高速かつ定額のPC向けデータ通信サービスに引き続き、3月28日には新たに音声サービスを開始するイー・モバイル。音声基本料無料や24時間定額など新しい要素を盛り込んだイー・モバイルの料金体系を分析した。
■ 2年契約や端末の種類で異なる初期費用
まずは初期費用から見てみよう。料金プラン自体は「ケータイプラン」の1種類しかないイー・モバイルの音声サービスだが、端末や契約状態によって実際の初期費用は6種類に分かれる。
違いの1つは利用する音声端末。スマートフォン型の「S11HT」、一般的な電話機型の「H11T」では、S11HTのほうがちょうど1万円高い料金設定になっている。
また、2年契約を条件に初期費用や月額料金を割り引く「新にねん」の適用有無でも初期費用が変化。2年契約が必要ないベーシックと比べて、初期費用で24,000円の割引となる。2年契約ということを考えると1カ月ごと1,000円が初期費用で割り引かれる計算だ。
さらに「ご加入アシストにねん」というオプションも用意。こちらは料金割引ではなく、初期費用から24,000円を引く代わり、月額料金に1,000円を加算するという、他社でも実施されている割賦に近い仕組み。費用総額は変わらないが、初期費用を抑えたいというユーザー向けのオプションだ。
このほか初期費用として、契約事務手数料2,835円が必要。これらをすべて組み合わせた初期費用は以下の通りとなる。
料金プラン |
端末 |
契約事務手数料 |
初期費用 |
合計 |
S11HTとの差額 |
ベーシックとの差額 |
ベーシック |
S11HT |
2,835円 |
67,980円 |
70,815円 |
--- |
--- |
新にねん |
43,980円 |
46,815円 |
-24,000円 |
新にねん+
ご加入アシストにねん |
19,980円 |
22,815円 |
-48,000円 |
ベーシック |
H11T |
57,980円 |
60,815円 |
-10,000円 |
--- |
新にねん |
33,980円 |
36,815円 |
-24,000円 |
新にねん+
ご加入アシストにねん |
9,980円 |
12,815円 |
-48,000円 |
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初期費用の比較 ※「ご加入アシストにねん」は2年間の月額料金が1,000円追加になる
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■ 月額料金は「引き算」で計算。「月額基本料無料」のケースは限定的
月額料金も基本的には初期費用と同じ「引き算」の感覚で捉えるとわかりやすい。2年契約のないベーシックの場合、月額料金は最低で2,000円。この中に23,825パケットの無料通信分が含まれ、パケット通信は0.042円/パケットで課金。無料通信分を超えた分は課金されるが、5,980円を上限としてそれ以上は請求しない2段階定額制となっている。
このベーシックを基本とし、2年契約の「新にねん」を適用すると、パケットの無料通信分はそのままで月額料金が1,000円割り引かれる。さらにイー・モバイルのデータ通信カードなどでもう1回線契約しているユーザーはさらに月額1,000円を割り引く「ケータイプランデータセット」によって、音声端末側の料金は0円からスタートになる。
ケータイプランデータセットの場合、音声端末の月額料金は0円からになるものの、データ通信カードの月額料金は従来通り課金されるため、支払う側としては実質0円になることはない。また、ケータイプランデータセットはベーシックにも適用できるため、実際には「新にねんとケータイプランデータセットどちらかで1,000円割り引き、両方を適用すると2,000円割り引き」と理解したほうがわかりやすいだろう。
このほかに必要な月額費用として、月額315円の「EMnet」がある。EMnetは専用のメールアドレス「***@emnet.ne.jp」や、イー・モバイル回線を利用した音声端末からのインターネット接続、コンテンツ配信サービスなどを利用するために必要なサービスで、NTTドコモのiモードといったサービスに近い。
EMnetが必要になるかどうかは端末によって異なる。スマートフォンタイプの「S11HT」は、端末でのインターネット接続およびPC接続のどちらでもEMnetは必要なく、ケータイプランのみで利用できる。これに対して音声端末タイプの「H11T」の場合、PC接続ではEMnetの契約が不要だが、音声端末でインターネット接続する場合はEMnetが必要。また、どちらの場合も専用メールアドレスを利用するにはEMnetが必要になる。
メールアドレスも備えた一般的な音声端末として利用するのであれば、EMnetの月額315円はほぼ必須のサービスと言っていい。このため、音声端末のみの料金であっても月額0円からとなるのは、データ通信カードを別途契約した上でイー・モバイルのメールアドレスを使わずにS11HTを利用する場合など、限定的な利用形態の時だけということになりそうだ。
