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第195回:地デジとスカパー!が光ファイバでやってきた オプティキャストの「スカパー!光」を導入
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NTTのBフレッツを利用して地上/BS/CS放送を提供するオプティキャストの「スカパー!光」。これまでも集合住宅向けにサービスが提供されていたが、ようやく戸建て住宅でも利用可能となった。実際にサービスに加入してみたので、その使用感をレポートしよう。
■ CATVに加えてスカパー!光を導入
筆者宅では、これまでCATVを利用してテレビを視聴していた。地上波だけでなくさまざまな専門チャンネルを受信できるために便利なのだが、最近になってCATVのサービス内容に不満を覚えるようになってきた。それは地上デジタル放送の受信形態だ。
筆者が利用しているCATVサービスでは、地上デジタル放送がトランスモジュレーション方式で再送信され、CATV事業者から提供されたSTBを介して地上デジタル放送を視聴する仕組みになっている。そのおかげで電波の送信出力が低い時期から地上デジタル放送を視聴できたのは確かだが、最近ではこの方式がかえってアダになりはじめた。家庭内に地上デジタル放送をそのまま受信できる機器が増えているのにも関わらず、我が家ではSTBが接続されているリビングのテレビでしか地上デジタルを見られないのだ。
そのうちパススルーに対応するだろうと思っていたのだが、なかなか対応が進まないこともあり、この機会にテレビの受信環境を一新することにした。新たにUHFアンテナを設置するのも1つの手なのだが、ちょうどタイミング良くオプティキャストが「スカパー!光」のサービスを戸建て住宅向けに開始したので、このサービスを利用してみることにした。
■ 1本のファイバでデータも映像も配信
オプティキャストの「スカパー!光」はなかなか面白いサービスだ。同様のサービスは関西を中心にサービスを展開しているケイ・オプティコムでも「eo光テレビ」として提供しているが、前述したCATVサービスが同軸ケーブル(中継網は光ファイバ化が進んでいるが)を利用して地上/BS/CSなどの放送を伝送するのに対して、「スカパー!光」では光ファイバを放送を伝送するためのインフラとして利用する。
「スカパー!光」という名前からCS放送の伝送が中心のように思われがちだが、実際には地上アナログや地上デジタル、BSアナログ(地上デジタルの空きチャンネルに割り当て)、BSデジタル、そしてCSデジタルの各放送が光ファイバで伝送されており、非常に多彩なチャンネルを楽しめる(CSデジタルの視聴には専用チューナーが必要)。サービスのイメージとしてはまさにCATVそのものだ。
伝送に利用する光ファイバはどうするのかというと、これは既存の光ファイバを併用する。まずはその仕組みについて詳しく見ていこう。光ファイバを放送サービスに利用する方法は大きく分けて3通りある。1つはデータ通信用のファイバとは別に放送用のファイバを引き込んで利用する方法だ。戸建て住宅などには2芯のファイバが引き込まれることが多いため、空いている1芯を利用すれば実現できる。
続いては、本コラムでも過去何度か取り上げた4th MEDIAやオンデマンドTVなどのようにIPを利用する方法だ。この方法の場合、現状では放送ではなく通信として扱われ、地上波の再送などは行なわれていないが、マルチキャストによってCS放送などで提供されているのと同じ専門チャンネルを楽しめる。
そして最後が今回の「スカパー!光」で採用されているWDM技術を利用する方式だ。「スカパー!光」では、データ通信用に利用されている光ファイバをそのまま利用し、そこに放送用の信号を同時に伝送する。要するに1本の光ファイバに、データ用の信号と放送用の信号を多重化して伝送しているわけだ。
前述した2方式では、光ファイバを1本余計に利用する必要があったり、映像の伝送によってデータ用の帯域が圧迫されるというデメリットがあるが、この方法の場合、光ファイバは1本で済み、データと放送の信号はそれぞれ別に伝送されるため帯域の問題も発生しないことになる。
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Bフレッツの光ファイバを利用して、データと映像の信号を両方の信号を多重化して送信。家庭内に設置した終端装置で信号を分岐し、映像とデータの信号を取り出す
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光ファイバでの信号の多重化というといま1つイメージしづらいかもしれないが、小学生のときに理科の授業で行なったプリズムの実験を思い浮かべてもらえればわかりやすい。プリズムを利用すると太陽の光が各波長ごとに分割され、いろいろな色に分かれて見えるが、これと同じようにデータ用の信号と映像用の信号のそれぞれの波長の信号をあらかじめ合成して伝送し、それを受信側(家庭)で分離して取り出すことになる。
