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[2005/12/09]
第68回:IPv6で何が変わるの?
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[2005/11/25]
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[2005/11/18]
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[2005/10/28]
第63回:「ダイナミックDNS」ってどういうことができるの?
[2005/10/21]
第62回:NASってどこが便利なの?
[2005/10/14]
第61回:コンセントでインターネットにつながるって本当?
[2005/10/07]
第60回:家電とパソコンがつながるDLNAってどういう意味?
[2005/09/30]
第59回:パソコンで録画した番組をテレビで見たい!
[2005/09/16]
第58回:外出先から自宅の様子を確認したい!
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第56回:外出先から自宅のPCにアクセスするには?
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[2005/08/19]
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[2005/08/05]
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[2005/07/29]
第52回:ギガビットイーサネットってどれくらい速いの?
[2005/07/22]
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第50回:インターネットの音楽配信ってどうやって使うの?
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[2005/06/10]
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[2005/05/20]
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[2005/04/01]
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[2005/03/25]
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[2005/03/11]
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[2005/03/04]
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[2005/02/25]
第34回:ブロードバンドのテレビ電話ってどういうサービス?
[2005/02/04]
第33回:1GbpsのFTTHって何が違うの?
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[2005/01/14]
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[2004/12/17]
第29回:FTTHは本当に100Mbpsなの?
[2004/12/10]
第28回:FTTHってどうやって導入するの?
[2004/12/03]
第27回:インターネット電話ってIP電話と違うの?
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[2004/10/22]
第21回:無線LANのセキュリティ対策はどうすればいいの?
[2004/10/08]
第20回:無線LANの「11a」「11b」「11g」って何が違うの?
[2004/09/17]
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第12回:ブロードバンドルータって必要なの?
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第3回:ブロードバンドをはじめたいんだけど……その3
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どの事業者を選べばいいの?
[2004/04/16]
第1回:ブロードバンドをはじめたいんだけど……その1
[2004/04/09]

第20回:無線LANの「11a」「11b」「11g」って何が違うの?


 無線LANには、大きく分けてIEEE 802.11a、IEEE 802.11g、IEEE 802.11bという3つの規格があります。これらはどのような違いがあり、何を基準に選べばいいのでしょうか?

 IEEE 802.11a/b/gの違いは、速度と利用する電波の周波数帯です。現在、主流となっているIEEE 802.11aとIEEE 802.11gは最大54Mbpsという高速な通信ができますが、IEEE 802.11bは古い規格であり、最大11Mbpsでの通信しかできません。

 一方、利用する周波数帯は、IEEE 802.11aが5.2GHz、IEEE 802.11bとIEEE 802.11gが2.4GHzです。同じ2.4GHz帯のIEEE 802.11bとIEEE 802.11gは互換性がありますが、5.2GHz帯の電波を利用するIEEE 802.11aは他の規格と互換性がありません。

 ただし、IEEE 802.11bとIEEE 802.11gが利用する2.4GHz帯の電波は、無線LANだけでなく家電や医療機器などでも共有する周波数帯のため、電波の干渉によって速度が低下する可能性があります。IEEE 802.11aは干渉が少なく、比較的高速な通信が可能と言えます。


主な違いは利用する周波数帯と速度

 無線LANを導入する際は、注意しなければならない点がいくつかあります。前回、解説した親機や子機の種類もそうですが、IEEE 802.11a/b/gといった規格もその1つです。

 この規格を簡単に説明すると、無線LANの仕様を定めたものです。無線LANは電波を使ってデータをやり取りしますが、このとき何GHzの周波数の電波を使い、どのような方式で、どれくらいの速度で通信するかが、規格によって定められています。

 現在、発売されている無線LANの規格は、大きく分けて「IEEE 802.11a」「IEEE 802.11b」「IEEE 802.11g」の3つとなります。このほかにも規格は存在しますが、まだ製品として発売されていなかったり、速度ではなくセキュリティや通信の帯域制御などを定めた規格ですので、この3つだけを覚えておけば、製品選びに困ることはないでしょう。

 では、具体的にどのような違いがあるかを見ていきましょう。以下の図は、各方式の違いをまとめたものです。


IEEE 802.11a/b/gの主な違い。もっとも大きな違いは、利用する電波の周波数帯や速度

 まず注目したいのは、最大転送速度です。IEEE 802.11bは古くからある規格であるため、最大で11Mbps程度です。これに対して、IEEE 802.11aとIEEE 802.11gはいわゆる高速無線LANで、最大最大54Mbpsの通信ができます。通信速度が速ければ、多くのデータを短時間で転送できます。このため、最近では、IEEE 802.11bよりも、IEEE 802.11aとIEEE 802.11gが主に利用されています。現在販売されている製品も、このどちらかが多いでしょう。

 では、同じ54Mbpsを実現するIEEE 802.11aとIEEE 802.11gの違いはどこにあるのでしょうか? これは利用する電波の周波数帯が違いです。IEEE 802.11aは5.2GHz帯の電波を利用しますが、IEEE 802.11gは2.4GHz帯の電波を利用します。

