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iPhoneやWindows/Macと自動でデータを同期できる「MobileMe」

 iPhone 3Gの発売に合わせ、これまでアップルが提供していたオンラインストレージ「.Mac」の後継となる「MobileMe」が7月11日に開始した。MobileMeの特徴であるプッシュ配信型のデータ共有機能を中心に、MobileMeの機能をレポートする。


カレンダーや連絡先などを複数端末でリアルタイムに同期

MobileMe
 MobileMeは、アップルが提供する有料のオンラインストレージサービス。年額9800円の基本サービスで20GBのディスク容量と「@me.com」形式の専用メールアドレスが利用でき、他のユーザーやインターネット上に公開できるオンラインアルバム機能なども搭載する。

 MobileMe最大の特徴は、メールやカレンダー、コンタクトリストといった情報をインターネット経由でリアルタイムに共有できる点にある。複数台の端末を持っている場合、1台の情報を更新するとその情報がインターネット上の「クラウド」と呼ばれるサーバーに転送され、他の端末にもリアルタイムで反映。対応端末はMacやiPhone、有料ファームウェアを適用したiPod touchといったアップル製品だけでなく、Windowsでの利用にも対応している。

 MobileMeのユーザー登録は、「http://www.me.com/」にアクセスし、ログイン画面に表示されるフリートライアルから申し込む。フリートライアルは60日間まで無料で利用可能だ。また、MobileMeは.Macの後継サービスのため、.MacのユーザーであればMobileMeを継続して利用できる。

 なお、MobileMeのURLはアップルのMobileMe紹介ページ(http://www.apple.com/jp/mobileme/)からリンクされていないため(7月15日現在)、直接MobileMeのページにアクセスする必要がある。また、ブラウザはInternet Explorerに非対応で、Firefox 2以降、Safari 3以降のブラウザが必要になる。


MobileMeのログイン画面 Internet Explorerからは利用できない

Windows、Mac、iPhone/iPod touchなど幅広い端末をサポート

WindowsではiTunes 7.7をインストールするとコントロール パネルにMobileMeのアイコンが追加
 まずは、MobileMe最大の特徴とも言えるプッシュ配信での情報共有を見てみよう。

  Windowsの場合、iTunesの最新版である「7.7」をインストールすると、コントロールパネルにMobileMeの設定が自動で追加される。あとはコントロールパネルからユーザーIDとパスワードを入力してログインし、「同期」タブから同期したいデータや同期のタイミングなどを指定すれば設定は完了だ。

 Windowsでは、同期できるサービスが複数用意されており、アドレスデータはOutlook、Windows アドレスデータ、Google Contacts、Yahoo!連絡先、ブックマークはInternet Explorerに加えてWindows版Safariと同期できる。

 このうちアドレスデータの「Windows アドレスデータ」はOutlook Express、Google ContactsはGmailのアドレス帳と同期が可能。「Yahoo!連絡先」は日本語表記ではあるものの、実際には米Yahoo!のメールサービスと同期することになるので注意が必要だ。

 Mac OSの場合は、ソフトウェア・アップデートによってMobile Meに対応。該当のMac OSアップデートを行うと、Windowsと同様設定画面にMobileMeのアイコンが表れる。

 Mac OSでは同期できる項目がWindowsに比べて豊富。ブックマークやカレンダー、アドレスデータ、メールアカウントに加え、ダッシュボードのウィジェットやDockに登録した項目、日本語入力システム、「ことえり」のユーザー辞書、環境設定やメモなども同期が可能だ。

 Windows、Macともに初めて同期を行なう場合には同期の挙動も設定でき、PCや連携サービスのデータで上書き、MobileMeに保存されているデータで上書き、両方のデータを統合するかを選択できる。最初の1回の手順を失敗するとすべてのデータが消えてしまう可能性もあるため、ここは慎重に選択しよう。