■ 終端装置を新たに設置
というわけで、「スカパー!光」のホームページからホームタイプを申し込んでみた。申し込み後の流れは、NTTによる工事、スカパー!光による工事、開通というイメージになるが、このうちスカパー!光による工事は宅内の同軸ケーブルの工事となるため省略することが可能だ。筆者の場合、各部屋への同軸ケーブルの配線に既存のCATVの配線を利用できるため、この工事を自分で行なうこととしたが、心配な場合は依頼した方がいいだろう。
NTTによる工事は、すでにBフレッツ(ハイパーファミリータイプ)を利用している場合は宅内のみの工事で済む。通常、屋外から引き込まれた光ファイバは直接ONUに接続されているが、これを一旦外し、以下の図のように屋外から引き込まれた光ファイバを新たに設置した終端装置(SCM-PDS型B光加入者終端装置)へと接続。ここでデータ用と放送用の2本の光ファイバへと分岐させ、一方を終端装置内の映像信号用端子へ、もう一方を従来のONUへと接続することになる。NTTによる工事はここまでだ。工事にかかる時間は通常なら1時間前後といったところだろうか(筆者宅は工事担当者がはじめてということもあり午前中いっぱいかかった)。
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新たに設置された終端装置(左)と既存のONU(右)。屋外から引き込まれた光ファイバが終端装置に接続され(1)、終端装置で2分岐された後、一方はONUへと接続される(2)。残った一方は、終端装置内のテレビ信号用の変換器へと接続され(3)、RF端子から映像が出力される
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なお、筆者宅では新たな終端装置の設置に加えて、ONUの交換も行なわれた。見たところ、従来のGE-PON用ONUとまったく同じであるため、何のために交換されたのかは不明だが、これにより光電話のセンター側での再登録(工事の際に同時に行なわれる)、さらにフレッツ・ドットネットの利用再開手続き(これはフレッツ・スクウェアから自分で設定)が必要になった。
■ 地上アナログと地上デジタルを視聴
NTTの工事が完了すると、あとはテレビ側の工事になる。と言っても工事と言うほど大げさな作業は必要ない。新たに設置した終端装置には、映像信号用のRF端子が搭載されているので、ここに同軸ケーブルを利用してテレビを接続するだけだ。前述したようにテレビ側の工事は事業者に依頼することも可能だが、このレベルなら自分での工事でも十分に可能だろう。
これで光ファイバ経由で伝送された映像信号が変換され、テレビに映し出されることになる。実際に地上アナログ放送と地上デジタル放送の映像を視聴してみたが、地上デジタル放送に関しては、さすがに安定した信号が送られてくるだけに品質はまったく問題なかった。この機会に東芝のHDD&DVDレコーダ「RD-X6」を購入して利用してみたが、当然のことながらパススルーの信号を問題なく受信し、きれいに視聴・録画できた。
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RD-X6で受信したスカパー!光の放送をDELL製の液晶ディスプレイで表示したところ。地上デジタル放送を問題なく受信できた
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一方、地上アナログに関しては、若干画質にざらつきを感じた。筆者宅では分配機を多用しているので、おそらくその影響が大きいと思われる。オプティキャストのホームページで接続図を参照すると、家庭内の各部屋に分配する場合はブースターの利用が推奨されているので、ブースターを利用すれば改善される可能性もあるだろう。ただし、DVD&HDDレコーダなどで地上アナログ放送を録画すると、ノイズリダクションが効くのか画質はそれほど悪く感じない。おそらくチューナーの性能も関係するのだろう。
■ CS放送とBSデジタルには専用機器が必要
このように、地上アナログ(BSアナログも含む)と地上デジタルに関しては、テレビなどを接続するだけで受信可能だが、CSとBSデジタルはそうはいかない。まずCS放送だが、この受信には専用のチューナーを利用する必要がある。
自分での工事を選択した場合、事前にCS受信用のチューナーが送られてくる。筆者宅の場合はソニー製の「DST-OP55F」という機種が送られてきた。このチューナーは、一見市販されているスカパー!用のチューナーにそっくりだが、型番からもわかるとおり光ファイバでの放送サービスに対応した製品となっている。具体的には、背面に通常のCSアンテナ接続端子に加えて、「光ファイバRF入力」端子が搭載されており、ここに終端装置からのケーブルを接続する必要がある。
