Broadband Watch logo
国内ブログは1690万~総務省に聞くブログ調査の手法と実態

 総務省 情報通信政策研究所は7月2日、「ブログの実態に関する調査研究」の調査結果を公開。国内のブログ総数が約1690万、アクティブに更新を続けるブログが約300万と発表した。本調査の狙いや詳細について、情報通信政策研究所 調査研究部の佐伯千種主任研究官に伺った。





「日本はブログ世界一」との発表が調査のきっかけ

情報通信政策研究所 調査研究部の佐伯千種主任研究官
――はじめに、本調査を行ったきっかけを教えてください。

佐伯:情報通信政策研究所は、情報通信政策に関する基礎的な研究を行う調査研究機関です。毎年メディアを流通するコンテンツやネットワーク空間の拡大を定量的に図る調査などを行っており、その一環として今回はブログに着目しました。

 ブログを取り上げるきっかけとなったのは、日本のブログ記事数が世界一という米Technoratiの発表です。日本語を使う人口は世界の中でそれほど多くない中で、情報発信量が世界一というのはきわめて特殊だという印象を受けました。また、ブログ自体が消費者発進型メディアとして近年急激に発展しており、国内のブログ動向についてはきちんと調べておく必要があるのではないか、と考えました。

 ブログの調査は以前にも総務省が行っていましたが、これはブログ事業者が公表する登録者数の合計値であったことに加えて、調査自体も2006年3月で終了しています。ブロードバンドの高度利活用におけるアプリケーションという観点からも、今後ブログは発展していくメディアとして期待できることから、今回の調査を行うこととしました。

 また、今回の調査では単に数だけではなく、ブログがどういった経緯で発展してきたのかをコンテンツ量の観点から把握したいということ、そしてブログ開設者がどのようにブログを利用しているのかを把握したいという2つの目的がありました。しかし、そうした目標設定を定めた後にさまざまな有識者から「スパムブログが大量に増加していて看過できない状況にある」というご意見をいただき、調査の一環としてスパムブログについても調べることになりました。


――ブログ総数調査では20のブログサービスを対象にしたとのことですが、個人で開設しているブログなどは含まれないのでしょうか。

佐伯:今回の調査では登録者数を公表している上位20ブログをクローラー調査の対象としていますが、これは20ブログだけを調査の対象にしたのではなく、あくまでクローラーで調査する対象として選んでいます。その後クローラー調査で得られたデータを元にブログ全体の数を推計していますので、個人が開設したブログ、企業が開設したブログなども推計値として含まれています。

――具体的な調査手法を教えてください。

 初めに、登録者上位20サイトのブログサービスが提供する新着ブログ情報などから、現在も更新されているアクティブなブログを1カ月間収集します。ただしこれだけではアクティブなブログの数はわかりますが、すでに更新を止めたブログや削除されてしまったブログの数が把握できません。

 次に、収集したアクティブブログのうち最も古い記事をそのブログの開設日とみなし、アクティブブログの開設時期ごとに数と分布を調べます。こうした分布を作った上で、ブログ開設経験者のアンケート調査結果で得られたアクティブブログの現在までの更新継続率で割り戻すことで、当時開設されたブログの数を推計します。これを繰り返して全部の数字を足し上げることで、20ブログサービスを対象にしたブログ総数の推計が出てきます。

 ここまでは20ブログサービスのブログ総数ですので、次にブログ全体における20ブログサービスのシェアを調べるために、複数のPingサーバーをチェックし、その中で20ブログがどのくらいのシェアがあるかを調査します。このシェアに基づいてブログの総数を計算することで、20ブログには含まれないブログサービスや個人で開設したブログ、企業のブログなども推計に含んでいます。





国内アクティブブログは300万。幅広い世代でブログ利用が進む

国内ブログ総数は1690万、アクティブブログは300万という推計調査

アンケートによるブログ開設の動機調査
――アクティブブログが300万近いという数字について感想は。

佐伯:あくまで推計値であってこれが絶対の数字ではありません。いろいろな方々にこの数字を聞いてみても、納得と言われる方がいたり、もっと多いのではないかという方もいらっしゃいました。

 ただし、個人運営の「ブログファン」というブログが、20社くらいのブログサービスを常にチェックしてアクティブブログの数を公表しているのですが、ブログファンでもアクティブブログの数については同じような数値だったと記憶しています。それぞれ受け止め方は違うでしょうが、個人的に300万という数字は思っていた以上に多いのでは、と感じました。

