「ネットブック」と呼ばれるノートPCが人気だ。5万円前後という低価格さに加え、小型ながらも両手でタイピングできるキーボードを搭載し、Webブラウジングやメール程度であれば十分な機能を有することから注目を集めている。小型かつ低価格のために一般的なノートPCに性能は劣るが、小型ゆえに持ち運びやすい点はネットブックの魅力だろう。
BB Watchではネットブックの魅力をさらに広げるブロードバンドサービスを3回に渡って特集。第1回はネットブックには標準搭載されている無線LAN機能を活かすための公衆無線LANサービス活用術を紹介する。
■ 公衆無線LANを「できるだけ安く」使いこなす
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ASUSTeK Computerのネットブック「Eee PC 901」
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BB Watchでも毎週更新でエリア情報を紹介しているように、公衆無線LANサービスのエリアは現在も着実に拡大を続けているが、一般的に普及しているとは言い難い状況だ。PHSに加えてイー・モバイルの登場で外出先のデータ通信環境が整っている、利用までの設定が難しいなどの課題は多いが、定額プランでは1000円以上もする月額料金など、コスト面も課題の1つだろう。
そこで今回は、できるだけ月額の利用料を抑えるという観点から各種公衆無線LANサービスの利用プランを紹介していく。無線LANを標準搭載し、小型で外出先にも持ち運びやすいネットブックと公衆無線LANを組み合わせることで、ネットブックをより便利に活用できるはずだ。
「月額料金を抑える」という観点で考えると、利用しない時は一切料金が発生しないのが望ましい。毎日のように外出先で利用する、というユーザーであれば月額料金も気にならないだろうが、そう頻繁に利用しないのであれば数百円であっても余計なコストは抑えたいもの。そこで今回はまず「利用しない場合は無料」を第一優先とし、次に料金の安価な定額プランを紹介していく。
■ 代表的な公衆無線LANサービス事業者 |
サービス名 |
運営事業者 |
無線LAN方式 |
アクセスポイント数 |
HOTSPOT |
NTTコミュニケーションズ |
IEEE 802.11a/b/g |
約4000 |
Mzone |
NTTドコモ |
IEEE 802.11a/b/g |
約6500 |
フレッツ・スポット |
NTT東日本 |
IEEE 802.11b/g |
約4500 |
フレッツ・スポット |
NTT西日本 |
IEEE 802.11a/b/g |
約4305 |
BBモバイルポイント |
ソフトバンクテレコム |
IEEE 802.11b |
約3500 |
livedoor Wireless |
ライブドア |
IEEE 802.11b/g |
約2200 |
FREESPOT |
FREESPOT協議会 |
IEEE 802.11b/g |
約6482 |
FON |
フォン・ジャパン |
IEEE 802.11b/g |
約4万4661 |
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※アクセスポイント数は各サービスのサイトで公表している数値に準拠 (NTT東西は2008年6月末の数値)
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■ 公衆無線LANサービス エリア拡大情報 (毎週月曜日更新)
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/wlan_ap/
■ 「ぷららライト」とMzone「日額プラン」で月額基本料金をゼロに
第1のお勧めプランは、NTTぷららが提供する月額基本料金が無料の会員「ぷららライト」。ぷららではHOTSPOTとBBモバイルポイントが1日315円で利用できる公衆無線LANプランを提供しているが、サービス開始当初はぷららライト会員が対象外となっていた。しかし、2007年12月3日からぷららライトもこの公衆無線LANプランの対象となったことで、BBモバイルポイントとHOTSPOTがそれぞれ1日315円で利用できるようになった。
月に何度も利用すると割高にはなるものの、一度も利用しなければ一切料金は必要ないのは大きなメリット。まずはぷららライトのアカウントを取得しておき、利用頻度が高くなれば定額プランの契約を検討するといいだろう。
