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プロバイダーを問わないIP電話サービス「livedoor SIP フォン」

 先頃、エッジが発売したIP電話端末「livedoor SIPフォン」は、インターネット網を介して電話の発着信が可能なサービスだ。ユーザー同士は無料なほか、追加料金を支払うことで固定電話や携帯電話とも通話できる。この端末を実際に購入、使用感などをお伝えする。





回線やプロバイダーと切り離されたIP電話サービス

livedoor SIP フォン

背面はイーサネットのポートのみ。電話回線は必要ない
 livedoor SIP フォンは、エッジが販売する専用端末を利用した電話サービスだ。端末を購入するだけでユーザー同士は無料で通話できるほか、初期費用や月額料金を追加して支払うことで、固定電話へは3分7.5円、携帯電話へは1分20円で通話できる(編集部注:2004年1月23日現在、公衆網接続サービスは受付を中止している)。着信については、ユーザーごとに割り当てた電話番号をエッジのゲートウェイで管理、着信を受けた際にインターネット経由でユーザーへ転送する仕組みを採用しているという。

 この製品について画期的といえるのは、プロバイダーと切り離されている点にある。電話機そのものに番号が割り振られているため、インターネットに接続されている環境にあれば、プロバイダーや回線の種類を問わない。つまり、自宅で使おうが、会社で使おうが、アメリカで使おうが、また、Yahoo! BBの回線で使おうが、Bフレッツで使おうが、番号も使い勝手も全く変わることがない。イーサネットという「口」さえあれば、どこでも同じ番号が利用できるのである。

 日本におけるIP電話に関しては、現在トップシェアを誇るYahoo! BBのBBフォンをはじめ、プロバイダーの付加サービスとして提供されている。インターネット接続サービスだけの提供では、他社のサービスが安価だったり、サービスに不満があれば、ほかのプロバイダーへ乗り換えるユーザーも多い。また、数カ月の無料キャンペーンを打ち出すプロバイダーも多く、中には無料キャンペーンを渡り歩くユーザーもいると聞く。こういった厳しい競争の中で、各事業者は、IP電話サービスを提供し、さらに050の番号を割り当てることで、ユーザーに継続して利用してもらえるようなサービスを考えているのだろう。

 こういったIP電話サービスは、決済がプロバイダーでワンストップでできるといったメリットの反面、IP電話サービスに不満はないがプロバイダーを変更したいという場合に、IP電話の番号まで変えなければならなくなるというデメリットがあるのも事実。携帯電話業界で今、懸案となっているナンバーポータビリティもまったく同じところから生まれた話で、同じ番号のまま他社に移行できる環境が整っていないため、「番号が変わりたくないから、契約している事業者を変えられない」といった現象が起こるわけだ。つまり、IP電話、言い換えれば050番号に依存するようになればなるほど、ユーザーが事業者側に囲い込まれる結果となる。

 そういった意味で、回線をまったく選ばないSIPフォンは個人ユーザーに回線を選択する自由、IP電話サービスを移動できる自由が与えており、この点は非常に高く評価できる。





音質は問題なし

livedoor SIP フォンのパッケージ
 それでは実際にlivedoor SIP フォンを使用してみよう。パッケージは、電話機本体、受話器、ACアダプタ、保証書、導入マニュアルと応用マニュアルの3枚のペラ紙とかなりシンプルな構成だ。本体を購入しただけでは、livedoor SIP フォン同士の通話しかできず、一般固定電話や携帯電話との発着信は公衆網接続サービスの契約が必要となる。

 なお、届いたばかりの製品は、時計が米国時間に合わせて設定されていたほか、「Grandstream Networks」のロゴマークも入っていた。Grandstream NetworksのWebサイトにも同製品が紹介されていたので、おそらくこの会社の製品を輸入しているのだろう。

 公衆網接続サービスは初期設定料として申し込み時に1,480円のほか、月額の基本料金が370円かかる。通話料は国内が一律3分7.5円、携帯電話が1分20円、アメリカ本土が1分8円。サービスの申し込みはWeb上で可能で、公衆網着信用の番号として「03-xxxx-xxxx」の番号が割り当てられていた(編集部注:エッジによれば公衆網接続サービスは現在試験サービス中であり、正式サービス時には「050」から始まる番号を割り当てる予定だという)。なお、くどいようだが、livedoor SIP フォンの使用は場所を問わない。詳しくは後述するが、海外に持って行っても、国際電話扱いではなく、国内通話扱いとして03番号で着信可能だった。なお、発信の際の電話番号は非通知に設定されている。

 音質については筆者の主観やインターネット接続の品質などで左右されるだろうが、通常の固定電話の音声通話と比べるとやや音が曇ったように感じるが、携帯電話よりは上だと思われた。やや高域の音がカットされるように感じるが、ノイズが入ることもなく、実用上は問題ないといえる。ダイヤルしてから接続までの時間が固定電話に比べると若干長かったが、我慢できないほどではなかった。





若干のトラブルもファームウェアアップで解決

 livedoor SIP フォンの03番号に発信時、livedoor SIP フォンが接続されていない場合、またはネットワークトラブルで着信できない場合は、エッジの留守番サービスセンターに接続され、発信者の音声メモが録音できる。録音メモはエッジのサーバーにWAV形式で保存され、ユーザーはSIPフォン購入時に割り当てられたメールアカウントを使用して、録音メモを取得する仕組みになっている。

