KDDIは21日、社長定例会見を開催した。会見では、今年1年の同社の取り組みを振り返るとともに、シャープ製の携帯電話をauに採用することなどが発表された。
小野寺正社長は、「2005年は通信業界にとって、次の飛躍への第一歩を踏み出した年」と語り、通信と放送の融合、移動体通信と固定通信の融合など、今後予想される通信業界の変化が始まった1年だったと振り返った。
■ 事業は順調に推移、auのシャープ製端末の発売も発表
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KDDIの小野寺正社長
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KDDIにとっては、2000年から有利子負債の縮小を進めてきた結果、3月には目標としていた1兆円を下回り、事業の成長に向けた新たなステージに入ったと説明。6月には移動体通信と固定通信を統合した次世代インフラ構想「ウルトラ3G構想」を発表。また、10月にはツーカーとの合併を実施したほか、東京電力との提携を発表。2006年1月にはパワードコムとの合併を行なうなど、通信事業の新たな展開に向けた取り組みを進めてきたとした。
事業面では、固定事業は直収電話サービスの「メタルプラス」が12月に100万加入を突破。携帯電話事業はauが引き続き好調を維持し、調査会社(J.D.パワー アジア・パシフィック)の調査でも全国9地域中7地域で顧客満足度が第1位となるなど、顧客の支持を得てKDDIの事業は順調に推移したという。2006年には、新たな携帯電話事業者の参入や、ナンバーポータビリティサービスの導入が控えているが、小野寺社長は「顧客に満足してもらえるサービスを創造し、より一層企業価値を向上させていきたい」と意気込みを語った。
また、携帯電話事業については、シャープ製の端末をauで発売することも発表した。発売時期については、ナンバーポータビリティの始まる2006年11月までとしたが、投入する端末の種類などについては現時点では未定であるとして、具体的な内容については語られなかった。
■ NTTの中期経営戦略に強い懸念、資本の完全分離を主張
小野寺社長は、「今年1年を振り返る上では、11月9日に発表されたNTTグループの中期経営戦略にも一言述べさせていただきたい」として、NTTグループの再編構想についての感想を語った。小野寺社長は「NTTグループは依然として強い市場支配力を持っており、再編の前にまずはNTT東西やNTTドコモを資本分離すべき」と主張。中期経営戦略については「実態として、NTT東西、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモを、再び元の1社独占事業体に戻すものだと見ている」として、再編構想への強い懸念を表明した。
NTTグループのあり方については、「持株会社を廃止し、各グループ会社を完全な民間企業とすることが必要」としながらも、そのためにはNTT法の改正が必要であり、「まずはNTTグループの人、物、金、情報の共有を遮断するファイアウォールが必要」と強調。「とにかく、資本分離を行なって完全に別会社にすることが重要で、その上でさまざまな通信会社が提携することは問題ない。あとは、独占禁止法の観点から提携の是非を判断すればいい」として、公正競争を行なうべきだと強く主張した。
■ 携帯電話の放送対応端末は災害時に有効
質疑応答では、ソフトバンクやUSENが映像系コンテンツの強化策を打ち出しているが、KDDIはどのように考えているのかという質問に対して、「今のPC上で見る映像配信については、どの程度エンドユーザーに魅力があるものか、正直疑問を持っている」として、「基本的にはSTBを利用したテレビへの映像配信をするべきと考えている」と答えた。
また、東京電力との光ファイバ事業の提携により、FTTHサービスをどのような形で提供していくのかという質問については、「現在協議を進めている最中であり、もう少しお待ちいただきたい」と述べるに止まった。
16日に対応端末「W33SA」を発売した携帯向け地上デジタルテレビ放送「ワンセグ」については、「事業面で言えば、放送を携帯電話に入れることで、着うたとの連携などがある。しかし、一番重要となるのは災害時だと考えている。災害時にはどうしても携帯電話は輻輳が起きてしまうが、放送が携帯電話に入っていることで、必要な情報が必要な人に届く」とした。また、NTTドコモがワンセグをにらんでフジテレビへの出資を検討しているという報道については、「KDDIとしては出資という形は考えておらず、相互に協力していく体制を強化していきたい」と述べた。
■ URL
KDDI
http://www.kddi.com/
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(三柳英樹)
2005/12/21 19:49
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