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第191回:操作性改善で使いやすさを向上
4th MEDIAの新型STB「Picture Mate 300」


 ぷららネットワークスとオンラインティーヴィが提供する映像配信サービス「4th MEDIA」向けに、新型のSTB「Picture Mate 300」が提供された。最大の特徴は画面表示の高速化や操作性の改善が図られている点だ。早速、実機を購入したので、その使い勝手を検証してみた。





4th MEDIAに待望の新型STB登場

4th MEDIAの新型STB「Picture Mate 300」。価格は24,150円
 以前、本コラムで4th MEDIAについてレポートした際、STBの使いにくさが気になる点を指摘した。

 リモコンから電源を入れてからメニューが表示されるまでの時間が長く、画面操作もPC的で、リモコンでの操作に適していない点が非常に気になった。また、リモコンのボタン配置も前の画面に戻るための「戻る」ボタンがリモコンの中心から離れた場所にあるなど、適切ではないと感じていた。

 そんな声を反映したのか、ようやく4th MEDIA向けの新型STBが登場した。厳密には筆者がレポートしたOKI Streaming Player(およびPicture Mate100)に続いて、「Picture Mate 200」という製品が存在したが、画面構成までを含めて大幅な改善がなされたのは今回取り上げる「Picture Mate 300」が初となる。


画面周りの変更やUSB接続の無線LANアダプタへの対応などが強化され、USBポートも前面に備えた




本体は小型化し無線LANにも対応

 早速その実力を検証してみよう。まずは外観だが、以前のSTBに比べて大幅に小型化された。本体のサイズは約200×140×25mm(幅×奥行×高)と高さが低いため、テレビラック内部に設置したDVD&HDDビデオレコーダの上のような、ラック内のわずかな隙間でも収められる。以前のSTBが、環境によってはラックの一段を占有してしまう大きさだったことを考えると、この小型化は大きなメリットと言えそうだ。


従来のSTB(下)とPicture Mate 300(上)との比較。従来のSTBに比べて大幅に小型化され、デザインもだいぶ洗練された印象

 デザインもDVD&HDDレコーダなどの家電製品と比べればPC周辺機器に近いイメージだが、前面をヘアライン仕上げのアルミ調パネルとするなど、以前よりも洗練されたデザインになったと感じた。これなら、リビングという人目に付く場所に設置されていても、さほど違和感はなさそうだ。

 機能的には、前面にUSB端子が2ポート追加された。このポートにUSB接続の無線LANアダプタ(Web Caster FT-STU-Sa/g)を装着することで、IEEE 802.11aでの無線LAN接続が利用可能になった(IEEE 802.11gでの設定も可能だが、推奨はIEEE 802.11a)。物理的な配線が不要になり、家庭で利用するための敷居が一段下がった印象だ。


無線LANでの利用も可能。IEEE 802.11gでの設定も可能だが、IEEE 802.11aでの利用が推奨されている

 このほか、映像出力端子が従来のコンポジットおよびS端子に加えて、D1端子と光デジタル出力が追加されている(編集部注:光デジタル出力のポートは用意されていますが、実際には利用できません)。本体に付属するケーブルがコンポジットケーブルのみのために今回はテストしていないが、複数の出力に対応したのは大きな魅力だろう。


Picture Mate 300の背面。コンポジット+S端子のみだった従来機に比べて、D1などのインターフェイスが追加されている




瞬時に起動、メニュー操作も直感的に可能

 このようにハードウェア的に大きな変更を受けているPicture Mate 300だが、個人的にもっとも高く評価したいのは操作性が大幅に向上した点だ。

 まず、起動だが、これはほぼ瞬時と言っていい。リモコンの電源ボタンを押してから、本体が起動し、メニューがテレビ画面に表示されるまでの時間はわずか2~3秒と極めて速い。「お待ちください」画面でイライラ待たされていた以前のSTBからすると、これだけでも実に快適な印象がある。

 画面表示も早くなった。Picture Mate 300では、4th MEDIAのメタサーバーに対応しており、あらかじめ画面生成データをメタサーバーからSTBに取り込むことで、画面切り替えごとに通信を発生させずに高速化を図っている。

 実際に使ってみると、確かにこの効果はあるようだ。以前のSTBでは、画面を切り替えたタイミングで映像サムネイルなどのデータを取得する必要があったため、文字情報から若干遅れて画像が表示される傾向にあった。イメージとしては、アクセスが集中しているWebサイトを見ているような感覚だ。


Picture Mate 300(左)と従来のSTB(右)のメニュー画面。Picture Mate 300は起動が速く、画面の切り替えなども従来に比べて高速化された。また、画面デザインも落ち着いたイメージに変更されている


 これに対して、Picture Mate 300は確かに以前ほど画面表示がもたつくイメージはない。ただし、瞬時に画面が切り替わるかというとそうでもない。たとえばメインメニューから「ビデオ」を選ぶと、やはり画面中央に時計マークが表示され、ごくわずかだが画面更新に「間」が発生する。また、ビデオ画面で、リモコンからジャンルを選択した場合、そのジャンルに属するタイトルが表示されるまでにも若干のもたつきを感じる。おそらくタイトルの文字情報を取得して表示する際、タイトル数が多いと間が発生しているのだろう。

