ユーザー間で疑問や相談をやり取りできる知識検索サービス「Yahoo!知恵袋」の質問・回答総数が、このほど2,000万件を突破した。気になる豆知識からニュース解説まで、さまざまなジャンルの投稿が集まるこのサービスについて、ヤフーの担当者に開発の狙いを伺った。
■ 2004年4月にベータ版として開始。約1年で投稿総数が2,000万件に
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Yahoo!知恵袋
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Yahoo!知恵袋は2004月にベータ版としてスタート。Yahoo! JAPAN IDを取得し、ガイドラインへの同意確認を行なえば無料で利用できるサービスだ。自分で質問を投稿したり、他の人への質問へ回答したりというコミュニティが参加ユーザー間で形成されている。
サービス開始から1周年を迎えた現在では、1つの質問に対して平均4件の回答が寄せられており、1日あたりの回答数も平均6万件程度と、従来から1.2~1.3倍の数に伸びているという。質問を公開してから最初の回答がつくまでの時間も、数10分程度で回答が寄せられるケースが増えており、プロモーションなども特段行なっていないが、新規利用者が毎日1,000人程度増え続けている。岡本氏は「サービスが普及段階にあり、ユーザーに使いこなせてもらえるようになった結果では」と自信を見せる。
さらに今年5月には、質問と回答の投稿総数が2,000万件を突破。岡本氏は「競合するサービスと比較しても、数の面で圧倒的な優位を得られた」と話す。ただし、こういったユーザーの情報交換によるコミュニティでは、数の多さがサービスの良さにつながるとは言い切れない面もある。岡本氏もその点は理解しており、「ただ数が多いだけでは、という意見もあるかもしれない」と前置いた上で、もう1つのデータである「解決済の質問の多さ」をアピールした。
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(右から)ヤフー株式会社 リスティング事業部 検索企画室 Yahoo!知恵袋プロジェクトリーダーの岡本真氏と、同事業部技術の門川百合子氏
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「(Yahoo!知恵袋では)質問の投稿者が、寄せられた回答の中から特に役に立った回答を『ベストアンサー』として1つだけ設定する機能があるが、この設定数も200万件に達した。Yahoo!知恵袋のサービスに満足してもらえた人が恐らく数10万人単位で存在することになり、この数字を1年で達成できた事の価値は大きい(岡本氏)」。
質問・回答数以外の特徴として岡本氏が挙げたのが、Yahoo! JAPANの他サービスとの連携だ。「Yahoo! JAPANでは、あらゆるサービスにおいて個々に独立性を高めていくよりも、できるだけYahoo! JAPANのサービス間で連携し、Yahoo! JAPANに来ればいろいろなことが解決できるようにしたい(岡本氏)」。
この考えのもと、Yahoo! JAPANの検索サービスで検索結果が0件だった場合、検索結果のページでYahoo!知恵袋を紹介することで、検索結果が見つからないユーザーのYahoo!知恵袋への誘導を図る。また、Yahoo!オークションの初心者向けコーナーにも、オークションの使い方がわからないというユーザーのためにYahoo!知恵袋のリンクを用意。「Yahoo!知恵袋で質問したのち、安心して取り引きを続けられれば(岡本氏)」。
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Yahoo! JAPANで検索結果が0件だった場合、画面にはYahoo!知恵袋が案内される
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■ 「質問することの恥ずかしさ」を解消したい
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開発コンセプトの説明を行なった岡本氏
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1年間で大きな成長を遂げたYahoo!知恵袋だが、その開発コンセプトとはどんなものなのだろうか。その答えとして岡本氏は「まだまだWeb検索だけではすべてを解決できない」ことを第一にあげた。「より細かな検索を行なうためには、キーワードの選定はもちろん、“and”や“or”オプションというテクニックを知らなければならない。インターネットの利用者全体から見ると、それはまだまだ難しく、テレビのチャンネルを変えるほど簡単ではない」という事情を説明する。
対してYahoo!知恵袋は、「日常生活の中でよくある『身近な人へのちょっとした質問』を、インターネットの技術を活用して行なえないか」という考えが原点としてあるという。「わからない事をキーワード化して検索するのではなく、そのまま文章にして投稿してもらえば」と、特にパソコン初心者に使ってもらいたいと話す。
