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「ネットを通じて、プロとアマの垣根を取り払いたい」
-「e+WEBオープンシステム」「e+エンタメ市場」をはじめたe+に聞く

(左から)新サービス立ち上げを担当した新規事業開発プロジェクトの中野氏と服部氏、柴田氏
 「e+WEBオープンシステム」は、「e+(イープラス)」を運営するエンタテインメントプラスが2008年11月に開始した新たなチケット販売システム。インディーズバンドやアマチュアアーティストなどの公演を対象に、e+でのチケット販売を可能とするシステムだ。

 e+は、「チケットセゾン」を前身として、ソニーグループとセゾングループが共同設立したエンタテインメントプラスが2000年3月にスタートしたチケット販売サイト。その後、携帯電話版サイトも開設し、現在の会員数は700万人、年間取り扱い公演数は3万件に及ぶという。

 2008年11月に開始した「e+WEBオープンシステム」は、これまでイベント企画会社やプロモーターなどを介した販売方法とは異なり、インディーズバンドやアマチュアアーティストが公演情報を直接登録してチケット販売を委託できるのが特徴だ。システム利用料は1公演1万500円からで、従来のプロ向けプランと比べて4分の1程度の料金に抑えられているという(販売手数料などは別途発生)。また、2009年1月にはインディーズバンドやアマチュアアーティストの支援サイト「e+エンタメ市場」も開設している。

 今回、新サービスの立ち上げに携わった新規事業開発プロジェクトの中野拓人部長と、服部睦部長に話を聞いた。





ネットを通じて、プロとアマの垣根が取り払われつつある

「e+WEBオープンシステム」プロモーションサイト
――本日はよろしくお願いします。最初に「e+WEBオープンシステム」を開始した経緯を教えてください。

中野:インターネットの普及によって、ブログやホームページを通じてアーティスト自らが発表できる場が増加しました。こうしたネットの力によって、これまであったメジャーとインディーズの垣根が取り払われつつあると感じています。

 一方で、e+のようなプレイガイド側でチケット販売を支援する仕組みがあったかというと、そうではありません。例えば、チケットを委託するにも当社に来社してもらう必要や、販売にあたって相応の料金も発生します。

 そこでコストをなるべく低くして、より多くの方に利用してもらえる仕組みをと考えたのが、今回の「e+WEBオープンシステム」になります。

――「e+WEBオープンシステム」の利用方法や提供プランは。

服部:アカウント開設にあたって、まず最初に登録手続きが必要になります。その上で、申請内容を審査して、問題がなければ1週間程度で公演情報が登録できるようになります。なお、法人や明らかにプロユースの場合には、プロプランの利用を案内することもあります。

 提供プランは、「ライトプラン」と「スタンダートプラン」の2種類です。ライトプランは、整理番号または自由席の販売形態に限られますが、1万500円から利用できるのが特徴です。一方、スタンダートプランは、先行販売サービス「プレオーダー」や割引販売する「得チケ」をはじめ、プロ向けプランと同様にe+の全機能が利用できるプランです。


公演情報登録画面。これらはプロ向けプランと同一になる
――プロ向けプランとのシステム差異や低コスト化の理由は。

服部:「e+WEBオープンシステム」の開発に着手したのは2008年1月からになりますが、基本的なシステムは従来からあるプロ向けプランと同様です。

 低コスト化の理由としては、1つに公演情報の登録作業があります。プロ向けプランでは入力作業の代行で3~4万円の費用が発生します。一方、「e+WEBオープンシステム」ではアーティスト自身に作業してもらうことで費用の削減が可能になっています。

 公演情報の登録自体は、インターネット環境があればどこからでも可能です。情報は一問一答式で進められ、写真やYouTube動画の登録も行えます。内容自体は随時更新も可能で、アーティスト自らメッセージを伝えられるメリットもあると考えています。

中野:e+のWebサイト上で掲載される公演情報は、プロアマの区別なく表示されます。先ほど申し上げたようにプロとアマの垣根が低くなっていますし、プロと遜色のない面白い公演が揃っていると思います。


公演名から順に会場、公演日時情報を登録していく 「イケメン出演」「出演者がみんな10代」などの設定も可能




500団体、約1000公演が掲載済み。2009年は1万公演が目標

公演チラシに加えて、YouTube動画も設定できる

公演情報の作成例。ページ上でYouTube動画の視聴が可能となっている
――2008年11月のサービス開始から反響は。

服部:2009年1月末の段階で、個人を含めて500団体ほど、公演数は約1000件の登録があり、まずまずのスタートが切れました。ジャンルとしては、ポピュラー音楽が多く、その次にクラシック音楽、演劇が続いています。2009年の年間目標としては、「e+WEBオープンシステム」単体で1万件の公演取り扱いを目指しています。

――公演情報にYouTube動画の貼り付けに対応した理由は。

服部:e+に動画をアップロードしてもらうには、アーティスト側に別途作業が発生してしまう上、こちら側でもインフラ面を整備する必要があります。一方、すでにYouTubeに投稿している動画を利用するのであれば、こうした障壁もなくリンクを貼るだけで完了できます。

