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運営委員会に聞く「アルファブロガー・アワード」が目指すものとは

 11月1日、良質な個人ブロガーを選出することを目的としたブログコンテスト「アルファブロガー・アワード 2007」の投票が開始された。「アルファブロガー」の名前を掲げて4年目を迎え、リニューアルを図った同コンテストの狙いについて、運営委員会を務めるアジャイルメディア・ネットワーク(AMN)取締役の徳力基彦氏と、シックス・アパート コーポレートマーケティングディレクターの清田一郎氏にお話を伺った。





個人で情報発信するブロガーを発掘・支援

「アルファブロガー・アワード 2007」公式サイト
――本日はよろしくお願いします。はじめに、このイベントが開催されることになったきっかけをお聞かせ下さい。

徳力:アルファブロガー・アワードというイベントは、もともと僕が運営に参加していたニュースコミュニティ「FPN」で2004年から実施していた「アルファブロガーを探せ」を受け継ぎ、AMNとシックス・アパートが共同で運営委員会を務めています。

 イベントのきっかけは、僕自身がどういうブログを読めばいいのかを知りたかったことが1つ。もう1つの理由としては、当時は芸能人や社長といったもともと有名人のブログばかりが注目されていましたが、僕がブログに衝撃を受けていたのは、個人が情報を発信していくことでメディアになれるという個人のエンパワーメントツールとしての可能性だったので、そういう形でブログを使っている人の中で注目されているのは誰だろう、ということが気になっていました。

 アルファブロガーという言葉は、織田浩一さんが「アメリカでは影響力のあるブロガーをアルファブロガーと呼ぶ」とコラムで紹介していて、「これだ!」と思って飛びつきました。


2004年にFPNのサイト上で行なわれた第1回目の企画「日本のアルファブロガーを探せ 2004」
――AMNとシックス・アパートが運営することになった経緯は。

徳力:「アルファブロガーを探せ」は3年間続けましたが、毎年同じところに票が集まるようになってしまい、個人的には2006年で投票企画は終了しようと考えていたところ、清田さんが「こういう活動は続けたほうがいいよ」と協力してくれることになりました。

 今までのアルファブロガー企画はボランティアで小規模に運営していましたが、「FPNというよくわからない団体が運営している」という評価もあってあまり認知されていなかったのが実情です。一方で「アルファブロガー」という言葉だけを取り上げたマーケティングや調査など言葉が一人歩きしている面もあり、それは寂しく感じていました。

 継続するのであればブロガーの視点から良いものを選ぶという当初の目的をきちんとアピールしたいと思いましたが、そうした認知度向上も考えると完全なボランティアは難しい。今も実質的には数人のプロジェクトに近いですが、会社というバックグラウンドを入れることで、知らない人にも安心してもらえるようにと考えました。

清田:元々この話は私がシックス・アパートに入社する前からしていたのですが、ブロガーが主体となって良いブログを評価していこうという趣旨のコンテスト自体が珍しく、それが3年間も続いているということは非常に価値があることで、これはぜひ続けるべきだと考えていました。

 今までのアルファブロガー企画も良いブログを選んできましたが、残念ながら企画そのものの認知度はそれほど高くないでしょう。そこをAMNとシックス・アパートがバックアップすることで、アルファブロガーというイベント自体の認知度を上げていきたいという気持ちもあります。

 シックス・アパートはMovable Typeのようなブログツールの会社として知られていますが、本質的には「ブログを読み書きする人を支援する会社」であり、今までもブログに関する本を出版したりセミナーを開催したりといった活動をしています。そういう世界でも珍しいブログ専門の会社が、ブロガーが始めたブロガー評価企画をバックアップすることは自然ですし、その結果としてブログが活性化すれば、それがシックス・アパートの利益にもつながると考えました。

 ただし、今回の企画はあくまでブロガー主体のイベントです。シックス・アパートとAMNが事務局としてバックアップしますが、主催は本企画のために設立した「アルファブロガー運営委員会」で行なうという体制を採っています。





