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「3Gの対応も視野に」アイパスが考えるモバイル戦略

 世界150カ国でローミングサービスを展開するiPassの公衆無線LANアクセスポイント数が、全世界で20,000カ所を突破した。アイパス ジャパン代表取締役の菊地昭一氏に、iPassの無線LANへの取り組みと今後のモバイルサービスの展開を伺った。


1つのIDで公衆無線LANや社内LANの一括ログインが可能

アイパス ジャパン代表取締役の菊地昭一氏
 iPassは、世界150カ国以上のISPサービスと提携、ダイヤルアップ接続からブロードバンド、公衆無線LANまでをカバーする事業者。自前のネットワーク設備は持たず、各国の事業者とローミングによってサービスを展開している。

 サービスの対象はISPを通じた個人向けサービスと、企業向けサービスの2種類を提供しており、日本国内では@niftyやBIGLOBE、DIONといった大手ISPが、iPassを利用した海外ローミングサービスを提供している。

 国内のサービス展開をユーザーIDの数で見ると、ISPのオプションサービスが6割で、ISP以外の4割が企業ユーザー。ただし、ISPのオプションと企業ユーザー向けのサービスではサービス形態が大きく異なる。ISP向けのサービスはダイヤルアップやブロードバンドといったローミング接続サービスのみを提供するのに対して、企業向けには企業のセキュリティポリシーに合わせてさまざまなカスタマイズが行なわれるためだ。

 カスタマイズの内容は公衆無線LANだけでなく社内LANの接続までサポート。iPassで接続すると同時に社内のネットワークにログインする、パーソナルファイアウォールが立ち上がっていない場合はインターネットに接続できない、接続したまま放置しておくとセッションが切断されるなど、柔軟なカスタマイズが可能という。菊地氏は、接続先を意識することなく1つのIDでさまざまなネットワークに適したポリシーでアクセスできるiPassのメリットを示した。


公衆無線LANが世界的な伸び傾向に

 菊地氏によれば、ここ最近で世界的に無線LANの利用が非常に伸びているという。「米iPassの収益ベースでは、無線LANは全体の3%程度だが、2004年第3四半期から2005年第1四半期まで連続して40%ずつの伸びを示している。まもなく無線LANだけで5%を超えるのではないか」。菊地氏はその理由として、「米国や欧州などでは、日本のPHSのように国全体をカバーするワイヤレスサービスが存在しないため、新しい市場として無線LANが立ち上がっている」と指摘。iPassが利用されるエリアも、従来までは家庭内、もしくはホテルやオフィスなどが中心だったが、今ではその中間的な存在、レストランや空港、コーヒーショップといった「移動中のエリア」の利用率が高まっているとした。

 日本でも同様に、無線LANの利用が進んでいる傾向が見られるという。菊地氏は「アクセスポイントの設置数が多いという理由はあるが」と前置いた上で、「日本でローミングしているHOTSPOTとYahoo! BBモバイルの場合、ホテルではロビーにあっても部屋では利用できないことがまだまだ多い。日中にアクセスするには、結局のところコーヒーショップなどの利用率が高まる」との考えを披露。ユーザーのアクセスポイント利用比率では、5割強がファーストフードやコーヒーショップを利用しているという。ただし、「アクセスポイントの数こそ少ないが、利用頻度では空港が一番高い」と付け加えた。

 日本国内のエリアでiPassが対応しているのは、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)の「HOTSPOT」、ソフトバンクBBの「Yahoo! BBモバイル」、成田空港の「エアポートネット」の3サービス。国内では他にも多数の公衆無線LANサービスが存在するが、菊地氏によればローミングを拡大する上でセキュリティの面が大きな課題なのだという。「我々のサービスはグローバルで、海外からのユーザーも日本のサービスを利用する。そういう意味ではiPassのグローバルスタンダードなセキュリティ条件を満たしたものでなければ、ローミング先としては追加できない」。

 菊地氏は、グローバルで展開するサービスとして一定レベルのセキュリティを確保するために、基準を満たす事業者としかローミングしないという姿勢を示した。


海外ではすでに3Gも対応。国内でも3Gのモバイルデータ通信対応を検討

iPassのクライアントソフト「iPass Connect」
 海外では大きく成長しつつあるという公衆無線LAN市場だが、逆にPHSがモバイルデータ通信として確立されている日本はどうだろうか。菊地氏は「無線LANだけにフォーカスしたサービスはそもそも難しい」と、無線LAN以外のサービスにも積極的に対応していく姿勢を見せる。「iPassの特徴は、場面ごとに最適な接続方法を選択できるということ。今までPHSは、ダイヤルアップの延長として対応はしていたが、国際的に第3世代携帯電話へ対応していく展開の中で、PHSもデータ通信としての位置付けに変わってきている」。

 すでに海外では「Mobile Data」というサービスが開始されている。これは第3世代携帯電話などの通信カードをPCに挿入するとiPassのクライアントソフト「iPass Connect」が自動で認識、サービスエリア内にいるかどうかを表示する機能だ。現在はまだフェーズ1の段階だが、フェーズ2では通信カードの契約自体もiPassで行なう形態を目指す。この「Mobile Data」は国内ではまだ提供されていないサービスだが、「日本ではPHSや第3世代携帯電話もここに取り込んでいきたい」と菊地氏は語る。

 6月には「iPassConnect」の新バージョンを公開予定。このバージョンでは、iPassに対応したエリアを検知するとバルーン表示でユーザーに通知する機能を搭載する予定。また、iPassのエリアではない他の公衆無線LANサービスも、ユーザーIDとパスワードを設定しておくことで接続できる機能もサポートするという。

 菊地氏は、「無線LANだけをやっている事業者は一からユーザーを集めなければならないが、iPassはダイヤルアップのユーザーを大量に持っている。一時期のISPがダイヤルアップユーザーをADSLに置き換えていったが、公衆無線LANもそれと同じ動き方をするのではないか」とiPassならではのメリットを語る。「PHSや第3世代携帯電話も含めてさまざまなサービスに対応し、それをユーザーが用途によって選ぶサービスを提供していきたい」との目標を掲げた。


関連情報

URL
  iPass
  http://www.ipass.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.ipass.co.jp/pressroom/pressroom_releases.html?rid=153

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(甲斐祐樹)
2005/06/02 11:09
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