米国を中心に広がった音声ファイルの配信技術「Podcasting」。2005年7月にはApple Computerの楽曲管理ソフト「iTunes」がPodcastingを正式にサポートし、iTunes Podcastingの無料ダウンロード数は2日で100万件を突破した。専用ソフトウェアを用意するだけで無料で使えるPodcastingを、iTunesで実際に試してみた。
■ RSSを使って最新の番組を自動でダウンロード
Podcastingとは、RSSを利用して音声ファイルを自動で収集できる仕組みだ。気に入った番組をPodcastingに対応したソフトで登録しておくだけで、新しい番組が追加された時に自動でダウンロードしてくれる。毎日更新状況を確認するためにWebサイトへアクセスする手間も省けるため、新しいコンテンツ配信の仕組みとして注目を集めている。
音声ファイルをダウンロードする点も特徴の1つ。ラジオなどを聴く場合、好きな番組を聴くには決まった時間にアクセスしなければならないし、録音でもしない限りは好きな部分だけを聴くことも難しい。Podcastingなら音声ファイルをそのままダウンロードできるので、自分の好きな時に番組を聴けばいい。一旦ダウンロードすればインターネットにつなぐ必要がなく、音声ファイルをポータブルプレーヤーに持ち出すことも可能だ。
Podcastingという名前からiPod専用の仕組みのような印象が強いが、実際にはiPod以外の音楽プレーヤーでも問題なく利用できる。要はMP3のような音声ファイルをダウンロードするという単純な仕組みなので、あとは自分のプレーヤーに手動でファイルを転送すればいいだけだ。
もちろん、iPodであればより便利に使うことも可能だ。iPod向けの楽曲管理ソフト「iTunes」は、楽曲をiPodへ自動で転送する機能を持っている。この機能を利用し、Podcastingでダウンロードしたファイルを自動でiTunesに登録することで、毎朝iPodとiTunesをつなげば最新の番組をipodで楽しめるのだ。
これまでPodcastingを利用するためには、「iPodder」などの専用ソフトウェアを利用する必要があった。しかし、iTunesの最新バージョン「4.9」ではPodcastingが公式サポートされ、iTunesのみでPodcastingが利用可能になった。これに合わせて、iPod本体用にもPodcasting対応のファームウェアが公開されており、クリックホイールを搭載したiPodおよびiPod miniであればPodcastingに対応した機能を利用できるようになっている。
■ Podcasting機能が追加されたiTunes最新バージョン
|
iTunes 4.9からはライブラリに「ポッドキャスト」が追加された
|
それでは実際にiTunes 4.9のPodcasting対応機能を見てみよう。iTunes 4.9には、音楽を管理するライブラリとは別に「ポッドキャスティング」という名称の専用ライブラリが用意された。iTunesのPodcasting機能を使ってダウンロードした音声ファイルは、すべてこの「ポッドキャスティング」ライブラリに登録される。このプレイリストはPodcasting専用のため、Podcasting以外の音声ファイルをポッドキャスティングのライブラリに登録することはできない。
まずは、Apple ComputerのWebサイトから、実際にPodcasting用コンテンツを利用してみよう。iTunes画面左側の「ミュージックストア」をクリックすると、iTunesの画面内にAppleのWebサイト「iTunes Music Store」が表示される。続けて画面左側の「Podcasts」を選択すると、Podcasting専用ページに遷移する。または、ポッドキャストライブラリ画面下部の「ポッドキャストディレクトリ」からもアクセスが可能だ。
Podcastingのファイルを登録する場合は、ダウンロードしたい番組を選択し、「SUBSCLIBE(購読)」ボタンをクリックすると、iTunesが自動で音声ファイルをダウンロードする。Podcastingは番組を登録するか、もしくは任意の音声ファイルごとダウンロードすることが可能だが、番組を登録しておけば、新しい音声ファイルが追加された際にiTunesが自動でファイルをダウンロードしてくれる。
|
|
iTunes Music StoreのPodcasting専用ページ
|
番組の「SUBSCRIBE」ボタンからPodcastingを登録できる
|
|
「iTunes Music」フォルダ内に「ポッドキャスト」フォルダが自動で作成される
|
Podcastingファイルは、PC内のiTunes用フォルダ(Windowsの初期設定ではマイミュージックフォルダ内に自動で作成される)の「ポッドキャスト」フォルダに保存される。この中の音声ファイルを手動で転送すれば、iPod以外の音楽プレーヤーでもPodcastingが利用可能だ。
iPodの場合は、起動時の初期画面に「ポッドキャスト」という項目が追加されており、iTunesでダウンロードしたファイルを自動で転送できる。なお、音声ファイルとは異なり、Podcastingファイルは手動でiPodに転送することができない。iTunesの設定で、すべてのPodcastingを自動更新するか、もしくは選択したPodcastingのみ自動更新するかのどちらかでファイルを転送できる。
操作方法自体は通常の音声ファイルとほぼ変わらない。音声ファイルに画像を埋め込み、iTunesやiPodなどで音楽再生中に画像を表示できるアートワークにも対応している。また、アートワークの複数表示に対応したPodcastingコンテンツも「iTunes NEW MUSIC tuesday」などで配信されている。この場合、音声のチャプターに合わせて楽曲のジャケット画像などが自動で切り替え表示される仕組みだ。
複数アートワークの埋め込みツールは、Macintosh用の音楽制作ソフト「Garageband」向けに公開されている。このツールを使うことで、アートワーク表示の切り替えと連動した音声ファイルのチャプター設定などが可能だ。なお、複数アートワークの専用ツールは現在ベータ版で、マニュアルなどもすべて英語で表記されている。