アルファブロガーがノミネートを選ぶ「目利き」の役割に

今までにアルファブロガーに選ばれたブロガーが新たなアルファブロガーをノミネート
――他のブログ事業者が参加していない理由は。

徳力:最終的にいろいろなブログ事業者の方々の力はお借りしたいですが、運営から参加するとなると、全部の会社が入らないと中途半端になってしまうと考えました。

清田:以前にココログで働いていたときの経験ですが、ブログ事業者だからといってすべてのブログを見ているわけではなく、結局選ぶ基準はPVや人気度になってしまいます。最初に選出するノミネートをブログ事業者が選ぶというのは、事業者にとってはかなり重い課題ですね。

 だからといって最初から一般投票にしてしまうと、すでにアルファブロガーとして認められているブログに票が集まったり、逆に票がばらけ過ぎてピックアップできない。そこで今回は「今までのアルファブロガーがノミネートを選ぶ」という形式を採りました。

 必ずしもアルファブロガーがブログ業界に詳しくて良いブログを知っているとは限りませんが、少なくともブログというものに思い入れのある人が多いでしょう。そういう方に選んでいただくことで、PVや人気とは違う良いブログ、一部の業界から高く評価されているブログなどを選出できたと思いますし、ノミネートリストを作るための「目利き」の役割を果たしてもらえたと思います。


――今回の投票はノミネートに加えて自由投票ができますが、自由投票は投票したブログや投票数が見られません。結果としてノミネートされたブログに票が集中するのでは。

徳力:過去3回の経験から、オープンな投票にすると人気ブログに票が集中し、新しいブログを選ぼうとしても結果としてあまり広がらないという感想を持っています。今はRSSリーダーなどの登録数ランキングもありますし、頂上のブログを探すという趣旨にあまり意味はないでしょう。むしろ今回は頂上よりも山の中腹部とでもいうべき、各分野で注目を集めているブログを見つけ出すことを重要視しています。

 「アルファブロガーを探せ」の時も隠れた目的として、普段読んでいるブログに対して「読んでいますよ」という感謝の気持ちを伝える、という行為が広がって欲しいと考えていました。自分のブログを「読んでいます」と言われるだけで、テンションが上がって書き続けるモチベーションになる人って多いと思うんですよね。そういう反応がなくて書くことをやめてしまう人もいますが、それはもったいない。

 そのため今回はアルファブロガーに選ばれるかどうかよりも、推薦されたことが喜ばれるお祭りのような企画でありたいし、そういう意味でもノミネートに比重を置いています。最近、自分では「ブログの世界は狭くてあまり変化していない」と思っていましたが、今回のノミネートを見て「こんなにすばらしいブログがあるのか」と衝撃を受けましたし、いかに自分が一部のブログしか見ていなかったのか痛感しました。

清田:例えば今回ノミネートされたブログに「会社法であそぼ。」というブログがあるんですが、これは、会社法の起草にも携わり、会社法の担当者や学生からは神のような存在の方が書かれているブログなんだそうです。投票時のコメントも熱い意見が多くて「こんなにすばらしい人がブログを書いてくれる現代がすばらしい」なんて意見が寄せられるほど多くの人に愛されている。今回はそういうコメントが熱い投票が多くて、こういうブログがあるんだとわかったことはとても価値がありますね。

――複数のユーザーが匿名で更新する「はてな匿名ダイアリー」もノミネートされていますね。

清田:はてな匿名ダイアリーはジャーナリストの佐々木俊尚さんが推薦したのですが、非常に面白いと思います。そもそもインターネットは誰が書いているのかわからないもので、ネットの向こう側に人はいるんだけれどそれは見えない、というネットの特質がはてな匿名ダイアリーでは鮮明になっていますし、1つのネット人格と言ってよいものにすらなっているとも思います。

 佐々木さんが推薦したのも、はてな匿名ダイアリーというシステムが1つの人格を生み出した特殊な状況を感じているのでしょう。運営側としてはグループブログばかりが推薦されるようですと考えてしまいますが、はてな匿名ダイアリーであれば1ブログとして扱うのもインターネットらしいな、と思います。





「5人が読んで5人に影響を与えればアルファブロガー」

サイトのTOPページでは「アルファブロガー」という言葉の定義を説明
――「人気のブログを知りたい」という当初の目的と比べ、今回は「知られていない良いブログを探したい」へとコンセプトが変化していますが、テレビなどでも取り上げられ、「有名ブロガー」という言葉として認知もされている「アルファブロガー」という言葉を今回も使った理由は。

