサービスの中で、1/3の料金を実現したと自信を見せる。「525円で利用時間も無制限であれば、1週間に1、2回程度の利用でも加入して損はない。光ファイバのコストが下がった、無線技術の進歩という面もあるが、何よりも関係企業の努力のおかげで、これまでにない低価格を実現できた」と語った。
無線方式にはIEEE 802.11gを採用しており、「ベストエフォートだが最大54Mbpsのスピードで、音声も動画も問題なくサポートできる(堀江社長)」。広いカバーエリアと最大54Mbpsの通信速度で、屋外でも家庭やオフィスの環境に近い接続が可能になるとした。
試験サービスは港区、新宿区の一部で7月末に開始し、10月1日予定の正式サービスでは山手線圏内の80%をカバーする予定。また、無料のlivdoor IDを取得したユーザーは、D-cubicのエリア内であれば、「livedoor NEWS」「livedoor MAP」「livedoor Blog」といったlivedoor内のコンテンツも、D-cubicの接続料金の必要なく無料で利用できるという。
サービスの対象は個人および法人ユーザーで、2005年中には法人向けのソリューションも提供する予定。モバイルセントレックス、ローミングやVPNを組み合わせた企業向けソリューションなどを展開していくという。アクセスポイントは2006年3月に東京23区内で6,200カ所、2006年12月には1都8県で60,000カ所にまで拡大、このタイミングで通信事業者やプロバイダー向けの課金代行も行なっていくという。その後、2007年には全国主要都市へエリアを拡大するとした。
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10月1日の正式サービスでは山手線圏内の80%をカバー
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D-cubicの今後の展開
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エリア展開の予定
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ライブドア周辺の六本木ヒルズに設置するアクセスポイントのイメージ
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■ D-cubicは全国展開ののち、海外展開も視野に
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パワードコム代表取締役社長兼CEOの中根滋氏は堀江氏の感想を「目がキラキラ光っていた」とコメント
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堀江社長のサービス説明ののち、D-cubicの関係企業各社による挨拶や、堀江社長との対談が行なわれた。
パワードコム代表取締役社長兼CEOの中根滋氏は、D-cubicについて「電柱、光ファイバ、ワイヤレスとくれば、これはお手伝いできる分野で、ぜひお手伝いさせていただきたい」との考えから協力したと説明。「ブロードバンドがユビキタスへ移行していく中でこういうサービスは大いに必要。何より印象的だったのは堀江さんの目がキラキラ光っていたことだ」との感想を述べた。
法人分野に関しては「パワードコムは法人事業が大得意と自称している」と自信を示したのち、「企業にも機敏性が求められる時代だが、ワイヤードでは動きが取れない。お客様の要望をリアルタイムで感じてすぐに反応する“Sense & Response”が全世界的な戦略になっている」とコメント。D-cubicはパワードコムの4,000近い法人ユーザーにぜひ提案したい」との意気込みを示した。
さらに中根氏は「パワードコムのネットワークは、A点とB点という距離を克服した。それに対して、ロケーションという制約を無くすのがD-cubic。パワードコムは電力10社と一緒に頑張っているので、当然全国で展開していきたい」とコメント。「全国だけで済みますか? 堀江さん」と堀江社長に語りかけると、堀江社長も「ゆくゆくは海外も展開してみたい」との考えを示した。
今後期待している次世代技術を堀江社長が尋ねると、中根氏は「ワイヤレスADSLのようなもので、Wi-Fiとも親和性があっていいのではないか」とiBurstを挙げた。また、「これは総務省が許可してくれたら是非にと思っているが」と前置いた上で、「アンテナ網を補完するという意味でも、PLCはお役に立てるのではないか」との考えを示した。
■ フジテレビはD-cubicでのテレビ番組配信も検討
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堀江社長に映画「電車男」のチケットをプレゼントするフジテレビの山田氏
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続いて登場したフジテレビジョン取締役編成制作局長の山田良明氏は、「フジテレビはテレビだけでなく、映画も日本で一番というくらい作っている」とコメント。「テレビやインターネット、映画といったいろいろな出口に向けてコンテンツを作っていこうと考えている」との考えを示した。
D-cubicについては「コンテンツプロバイダーとしていろいろな形で参加できるのではないか」とした上で、7月から開始するテレビ番組のオンデマンド配信サービス「フジテレビ On Demand」にも言及。「権利の問題でなかなか番組配信が進まないが、比較的問題がクリアできるCS放送などの番組から出していく。ぜひlivedoorの無線LANに乗せて配信できれば」と語ったのち、「権利関係がクリアにできてきたら、ドラマや情報番組も発信できていけたら」との考えを示した。