また、初期費用から24,000円を割り引く「ご加入アシストにねん」を利用した場合、毎月の支払いに1,000円が24カ月払いで追加される。
料金プラン |
下限 |
上限 |
EMnet |
ご加入アシストにねん |
ベーシック |
2,000円 |
5,980円 |
315円 |
+1,000円 |
ベーシック+
ケータイプランデータセット |
1,000円 |
4,980円 |
新にねん |
1,000円 |
4,980円 |
新にねん+
ケータイプランデータセット |
0円 |
3,980円 |
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月額料金の比較 ※1ケータイプランデータセットは別途データ通信カードの料金が発生 ※2ご加入アシストにねん適用時は月額費用が1,000円追加
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■ 通話料金は標準では割高だが「定額パック24」適用で安価に
音声通話の料金は、ケータイプランの基本料金に無料通話分が含まれないため、宛先に関係なく18.9円/30秒が課金される。ただし、月額980円のオプションプラン「定額パック24」を契約すればイー・モバイル同士の音声通話が無料になるほか、携帯電話・PHSへの発信が9.45円/30秒、固定電話・IP電話への発信が5.25円/30秒と安くなる。
30秒18.9円という通話料金を他の携帯電話と比べると、一般的な料金プランでは最も月額料金の安いNTTドコモの「タイプSS」、auの「プランSS」、ソフトバンクの「ホワイトプラン」の30秒21円よりは安いものの、NTTドコモの「タイプM」、auの「プランM」といった一般的なプランの14.7円と比較するとやや高い。
一方「定額パック24」は携帯電話・PHSへの料金が半額となり、NTTドコモの「タイプL(10.5円)」、auの「プランL(12.6円)」よりも安い。特に固定電話向けの料金は大幅に安くなるため、職場や自宅に連絡する機会の多いユーザーには無料通話以外にもメリットがあるだろう。
キャリア |
イー・モバイル |
NTTドコモ |
au |
ソフトバンク |
プラン |
ケータイプラン |
ケータイプラン+ 定額パック24 |
SS |
S |
M |
L |
SS |
S |
M |
L |
ホワイトプラン |
固定電話 |
18.9円 |
5.25円 |
21円 |
18円 |
14円 |
10円 |
21円 |
16.8円 |
14.7円 |
12.6円 |
21円 |
携帯電話・PHS |
9.45円 |
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通話料金の比較
※1 auは「フルサポートコース」の料金を適用
※2 ソフトバンクの「ブルー」「オレンジ」はNTTドコモ、auに準じるため割愛
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■ ローミングでは定額通話不可。都心などでは地下鉄通話も対象外
通話できるエリアによっても料金が大きく異なる。北海道や東北、中部、中国、四国、九州などはNTTドコモのローミング提供を受けることでエリアをカバーしているが、ローミングを利用するには月額105円が必要。また、通話料金は「定額パック24」の契約にかかわらず22.05円/30秒、パケット料金も0.0735円/パケットとなり、定額パック24に加入していても定額通話は利用できない。利用頻度の高いエリアがイー・モバイル対象エリアなのかローミング中心となるのかによって、定額パック24契約が必要かどうかも変わってくるだろう。
ローミング中は携帯電話の画面にローミングマークが表示されるため、通話時に自分がどのエリアにいるかは確認可能。また、ローミングエリアとイー・モバイルエリアを移動する場合、ハンドオーバーは行なわれずに回線が遮断されるため、「無料通話だと思って移動していたらいつのまにか課金されていた」という事態は発生しないようになっている。
なお、東京や大阪、名古屋などイー・モバイルのエリア展開が進む地域ではローミングが行なわれないため、イー・モバイルのエリア外では一切通話ができない。地上では比較的積極的にエリアを展開しているイー・モバイルだが、地下街や地下鉄などは音声通話が完全に利用できなくなるケースも発生する。また、ローミングに対応するのは音声端末2機種のうち、東芝製の「H11T」のみで、HTC製の「S11HT」はローミング対象外。端末によっても利用できるサービスが異なる点も注意が必要だ。
■ URL
イー・モバイル
http://emobile.jp/
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(甲斐祐樹)
2008/02/26 15:13
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