GarageBand - Recording Your Podcast(英文)
http://www.apple.com/support/garageband/podcasts/
|
|
Podcastingの再生画面。アートワークも表示される
|
Podcastingは自動更新でのみ利用できる
|
|
|
iPodにも「ポッドキャスト」の項目が追加
|
Podcastingコンテンツの再生画面。複数アートワークに対応している場合は、音声ファイルのチャプターごとアートワークが切り替わる
|
■ 手動の登録も可能。日本オリジナルのPodcastingコンテンツも
|
「詳細設定」「ポッドキャストを登録」RSSのURLを手動で登録することも可能
|
ここまではiTunes Music Storeのコンテンツを紹介してきたが、残念ながらiTunes Music Storeは日本で展開されていないため、配信コンテンツも英語が中心※。音楽コンテンツであれば洋楽感覚で楽しめるかもしれないが、ニュースコンテンツなどは英語がわからなければ魅力は半減してしまうかもしれない。
【お詫びと訂正】初出時、「iTunes Music StoreのPodcastingはすべて英語」としておりましたが、実際には「International」「Japanese」カテゴリで日本語コンテンツも配信されております。お詫びして訂正いたします。 |
最近では日本でも少しずつPodcasting対応のコンテンツが登場し始めている。シーサーは、同社のブログ「Seesaa」の新着記事を音声に変換するサービスやPodcasting専用ページ「Pod♪Cast」を用意しているほか、ライブドアのインターネットラジオ「livedoor ネットラジオ/ねとらじ」でもPodcastingが開始され、livedoor ニュースやラジオNIKKEIなどのコンテンツが楽しめる。
@niftyはPodcasting専用ポータル「Podcasting Juice」を開設、人気サイト「デイリーポータルZ」やヤマハの音楽コミュニティ「プレイヤーズ王国」などのコンテンツを配信している。Podcasting対応のブログサービス「ケロログ」では、一般ユーザーのPodcastingファイルが公開されているほか、電話で録音した音声ファイルをPodcastingで配信することも可能だ。
これらiTunes Music Store以外のPodcastingも、iTunes 4.9では利用できる。iTunesの「詳細設定」から「ポッドキャストを登録」を選択、Podcasting用のURLを入力すれば、後はiTunes Music Storeのコンテンツと同じ操作で利用可能だ。
|
|
@niftyのPodcastingポータル「Podcasting Juice」
|
livedoor ネットラジオ/ねとらじ
|
□Podcasting Juice(@nifty)
http://www.podcastjuice.jp/
□livedoor ネットラジオ/ねとらじ ポッドキャスティングβ版
http://pod.ladio.livedoor.com/
□ポッドキャスティング(PodCasting)の楽しみ方(Seesaa)
http://podcast.seesaa.net/
□ケロログ
http://www.voiceblog.jp/
■ 日本でのPodcastingコンテンツの充実に期待
従来まで、メールマガジンなどの通知はあったにせよ、インターネット上のコンテンツは基本的に自分でアクセスするものだった。これがRSSの登場により、サイトの更新情報をユーザーが意識することなくチェックできるようになり、さらにはPodcastingによってコンテンツを自動でダウンロードすることもできるようになった。
iPodであれば、あらかじめ聴きたい番組をチェックしておけば、後はiTunesと接続するだけで常に最新の番組を楽しめる。iPod以外のプレーヤーでも、手動でファイルを転送する必要はあるものの、最新のファイルを自動でダウンロードできる機能そのものは利便性が高いだろう。
ただし、米国に比べて、日本オリジナルのPodcastingコンテンツは、現状では充実しているとは言い難い。また、著作権処理の問題から、音楽配信サービスのような楽曲関連のPodcastingは難しい面もある。
とはいえ、@niftyやlivedoorなど、Podcastingに積極的に取り組んでいるポータルもある。両ポータルとも、国内では比較的早くにブログに取り組んでいた点で共通している点も興味深い。2004年には「ブログブーム」「ブログ元年」とまで言われ、知名度・サービスともに大きく成長したブログサービスも、その1年前には一般への知名度はほとんどないに等しい状況だった。ブログとまったく同じ発展を遂げると一概には言えないが、インターネットの世界ではたった1年で大きな注目を集められるという1つの例ではあるだろう。
そもそもPodcastingは、ファイルをRSSに関連付けて自動ダウンロードするという仕組みであり、技術そのものは音声ファイル以外でも利用可能だ。今後は音声以外のファイルも、Podcastingのような仕組みで登場する可能性もあるだろう。RSSを利用したコンテンツ配信の新たな可能性として、Podcastingには今後の展開を期待したい。
■ URL
iTunes
http://www.apple.co.jp/itunes/download/
■ 関連記事
・ アップル、Podcastingに正式対応したiPod新モデルとiTunes 4.9
・ Podcasting配信番組の紹介や配信ツールを公開する「Podcasting Juice」
・ Podcasting対応の「ケロログ」がGMOメディアの「mypop」と連携
・ ライブドア、PodCastingのラジオ配信を開始。特別番組は堀江社長が出演
(甲斐祐樹)
2005/07/26 11:04
|