初心者へ配慮は、仕様面でも実施されている。「気になった事をすぐ文字にして投稿できるように(岡本氏)」と、投稿内容を確認させるための画面なども極力減らした。また気軽に利用してもらえるよう、投稿時に「IDの非公開」というオプションを選択すれば、匿名で質問・回答することも可能になっている。
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Yahoo!知恵袋の「役に立つ質問」コーナー
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岡本氏がインタビューの中で度々触れたのが、「質問することの恥ずかしさ」を解消したいという狙いだ。
インターネットの掲示板などでは、初心者が質問した場合に、「FAQを読んでから投稿せよ」「自分で検索しろ」「過去ログ読め」などの言葉が浴びせられるケースも少なくない。岡本氏が「『質問することで恥をかいてしまうのでは』という感情を、少しでも減らせれば」「学校での授業のように、緊張しながら質問するような雰囲気にはしたくない」と話しているように、Yahoo!知恵袋は“今さら聞くまでもない質問”でも積極的に投稿して欲しいというスタンスを取っている。
4月に実施した利用者アンケートの結果では、初心者ユーザーが全体の6~7割、女性利用者が約半数を占めたという。自発的に回答する形式のため、アンケート結果がそのまま正確なユーザー分布とはならない可能性はあるが、岡本氏が願う「堅苦しくなく、肩ひじ張らずに気軽に質問できる場にしたい」という目的はおおむね達成されていると言えそうだ。
ほかにもサイト上では、有益な情報源を求めているユーザーにも満足してもらえるよう、「役に立つ質問」のページを設けている。これまでの質問・回答の中から便利なもの・質の高いものをリストアップする。
ここには「カクテキとはなんですか?」「冷や麦と素麺の違いって?」といったトリビア的な質問や豆知識といった類の情報が勢揃いする。また面白い点として「マスコミが報道する季節感よりも、半歩先を行った話題がやりとりされている」と岡本氏が話すように、5月の現在でもすでに夏の話題が増えつつある。ほかにも急激に有名になったタレントの話題が数カ月前から交わされているなど、ユーザーによる口コミ、目の早さを実感できるという。
■ 巨大サービスゆえの課題も
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質問の右上には「違反質問・回答の連絡」機能を用意
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1年間の投稿総数が2,000万件超と大きく成長したサービスだが、その一方で運営の課題も多い。その筆頭は“書き込みの荒れ”だ。岡本氏は「(Yahoo! JAPAN自体が)日本のインターネットユーザーの大多数が利用するサイトだけに、上級者と初心者がぶつかってしまう面があるのだろう」と分析する。
また、サービスの妨害など、完全な悪意を持って不快・不正な書き込みを行なうユーザーも存在するため、ガイドライン違反となる投稿については積極的に削除している。具体的な数値は明らかにしなかったが、「1日に寄せられる投稿のうち、約1割近く」を削除していると岡本氏は話す。また、質問・回答欄にはほかにも不快な書き込みを発見したユーザーからの通報を受け付ける機能も用意、寄せられた通報にはすべて目を通した上で対処を行なっている。
巨大サービスゆえの構造的課題もある。総投稿数約2,000万件の中で、質問の数は500万件前後。そのうち200万件は満足のいく質問として回答を締め切られたが、残る300万件は未解決の質問になって放置されている状態だ。
これらの原因は、質問が難解なために回答者が存在しない、もしくは回答が寄せられているにもかわからず、質問者が投稿の締め切り作業(ベストアンサーの設定)を行なっていないことが考えられる。
この状況について岡本氏は「難しい問題ではあるが」と前置いた上で、基本的には静観の構えを見せる。「例えば『回答が1件でも寄せられたら、ベストアンサーをかならず設定すべき』としてしまうと、初心者にとっての気軽さが失われてしまう。まずは気軽に質問してもらうことが重要」と岡本氏は話しており、「質問者でも回答者でもない第三者に無理矢理ベストアンサーを決定させたくもない。あくまでも質問者の主観で判断してもらいたい」とも付け加えている。
これらの前提にあるのが「できるだけ(投稿上の)ルールを作りたくない」という岡本氏の考えだ。一部の悪意あるユーザーへの禁止や制限をむやみに設けるよりは、大多数の優良ユーザーに自由に使ってもらい、それによって得られる感動や興奮をむしろ重視したいと説明する。
ただし「せっかく頑張って回答を寄せたユーザーが報われない」点については考慮しており、将来的に予定している正式版のシステム上で対策を講じたいとしている。またベストアンサーの設定をし忘れている質問者に対して、設定を促すよう通知する仕様も盛り込みたいという。
■ 年内には正式版を予定。ブックマークやモバイル対応などが計画中
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門川氏は現場での開発を担当。正式版発表に向けて帰宅の遅い日々が続くという