MobileMeの設定画面 初回の同期時には警告を表示。同期の内容をカスタマイズできる

Mac OSではOSのアップデートが必要 システム環境設定にMobileMeが追加される

iTunesの同期設定。MobileMeの設定が完了していると「OTA(Over The Air)でプッシュされています)」と表示される
 iPhoneとiPod touchの場合は設定がやや複雑。まずはiPhone/iPod touchをPCやMacと接続し、iTunes 7.7を起動。iPhone/iPod touchを認識したら、「情報」タブから同期したい機能にチェックを入れておく。

 次にiPhone/iPod touchの本体で設定を実施。「設定」の「メール」から「アカウントを追加」をクリックし、「MobileMe」を選択。ユーザーIDとパスワードを入力してメールの設定が完了したら、MobileMeのアカウントをタッチしてオプションから同期したい項目を選択すると、MobileMeによる同期が可能になる。


iPhoneのMobileMe設定画面。メールアドレスとパスワードのみで設定できる MobileMeのオプション画面から同期したい項目を選択

1台のデータを自動で同期。メールのプッシュ受信も対応

同期による変更点が多い場合にも警告を表示
 同期の設定が終わったら、MobileMeを設定した端末のデータを編集すると、その編集内容が他の端末のデータにもリアルタイムで情報が更新される。もちろんすべての端末がインターネットに常時接続していることが前提ではあるが、カレンダーの新規スケジュール登録や既存のスケジュール削除なども、どれか1つの端末から更新した内容をすべて自動で反映。これまでiPodなどとのデータ同期にはケーブルが必要だったが、これをワイヤレスかつまったく操作をすることなく同期できるのは非常に画期的だ。

 メールに関しても「@me.com」形式のメールアドレスはプッシュ配信に対応しているため、iPhoneではMobileMeのメールをリアルタイムに受信できる。ソフトバンクモバイルが用意している「@i.softbank.jp」の場合は通知のみで、メールの受信は自分で行う必要があるが、MobileMeであればメールを受信してから通知するために、メールを確認するまでの手間も確認できる。また、30日で削除されてしまうソフトバンクのメールに対し、大容量ディスクで半永久的にメールを保存できる点も大きな違いだ。

 特筆すべきは無線LANでもメールのプッシュ受信に対応していることだろう。無線LANでインターネットに接続した状態であれば、携帯電話機能を持たないiPod touchでもMobileMeのメールをリアルタイムに受け取れる。

 なお、iPhoneは3Gと無線LANという2つの回線に対応しており、アップルによればiPhoneでも無線LANのみでMobileMeをプッシュ受信できるとのことだったが、編集部の端末では、3G回線をオフにして無線LANのみ接続した状態でMobileMeのメールをプッシュ受信できなかった。


いずれか1台のデータを編集すると他の端末のデータも自動で変更される


メールのプッシュ受信にも対応


同期データはWebメールやWebカレンダーとしても利用できる

Webメール画面
 続いてオンラインストレージ機能を見てみよう。MobileMeのURL「http://www.me.com/」にアクセスし、ユーザーIDとパスワードを入力すると、MobileMeにログインできる。

 ログインすると最初に表示されるのがメール画面。Macの標準メールソフトである「Mail.app」を踏襲したデザインで、MobileMeのメールは送信・受信ともにすべてここに保存されている。

 オプション機能も豊富で、標準で迷惑メールフォルダフィルタを備えているほか、メールエイリアスの設定、外部POPメールの受信や受信したメールの転送機能、受信したメールへの自動返信機能などを搭載。

 大容量のWebメールという点ではGmailに近いが、MobileMeならではの同期機能に加え、スレッド型のGmailに対してフォルダ型でメールを管理できる、迷惑メール対策が標準のGmailに対して迷惑メールをオフにすることができる点などが特徴的。有料サービスだけに最大20GBという容量も魅力的だろう。

 コンタクトリストやカレンダーの同期データもオンラインで確認可能。コンタクトリストはvCard形式での読み込み・書き込みにも対応しており、携帯電話からのデータ移行にも便利。なお、Google カレンダーのiCalデータをMacのカレンダーに登録してMobileMeで共有してみたが、Google カレンダーのデータは反映されなかった。