 ポイントはIEEE 802.11gが、IEEE 802.11bと同じ2.4GHz帯の電波を利用する点です。もともとIEEE 802.11gは、IEEE 802.11bの後継規格として定められたこともあり、互換性が重視されています。つまり、同じ周波数帯の電波を使うことで(11Mbpsまでの通信方式も同じ)、お互いに通信できるようになっているわけです。たとえば、IEEE 802.11gの親機に、IEEE 802.11bの子機を接続したり、その逆も可能になります。


同じ2.4GHz帯の電波を使う802.11bと802.11gは互換性を持っているため、相互接続が可能。対して802.11aは周波数帯が異なるため互換性はない

 これに対して、5.2GHz帯の電波を使うIEEE 802.11aは、IEEE 802.11gやIEEE 802.11bと相互通信することはできません。また、5.2GHz帯の電波は法律によって、屋内での利用のみに制限されているため、IEEE 802.11gやIEEE 802.11bのように屋外で利用することもできないようになっています。

 このような点から、現在、もっとも普及している規格は、高速で、高い互換性を持ち、しかも屋外での利用も可能なIEEE 802.11gということになります。これから、無線LANを導入するのであれば、IEEE 802.11gがもっとも無難な選択肢と言えるでしょう。





見逃せないIEEE 802.11aのメリット

 では、IEEE 802.11aは選ぶ価値がないのかというと、決してそうではありません。実際の利用を考えると、むしろIEEE 802.11aの方が有利な点もいくつかあります。

 802.11aの最大のメリットは、電波の干渉を受けにくいことです。IEEE 802.11bやIEEE 802.11gが利用する2.4GHz帯の電波は、無線LAN以外にも医療機器や家電など、たくさんの機器で利用されています。また、前述したように、IEEE 802.11gやIEEE 802.11bの無線LAN機器が普及していることから、この周波数帯の電波は非常に混雑しています。

 同じ周波数帯の電波を使う機器が多いというのは、電波の干渉が発生しやすいということです。たとえば、自宅と隣家でまったく同じ周波数の電波を使う(同じチャンネルに設定されている)IEEE 802.11gの無線LAN機器があったとしましょう。すると、この電波が干渉源となり、自宅の無線LANは速度が低下する可能性があります。

 また、よく言われる電子レンジの影響も無視できません。電子レンジも同じ2.4GHz帯の電波を利用します。このため、無線LANの通信中に、電子レンジを利用すると、同様に電波の干渉が発生して、速度が低下するおそれがあるのです。


同じ2.4GHz帯の電波を使う機器が多いことから、IEEE 802.11b/gは干渉の問題が発生しやすい。干渉による速度の低下を押さえたいのであれば、IEEE 802.11aを利用する方が有利だ

 もちろん、近隣で同じ周波数帯の電波を使う機器があると、干渉によって速度が低下するというのは、IEEE 802.11aでも同様です。しかし、その確率は非常に低いと言えます。IEEE 802.11aの機器はそれほど普及していないうえ、同じ周波数帯を利用する機器も少ないからです。将来的にIEEE 802.11aが普及すれば話は別ですが、現段階では、干渉の影響をあまり受けない高速な無線LAN環境を構築することが容易となります。これらの点を考えると、積極的にIEEE 802.11aを選ぶというのもひとつの方法と言えるでしょう。

 なお、一般的には、IEEE 802.11aは、利用する電波の周波数帯が低いために、IEEE 802.11gに比べて長距離伝送が短く、遮蔽物のある環境で不利と言われていましたが、製品レベルではこの差はほとんどないと考えて良いでしょう。現在、発売されている製品であれば、IEEE 802.11aでも、IEEE 802.11gと同等かそれ以上の距離で通信できます。





実質的には規格で迷う必要はない

 このように、IEEE 802.11a/b/gには、それぞれの規格の違いから、メリット・デメリットがあることになりますが、製品を購入する段階で、この違いを考慮する必要はないかもしれません。なぜなら、現在ではIEEE 802.11a/b/gのすべての規格に対応した無線LAN機器が購入できるからです。

 すでにIEEE 802.11aのみ、IEEE 802.11b/gのみに対応した製品を持っていて、子機を増設するというのであれば、規格を合わせて製品を選ぶ必要がありますが、これから無線LANを導入するのであれば、IEEE 802.11a/b/gのすべてに対応した製品を選んでおけば、規格の違いを気にせず、無線LANを利用することができます。以前まではIEEE 802.11a/b/gに対応したルータも、IEEE 802.11a/、IEEE 802.11b/gのどちらかに切り替える必要がありましたが、最近の機種はIEEE 802.11a/b/gを同時に利用することも可能になっています。

 このような製品を利用し、互換性を考慮する必要がある機器はIEEE 802.11gで、ビデオ映像の伝送など、途切れのない高速な通信が必要な機器はIEEE 802.11aでというように、用途によって規格を使い分けるという方法もあります。もちろん、値段を重視するならば、IEEE 802.11b/gのみ対応の機種を選択するのもいいでしょう。


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2004/09/17 11:07

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。
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