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KDDI、ハイビジョン映像を5GHz帯無線で伝送する通信実験を公開

試験の実施イメージ
デモで使われた無線装置「RBBR49」。送受信側でそれぞれ1台ずつ使う
 KDDIとKDDI研究所は9月18日、福島県いわき市において、5GHz帯(4.9~5.0GHz)無線を用いた「ブロードバンド伝搬・通信実験」のデモンストレーションを関係者向けに公開した。現在、両社は5GHz帯を使った高速通信サービスの商用化を目指し、電波特性の解明など基礎研究を行なっている。実用化・商用化時期は未定。

 5GHz帯(4.9~5.0GHz)は、総務省の諮問機関である電波監理審議会から出た答申などにより、法改正を経て、今後は無線アクセス用として利用可能になる見込み。移動式や固定式といった無線端末の形態を問わず、屋内外で高速な通信が可能になると考えられる。

 無線電波は送信元から直接端末に届く電波以外に、建造物や地表で乱反射した複数の電波が届く。この状態は「マルチパス環境」と呼ばれ、信号品質の劣化や遅延の原因となるため、通信の品質に大きく影響する。実験ではこれらの状況をサンプリングし、より統計的なデータにまとめることを目的としている。

 実験は無線の伝送距離・方式に応じて複数行なう。まずホットスポットなどに代表される通信エリア半径数十メートル程度の「NWA(Nomadic Wireless Access)」、高速移動時の通信に対応する無線エリア数百~数キロメートル程度の「セルラ移動通信」、またビル間の伝送などに使われる加入者向けアクセス回線を想定した「FWA(Fixed Wireless Access)」の3つが現在計画されている。

 いずれの実験とも実施場所はJRいわき駅周辺。通信用アンテナを一般のホテルや商店に設置し、計測機材を搭載した台車や1ボックス自動車を移動させ信号強度などの各種パラメータを集計していく。

 今回のデモンストレーションは、20Mbpsの帯域を持つハイビジョン映像をTCP/IPベースで無線配信するもの。KDDI研究所が開発した5GHz帯用の高速無線装置「RBBR49」を使って、映像再生装置と表示装置間約5mを36Mbpsの無線でリンクさせた。実際の表示についてもコマ落ちや動作のもたつきは感じられず、25Mbps程度のスループットが出ているという。

 今回の実験では意図的にバッファを設け、映像表示を実際よりも約10秒程度遅延させていたが、担当者によれば「100m程度の伝送距離であっても、ほぼリアルタイムで表示できるだろう」としている。

 また実験で利用する各種の計測用機材を展示し、マルチパス環境下での電波測定の方法についても解説した。

 実験結果は2002年度中に取りまとめられ、新しい通信システムの設計や、より具体的なサービス運用形態の策定などのために使われる。現時点でどのような商用サービスになるか未定だが、KDDIによれば従来よりも安価なFWAサービス、高速な公衆無線LANサービスへの展開が有望だと見ている。

「RBBR49」間でつかわれたアンテナ 無線送信されたハイビジョン映像
計測機材を搭載した台車。これを一般の路上で移動させ、電波状態を観測する 電波状態を示すグラフ。縦軸が信号強度、横軸が遅延時間を意味する


□ニュースリリース
http://www.kddi.com/release/2002/0918/index.html
□関連記事:KDDI、5GHz帯でブロードバンド実験を行なうための予備免許を取得
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/07/11/kddi5g.htm
□KDDI
http://www.kddi.com/
□KDDI研究所
http://www.kddlabs.co.jp/

森田 秀一
2002/09/18 21:03

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