制作面でも無線LANを活用する方針。「今までは3分の素材を撮影してバイク便で送っていたが、無線LANを使えばコスト的にも時間的にも飛躍的に改善できるのでは(山田氏)。一方で「セキュリティなどの問題もあるし、どなたでも500円で使えるのは問題がある」との心配もあるとした上で、「ある帯域を専用で使えれば、無線LANを使った番組中継もできるのではないか」との考えを示した。また、視聴者が撮影した映像を無線LANで送信してもらう、といったアイディアも持っており、「ライブドアとはそんな提携を話し合っていけたら」と語った。
日本IBM常務執行役員ゼネラルビジネス事業担当の堀田一芙氏はD-cubicを「世界的にも画期的な面でのカバーで、当社としても注目している」とコメント。ライブドアは「我々の重要な顧客の1つでもあり、ポータルやその他のアプリケーションを我々のサーバー群で対応している」と述べ、「D-cubicの認証システムは、我々がインフラで支援しているシステムの上で展開される」と説明した。
トレンドマイクロ執行役員日本代表の大三川彰彦氏は、「ブロードバンドの成長率が激しく、無線LAN市場も数カ月で30~40%伸びている。ブロードバンドのユーザーは今年で3,200万人、携帯電話のインターネット人口は7,900万人に達した」と述べたのち、「ではそれに対してどれだけセキュリティを意識しているか。有線であれば繋がった線以外で入られることはないが、無線は1つのアクセスポイントを複数で利用できる」とセキュリティの重要性を訴えた。
堀江社長が「D-cubicでは、アクセスポイントからお客様のPCまではWEPやSS-IDを設定していて、この間は完全にセキュアだが、それでは十分ではないだろう」と語ると、大三川氏は「無線LANは自宅で3つも4つもアクセスポイントが見えてしまう。範囲内ではいつでも見られてしまうという恐怖があり、外から入ってくる脅威も考えなければならない」と回答。「ファイルやドライブをブロックする機能が必要になる。ウイルスバスターはそういった、無線LAN環境でドライブやフォルダを共有させない機能を搭載している」と語った。
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日本IBMの堀田氏は無線LANを利用したソリューションのアイディアや自社製品などを紹介
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セキュリティの重要性を語るトレンドマイクロの大三川氏
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■ D-cubicは「孫さんの低価格ADSLのモバイル版」と堀江社長
堀江社長は自身のインターネット歴を振り返り、「初めてインターネットに繋いだときは9,600bpsと遅かったが、それでもインターネットで世の中と繋がっている感覚を共有することはエキサイティングだった」とコメント。「今では接続スピードも上がっているが、固定だけでは十分だとは思っていない。誰もが日常のインフラとして意識せずにインターネットを使うためには、モバイルのインターネット環境は必要不可欠だ」との考えを示した。
堀江社長はソフトバンクBBのYahoo! BBを例に取り、「孫さんが月額2,000円台という低価格のADSL環境を実現したおかげでインターネット市場が広がった。D-cubicはそのモバイル版だ」とコメント。「ADSLよりも飛躍的に安く、一部のサービスは無料で使える。何よりも私自身が待ち望んでいたサービスだ」と自信を示した。
加入者数は、「525円のサービス以外に法人向けメニューも考えており、正確な数字は言えないが、おそらく15万人くらいがブレイクのターゲットになるだろう」と説明。「まずはブレイクインを狙うために数字は言えないが、ミリオンは超えたい」と100万以上の加入者目標を掲げた。
設備投資額は、初期投資が7億円、主要都市へのカバーも含めると100~150億円の投資を予定する。堀江社長は「投資額と言ってもこれは総投資額であって、ユーザーが増えればキャッシュフローも生まれるし、機材はリース。エリアを広げていく段階では、設置費用なども変化しているだろう。一気に150億を投資するわけではない」と補足した。
アクセスポイントの帯域制限などは「一切設けない」。堀江社長は「1アクセスポイントあたり30人は同時にアクセスできる。その人たちが実効速度ギリギリまで使うこともないだろう」との予測を示したほか、アクセスポイント周辺のユーザーが自宅のISPとして利用する形態に関しても「問題ない」と答えた。
また、D-cubicのバックボーンは、ライブドアのデータセンターと共通のものが使われるが、これまではデータセンターに向かってデータを取りに来るトラフィックが多かったのに対して、D-cubicでは「他のポータルや動画配信など、外へ取りに行くトラフィックが増えてくるだろう」と考えているという。堀江社長は「利用しているバックボーンは上下対称の回線だが、現状では上りの帯域が下りの半分しか使っていない。そういう意味では、帯域が問題になることは考えられない」と語った。
■ URL
ニュースリリース
http://corp.livedoor.com/pressroom/pressrelease/content?id=690
D-cubic
http://wifi.livedoor.com/
livedoor
http://www.livedoor.com/
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(甲斐祐樹)
2005/06/15 19:08
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