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正式版については少しずつ準備が進められており、定期的に実施するアンケートやユーザーから日常的に寄せられる要望の中で多いものについては、基本的に正式版での実装を目指していると明かす。
これまでの集計の中でユーザーからの要望が多かったのが、ブックマーク的な機能だ。どのような回答がつくか気になる質問を指定しておけば、後から自由にチェックが可能になるというもので、正式版での実装が固まっているという。
新機能としてはほかにもメールを用いた各種の告知機能やモバイル対応も計画されている。いずれも実現の時期は未定だが、「そう遠くないうち(岡本氏)」に公開を目指す考えだ。
RSS配信についてはどうだろうか。これについて岡本氏は「Yahoo!知恵袋が初心者向けサービスであるのに対し、RSSは上級者向けの機能と考えられる。もちろんあるに越したことはないので、引き続きユーザーからの利用意向を確認していきたい」と慎重だ。
また「貢献度」の活用についてはさらに慎重な姿勢を見せた。貢献度とは文字通り、サービスへの貢献度合いを示し、質問や回答の投稿、ベストアンサー指定を受けた場合などに付与されるポイントのことだ。「人力検索サイト はてな」のように取得したポイントを現金にしたり、別のサービスの代金に充当できるところもある。
岡本氏は「Yahoo!知恵袋は現在のところ無料サービスということもあり、ボランティアな方が善意で利用している場合も多い。また健康や病気に関する相談といった分野では、金銭に相当するポイントの付与がそぐわない場合もある」と話し、金銭化については現段階でほぼ考えていないと言明。まずは初心者向けサービスをより強く意識し、画面デザインの洗練やインターフェイスの使い勝手向上に注力するとしている。
「特に注目してもらいたい」と岡本氏が話すのは「データの見やすさ」だ。ベータ版の現在でも力を入れており、例えばキーワード検索結果画面で、対象語の強調表示を行なったり、ユーザーからの反応をもとにして回答を序列化する試みも他社に先駆けて行なわれている。正式版開始後にはこれにより磨きをかけていくという。
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「ブロードバンド」で検索した結果。検索キーワードが強調表示される
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■ 2バイト文字圏ならではのサービス
Yahoo!知恵袋の開発は、Yahoo! JAPANのWeb検索と同じ部署が手がけている。Yahoo!知恵袋自体がWeb検索では解決できない内容を対象とした検索サービスという面を持つこともあり、将来的にはYahoo! JAPANの検索サービスとの融合が進むのだろうか。
これに対して岡本氏は「Yahoo! JAPANでは、入力された検索キーワードに対して、適切と思われる自社サービスも同時に表示するというスタンス」とコメント。現在は検索結果の中に、同じキーワードで検索した画像や音声、ニュースや商品情報などの検索結果も表示されるが、将来的にはYahoo!知恵袋がこの検索に含まれる可能性もあるとした。
また今後の検討課題の1つとして、IDの扱いも挙げている。Yahoo!知恵袋では投稿時にYahoo! JAPAN IDの公開・非公開が選べる。ただしこのIDは、そのままだとWebメールのアカウントや、オークションの出品・入札履歴と関連付けされている文字列でもあり、非公開を選ぶユーザーがほとんどだ。
ただ利用者の中には、質問・回答欄にハンドルネームを付記することで個を主張するケースも見受けられるという。正式版開始時には、このID公開・非公開が“場の荒れ”に繋がるかを検証し、IDの公開と非公開の中間的な折衷案(ニックネーム制)なども検討したいとしている。
なお岡本氏によると、英語のような1バイト文字を使う国では、基本的にYahoo!知恵袋のような知識検索サービスは見かけないという。米国でもメジャーなサービスは存在せず、世界のYahoo!をみても、同種のサービスがあるのは韓国と台湾、そして日本のみで、これはいずれも2バイト文字の国々だ。
岡本氏は、この要因の1つとして「検索対象となるデータベースの量」を指摘し、「ネット上で電子化されているデータの量は1バイト文字圏の国の方が圧倒的に多く、通常のWeb検索だけでも相当な量のデータを収集できるからではないか」と分析。Web検索とYahoo!知恵袋のようなサービスを融合することで、より高度な情報収集が可能になると示唆した。
■ URL
Yahoo!知恵袋
http://knowledge.yahoo.co.jp/
Yahoo! JAPAN
http://www.yahoo.co.jp/
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(森田秀一)
2005/05/18 15:12
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