 購入当初、きちんと接続しているのにもかかわらず、留守番電話サービスに接続されてしまうトラブルが頻繁に発生したが、電源再投入によるファームウェアのバージョンアップで解決。大事には至らなかった。





海外から東京への通話も「03」番号で利用可能

2004 International CESの開催地ラスベガスからも利用できた。腕時計は現地時間、電話機はサーバーから取得した日本時間
 ちなみに筆者は1月上旬、2004 International Consumer Electoronics Show(CES)の取材のため、米国ラスベガスに10日ほど滞在した。その際にこのlivedoor SIP フォンを持ち込み、プレスルームのLANポートに接続して使用したのだが、まったく問題なく海外でも普通に03番号で着信、国際電話番号(日本ならば81)を付けずに発信可能だった。アメリカにいながらにして「東京03」で着信する、これまでの常識を打ち破るような現象だ。

 原理的には、インターネット経由でエッジの用意するゲートウェイまでたどり着けば、03の場所から電話しているのと同じことになるわけだから、固定電話への通話料は3分7.5円になる。当然といえば当然だが、銅線や交換機ベースの電話サービスなら、銅線自体の技術革新がなされ、コストダウンが進んでも同じことは実現できない、まさにIPならではの技術だ。

 実際に持ち出してみてわかったのだが、体積はやはり普通の電話と同じ形なのでそれなりに取るが、重量はさほどでもなく、スーツケースに入れてしまえば気にならなかった。海外出張の多い人や、そもそも海外に在住している人にはお勧めできる。

 もちろん、livedoor SIP フォンを2台購入、その1つを実家に置いて専用ホットライン、というのもいいが、1台だけ購入しても通話料は3分7.5円。おまけに初期費用は12,100円(編集部注:2004年1月23日現在、端末の標準価格はサービス発表時の9,800円から12,100円に値上げされている)と公衆網接続サービスの初期設定料のみ。あとはイーサネットが使える環境があれば月額380円で済む。それを考えると、非常にお得感のあるサービスではないだろうか。





製品、サービスとしての不安

livedoor SIP フォンのマニュアル類
 続いて、livedoor SIP フォンを利用して気になった点を挙げていこう。全体的に感じられたのは「不親切」ということだ。サービスに対するエッジの姿勢に不安を感じずにはいられない。

 まずはマニュアルだが、プリンタで印刷されたような2枚のマニュアルが同梱されているのみだ。内容も「初期導入マニュアル」に相当するもので、設置方法、ボタン名称とおおまかな役割程度の情報しか書かれていない。設定項目の細かい情報や、企業などで利用する場合は特に重要となるポート周りの設定の情報についてはまったく触れられていないのだ。

 たしかに、これらの情報はWebサイトに掲載されてはいる。しかし、せめて、DHCPのオン・オフやサブネットマスク、ゲートウェイの設定などを行なうといったこの機器を使用する上で重要な役割を果たす部分の説明を記したマニュアルくらいは必要なのではないかと思う。

 また、電話機そのものも、まったく日本語化の作業が施されておらず、設定項目などはすべて英語。情報を網羅したマニュアルがあるならばともかく、数枚のマニュアルとローカライズされていない電話機、となると、とてもじゃないが電話機という「家電」としては評価するのは難しい。感覚的にはバルク物のPC周辺機器のような印象だ。

 そのほかにも、不透明な点が多い。1年間の無償修理保証こそあるものの、保証期間後に関しては明記されておらず、サポートセンターに問い合わせなければならない。また、ハードウェアが壊れて新しい物を買う場合、公衆網接続サービスで取得した番号を維持できるのかなども明記されておらず、「通信事業者としてのサービス」にも不安を感じる。電話番号は簡単に事業者の都合で変えられては困るものだし、livedoor SIP フォンで取得した番号の利用価値を高めるためにも、FAQ(よくある質問とその答え)や、マニュアルでキチンと説明しておくべきだろう。





アダプタ型の製品が欲しい!

 最後に、個人的な要望を1つ挙げてみたい。それは、アダプタの製品化だ。前述のように、電話機としてこのままの体裁では、なかなか一般的なユーザーに勧められない。BBフォンの魅力は使い慣れた、現在ある電話機をそのまま使えることにあった、ということを考えて欲しいのだ。

 アダプタ型の製品は、米国のhttp://www.sipphone.com/で販売されているようだが、そこから購入したとて、日本で03番号を取得できるわけではない。アダプタ形状のものに番号を割り当て、そこに接続した一般の電話機で使う、このようなスタイルが1番スマートのように思う。これができればユーザー側は、使い勝手が磨かれている国内メーカーの製品で、違和感なくIP電話のメリットを享受できるし、ライブドア側も、電話機のマニュアルやサポート作りに苦心せずに済む。

 ビジネスモデルとして、通信料で稼ぐのか、ハードウェア販売で稼ぐのか、そのあたりの判断になるのだろうが、ユーザーとしては電話機の選択が自由であるほうがメリットは大きいだろう。エッジからは同サービス向けの携帯型端末「livedoor SIP フォン モバイル」も発表されているが、今後はぜひアダプタを利用したサービスを期待したいところだ。


関連情報

URL
  livedoor SIPフォン
  http://sipphone.livedoor.com/

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(伊藤大地)
2004/01/23 18:21
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