スクウェアはe-Drive 2002で、ネットワークシステム部の伊勢幸一氏が「オンラインゲームのQoS」というテーマで講演を行なった。
QoS(Quality of Service)とは通信インフラにおいて一定の品質を保証する技術。伊勢氏は「なぜスクウェアがQoSなのかと不思議に思うかもしれないが、バックボーンとしてのQoSではなく、コンテンツの発信側からユーザーという着信側においてどういったネットワークのクオリティが重要なのかを語っていきたい」と前置きし、同社のゲームソフト「ファイナルファンタジーXI(以下FFXI)」について語った。
FFXIのシステムは、ユーザーが操作したキャラクターの動きに関するデータがサーバーに送信されたのち、そのデータをもとに「当たり判定」「ステータスのチェック」といった情報をデータベースから引き出し、ユーザーへデータを返信する仕組み。このデータ量はユーザー側からのデータ量が50Byteから60Byte程度、サーバーからユーザーへのデータ量が1000Byteから4500Byte程度。FFXIではこのやり取りを1秒間に3回実施することでオンラインゲームを実現しているという。
このデータのやり取りはユーザーのプレイ形態によって大きく異なる。FFXIを1人でプレイしている場合、データ量は300byte~600byte程度だが、6人でパーティーを組み、戦闘に突入した場合は500Byte~1KB、18人で戦闘に突入した場合は1KBから4.5KBという最大値まで達するという。
とはいえプレイ中に必要なデータ量は総じて小さく、ダイヤルアップ接続でも十分利用できる数値。ここで伊勢氏はFFXIとブロードバンドの関係について話題を移し、「品質の良くないブロードバンドよりは品質の良いナローバンドのほうが向いている」とコメントした。データ量は微々たるものであるが、データをやり取りに要する時間の数値であるRTT(Round Trip Time)が大きくなれば、キャラクターの動きが遅くなる、モンスターが突然ワープするといった現象が発生。1秒間に3回というデータのやり取りを継続的に実施するためには広帯域であることよりも回線の安定や品質の高さが重要なのだという。
しかしこれはゲームをプレイしている最中の話。オンラインゲームではユーザーを飽きさせないためにもシナリオの追加やバグの修正といった「パッチ」の利用がつきものであるが、FFXIで5月16日から6月14日の間に提供されたパッチの容量は計20MB。このパッチをダイヤルアップで適用する場合は3時間程度かかるという。また、FFXIの世界では1人で他のゾーンへ旅するレベルに達するまで約52時間、サポートジョブと呼ばれる別の職業能力を取得するためのクエストに挑戦するには100時間以上必要であり、ゲームを進めるためには「常時接続」であることが現実的に望ましいとしてブロードバンドのメリットを説明した。
伊勢氏はバグや障害解析に対する取り組みにも言及。FFXIではすべてのプレイヤーがいつ、どこで、なにをしたかという細かな点までログを記録している。そのため「拾ったアイテムが無くなった」という偽のクレームに対しても「そのような事実はないと自信を持って発言できる」と語った。FFXIの通貨単位である「ギル」を不正入手するといった悪質なプレイにも、ログを解析することで正確に把握できるという。
□スクウェア
http://www.square.co.jp/
□e-Drive 2002
http://www.key3media.co.jp/e-drive/
(甲斐祐樹)
2002/10/25 21:13
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