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ソーシャルブックマークに参入したニフティの狙い

 @niftyは6月7日、ソーシャルブックマークサービスとして「ニフティクリップ」のベータサービスを開始した。ソーシャルブックマーク参入の狙いと今後の展開について、担当の渡邊太郎氏に伺った。


情報を効率的に収集・整理するためにサービスを立ち上げ

ニフティクリップ
――本日はよろしくお願いします。はじめに、ニフティクリップを始めたきっかけを教えて下さい。

渡邊:インターネットの普及により世の中の情報がどんどん増えている中で、そうした情報を効率的に収集・整理できる方法が求められていると感じたことがきっかけです。実際にさまざまな情報収集・整理のためのサービスが登場しており、ニフティとしてもこうしたニーズに対応して応えていかなければいけないと考え、ニフティクリップを始めました。

――ソーシャルブックマークというサービスの形式を選んだ理由は。

渡邊:これまでは検索エンジンで調べるという方法が主流で、これは今後も主流だとは思いますが、それ以外にもSNSやブログ、RSSリーダーなどからネットサーフィンを始める人も現れはじめました。

 これらのサービスが登場したことで、検索エンジンを使わずとも欲しい情報にたどり着く導線ができあがってきている。ニフティでもニフティクリップを立ち上げることで、そうした導線をキャッチしていこうという狙いがありました。


――サービスを開始してからのユーザーの反応は。

渡邊:他のサービスと比べてニフティらしさが出ていると感じています。技術的な話題ももちろん多いですが、生活情報やグルメ情報のような身の回りの情報もクリップされる傾向にあります。クリップ数は現在のところ約9,400くらいですね(6/29時点)。これから徐々に数を伸ばしていきたいと思います。


――サービスを始めてからの苦労は。

渡邊:サービスのリリース直後は、荒らし目的のようなクリップもありました。もちろん、荒らし的なものはきちんと取り締まっていきますし、平和を保つための運営こそがニフティクリップの良さにつながると考えています。


「調べたいことありき」で自分のために使うツール

登録したブックマークの公開範囲を個別に設定できる
――ソーシャルブックマークといえば国内でははてなブックマークが代表的ですが、ニフティクリップとしての差別化は。

渡邊:先ほどお話した通り、ユーザーのコミュニティが異なるというのが1つ。もう1つはサービスのコンセプトにも関わってくる部分ですが、情報の集め方に違いが出てくると考えています。これまでのソーシャルブックマークは日々つれづれと検索して見つけた情報を集めていくものだったと思います。ニフティクリップももちろんそうした使い方をして欲しいですが、特に今回注目したのは「調べたいことありき」という部分です。

 たとえば中華街に出かける用事があったら、中華街で良さそうなお店を選ぶために検索エンジンを使ったりクチコミ情報を調べたり、時にはその集めた情報を友達に見せたりしながら場所を決めていくでしょう。そうした目的ありきで情報を集める時に便利なサービスにしていきたい。まずは自分のために情報を集めて整理しておき、それがあとで自分にも他人にも引き出しやすいようになっていることが理想です。

 そうして自分のために蓄積されていった情報は、ある意味で自分のプロフィールを表わすようなものでもあると思います。ニフティクリップをブログパーツとして提供することで、一種のプロフィールツール的な役割も果たせるのではないでしょうか。

 まずは自分のために情報を集めて欲しいという考えから、クリップ1つ1つを非公開に設定することもできます。ただ、デフォルトは公開設定になっています。あえて非公開にすることもない情報であれば、公開しておいてもらえると、情報共有ツールとしてのメリットも生まれてきます。


――ブログパーツ以外に考えている機能は。

渡邊:まず、タグの整理機能を強化したいと思います。日によってカタカナで付けたり英語で付けたりとバラバラだったタグを統合したり、違う言葉でタグを付けていたけれどやっぱり同じ分類にしたい、といったニーズに応える機能ですね。また、そうしたタグの組み合わせ情報は、逆にタグをお勧めする機能に活用できるのではないかと考えています。
――ニフティクリップに保存されるのはタイトルとURLのみで本文は引用していません。

渡邊:文章の引用に関しては、今後も法務部門に確認をしながらサービスに対応していきます。

――友達にクリップを公開するというお話がありましたが、wikiのような共同編集機能は。

渡邊:それもいいですね。今考えているのは、自分の設定したタグを複数選択してリストとして出力し、友達に見せるためのページを作成できる機能です。ソーシャルブックマークやニフティクリップのユーザー向けではなく、自分の身の回りにいるリアルな友達に対して情報を提供するために使ってもらいたいと思います。