徳力:言葉への思い入れやイベントとしての続き感もありますが、アルファブロガーという言葉の「個人で情報発信している人が影響力を与える」というイメージは比較的共有してもらえていると思います。そういう意味でアルファブロガーという言葉は定着させていきたいですね。

――今の「アルファブロガー」という言葉の定義は。

徳力:アルファブロガー・アワードのサイトにはその議論をし尽くした上で「多くの人に影響を与えているブログの書き手」と紹介しています。決して読んでいる人数の多さではなく、5人が読んで5人に影響を与えていればアルファブロガーだと思います。

清田:ブログの登場によって、自分の詳しい何かのジャンルについて一生懸命情報を発信する人が少しずつ現われていて、それは従来の日記でもないしマスメディアでもない、けれど情報を発信しているメディアになっている。そういう事象がネットの世界で起きていて、アメリカではメディアとして多くの読者を抱えているブロガーもいます。

 日本でも同じことが起き始めていて、ブログによって個人が世界に向かって情報発信できるようになった。そうして自分が大事だと思う情報を定期的に発信する人がいて、それが興味を持った人を引きつける。それがアルファブロガーということだと思います。

 ただ、そういう人たちのブログは業界が違うととたんに知名度が低くなってしまい、同じ業界の人しか知らないブログになりがちです。それを時々こういうイベントでピックアップして一覧することで、業界を超えて良いブログの情報を共有できればと考えています。





「アルファブロガー」という言葉が一般化して欲しい

AMNの徳力基彦氏(左)とシックス・アパートの清田一郎氏(右)
――発表の形式は決まっているのでしょうか。

清田:まだ詳しくは決まっていませんが、5から10のブログをアルファブロガーとして選出する予定です。

――投票数は発表されるのでしょうか。

清田:ノミネートを重視するイベントで、順位を決めることに価値を置いていないので、数字を出す予定はないです。この年のアルファブロガーということではなく、今までのアルファブロガーのリストに積み重なっていくというイメージなので、1位2位を選ぶことに意味は無いと考えています。

――自由投票のブログは、投票数がわからないと投票されたこともわからないのでは。

徳力:オープンで投票されて票が多かったブログは公表してもいいと思っていますが、実際のところ自由投票では票数が非常に少ないです。ノミネートによって自由投票のモチベーションが下がっているのは事実でしょう。そこは反省点です。

清田:ただ、ノミネート以外で投票されたブログでも、何らかの形で発表できたら良いと思いますね。コメントが熱い自由投票もありますので。それはアルファブロガーというイベントの性質上、紹介してあげたいと思います。

――今の投票形式は投票しただけで終わってしまい、投票したことが相手のブログに伝わらないのでは。

徳力:そこは反省しているところで、前回まではトラックバックでの投票だったので投票することで感謝が伝わるという狙いがありました。今回は集計の関係と、スパムトラックバックが増えているということも考えてトラックバックを外したのですが、そういう仕組みはもう少し考えていきたいですね。

 一部のブログで、自分の好きなブログを紹介し、それをバトン形式で他のブログへ回していく「俺ブ(俺が好きなブログバトン)」という企画が行われていますが(※関連ブログ)、ああいった感じで投票自体は広がって欲しいですし、そこは反省点です。ですのでアルファブロガー・アワードに投票した方は、ブログをお持ちであればそのことをぜひブログで書いて欲しいと思います。

――最後に今回のイベントの見どころをお願いします。

清田:読み応えのあるブログが多くノミネートされているので、これを機に知らなかったブログを見て「こんなものがあるんだ」と楽しんで欲しい。そのついでに投票してもらえればとても嬉しいです。

徳力:ブログを書いている人だけでなく読んでいる人もふくめてみんなとやりたい企画なので、ぜひ参加して欲しいですね。

――ありがとうございました。


関連情報

URL
  アルファブロガー・アワード2007
  http://alphabloggers.com/

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(甲斐祐樹)
2007/11/26 11:29
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