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国内初の高速PLCアダプタ「BL-PA100」の機能をチェック

 松下電器産業が11月13日に発表した、国内初の家庭向け高速PLC製品「BL-PA100」。12月9日の発売を前にモニターサンプルを入手したので、製品の概要や使用感などをレポートする。

※本製品はサンプル品につき、実際の商品とはパッケージや仕様が異なる可能性があります。


コンセント経由で宅内のLAN環境を手軽に構築

「BL-PA100KT」と「BL-PA100」
 BL-PA100は、家庭内のコンセントを利用して宅内のLAN環境を構築できる高速PLC製品。インターネット接続にはADSLやFTTHといった回線環境が別途必要だが、家庭内の配線は有線LANによる直接接続や無線LANを利用することなく、ルータやモデムの設置場所とは離れた部屋からコンセントを介してネットワークに接続できる。

 利用の際には、ルータなどに接続する「マスターアダプタ」、PCなどのクライアント端末に接続する「ターミナルアダプタ」のセットで利用する。マスターもターミナルも製品としては共通だが、出荷時にそれぞれ「マスター」「ターミナル」に設定されている点が違い。製品パッケージとしてはマスターとターミナルをセットにした「BL-PA100KT」、増設用ターミナル1台の「BL-PA100」が用意されている。なお、本体の細かな仕様などは、発表時の記事を参照して欲しい。

松下電器産業、家庭向け高速PLC製品を12月9日に発売
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/16162.html


設定はケーブルを接続するだけ。LANケーブルは別途用意

BL-PA100KT。マスターとターミナルの外観はまったく同じ
 BL-PA100KTのパッケージ内容は、マスターとターミナル本体に加え、約50cmの電源コード2本とマニュアル類のみ。本体の接続設定は出荷時に行なわれているため、CD-ROMのような設定ソフトウェアや電子マニュアルなどは用意されていない。また、PCやルータと接続するためのLANケーブルは別途用意する必要がある点に注意しよう。

 マスターとターミナルは同一の製品のために外観の違いはないが、本体背面に用意されたマスターとターミナルの切り替えスイッチ設定で判別が可能。また、マスターには本体上部に「MASTER」と記されたシールが貼られている。

 両アダプタを家庭内のコンセントに接続すると電源がオンになり、マスターとルータを、ターミナルとPCをそれぞれLANケーブルで接続すれば、利用のための準備は終了だ。コンセントを通じて自動でマスターとターミナルが接続し、インターネットの利用が可能になる。


本体上部にはSETUPボタン。マスターアダプタには「MASTER」シールも 本体背面。電源やLANポートのほか、マスター/ターミナルの切り替えスイッチ、初期化ボタンを搭載

本体以外の同梱品は電源ケーブルとマニュアル類のみ。LANケーブルは別途用意する 接続時。マスターアダプタは「MASTER」ランプが点灯する

下りで20Mbps以上のスループットを計測。上りも高速

speed.rbbtoday.comでスループットを計測。下りは20Mbps超、上りも約17Mbpsを記録
 スループットは編集部内の電源コンセントを利用して計測。計測PCにはモバイルPentium III-M 1.20GHzを搭載したノートPCを、インターネット接続回線は100Mbps占有型のBフレッツ ベーシックタイプを利用。ルータはNECアクセステクニカの「Aterm WR7850S」を利用し、有線LANポートにマスターを接続し、「speed.rbbtoday.com」で5回計測を行なった。アダプタは直接壁のコンセントではなく、電源タップを介して接続している。

 オフィスビルの電源設備であり、数多くの電気機器が同時に動いているために宅内とはかなり異なる環境ではあるものの、5回計測の下り平均は約23Mbpsで、毎回ともに20Mbpsを超える数値を計測。上りは下りに比べてやや落ちるものの、平均で約17Mbpsの数値が得られた。なお、繰り返しになるが家庭とは異なる環境であるため、参考値として捉えて欲しい。

 無線LANとのスループットも比較。回線やPC、ルータは同一の環境で、クライアントにはIEEE 802.11a/b/g準拠の無線LANカード「Aterm WL54SC」を利用し、ルータとはIEEE 802.11a(W53)で接続。Super Aなどの高速化技術はオフに設定した。

 なお、アダプタにも通信速度の簡易測定機能が搭載されており、ターミナルアダプタの本体上部の「SETUP」を約1秒押すと速度を計測できる。計測基準がUDPのためにTCP/IPのインターネット接続とは数値が異なるが、本体前面のランプが3つとも点灯すれば30Mbps以上、1つなら10Mbps以下、2つならその中間となる。


