日本放送協会(NHK)は10月6日、「NHKオンラインLabブログ(ラボブログ)」を開設した。同ブログは、ブログパーツの配布などを行なうスペースとして開設されたものだ。
6日には、番組放送で使用した時計をモチーフにした「NHK時計」、放送中の番組を確認できる「ただいま放送中」のブログパーツ2種類を公開。なお、「NHK時計」はその後、ユーザーからの意見がブログに寄せられ、木目調が追加公開されるなど、人気を集めている。
そこで、「NHKオンラインLabブログ」を担当するNHK 編成局 デジタルサービス部 専任ディレクターの倉又俊夫氏に加え、広報・宣伝を担当する広報局 経営広報部の福島裕介氏から、同ブログ立ち上げの経緯などを伺った。
■ Webの動きを的確に捉えたサービスをラボブログで提供したい
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NHK 編成局 デジタルサービス部 専任ディレクターの倉又俊夫氏。手に持つのはTOCで見つかった木目調のNHK時計
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――まず、「NHKオンラインLabブログ(以下ラボブログ)」開設の経緯について教えてください。
倉又:これまで実施したNHKのインターネット展開では、Webサイトにまず足を運んで貰うという考え方が念頭にありました。ラボブログでは、この考え方を180度変えて、ユーザーに対して情報を送り届ける試みができないかと検討を進めたのがきっかけになります。ですから、ラボブログではWebの新しい動きを的確に捉えたサービスを提供したいと考えています。
――最初のブログパーツに「ただいま放送中」と「NHK時計」を選定した理由は?
倉又:自分たちが提供できるものを考えたときに、刻一刻と内容が変化する番組情報をブログパーツにしようと決定しました。その一方で、アイキャッチ的な、利用する人にニヤッとしてもらえるものも提供したいと思っていたときに、時計が頭に浮かびました。
――「NHK時計」はその後、木目調版も追加されましたね。
倉又:青色版以外にも、暖色系があったという記憶はありました。その後、ラボブログにトラックバックなどを通じて、「暖色系や木目調の時計があったのではないか」という意見が寄せられました。そこで改めて、時計があったTOC(テクニカルオペレーションセンター)を2回に渡って捜索した結果、運良く発見するに至った次第です。
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NHK時計の実物。時報を知らせる際には、テレビカメラ前面にはめこんで使用したという
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――「NHK時計」の実物自体は現在どうなっているのでしょうか。
倉又:放送に登場したのは1991年頃までになると思います。それ以降は表には出てきていませんが、今もTOC内では稼動しています。
――ブログパーツのダウンロード比率はどのような状況ですか。
倉又:初日から傾向があって、「NHK時計」がより多く利用されています。直近の比率は「NHK時計」が95%、「ただいま放送中」が5%です。これは、利用者が無意識的な面を含めて、テレビ放送でNHK時計に慣れ親しんでいたのが影響したのではないかと考えています。
――「ただいま放送中」は現在、関東の番組表情報に限られていますね。
倉又:今後は地方版を含めて見せ方に工夫を加えたものを提供したいと考えています。また、次回に提供するサービスでは、ライトユーザーでも利用できるようなタイプの準備を進めています(関連記事)。
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背面。“本番”と手書きで記されているのが印象的
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左側面にはソケットが用意されていた
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■ インターネットユーザーを視野に入れた番組制作も実施
――ユーザーに対して情報を送り届けるというと、RSSの配信も開始していますね。
倉又:RSSの配信は、2005年3月に実施したNHKオンライン・トップページのリニューアル以降、順次開始しました。「早すぎるのではないか」という意見もありましたが、結果的にはタイミング良く提供できたと思っています。
――Podcastingへの取り組みは如何でしょうか。
倉又:NHKオンラインの10周年企画として、10週連続で音声と動画コンテンツ双方をPodcastingで提供しました。このときのダウンロード数は、動画の方が多かったですね。今後に関してですが、チャンスがあれば提供したいと考えています。
福島:10周年企画ではありませんが、NHKオンラインにストリーミング提供している21言語の外国語ニュースをPodcastingでも提供しています。
倉又:もちろん、Webブラウザを利用しないでRSSなどを通じて、新しい情報を取得したいニーズがあることは承知しています。NHKとしては、そうしたニーズに対しても応えていきたいですね。
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「エルポポラッチがゆく!!」番組ホームページ
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――それ以外でインターネットでの取り組みがあれば教えて下さい。
倉又:テレビ局のWebサイトだからこそ、動画を視聴したいという意見があると理解しています。今年の3月にリニューアルしたテレマップのWebサイトでも、動画を掲載するようになってアクセス数が増えました。今後も視聴者の方のご期待に少しでも応えられるよう、動画についても検討していきたいと思います。
福島:私が宣伝を担当している「エルポポラッチがゆく!!」という1分ドラマシリーズは、インターネット世代の若年層をターゲットに制作しています。1分なので、新聞のテレビ欄に載らず、いつ放送するかわからない深夜帯中心の“ゲリラ編成”が、逆に良い意味での不親切や渇望感を生み、若い人の興味につながっていると思います。そしてブログなど口コミで話題になり、サイトを見た方々が放送に関心を持つという、放送とWeb一体でエルポポワールドを楽しんでもらっています。
番組の放送時間は1分程度と、視聴率が正確に計測できないといって良い状況です。しかし、番組ホームページのアクセス数を見る限り、インターネットを意識した番組作りの中では成功した事例だったと感じています。
――アクセス数はどのぐらいあるのでしょうか。
福島:4月の放送開始時に、スポーツ新聞の記事やYahoo!トピックスに掲載された際に、1日で25万PVのアクセスがありました。その後も月間PVを見ると、大河ドラマと連続テレビ小説を除けば上位のアクセスに位置していますね。
■ 利用者に「面白い、新しい」と感じてもらえるサービスを
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「NHKオンラインLabブログ」
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――NHKオンラインや各番組サイトなどと比較した際のラボブログの役割は?
倉又:NHKオンライン・トップページのリニューアルでは、検索エンジンの表示方法の変更や検索ランキングの採用情報などの改良を定期的に実施しています。しかし、常にリニューアルし続けるというわけにもいきません。そうした際に、ラボブログで先行して新しい機能を盛り込むことで、利用者の反応が見られるのではないかと考えています。
そういった意味では、利用者からのラボブログへの反応は今のところ非常に良いものだと受け取っています。また、こうした試みが、NHKオンラインやNHKの各サイトに影響や刺激を与えられればとも思います。
――最後に今後に向けたメッセージをお願いします。
倉又:インターネットを利用するユーザーは、自分が関心のあるサイトを自由に選んで、ものを見たり買ったりしていると思います。これは、チャンネルが限られていたテレビと比較すると、選択の幅が非常に広がっているからに他なりません。
こうした中で、ラボブログなどの新しい試みを通じて、1人でも多くの利用者の方の目をとめていただいて、「面白いな、新しいな」と感じてもらえるサービスを提供できればと考えています。それがひいては、番組ページへのアクセスや番組自体への視聴に繋がればと願っています。
■ URL
NHKオンラインLabブログ
http://www.nhk.or.jp/lab-blog/
NHKオンライン
http://www.nhk.or.jp/
エル・ポポラッチがゆく!!
http://www.nhk.or.jp/popo/
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(村松健至)
2006/11/15 11:02
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