中野:YouTubeなど動画共有サービスに投稿された動画を見ていると、非常にクオリティが高く、興味を持たせてくれる内容が多いです。中にはプロによるビデオクリップに遜色がない動画もあります。

――「MySpace」と公式パートナーとして提携されました。

中野:現時点ではアーティスト支援のチケット販売面での提携になります。やはり9万組以上のアーティストを登録している点に魅力を感じており、このうち1割程度のアーティストが使ってもらえればとの思いを持っています。

――MySpace、YouTube以外にネットサービスとの提携は。

中野:サービスを提供する各社との話し合いによりますが、目指す方向が同じであれば前向きに協力していきたいですね。





アーティストを支援する「e+エンタメ市場」も開設

インディーズやアマチュア支援を目的とした「e+エンタメ市場」
――1月に開始した「e+エンタメ市場」について教えてください。

中野:「e+WEBオープンシステム」の登録アーティストを対象に、公演情報などを紹介するプロモーションサイトになります。e+がピックアップしたアーティストの紹介コーナーや動画の視聴ランキングを掲載しています。

 ご覧いただけるとわかると思いますが、ジャンルにとらわれずに注目の集める公演を紹介しているのが特徴です。例えば、プロパーカッショニストのスティーヴ・エトウさんに加え、姉妹による連弾ピアノデュオ「中村姉妹」、アニメ・ゲーム楽曲をピアノなどで演奏する「AnimeSongコンサート2009」が現在人気を集めています。

服部:動画やフライヤー(公演チラシ)などを見ていると、それぞれのアーティストに個性があるのがわかります。我々にとっても今まで知らなかったアーティストとの出会いがあり、新たな発見につながっていますね。

――今後のサービス拡充策や「e+エンタメ市場」のそれ以外の特徴について。

中野:1度公演登録したアーティスト情報に関しては、継続してe+に情報として登録されます。例えば、現在3万組のアーティスト情報が登録してあり、ユーザーの嗜好に応じてメールマガジンを送付していますが、将来的にはインディーズやアマチュアアーティストにも対象を広げていきます。

 「e+エンタメ市場」ではそれ以外にも、約5000件の会場情報を登録した「会場検索・会場情報コーナー」も用意しています。東京ドームなどはもちろん、変わったところでは東京池上本門寺も登録されており、各ページではアクセス方法や公演カレンダーの確認も可能です。単独コンテンツとしても人気を集めていて、2週間で約25万ページビュー(PV)のアクセスがありました。


会場検索は2週間で約25万PVのアクセスがあったという 東京池上本門寺などの情報も収録している




チケット委託にとどまらない、エンタメサイトを目指したい

e+トップページでもスペースを取って告知を行っている
――チケット販売面で言えば、手売りの方が利益が高いと思いますが。

中野:「e+WEBオープンシステム」は、単にチケット販売システムの提供だけで完結するサービスではありません。それは「e+エンタメ市場」を開設したようにエンタテインメントサイトとしてのメリットも考えています。それにより、手売りや直販では得られなかったプラスアルファの出会いを通じて、アーティストの支援が可能になると思っています。

 このため、公演情報登録時には「元気が出る」「イケメン」や「超絶技巧」「アラサー(30歳前後)におすすめ」などといった検索キーワード設定が可能で、買い手側にも新たな出会いを感じてもらえるような仕掛けを用意しました。

服部:単にチケットを販売するシステムを利用したいのであれば、e+はもちろんですが、お金を払えば他社さんのシステムも利用できます。しかし、今回のサービスではアーティストを支援するのを1番に据え、700万人のe+会員に公演を知ってもらうメリットがあるとも考えています。

――最後に今後の予定や抱負などを教えてください。

服部:e+全体を通じて、エンタテインメントのポータルサイトを目指せればと考えています。単に人気バンドのチケットを買うためだけのチケット販売サイトではなく、「週末におもしろいこと何かないかな」と思ってアクセスしてもらえるサイトになれればと思います。

 また、PC版では20代後半から30代前半、携帯電話版では10代後半から20代前半の利用が多く、それぞれのユーザー層に向けた仕掛けも準備していくつもりです。

中野:インディーズバンドやアマチュアアーティストの方たちがさらに上のステージにランクアップできるようなイベントの開催を考えています。こうしたイベントを通じて、より大きく、ビッグになってもらえればと思い、最終的にe+を継続して使ってもらうなど双方にメリットが生まれれば最良です。

 もちろん、インディーズと一口に言ってもプロやセミプロである方も少なくありません。アマチュアの方でも息長く活動されている方もおり、そうした方々を分け隔てなく応援していき、面白い公演をどんどん紹介していきたいですね。

――ありがとうございました。


関連情報

URL
  e+WEBオープンシステム
  http://eplus.jp/open/
  e+エンタメ市場
  http://eplus.jp/ichiba/
  e+
  http://eplus.jp/

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(村松健至)
2009/02/25 11:23
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