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シックス・アパートが仕掛ける「ブログ+SNS」の新サービス「Vox」

 ブログツール「Movable Type」やトラックバックの開発など、ブログの普及に大きな影響を与えたシックス・アパートが、新たなブログサービス「Vox」のベータサービスを開始した。Voxのコンセプトについて同社代表取締役の関信浩氏にコンセプトを伺った。





SNS要素を持ったブログサービス。現在は招待制のベータサービス中

 「Vox」は、シックス・アパートが運営するブログサービス。2006年6月に米Six Apartで英語版ベータが開始され、日本語版ベータは2006年8月に開始された。現在は招待制のため、利用には既存のユーザーからの招待が必要だが、Vox公式サイトからメールアドレスを登録すれば、準備が整い次第シックス・アパートから招待状が送付される予定だという。


Vox(画面はいずれも開発中のため、変更の可能性があります)

 Movable Typeのようなインストール型のブログツールではなく、同社の「TypePad」のようなブログサービスの形式を採用しているが、特徴的なのはSNS的な要素が実装されていることだ。Voxユーザー間でお互いを登録する「ご近所さん」機能を用いることで、ブログの内容を一部のみに公開するといったアクセスコントロール機能が実装されている。

 「ご近所さん」は「家族」「友達」の2種類で分類でき、「ご近所さん」に登録した他ユーザーの最新日記や、自分の日記に投稿されたコメントなどは自分のページに通知される。また、他のユーザーの日記にコメントした場合にも、さらに新しいコメントが投稿された場合に自分のページへ通知を行なうため、自分がコメントした後の流れを追うことができる。

 記事には静止画や音楽、動画などを掲載できるだけでなく、画像共有「Flickr」、動画共有「YouTube」のコンテンツをVoxで掲載するといった連動機能も実装。Amazon.co.jpを利用したレビュー機能、携帯電話から閲覧・投稿できる機能も用意されている。


公開範囲を「友人」「家族」などカテゴリごと公開できる FlickrやYouTube、Amazonのデータを引用して日記を投稿できる機能。画像や動画、レビューも細かく公開範囲が設定できる

 インストール型のブログツールとして広く普及しているMovable Typeに加え、「ココログ」「ブログ人」などにライセンス提供も行なっているブログサービス「TypePad」、米国で若い世代に人気の「LiveJournal」など、多くのブログサービスを運営しているシックス・アパート。そのシックス・アパートが従来のブログとは一線を画すコンセプトを持ってリリースしたVoxについて、同社代表取締役の関信浩氏にコンセプトを伺った。





記事や写真ごとに公開範囲を管理できるアクセスコントロール機能が特徴

シックス・アパート代表取締役の関信浩氏
――本日はよろしくお願いします。はじめに、Voxのコンセプトについてお聞かせ下さい。

 Voxのコンセプトはいくつかありますが、最も大きいのはプライバシーやセキュリティを重視した点でしょう。Voxでは、投稿した記事だけでなく、アップロードした画像や動画といった単位で公開範囲を設定できるので、ブログをネット上で公開しつつ、個人的な画像だけは友達や家族に見せる、というプライバシー管理が可能です。

 アメリカでは、ブログは主に情報発信のツールとして用いられていますが、Voxがターゲットとしているのはもう少し小さなコミュニティです。例えばすでにブログを使って情報を発信している人が、自分の子供が生まれた時にその写真を両親に見せたいと思った時、きっとその画像はブログに載せるのではなく、オンラインアルバムなどを使って特定の人にだけ見せるでしょう。

 こうした特定の人にだけ情報を伝えたいというニーズにも応えながら、それ以外へはパブリックに情報を発信できる。ブログをベースとしながらアクセスコントロールのネットワークを作るというのがVoxのコンセプトです。


左がログイン前、右がログイン後の閲覧状態。画像は友人まで公開に設定しているため、ログインしていない、もしくは友人以外の設定では閲覧できない


「ご近所さん」に設定したユーザーのうち、「今日の質問」タグが設定された日記のみを表示。フィードを個別に取得することもできる
――Voxの名前の意味は。

 ラテン語で「声」を表わす言葉で、市民の声といった意味を持っています。アメリカでは一般に通用する言葉ですし、文字数も短くて覚えやすい。サービスの開発段階では「Project Comet」というコードネームで呼んでいましたが、サービス化にあたって社内でいくつか候補を挙げ、最終的に「Vox」を採用しました。


