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「ハマる」女性が続出。女性ユーザー率98%の「プーペガール」

 サイバーエージェントが運営するファッション特化型のコミュニティ「プーペガール」が人気だ。2007年2月のオープンから約1年半で17万人の会員を集めているだけでなく、そのうちの約98%が女性というほど女性から人気を得ている。

 さらに注目すべきは、「ハマった」ユーザーたちの多さ。ネットレイティングスの調査によれば、プーペガールのユーザーの滞在時間は3時間強/月(2008年8月)だという。プーペガールのコンセプトや今後の展開について、森永佳未代表取締役社長に話を伺った。





ファッションの写真を送るとアバターアイテムがもらえる

プーペガールの森永佳未代表取締役社長
――本日はよろしくお願いします。さっそくですがプーペガールとは、いったいどのようなサービスなのでしょうか。

森永:プーペガールは、「プーペ」と呼ばれる人形に着せ替えをして楽しむコミュニティサイトです。女の子なら誰しも小さい頃に経験があると思うのですが、お人形の着せ替え遊びと同じ感覚で、洋服やアクセサリなどプーペ用のファッションアイテムを集めたり、着替えさせたプーペをユーザー同士で見せ合って楽しめるサービスです。

――女性向けのアバターサイトということでしょうか。

森永:そうですね。ただし、特徴的なのは、ユーザーがリアルの世界で持っているファッションアイテムを写真に撮って送ると、プーペが身につけるアイテムがもらえるところです。

 たとえば自分が持っているスカートの写真をプーペガールに送ると、プーペに着せるためのワンピースやスカートなどのアイテムと、プーペガール内で使える通貨「リボン」がもらえます。プーペガールは、リアルの世界でのファッションとリンクしているサービスになっているんです。

――確かに女性同士会うとまず服装について話し始めることがありますが、自分の代わりにプーペを着替えさせて、コーディネートをほめ合うようなイメージでしょうか。

森永:そうですね、その感覚に近いと思います。


プーペガール




女の子の「かわいい」「欲しい」を重視してサイトを設計

プーペの作成画面
――私の周りでは、普段あまりインターネットを使わないような女の子でもプーペガールには夢中になっている人が多いのですが、その人気の秘密はどこにあるのでしょうか。

森永:世界観を大切にして、デザインやインターフェイスに細部にまでこだわったことだだと思っています。

 特にアバターの顔のデザインにはこだわりました。顔が「かわいい」と思えないと、絶対に使ってはもらえませんから。ユーザー登録するときにプーペの輪郭や目の形が選べるのですが、もしかしたら男の人には違いが分からないかもしれない(笑)。それぐらい細かい違いですがこだわっています。

 アイテムも細かく作り込んでいます。たとえば腕時計。とても小さいアイテムなんですが、拡大して見るとちゃんと針が現在時刻を指しているんです。ユーザーがそこに気づいた時の嬉しいサプライズが、プーペガールのファンを増やしているのではないかと思います。

――サービスの仕組みとしてこだわった点は。

森永:できるだけ購買意欲をそそるような仕掛けを用意するようアイデアを練りました。たとえば女の子って、「限定商品」に弱いじゃないですか(笑)。プーペガールには「キャサリンショップ」というアイテムが購入できる場所あって、ここではある時期しか買えないアイテムも用意しています。

 写真を送ってもらえるアイテムの中にも、手に入りやすいものと、なかなか出現しないレアなアイテムがあります。アイテムは全部で4000点ほど用意しています。

――そもそもこのプーペガール、何から着想を得たのでしょうか。

森永:もともと、女性向けのコミュニティサイトを企画していたのですが、ある社員がアメリカに出張した際、「アメリカンガール」という着せ替え人形を目にしました。この人形は、いろいろな着せ替えアイテムが売られていてアメリカの富裕層に人気があるそうです。「アメリカンガールのような着せ替え人形のコンセプトをコミュニティサイトに生かせないだろうか」というのが発想の発端になっています。

――ちなみにプーペガールは男性も利用できるのでしょうか。

森永:基本的には、女性のみです(笑)。とはいえ、こっそり使って自分のファッションアイテムを投稿しているおしゃれに敏感な男性もいるようです。ちなみに、男性のプーペのコーディネートは、理想の女性像になる傾向があるみたいですよ。(笑)





ユーザー同士の“通報”で不正利用を監視

通報機能でユーザーから不正利用の報告を集める
――運営で苦労している点は。

森永:トラブルではないですが、ユーザー数が増えたことにより、バランスが難しくなってくるところはありますね。

 たとえばキャサリンショップでは、ユーザーが少ないうちは数量限定で商品を出していました。でもユーザー数が増えるにつれてすぐに売り切れてしまう。数を増やせば、限定の価値が薄れてコアなメンバーから不満が出てしまう。そこで今では、時間限定にして「この時間内なら購入できる」というシステムに変更しました。