――個人を対象としたアンケート調査の手法は。

佐伯:個人ユーザーのパネルを持つ企業のオンラインアンケートで、ブログの開設経験があるユーザーを対象に独自のアンケートを行いました。回答者は無作為抽出ですが、平成18年の通信利用動向調査で「情報発信を行っている」と回答した者の男女比や世代比の数値に基づき、調査結果と同じ比率になるよう男女比や年代別で抽出しています。

 アンケートではブログ開設の動機を把握するために心理学の手法を用いて「自己表現」「コミュニティ形成」「社会貢献」「収益目的」「アーカイブ」という5つのグループに分類しました。最も多いのは自己表現で、ストレス解消や自己実現といった内容も含めて、10~20代に多く見られました。

 一方、コメント機能などを使って活発な情報交換の場とする「コミュニティ形成」では、子育てや育児と言ったテーマの比率が高かったです。面白かったのは比率としては低い「社会貢献」ですが、自分の知識を発信することで社会に貢献したいという理由で、比較的40代以上の方が多くブログを使われていました。

 自分の持つ情報の整理・蓄積や趣味を目的とした「アーカイブ」では、団塊の世代から上の世代の比率が高かったです。豊富な知識や経験を持たれている方がブログを通じて良質なコンテンツを発信していくことは、ある意味でとても頼もしい将来像なのではないか、と感じました。





スパムブログは目視でチェック。記事単位では33%がスパム

スパムブログの調査結果

ブログ記事数は毎月4000万~5000万で推移
――国内のスパムブログ率は12%とのことでしたが、調査はどのように行ったのでしょうか。

佐伯:前述の20ブログサービスからアクティブブログを800ずつと、このブログサービスに含まれないブログを1100、どちらも無作為に抽出した上で、目視によるスパム判定を実施しました。

――スパムブログの具体的な判別方法は。

 まずはスパムブログを定義付けました。今回我々が定義したのは、基本的にコンテンツの体をなしていない、広告誘導やアフィリエイトのみのブログ、アダルト・出会い系のブログとしています。それらをチェックする人員ごとに判断が違わないように事前に勉強会を行い、4段階のレベル分けを行った上で数人が分担してスパムブログをチェックしていきました。

――ニフティが国内ブログの40%がスパムという調査結果を公表しています。

 我々が調査を行っている最中にちょうどその数字が発表され、「スパムはこれだけあるのか」とは思っていました。ただ、目視で行っている関係上、ブログが何らかのシステムで投稿されているのかどうかの判断は難しく、我々はすべて内容面でチェックしています。そういう意味ではスパムブログの判断として厳しい基準であり、数も少なくなる傾向にあったと思います。

 ただし、我々の発表した12%というスパムブログ率はブログの数で、ブログ記事数ベースでのスパムブログ率は33.2%あります。ニフティさんの調査もブログ記事数が対象のようですので、数字としては意外に近いのではないでしょうか。

――本調査を踏まえて、米Technoratiの「日本は世界で一番ブログが多い」という調査の数字についてはどう思われますか。

佐伯:海外は調査の対象外ですのでわかりませんが、アクティブブログの数が300万という数値を推移していることは、ブログが成熟期に入った印象を受けています。月に40~50万の新たなブログが開設され、4000万~5000万もの情報発信が行われているというのは大変な量で、1年も経てばあっという間に億単位です。日本人がブログ好き、という印象はその通りなのではないかと思います。

――調査によれば、ブログやブログ記事の総数はここ数年変化がないようです。

 新しいブログと入れ替わりながらもアクティブなブログが300万いるということは、ブログが安定期にあるのだと思います。今後アクティブブログが爆発的に増えるような印象はありませんが、300万というブログが入れ替わりながらも月に数千万もの情報を発信していく、というトレンドが続くのではないでしょうか。

 さらにこの数字が伸びる要因については今のところ思いつきませんが、ブログに変わる新たなCGMツールが登場すればまた変わってくるのかもしれないと感じています。

――ありがとうございました。


関連情報

URL
  総務省 情報通信政策研究所
  http://www.soumu.go.jp/iicp/index.html
  関連記事:ブログ記事の31%は日本語、日本では夜の投稿が多い~米Technorati[INTERNET Watch]
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/08/08/12942.html

関連記事
総務省調査、国内ブログ数は1690万。アクティブブログは約300万
「ブログの4割はスパム」を発表したニフティに聞くスパムブログの実態


(甲斐祐樹)
2008/08/12 18:00
BB Watch ホームページ
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.