関連記事:Six Apart創業者のトロット夫妻が来日。トラックバックの標準化目指す
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――Voxの機能的な特徴は。

 最初に説明した通り、写真や動画などをメディアごとに分類し、それぞれのアクセスコントロールを管理できる点です。文章は一般に公開しつつ、顔が見える写真や声の入っている動画だけは友達しか見せないなど、メディアごとに細かく管理できます。

 メディアやタグごと細かくフィードが取れるのも特徴です。写真や動画だけといったメディアの種類だけでなく、自分の友達の動画だけ、自分の友達のタグだけなど、細かくフィードを取得できます。友達でつながったネットワークの距離で情報をフィルタリングすることで、フィードで取得する情報をカスタマイズできます。





情報発信よりコミュニケーションを重視。他サービスとも広く連携

英語版に実装されているTypePadへの同時投稿機能
――既存のMovable TypeやTypePadとは異なる新たなサービスとしてVoxをリリースした理由は。

 日本ではブログが盛り上がるタイミングで登場したこともあり、Movable TypeやTypePadが標準的なブログとして認知されている面もあるかと思いますが、今思えばMovable TypeもTypePadとも機能面からすればハイエンド向けの商品です。アーリーアダプターや真剣にブログを使っているユーザーはMovable TypeやTypePadを支持する一方で、一般のユーザーには難しすぎて使いこなせないという面もあります。もっとカジュアルなコミュニケーションを楽しむためのツールとして、新たにVoxという別のサービスを立ち上げることにしました。

――Voxの機能をMovable TypeやTypePadに実装する予定は。

 良い部分は積極的に取り入れていく予定ですが、実装することでサービスの設計そのものが変わってしまうような機能は時間がかかるでしょう。というのも、既存ユーザーが存在するサービスである以上、機能や仕様を大幅に変更するのは難しいからです。Voxを新しいサービスとして始めた理由もそこにあります。

――Movable TypeやTypePadといった今までのブログサービスに比べて、VoxはVoxのサービス内で完結している印象があります。

 現状はベータサービスのため、ブログにコメントをつけるのにもVoxのアカウントが必要ですが、今後はOpenIDのようなシステムにも対応していく予定です。Vox以外のブログを使っている人であっても、そのサービスのIDを使って認証を行なうことで、Voxにコメントできるような仕組みです。

 米国版では、VoxとTypePadへ同時に投稿できるクロスポスト機能を実装していますが、TypePadだけでなく他社サービスへも同時投稿できるクロスポスト機能を実装する考えもあります。また、逆にAtom APIなどを用いて他のサービスからVoxへ投稿することも可能です。今はサポート上の理由などからVoxのみに限定していますが、今後はできるだけ多くのサービスと連携していき、Voxの外とも広く連携していきたいと考えています。





「友達」「家族」より細かい公開範囲設定も可能に

「Vox QotD(今日の質問)」と「Vox Hunt(フォト発見)」。日替わりで異なる質問が用意され、ボタンを押すと回答を自分のブログに投稿できる
――SNSのようなコミュニティ機能の実装は。

 何を持ってコミュニティというかは難しいところで、自分の周りに知り合いのネットワークを作るのも個人のコミュニティでしょう。ただし、それとは別に製品のコミュニティといったSNSのコミュニティのような機能も、詳細はまだ明かせませんが取り入れることを考えています。

――毎日異なる質問が投げかけられる「今日の質問(QotD、Question of the Day)」や写真投稿を促す「Vox Hunt(フォト発見)」が特徴的ですが、その狙いは。

 ブログを書くためのネタを提供する、という目的が1つ。また、QotDに答えたブログの記事には同じタグが付けられるので、同じテーマに他の人がどう答えたかを見ることができます。異なる国のVoxユーザーで文字はわからなくても、写真で「Vox Hunt」に答えていれば見るだけでも十分に面白い。国に関わらずVox全体を1つコミュニティとして捉え、Voxに参加するきっかけを促せればと考えています。