――ブログでは自分のエントリーを他のブログへ移行することもできますが、ソーシャルブックマークでそうした移行ツールの可能性は。

渡邊:ニフティクリップでも将来的にはOPMLによるインポート・エクスポートを検討していきますし、もしくは複数のソーシャルブックマークへ同時に投稿できるようなツールを紹介していくという方法もあるかもしれません。ニフティクリップはある程度自由に使って欲しいツールですし、将来的にはAPIの提供も考えています。


ネット上の情報が目的ごとに束ねられることで新たな価値が

ニフティクリップを担当する渡邊太郎氏
――現在はベータサービスですが、正式サービス移行への条件は。

渡邊:明確な線を設けているわけではありませんが、今のニフティクリップは情報をクリップして共有するところでサービスの目的が止まっています。将来的にはニフティクリップを単に閲覧しにきただけという人まで取り込めるようなメディアとして機能するところまで持っていきたい。アカウントを持っていない人にとっても、見に来たら何か面白いものが見つかるようなサービスにしたいですし、そのための集客・送客が強くなった時点で正式サービスにする予定です。

――他のユーザーのクリップを登録できる「ウォッチリスト」機能ですが、自分がウォッチリストに登録されたことがわかるような機能は。

渡邊:他のユーザーのウォッチリストを見えるようにすると、ソーシャルネットワーク的な要素が強まると思います。最初はそういうアプローチもありかな、と考えていましたが、今は、情報を集めて整理することに重点を置いています。

 ブックマークを通じてコミュニケーションするという使い方ももちろんあるとは思いますが、それが最大の目的になると、自分のために集めるという使い道が薄れてしまう。それはどちらかというとコミュニティや記事投稿掲示板みたいになってしまって、我々の考えていたコンセプトから外れてしまうと考えました。

 ソーシャルブックマークの面白味は、役に立つ情報を集めてこそだと思いますし、盛り上がりそうな話題を1番乗りでクリップするようなサービスではないと思います。我々は、みんなが目的を持って情報を集めることで、ネット上に散らばった情報がそれぞれの目的ごとに束ねられていくことに新しい価値があると思っています。また、有用な情報を集めるだけではなく、その束ねられ方に人それぞれの特徴が出るところにも、人が介する面白さがあるでしょう。

 サービスのリリース時にも、「ソーシャルブックマーク」という言い方をするかどうか迷いました。既存のソーシャルブックマークとして見られてしまうと、使われ方も既存のものと同じで終わってしまう。最終的には、そのキーワードを採用しましたが、使い方としては既存のサービスをいったん忘れて、自分のために情報を集めて欲しいですね。


RSSリーダー機能や「瞬!ワード」を表示できる会員向けの個人ポータル「マイニフティ」
――ソーシャルブックマークが機能するにはある程度のユーザー規模が必要だと思いますが、ユーザー獲得の手段は。

渡邊:まずは自分のために使うサービスとして訴求していきますが、従来のソーシャルブックマークのような楽しみ方をするのであれば、@nifty温泉やTravel@niftyといった情報コミュニティとタイアップできると良いと思います。そうしたコミュニティの人たちがうまく情報を共有しあえるような仕組みを提供すれば、他サービスとは違う情報の集め方ができるのではないでしょうか。

 ニフティでは@nifty会員向けの個人ポータル「マイニフティ」のRSSリーダー(ブログクリップ機能)を提供しており、これらとの連携も考えられますし、流行の話題をチェックできる「瞬!ワード」、@niftyの検索「@Search」などと連携することも考えています。ニフティクリップの情報を利用して@Searchの検索精度向上に貢献できるような裏の仕組みです。


――ニフティクリップそのものが検索サービスになるという考えは。

渡邊:まずは既存の検索サービスがあるので、そちらとの連携が先ですね。ニフティで蓄積したデータは各サービスで相互に活用しあえるようなものにしていきたいので、データを相互に利用した上で、いろいろな切り口で検索できるようなサービスになると思います。

 人を介するというのは重要なポイントです。ニフティに限らず、今後も人を介した情報の集まるサービスがいろいろと出てくるでしょう。そういうサービスを全部串刺しにして利用できたり、裏側の仕組みは1つだけれど表からの楽しみ方が違う世界として出していけたら、と思います。

――本日はありがとうございました。


関連情報

URL
  ニフティクリップ
  http://clip.nifty.com/

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(甲斐祐樹)
2006/07/05 11:02
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