Mzoneの「日額プラン」は日額525円で、利用しない場合はぷららライトと同様に無料。ぷららライトとMzoneの日額プランを契約すれば、月額基本料金は無料のまま、HOTSPOT、BBモバイルポイント、Mzoneのいずれも利用できる体制が整うことになる。なお、どちらも利用したいときにいきなり使えるサービスではなく、事前の申し込みに加えてIDとパスワードを手元に控えておく必要がある点に注意しよう。
プロバイダー限定ではあるが、@niftyはHOTSPOTとBBモバイルポイントを1分8.4円で利用可能。また、HOTSPOTのみだがBIGLOBE、SANNETのユーザーも1分8.4円、OCNユーザーは1分10.5円で利用できる。30分程度の利用であればぷららライトより安価に利用可能だ。
また、BBモバイルポイントは1カ月に1回だけ10分間無料で利用できる「おためしID/PWサービス」、FONは30秒程度の動画を視聴することで15分間無料で利用できる「WiF ads」というサービスを提供している。ユーザーの自宅設置がエリア展開の基本となるFONの場合、繁華街や都心部などではアクセスポイントが少ないのが難点だが、いざというときにはFONのアクセスポイントから利用できるために便利だろう。
このほか、期間限定ではあるが、HOTSPOTでは1週間無料で利用できるIDとパスワードを先着3000名にプレゼントするキャンペーンを11月14日まで実施中。メールアドレスの登録だけで取得でき、初回ログイン時から168時間利用できる。
■ ヘビーユーザー向けの安価な定額プラン
上記で紹介したサービスは、使わない時は料金が一切発生しないというメリットはあるものの、月に何回か利用する場合は料金が割高になってしまう。何度か公衆無線LANサービスを利用した上で、月に数回以上利用するサービスがあれば、今度は定額プランを低価格に契約する方法を考えたい。
まずはヨドバシカメラの「WirelessGateヨドバシオリジナルプラン」。これはBBモバイルポイントとlivedoor Wireless、成田空港Airportなどが月額380円で利用できるプラン。また、イー・モバイルをヨドバシカメラで契約したユーザーは、月額280円で利用できる。livedoor Wirelessは月額525円のサービスのため、WirelessGateを契約したほうがlivedoor Wirelesを契約するよりも安いという逆転現象が起きている。
プロバイダー限定だが、Yahoo! BBの加入者は月額304円、Yahoo! JAPANの有料サービス「Yahoo!プレミアム」加入者は月額210円でBBモバイルポイントが利用できる。WirelessGateに比べて利用できるサービスはBBモバイルポイントのみだが、わずかながら料金が安い。また、livedoor Wirelessは基本的に屋外、成田空港はその名の通り成田空港のみであり、エリアの中心となるBBモバイルポイントの利用であればどちらのプランでもそれほど違いはないかもしれない。また、Yahoo! BBで無線LANオプションを利用していればBBモバイルポイントを無料で利用できる。
HOTSPOTの場合、定額プランは基本的に1600円程度が必要だが、提携プロバイダーのプランであれば月額1470円とわずかに安価。また、唯一ウィルコムのデータ定額プランを利用しているユーザーであれば月額700円、さらにウィルコムの最高速プランを利用していればHOTSPOTが無料になる。ウィルコムユーザー限定の料金プランではあるが、HOTSPOTの定額プランではもっとも安価なプランのため、HOTSPOTのヘビーユーザーは利用を検討するといいだろう。ただし、初期費用として1500円が必要な点は注意。
Mzoneの定額プランは月額1575円と日額プラン約3回分の料金が必要だが、NTTドコモの携帯電話ユーザーであれば、ドコモ専用のISP「mopera U」が契約可能。月額525円の基本料金に加えてMzone対応のオプションプラン月額315円の合計840円で、Mzoneを定額利用できる。
なお、NTT東西のフレッツ・スポットはこうした料金プランはなく、NTT東西のフレッツユーザーで月額840円、それ以外のユーザーは月額945円が必要。ただしNTTグループではNTTBPによるアクセスポイントの共有を進めているため、MzoneやHOTSPOTと同じアクセスポイントをフレッツ・スポットで利用できるケースも多い。また、NTT西日本は早くからエリアの拡充を進めていたこともあり、独自の展開エリアも充実。NTT東西の合計アクセスポイント数もFONやFREESPOTなど特殊な事業形態を除けば最も多い。PPPoE接続やMACアドレスなどが必要な点に課題は残るが、公衆無線LANのヘビーユーザーであれば契約を検討したいプランだ。