Webメールの環境設定画面 POP受信や転送機能もサポート

コンタクトリスト カレンダー

オンラインアルバムやファイル共有機能も搭載

ギャラリー機能
 オンラインアルバムの「マイギャラリー」機能は、複数のアルバムを作成して写真を管理可能。ただし、すべてのアルバムは「http://gallery.me.com/ユーザーID/******」という形式のURLで公開され、非公開のアルバムは作成できない。設定で「ギャラリーのページでアルバムを非表示」にすると、「http://gallery.me.com/ユーザーID」の画面にアルバムが表示されなくなり、アルバムのURLを知らなければアクセスできなくはなるが、非公開アルバムではないという点を注意しておこう。

 各アルバムは他のユーザーによる写真のアップロード、ダウンロードが設定できるほか、メールによる写真アップロード機能も用意。メールアップロード機能をオンにすると、iPhoneで撮影した画像をアルバムにアップロードできるようになる。iPhoneのアップロード機能は、画像から「MobileMeへ送信」を選択し、アップロードしたいアルバムを選択すると画像を添付した新規メールを作成するというシンプルな仕組みだが、宛先を自動で設定できるだけでも入力項目が減らせて便利だ。


アルバムにはメールやアップロードで画像を登録できる 公開URLでアクセスしたところ。回転やスライドショーといった閲覧機能に加え、設定によってはファイルの追加やダウンロードも可能

iPhoneのMobileMe投稿機能 アップロードしたいアルバムを選択 投稿先のメールアドレスが設定された新規メールを作成できる

オンラインストレージの「iDisk」
 オンラインストレージの「iDisk」は、「自宅」と「Public」の2つに領域が分けられており、「自宅」にアップロードしたファイルは自分のみ、「Public」にアップロードしたファイルは「マイギャラリー」のように「http://public.me.com/ユーザーID」に公開される。

 iDiskはブラウザだけでなくWindows、Macのドライブとして割り当てることで、内蔵HDD感覚で利用することも可能。Windowsの場合はエクスプローラの「ツール」「ネットワークドライブの割り当て」を選択し、フォルダに「http://idisk.me.com/ユーザーID」と入力してから「異なるユーザー名で再接続する」を選択。その後MobileMeのユーザーIDとパスワードを入力すればネットワークドライブとして利用できる。Macの場合はシステム環境設定の「MobileMe」から設定が可能だ。

 また、Publicフォルダの公開範囲も変更が可能で、Macは「MobileMe」の設定から、Windowsもコントロールパネルの「MobileMe」から設定できる。一般公開されるPublicフォルダを閲覧のみに制限する、アップロードも許可する、パスワードでフォルダを制限するといった設定が可能だ。

 このほかiDiskには、外出先などから自宅のMacにアクセスできる「どこでも My Mac」という機能も用意されている。利用には2台以上のLeopard搭載Macが必要なために利用できるユーザーは限られるが、複数台のMacを利用するヘビーユーザーには嬉しい機能だろう。


Windowsでネットワーク ドライブとして設定できる Mac OSではMobileMeの設定からマウントできる

画期的な同期機能。ネックは年額9800円の価格設定か

 以上、同期機能を中心にMobileMeの機能をチェックした。今まではWindowsやMacとケーブルで接続する必要があった同期機能が、インターネット環境さえあれば自動で同期される仕組みは非常に画期的。また、メールサービス自体もプッシュ受信に対応しているため、iPhoneやiPod touchでのメール利用がより便利になりだろう。

 ネックとなるのはやはり年額で9800円、1カ月あたりでも約817円という価格。ただし、容量は20GBと非常に大きく、アップロードできるファイルも1ファイル最大1GBと大容量のファイルをアップロードできるなど高機能。MacやWindows、iPhoneなど複数の端末を利用しているユーザーにとっては非常に便利なサービスだろう。トライアルでは60日まで無料で利用できるため、まずはトライアルを利用してから有料サービスを利用するか判断するといいだろう。


関連情報

URL
  MobileMe紹介ページ
  http://www.apple.com/jp/mobileme/
  MobileMe
  http://www.me.com/

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(甲斐祐樹)
2008/07/15 17:55
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