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【IP.net】ブロードバンドはFTTHからキラーコンテンツが生まれる

基調講演を行なったTBSの開発局長 福井省三氏
 パシフィコ横浜で開催されている「IP.net」。この展示会で、TBSの開発局長である福井省三氏が「放送局のブロードバンド戦略 ~配信ビジネスの現状と課題~」と題して基調講演を行なった。多数のコンテンツを制作・放送している放送局の立場から、ブロードバンドにどのように取り組んでいるかを語っている。

 まず、ブロードバンドを使ったコンテンツの配信について、インターネットや放送との違いを次のように語った。最初に挙げたのはコンテンツが有料である点。インターネットは基本的に無料、放送局もCMを流しているもののユーザーからは料金をとっていない。これに対してブロードバンドでのコンテンツ配信は、基本的に有料で行なう考えだという。

 また、放送などと違い特定のユーザーに対して配信できるのも特徴のひとつ。受け手を限定できることで、コンテンツの企画や配信に柔軟性を持たせることができるという。

コンテンツの有料配信は大変なテマがかかる

 TBSは、2001年6月にブロードバンド関連の実験として番組「カウントダウンTV」のライブコンサートを実施した。番組と連動して放送とは異なる映像をブロードバンドで配信するという試みだ。このときのアクセスログを分析すると、ピークは1時24分と1時42分だった。これは、ちょうどテレビでブロードバンド関連のテロップを流した時間。放送と連動させたブロードバンドによるコンテンツ配信への効果が非常に大きいことが分かったという。

 このときは無料での配信だったが、その後、2001年末に有料での配信も行なった。「猪木軍 vs K-1最強軍」の試合で、当初はライブによる配信を考えていたが、試合当日は回線が混雑していたため断念。オンデマンドによる配信に切り換えたという。

 料金はナローバンドでもっとも安いものが100円、ブロードバンドのもっとも高いものが1200円。有名な「猪木の108ビンタ」も全編配信したため最低でも108人は見てくれると思ったが、実際はその倍くらい。もっとも無料から有料にすると、アクセスはどうしても限られてしまうのが実情だという。

 番組をブロードバンドで配信することの難しさも語った。イベントの配信権はTBSが購入していたが、アナウンサーやリング上の司会者、出場選手の入場時のテーマソング、特に外国人選手は自分のテーマ曲を持っており、この曲の著作権問題のクリア。さらに、リング周辺には有名人も多いが、そういった人たちの肖像権にも気を使わないといけない。ライブイベントの直前まで、承諾を得るために大変なテマがかかったという。

 また、有料で配信する場合には映像品質も一定の水準を確保しなければならない。しかし、ほかにもブロードバンドのイベントがあったときに、どれくらい配信のピークがぶつかるかはやってみないと分からない。配信のキモとなる回線について、だれも大丈夫といってくれる人がいないのが現状だという。

 福井氏は、回線品質が保証されるようにならないとブロードバンドでのコンテンツ配信ビジネスははじめられない気がしていると述べた。視聴に利用する端末も、PCでは使いこなせる人が限られてしまう。基本的には、テレビにブロードバンド回線を接続できるようになれば、もっとも使いやすい端末になると述べた。

ADSLよりFTTHのほうブロードバンドのメリットを発揮できる

 アクセス回線についても、現在のADSLは配信では制約が大きいという。注目しているのはFTTHで、上りが下りと同じ帯域で利用できる点が大きなメリットになるからだ。上りの帯域が確保できることで、個人から個人、個人からグループ、個人からマスメディアへといった配信が可能となり、ここからキラーコンテンツが生まれてくると考えているのだ。

 同様の試みはテレビ番組でも行なわれているが、個人が自由に配信できるブロードバンドこそが、そのメリットを最大限に発揮できるという。


□TBS
http://www.tbs.co.jp/
□IP.net JAPAN 2002
http://www.ric.co.jp/expo/ip2002/

笠井 康伸
2002/03/01 18:07

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