加入時にレンタルされるCSチューナー(DST-OP55F)。背面にアンテナ入力端子が2系統搭載されており、スカパー!光の入力は「光ファイバRF入力」に接続する必要がある
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試しに終端装置からのケーブルを「CS IF入力」側に接続してみたところ、やはりCS放送の映像を受信することはできなかった。つまり、市販されているスカパー!用チューナーでは「スカパー!光」の映像は受信できないことになる。すでにスカパー!を利用しているユーザーの場合でもチューナーを変更する必要があるわけだ。また、複数の部屋で視聴したい場合も、この専用チューナーを新たにレンタルしなければならないことになるので注意が必要だろう。
一方、BSデジタルに関しては、受信にアップコンバータが必要になる。これは伝送されてくるBSデジタルの周波数が一部異なるためだ。オプティキャストが公開している資料によると、以下の図のようにBSデジタルの信号が光ファイバ内では770MHz以下に周波数変換されて伝送されている。これをアップコンバーターで元の周波数に戻す必要があるというわけだ。
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BSデジタル放送は光ファイバ内では別の周波数帯を利用して伝送されてくる。このため、一般的なBSデジタルチューナーで映像を受信する前に、アップコンバーターで信号の周波数を変換する必要がある
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アップコンバータは、「スカパー!光」への加入時に申し込みフォームで必要な旨を選択すると送られてくるので、所有していない場合は忘れずに申し込んでおくと良いだろう。筆者宅に送られてきた製品は、マスプロ製の「USC-103」という製品だった。
気になる画質だが、こちらは特に問題なかった。筆者はこれまでスカパー!を利用していなかったため経験がないのだが、自前のパラボラアンテナでスカパー!を受信すると、雨などの影響でうまく受信できないことがあるそうだ。しかし、光ファイバで信号が伝送されてくる「スカパー!光」では、そういったことは一切ない。筆者宅ではすでに2週間ほど利用しているが、常に安定した映像が得られている。
ちなみに、前述したように筆者は今回RD-X6を購入したが、この製品にはスカパー!連携機能が搭載されている。専用のケーブルでRD-X6とチューナーを接続することで、RD-X6からチューナーを制御し、番組表を利用してスカパー!のチャンネルを自動的に録画することができる機能だ。この機能も試してみたところ、問題なくDST-OP55Fを制御でき、スカパー!の番組を録画することができた。「スカパー!光」を利用する際は、このような連携機能を備えたレコーダーを利用することをおすすめしたいところだ。
■ CATVとの競争を勝ち抜けるか
以上、「スカパー!光」を実際に導入してみたが、すでにBフレッツを利用している場合は、手軽に地上アナログ/デジタル、BSアナログ/デジタル、CSデジタルの受信環境を整えられるため、このサービスを利用する価値は十分にあると言えそうだ。
価格も基本料金1,460円+CSデジタルチューナーのレンタル代315円+50chの専門チャンネルが視聴可能なセレクションパック2,950円でパック料金による割引後の料金が合計3,990円/月で利用できる。CATVの料金は事業者によって異なるので一概には言えないが、筆者が利用しているCATVサービスの場合、ほぼ同じサービス内容のテレビサービスが5,229円/月となる。スカパー!光の場合、Bフレッツの料金も必要になるが、テレビサービスとして比較した場合は料金的に同等と考えて良いだろう。
ただし、CATVは、オンデマンド配信サービスの提供、HDD搭載型STBの提供と、最近では付加価値を重視する方向でサービス内容を充実させてきている。これにより月額の利用料金がさらに高くなってしまうのも事実だが、付加価値という点ではCATVの進歩が著しい。今後、スカパー!光が、CATVに対してどのような方向性で競争を挑むのかが注目されるところだ。
いずれにせよ、ユーザーにとってCATV以外にテレビ環境を整える選択肢が増えたことは歓迎すべきだ。CATV、スカパー!光と、さまざまなサービスが競い合うことによって、より一層、サービスレベルが向上し、ユーザーにとってより使いやすい環境が整うことを望みたい。
■ URL
スカパー!光
http://www.opticast.jp/
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