――ファッションとまったく関係のない写真や、自分で身につけていない洋服の写真をアップしていたらどうなるのでしょうか。

森永:アイテムもリボンも没収になります。ユーザーが増えるほどアップされる写真は増えるので、こうした画像を見つけるのはとても大変です。そこで、不正な画像を見つけたユーザーから私たちに「通報」してもらえる仕組みを作りました。

 この仕組みがうまく機能しており、ユーザーからの通報は1日数百件程度にものぼります。プーペガールの世界観を気に入って使ってくれているユーザーが多いため、自分たちでルールを守っていこうという意識があるのだと思います。





「あえて広告を出さない」戦略

「本当にファッションの好きな人に集まってもらいたかった」と森永社長
――堅調にユーザー数が伸びていますが、あまりプーペガールの広告をネット上やそのほかの媒体でも見かけません。どうやってユーザーを集めたのでしょうか。

森永:今まで集まって来たユーザーは、ほとんどが口コミとブログパーツからの流入ですね。プーペガールに登録するとプーペガールのブログパーツが作れるようになるのですが、これをブログに貼っているユーザーがかなり多く、それを見たブログの読者が気になって登録する、という循環が生まれています。

 実は広告を出してないのは敢えての戦略なんです。プーペガールの特性上、一番はじめに集まる人は、本当にファッションが好きな密度の濃い人であって欲しかったからです。

 そのため、読者モデルに紹介して口コミで広めてもらったり。もちろん、特に報酬を出していたわけではなく、プーペガールに夢中になってくれた人が、自然に広めてくれました。





全体の2割が海外ユーザー

言語設定を変更することで英語表示に対応
――プペカフェ(プーペガール内にあるTwitterのような一言サービス)を見ていると、たまに英語のメッセージが混ざっていました。海外ユーザーも多いのでしょうか。

森永:実は約2割が日本語圏外のユーザーなんです。プーペガールでは、ブラウザの言語設定を変えると、言語表示が変えられるので、日本語圏以外の方にも、使っていただきやすくなっています。細かい部分では、まだ完全に対応できていませんが、写真のコンテンツは言葉を必要としないので、海外のユーザーでもコミュニケーションが取りやすいのだと思います。

 アップした写真ごとに「ステキボタン」という投票機能が付いているのですが、ぱっと見て「かわいい」と思ったら押せる。そのハードルの低さも、うまく海外ユーザーにも受け入れられている要因だと考えています。

――2割が海外ユーザーはかなり大きな割合ですね。海外のユーザーで多いのはどの国でしょうか。

森永:英語圏がもっとも大きな割合を占めていて、次に中国語圏、スペイン語圏のユーザーが多いです。

 ほんとうに口コミだけの効果なのですが、LiveJournalというサービスにプーペガールのファンコミュニティがあったりと、海外の方にも広く使っていただいているようです。





「ファッション好きな女性のコミュニティ」を武器にビジネス展開

「目標は全世界人口の半分が利用するサービス」と語る森永社長
――プーペガールの収益は。

森永:大きく分けて広告と課金です。広告では、タイアップやバナー、コンテンツマッチ広告などですね。タイアップはすでにサンリオやコーセー、ルイ・ヴィトンなどのブランドとコラボレーションしています。そのブランドのプーペ用のオリジナルファッションアイテムを販売するといった展開を行ってきました。

 また、課金では、仮想通貨のリボンを購入してもらうことによる収入になります。今後は、季節や、トレンドに合った商品など思わず欲しくなってしまうアイテムを投入することで、平均単価を増やしていきたいとおもいます。

 ファッションが好きな人が多く集まっていることそのものが、プーペガールのメディアとしての価値なので、今後は、このメディア価値に紐付いたビジネスを展開していこうと考えています。

 いまのプーペガールのユーザーは「おしゃれに興味があり、インターネットも使いこなせる」という人たちがほとんどですが、世の中には「おしゃれに興味があるけど、インターネットはそこまで使いこなせないという人も多いです。今後はその層の方にも使っていただけるようなサービスにしていきたいと思います。

――最後に、今後の目標をお聞かせください。

森永:全世界人口の半分が利用するサービスになって欲しいですね。つまり、女性全員が(笑)。まずはFlashの部分もすべて英語対応し、海外のユーザーでもストレスなく使えるようにしていきます。そのうえで、プロモーション展開も進めていきます。

 「Ameba(アメブロ)」や「mixi」という名前は地元の友達や家族でも知っているけれど、プーペガールはまだその域には達していません。自分の母親でも知っていて使いこなせるようなサービスが当面の目標です。

――ありがとうございました。


関連情報

URL
  プーペガール
  http://pupe.jp/


(南マキ)
2008/09/22 11:45
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