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Yahoo! BB 12Mのサービス概要を発表、既存ユーザーの変更費用は4800円

既存ユーザーの変更費用は4800円

ソフトバンクグループ代表の孫正義社長
ホテルに引き込んだYahoo! BB 12Mを実際に使用して速度を計測した

 ソフトバンクグループは17日、記者説明会を開催し、Yahoo! BB 12Mの正式サービスについて発表した。月額料金は以前に予告されたとおり、従来の8Mタイプに対し、ADSLサービス料、モデムレンタル料がそれぞれ200円アップした。既存ユーザーの変更は8月1日から申し込みを受け付ける。

 今回の新サービスについて、ソフトバンクの孫正義社長は、「他社は発表は早いが、実物をまだ見ていない」と早く提供開始する優位性を強調した。また、極秘に以前から準備を進めてきたもので、すでにYahoo! BBで使用するDSLAMのうち半数は12Mタイプに対応している設備になっていることも明らかにした。

 月額費用は、8Mタイプが2280円に対して12Mタイプは2480円、モデムレンタル料は8Mタイプコンボモデムの690円に対して890円と、それぞれ200円高くなる。また、モデムを買い取った場合は、8Mタイプのコンボモデムが3万3120円に対して12Mタイプは4万2720円となっている。

 現在、新規に申し込みする場合のみ試験サービスとして12Mタイプを受け付けているが、既存ユーザーが12Mタイプに変更する場合の費用なども発表された。それによると、8月1日からサービス開始され、変更にはYahoo! BBに変更手数料2000円とNTT東西に対して局内工事料として2800円の合計4800円がかかるという。モデムも交換となるため、12Mタイプのモデムのレンタル料金がかかる。

 また、今回の記者発表会では、会場となったホテルオークラの宴会場に実際にYahoo! BB 12Mを引き込み、同社のスピードチェックサイトを使ったデモを行なった。ホテルオークラはNTT東京赤坂局から直線距離で0.4kmに位置しており条件は非常に良い。デモでは孫氏自らがパソコンを操作し、会場で10Mbpsを超える速度が出ることを記者の前で示した。

3種類の規格を持つサービスの開発コードは“カメレオン”

エコーキャンセル技術の概要

 すでに試験サービスで2000名が開通していることが発表された12Mタイプは、従来よりYahoo! BBで提供されてきた「AnnexA」に加え、「AnnexA.ex」「AnnexC」の3種類の規格をサポートし、ユーザーの通信環境に最適なADSL規格を自動的に切り替えるという。

 「AnnexA.ex」は、エコーキャンセル技術を利用し、従来であれば上り専用に利用していた25KHzから138KHzまでの周波数を下りにも利用し、速度を高めるもの。この共用する周波数帯域は低いため、減衰も少なく、ADSLで問題となるNTT局舎からの距離が長くなった場合にも対応しやすい。

 同時に「S=1/2」技術も採用した。これは回線状態の良いユーザーのエラー訂正を粗くして転送速度をアップするもの。この結果、下り最大12Mbpsをサポートした。2つの技術を合わせ、NTT局舎からの距離が近いユーザーはより早い転送速度が得られ、従来であれば4~5kmが限界であったものが7km程度までサービス提供ができるという。

 ただし、エコーキャンセル技術で上り周波数を下りにも使用することは、他社のADSLサービスや、ISDNへの干渉の問題が指摘されている。

 孫氏によれば、Yahoo! BB 12Mで採用する2つの技術は、いずれも国際規格であるITU-Tに対応しているため、使用にあたっては問題がないという。試験サービスの結果では「つながらないユーザーは全くゼロ」と優位性を強調した。

イー・アクセスの指摘は「たいへんな営業妨害」

会見終了後も記者に囲まれ、小畑氏の問題点などを指摘する孫氏

 「AnnexA.ex」については、7月12日にイー・アクセスが開催した勉強会で、同社取締役CTOの小畑至弘氏がTTC(情報通信技術委員会)での協議がないなど問題点を指摘している。この件について孫氏は「これがTTCの標準化うんぬんで問題があるとされているが、全く誤解によるもので、国際規格のITU-Tに準拠している」と今回のサービスにの違法性がないことを強調した。さらに「今日の午前中に総務省に書面で、国際基準にのっとっていて、なんら問題ないと正式に届けてきた」と総務省に対しても正当性をアピールしたことを明らかにした。

 また、「事前に届け出なければならないといった権限がTTCにあるとは認識していない」とTTCによる管理には否定的な意見を述べ、指摘をしたイー・アクセスの小畑氏に対しては「小畑さんのほうで異論があるなら、(認定している)ITU-Tに異論を言ってもらうのが筋ではないかと思う」と名指しで非難した。

 さらに、今回の件ついては「たいへんな営業妨害で、規格に反していると言われたことは、はなはだ遺憾だ」と怒りをあらわにし、「技術に対する競争は技術で競争するのが健全なありかただ」と意見を述べた。

 小畑氏が問題にしている干渉の問題については、すでに愛知県大口町で3月から極秘にフィールドテストをして問題がなかったことを強調、干渉の問題があれば、AnnexA.exみずからに干渉する問題が起こっているとし、自己干渉がないことが干渉のないことの証明だとした。

 さらに、「AnnexA.ex」はすでに1年半前にYahoo! BB(8M)のサービスを立ち上げるときにNTTに提出したスペクトルマップに含まれており、問題があれば1年半前に問題になっていたとし、他社と調整の必要があるサービスではないという考えも示した。

 また、BBテクノロジーの宮川潤一氏は、現在の試験結果がすべてではないとしながらも、「違反行為をしているという認識はない」とした上で、万一問題があれば、12Mタイプで利用するモデムには3方式を搭載しているので、AnnexCなどに切り替えて使用する対策を行なう可能性もあるとした。

エリアカバー率の8割が10割に近づく

Yahoo! BB 12Mサービスで使用されるコンボモデム

 12Mタイプのサービスで利用可能な距離が伸びることにより、従来、NTT局舎からの距離の問題で、サービス対象局に収容されていながら提供できない2割のユーザーにサービス提供できる見込みができたという。「近い人にも遠い人にもトレードオフのないサービス」(孫氏)で売りやすくなるため、営業上のメリットもあるという。「遠いからつながらないという噂に悩まされることもなくなるだろう」という意見も述べた。

 また、12Mタイプよりも、さらに高速なADSLサービスの提供も継続して検討していることも明らかした。内容については今回同様「極秘」とし、ぎりぎりまで発表するつもりはないという。

 今回のYahoo! BB 12M記者説明会では、サービスの概要よりも「AnnexA.ex」についての質問が集中した。孫氏は、ITU-Tに準拠し、すでにYahoo! BBを開始したときに含まれた規格であることを強調しているが、小畑氏が問題にしているのは事業者間の干渉問題などを検討するTTCの活動を軽視した点。孫氏と小畑氏の論点も若干のずれがあり、しばらくは収まりそうにない。


□Yahoo! BB、距離延長を図った下り最大12MbpsのADSLサービス
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/06/27/ybb12m.htm
□関連記事:イー・アクセス、Yahoo! BB 12Mのサービスに対し総務省に要望
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/07/12/eaybb.htm
□Yahoo! BB
http://bbpromo.yahoo.co.jp/

正田拓也
2002/07/16 20:09

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