■ 事前申し込み不要で使える公衆無線LANプランも
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BBモバイルポイントの利用権が購入できる「Famiポート」
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これまで紹介してきたプランは、いずれも事前の申し込みや設定を行わなければ利用できない。しかし、事前申し込みなどを一切していないがインターネットに接続したい! という場合もあるだろう。そういう時にお勧めなのが、HOTSPOTの「1DAY PASSPORT」とファミリーマートのキオスク端末「Famiポート」だ。
HOTSPOTの1DAY PASSPORTは、1日500円とぷららライトよりも割高だが、事前申し込みの必要が無く、携帯電話から購入できる。また、FamiポートではHOTSPOTの1DAY PASSPORTに加えてBBモバイルポイントを1日利用できる1Dayが500円、2週間が1000円、3カ月が4000円で購入できる。このほか前述したBBモバイルポイントの「おためしID/PWサービス」FONの「WiFi ads」なども、時間制限はあるものの利用には便利だろう。
屋外が中心のlivedoor Wirelessは、ブログやニュースなどライブドアが提供するサービスであれば、アクセスポイントに接続するだけで無料で利用可能なほか、無料サービスから有料のインターネット接続に申し込むこともできる。ただし、livedoor Wirelessの無料サービスはSSIDを指定するだけで接続できる暗号化されていない通信であることは注意しておこう。
■ 外出時に便利な携帯電話向けの公衆無線LANエリア検索
公衆無線LANの活用には、料金プランに加えて公衆無線LANサービスのエリア検索サービスも重要なポイント。いくら事前に公衆無線LANの準備をしていても、公衆無線LANのエリアがどこにあるのかがわからなければ意味がない。携帯電話からエリアを確認できるサービスは、公衆無線LANの活用に必須といっていいだろう。
一番のお勧めは、IRIコマース&テクノロジーが運営する「dokoyo.jp」だ。HOTSPOT、BBモバイルポイント、Mzone、フレッツ・スポット、FREESPOTと多くの公衆無線LANサービスを横断検索できるだけでなく、NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイル、ウィルコムの携帯電話端末にも対応。GPSなどの位置情報にも対応しているため、付近の公衆無線LANサービスも検索できる。
また、公衆無線LANサービスの事業者もそれぞれに携帯電話向けのサービスを提供している。定額プランなどに加入している場合であれば、加入しているサービスを中心に探すのも良いだろう。
最後にこれまで紹介した各種プランを表形式でまとめておく。これらのサービスを活用することで、公衆無線LANサービスをより便利に使いこなして欲しい。
サービス名 |
一時利用 |
定額プラン(月額) |
プロバイダー依存なし |
プロバイダー依存 |
プロバイダー依存なし |
プロバイダー依存 |
HOTSPOT |
ぷららライト |
1日315円 |
@nifty |
1分8.4円 |
1680円 |
ウィルコム
(データ通信プラン) |
700円 |
BIGLOBE |
SANNET |
ウィルコム
(データ通信[PRO]プラン) |
無料 |
OCN |
1分10.5円 |
BBモバイルポイント |
ぷららライト |
1日315円 |
@nifty |
1分8.4円 |
Wireless Gateヨドバシプラン |
380円 |
Wireless Gateヨドバシプラン
(要イー・モバイル契約) |
280円 |
Yahoo! BB |
304円 |
Yahoo! BB
無線LANオプション |
無料 |
Yahoo!プレミアム |
210円 |
Mzone |
日額プラン |
1日525円 |
--- |
1575円 |
NTTドコモ |
840円 |
フレッツ・スポット |
--- |
945円 |
NTT東西フレッツ |
840円 |
livedoor Wireless |
--- |
525円 |
■ URL
Impress Watch ネットブック/UMPC特集
http://www.watch.impress.co.jp/headline/extra/2008/netbook-umpc/
(甲斐祐樹)
2008/10/15 11:07
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