製品名方向1回目2回目3回目4回目5回目平均値
BL-PA100

(PLC)
下り24.97Mbps 21.76Mbps24.26Mbps24.90Mbps23.00Mbps23.78Mbps
上り18.43Mbps16.83Mbps17.57Mbps17.22Mbps19.03Mbps17.82Mbps
WL54SC
(IEEE 802.11a)
下り16.45Mbps16.46Mbps15.64Mbps16.22Mbps16.36Mbps16.23Mbps
上り22.06Mbps21.06Mbps22.03Mbps19.88Mbps21.00Mbps21.21Mbps
スループット測定結果


IEEE 802.11aの計測結果。PLCと比べて下りは遅いが上りは高速 通信速度の簡易測定機能。ターミナルアダプタのランプが3つ点灯するとUDP測定値で30Mbps以上

増設設定も本体のみ。詳細設定はPCからブラウザで設定

ターミナルアダプタのログイン画面
 ターミナルアダプタを増設する場合は、マスターアダプタと増設するアダプタをコンセントに接続した上で、ターミナルアダプタ背面の「CLEAR SETTING」を約3秒間押して初期化。その後でマスターアダプタの「SETUP」を約1秒押し、5秒以内にターミナルアダプタの「SETUP」ボタンを約1秒押せば設定は完了だ。設定が完了したターミナルアダプタは、別のコンセントに接続してもそのまま利用できる。なお、増設作業中はPLCに接続されたその他の機器の通信が最大10秒間遮断される。

 増設や初期化などは本体のみで設定できるが、詳細設定はアダプタに接続したPCからも行なえる。PCのIPアドレスを「192.168.0.xxx」に、サブネットマスクを「255.255.255.0」に設定し、アダプタのIPアドレス「192.168.0.249」にブラウザからアクセス。ファームウェアの更新やIPアドレスの変更、ログイン時のパスワードなどを変更できるほか、ネットワークに接続されたターミナルアダプタの削除も可能だ。なお、アダプタ間の通信に使われているAESの暗号設定は変更できない。


IPアドレスやログインパスワードの変更が可能 ファームウェアによるバージョンアップも対応

マスターアダプタの管理画面 マスターのみターミナルアダプタの削除機能が利用可能。ターミナルアダプタはMACアドレスで表示される

電源タップや短波ラジオへの影響など利用上の注意も

利用時の注意事項。マニュアルにもこのほかの注意事項が詳細に記載されている
 家庭内の電源コンセントを使うため、ルータなど従来の通信機器とは異なる利用上の注意も添付されている。電源は直接壁の電源コンセントへ接続することが推奨されているほか、PCアダプタや充電器などは電気ノイズを発生する製品は、ノイズフィルター付の電源タップを使うよう勧めている。このほか、アダプタをUPSやサージ対応のタップには接続しない、といった注意も見受けられる。

 なお、同一の電力線上に2個以上のマスターアダプタが存在する場合はデータ通信に影響を与える可能性があるという。このため、できる限りマスターアダプタは1台で利用するよう呼びかけている。

なお、編集部内のPLCアダプタは2台とも電源タップを経由して接続しているほか、同じ電源タップに充電器も接続。推奨環境とはやや遠い環境で測定を行なっている。

 逆にアダプタが他の機器へ影響を与える可能性も記載されており、短波ラジオや調光機能付照明器具、HD-PLC以外のPLC製品、ワイヤレスマウスなど無線機器がこれに当たる。影響が発生した場合、アダプタのコンセントを別に差し替える、短波ラジオの場合はアダプタの使用場所を壁から遠ざける、短波ラジオの周波数を変更するといった対策が紹介されている。


設定の手軽さと高速性が大きな魅力

 今まで有線LANや無線LANでの接続設定に慣れすぎていたため、最初はコンセントを使ったネットワーク構築にはやや戸惑ったものの、設定方法は非常にシンプルでわかりやすい。初回設定時であればケーブルをつなぐだけでよく、増設も本体ボタンのみと非常に手軽で、難しい印象のある無線LANに比べて、子供や高年齢層でも設定しやすいのではないだろうか。

 スループットもあくまで参考値ではあるものの、実測で20Mbpsを超える値で実利用には十分。理論値である最大190Mbpsにはほど遠いが、現状の無線LANに比べれば同等もしくはそれ以上のスピードで使える可能性もあるだろう。

 まだ市場には製品で出回っていないため、集合住宅の隣部屋での利用や短波ラジオとの競合、もしくは想定していなかったような問題や課題が残っている可能性もあるが、コンセントに接続するだけでネットワークを構築できるという手軽さと通信速度の高速さは大きな魅力。アイ・オー・データ機器からもHD-PLC準拠の製品が発表されており、ロジテックもPLC製品の年内投入を発表しているなど、今後はPLC業界が大きな注目を集めそうだ。


関連情報

URL
  製品情報
  http://ctlg.national.jp/product/info.do?pg=04&hb=BL-PA100KT

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(甲斐祐樹)
2006/11/30 15:34
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