――今のVoxのアクセスコントロールは「友達」「家族」という2つのカテゴリですが、より細かいアクセスコントロールを実装する考えは。

 詳細はまだお話できませんが、より細かな分類機能も導入は考えています。Voxのシステムは世界共通なので、実装する場合はワールドワイドで行なうことになるでしょう。ただし、正確な時期は未定です。

 なぜ今の段階でそうした機能を実装していないかというと、機能が多すぎると管理するのが難しくなるからです。初めから細かな分類機能を実装していると、まじめな人は一生懸命友達のカテゴリ分けをしていくでしょうが、それがかえって苦痛になるかもしれません。

 本当は欲しい機能でもできるだけ減らせるものは減らして、初心者にも違和感のないサービスを目標としていますし、それをテストするためのベータでもあります。ただ、やりこんでいけば細かい機能を使いたくなるのも事実ですので、そうした機能も少しずつ盛り込んでいけたらと思います。

 モブログについても、投稿アドレスを複数作成することで、インターネット公開用の記事や友達限定の記事などを分類した上でメール投稿できますし、メール投稿時にあらかじめ設定しておいたタグを自動で付与することもできます。上級ユーザーに対してはカスタマイズ用の機能も提供していきますし、モバイル対応自体も正式サービスまでにはさらにブラッシュアップする予定です。





2006年内に日米欧で同時に正式サービスを開始予定

トラックバックなどHTML知識が必要な操作を排し、初心者にわかりやすいインターフェイスを
――トラックバックを生み出したシックス・アパートですが、現状のVoxにはトラックバックは実装されていない点が興味深く感じます。

 トラックバックそのものを否定したわけではなく、さまざまな機能を取り入れる順番の中で優先順位が後になっているということです。今のVoxはWYSIWYG的にエントリーを書けるなど、HTMLの操作がないよう設計されています。

 これに対してトラックバックは概念も難しいですし、URLのコピー&ペーストが必要など操作も煩雑です。ベータ版の時点ではまだ実装には早いと考えていますが、今後は良い形でトラックバックを実装することはもちろん考えています。

――SNSとブログ両方の要素を持ったVoxですが、本質的にはブログなのでしょうか、SNSなのでしょうか。

 ログインしなくてもVoxを訪れれば内容が見られる、という点ではブログそのものでしょう。友達を登録するSNS的な機能も実装していますが、それはアクセスコントロールのレベル分けをするための登録であって、友達を登録することそのものが目的ではありません。ブログにSNS要素を加えたというのが正しい理解だと思います。

――正式サービスの時期は。

 詳細はまだお話できませんが、第4四半期(10月~12月)には日米欧同時にリリースする予定です。それまでにVoxの広告展開や、国ごとに適切なパートナーシップを締結するなど、ビジネスモデルの面でも検討を進めていきます。

 料金ですが、Voxは基本的に無料で提供する予定です。TypePadもMovable Typeも基本は有償の製品ですが、これら製品のターゲットは高い機能の対価としてお金を払う人たちです。それに対して一般のユーザーは、気軽なコミュニケーションにはあまりお金を払わない。

 今は熱心にブログを使い込んでいる人でも、プライベートなことはブログには書きにくい。そういう人がコミュニケーション用途でVoxを使ってもいいですし、そもそもブログをこれから始める人もまだまだたくさんいると思います。写真だけアップしたり、QotDに答えるだけでも続けていけるよう、誰でも気軽に始められるサービスを目指していきます。

――ありがとうございました。




【お知らせ】
 シックス・アパートのご厚意により、現在ベータ版提供中のVOXアカウントを抽選で100名様にプレゼントいたします。ご希望の方は下記フォームよりお名前とメールアドレスを入力してご応募ください。

 応募締め切りは9月19日正午、ご応募いただいた方にはシックス・アパートから招待メールが送信されます。応募にはSSL対応ブラウザをご利用ください。応募された方のお名前とメールアドレスは招待メール発送のためにシックス・アパートへ通知いたしますが、それ以外の用途には利用せず、当選者確定の後にデータは削除します。当社のプライバシーポリシーについてはこちらをご覧ください。

※応募は受付を終了しました。


関連情報

URL
  Voxサービス紹介
  http://www.sixapart.jp/vox/

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(甲斐祐樹)
2006/09/13 11:11
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