 全体的に見れば起動も早くなり、画面表示もかなり高速化されている。しかしながら、これは以前のSTBに比べればという話で、やはりDVD&HDDレコーダなどの家電製品などと比べると「遅い」というイメージはぬぐえない。このあたりは個人差もあるので、はっきりとした評価を下すことはできないが、個人的にはもう少し、サクサクと操作したいと感じた。

 メニュー操作では、個人的にもっとも気になっていた部分が改善されている点を高く評価したい。以前のSTBでは、ビデオ一覧のリストを更新する際、リモコンの方向ボタンを何度か押して、画面右上に配置されている「次へ」「前へ」ボタンにフォーカスを合わせ、「決定」ボタンを押すという煩雑な手順が必要だった。

 しかし、Picture Mate 300では、この操作性が大幅に改善されている。具体的には、リモコンのカーソルボタンの左上に「前へ」ボタン、右上に「次へ」ボタンが配置されており、ビデオのリストが画面表示された状態でこれらのボタンを押すことで、次ページ、前ページとボタン一発でリストを更新できるようになった。


画面構成とリモコンの変更によって、操作性はかなり向上した。ビデオの一覧表示画面などでは「次へ」、「前へ」ボタンによってリストのページを手軽に切り替えられる





アナログ放送よりもはるかに上の画質

 このほか、Picture Mate 300では画質面での改善も行なわれている。具体的には、新たにパケットロス補正機能(FEC技術の搭載)によって、通信経路上の問題や速度の問題などで映像を構成するパケットの一部が失われてもきちんと補正され、画像の乱れなども発生しにくくなっている。ただし、筆者宅では、以前のSTBでも画像が乱れるなどの不具合が発生したことはなかったので、この効果がどれほどあるのかは判断できなかった。

 なお、4th MEDIAのサービスは、2005年3月から高画質モードの映像帯域が4.2Mbpsから6Mbpsに引き上げられたことで、画質も向上が図られている。これは、特に大画面のテレビで映像を再生した場合などに顕著に感じるメリットだ。以前の4.2Mbpsの時は、大画面のテレビで映像を再生すると、映像が荒く感じられることがあったが、現在の6Mbpsでは画質面での不満を感じることはほとんどない。このあたりは実際に体験してみないとわかりにくいところだが、イメージとしては大画面テレビでアナログ放送を見るよりは、はるかに高画質が映像で再生できると考えて良い。


STBの2台併用も可能

 今回、Picture Mate 300を購入したことで、筆者宅にはOKI Streaming Player(Picture Mate 100)とPicture Mate 300の2台の4th MEDIA用STBが揃ったことになる。そこで、この両方を同時に利用できるのかもテストしてみた。

 結論から言えば、併用は問題なく可能だ。2台のSTBをLANに接続した場合でも両方に問題なくIPv6のアドレスが割り当てられ、初期設定の際にSTBに登録するユーザーIDとパスワードも、両方とも同じIDを登録して利用することができた(筆者はぷららのサービスを利用しているためぷららのIDを使用)。

 もちろん、両方のSTBからの同時アクセスも可能で、片方のSTBでビデオを購入して再生した状態で、もう一方のSTBで別の番組を購入して再生できた。購入情報もサーバー側で管理されているため、片方のSTBで購入したビデオを、もう片方のSTBで視聴することも可能だった。

 2台併用でも回線速度がボトルネックになることもなさそうだ。2台のSTBで別々の番組を再生してもコマ落ちやブロックノイズなどが発生することは一切なかった。試しに、2台のSTBでの同時再生に加えて、オンデマンドTVのSTBでも映像を再生し、3系統の通信を同時に行なってみたが、これもまったく問題なく映像を再生できた。場合によっては、家庭の各部屋に1台のSTBを設置して、家族それぞれが個別にビデオを再生するという使い方もできそうだ。





家電への搭載にも期待

4th MEDIAのチューナーを搭載した東芝の薄型テレビ
 このように、4th MEDIA向けの新型STB「Picture Mate 300」は、以前のSTBに比べて大幅に機能や使いやすさが向上した製品となっている。以前のSTBの完成度が低かったと言えばそれまでだが、これでサービスの環境面の拡充が図れたと言って良いだろう。今回、筆者はPicture Mate 300を購入したが、NTT東日本では月額525円のレンタル提供も行なっているので、気軽に利用できるのもありがたい。

 ただ、個人的な希望を言わせてもらえば、リビングにある機器やリモコンは少ないに越したことはない。テレビ、DVD&HDDレコーダー、ゲーム機に映像配信サービスのSTBが加われば、どのリモコンを使えばいいのかだけでも混乱してしまう。先日、「ACCESS、STB向けブラウザ開発キットが「4th MEDIA」に対応」というニュースが発表されたが、個人的にはこのようなキットの活用によって、テレビやDVD&HDDレコーダなど、家電製品に4th MEDIAのSTB機能が内蔵されていくことが理想だ。すでに東芝からSTBを搭載したテレビ製品が発売されているが、今回のPicture Mate 300と同等の機能が搭載されることを期待したい。

 4th MEDIAのサービスに関しては(オンデマンドTVも同じだが)、依然としてNTT東日本、NTT西日本が提供するIPv6サービスへの加入が必要という点に入会への課題を感じるが、今回のSTBの進化に代表されるように、着実に利用のための敷居は下がってきている。もう少しすれば、より身近で一般的なサービスとなりうるのではないだろうか。


関連情報

URL
  Picture Mate 300製品情報
  http://www.ntt-east.co.jp/ced/goods/pmate300/index.html

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2006/04/11 10:49

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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