11月16日・17日に渡り、ビジネスブログやSNSに関するイベント「Business Blog & SNS World」が開催されている。初日の基調講演では米Six Apart社長兼共同創業者のミナ・トロット氏が登壇し、10月から開始した新たなブログサービス「Vox」について講演を行なった。
■ 「プライバシー」「シンプル」「楽しさ」がVoxのポイント
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ミナ・トロット氏
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ミナ・トロット氏は初めにVoxを立ち上げた理由について説明。米国では76%のブログが自分の体験を書いたり、そうした体験を友達と共有するために使われているとした上で、「多くの人はたくさんの一般大衆向けにブログを書きたいのではなく、自分の身近なグループにのみブログを見せたがっている」と指摘。「そうした個人ブロガーに向けたベストサービスがVox」とした。
Voxの特徴としてトロット氏が挙げたのが、「プライバシー」「シンプル」「楽しさ」の3つ。Voxユーザーからもこの3点が高く評価されており、プライバシー機能については91%、シンプルさについては83%、楽しさは75%のユーザーが必要だと考えているという。
楽しさという面では、ブログのテーマとなる質問を毎日投げかける「QotD(Question of the Day)」や、同じくテーマに沿った写真投稿を毎日募る「Vox Hunt」を紹介。また、クリック操作のみで変更できるブログのテンプレートも200種類以上が用意されており、「気分によってブログのデザインを変えて欲しい」とコメント。今後も数千近くまでテンプレートを拡充していくとした。
プライバシー機能では、日記だけでなく画像や動画ごとに公開・非公開を選択できる機能が実装されている。トロット氏は「世界全体ではなく、家族や友達だけに見せたいブログの内容もある」と指摘。「こうしたプライバシーコントロールのためにSNS機能が必要だが、SNSはあくまでフィルタ的な存在。たくさんの人を集めるためのSNS機能ではない」と補足した。
豊富な機能や他サービスとの連携もVoxの特徴の1つであり、静止画や音声、動画コンテンツなどをアップロードできるほか、AmazonやFlickr、YouTubeなどのコンテンツをVoxで表示することもできる。トロット氏は「我々はオープンソースだけでなくオープンデータも重要視している」と語り、こうした外部サービスとの連携に加えて、API公開などでVoxの機能を外部サービスに提供することも考えていると説明。「囲い込みをするよりも、ユーザーが自分のデータをコントロールできることが重要」とした。
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「プライバシー」「シンプル」「楽しさ」がユーザーから支持
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日替わりの質問を投げかける「QotD」
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友達のみ指定した画像を閲覧できるプライバシーコントロール機能
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他サービスとも広く連携
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■ ブログ未経験者の不安要素をVoxでは解消
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Voxの事業責任者であるアンドリュー・アンカー氏
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基調講演の後には、報道向けのラウンドテーブルが開催。トロット氏に加え、Voxの事業責任者であるアンドリュー・アンカー氏、シックス・アパート代表取締役の関信浩氏らが出席し、Voxの事業展開や開発の背景について説明した。
Voxの大きな特徴であるプライバシーコントロール機能は、トロット氏自らのブログ経験も影響しているという。トロット氏は「以前にブログで自分のことをジョークにしているつもりが、夫のことを悪く言っていると勘違いされてしまい、『そんな夫とは離婚しろ』といったコメントがついてしまったことがある」との思い出を紹介。「2001年からブログを続けているが、最近はブログが増えてきて最初の頃ほど親密感がなくなり、楽しくなくなってきている面もある」とし、こうした体験がVox開発のアイディアにつながっているとした。
Voxのユーザーターゲットは、すでにブログを利用しているユーザーだけでなく、ブログに興味を持っていなかった層も重要視している。「これまでブログをやっていなかった層は、誰が見るかわからない、ブログを書く時間がない、自分について知って欲しいことがないということを理由としている」と説明したトロット氏は、「Voxは楽しく、みんなが見たくなるようなブログにしていきたい」と語った。
「誰が見るかわからない」という不安には、Voxのプライバシーコントロール機能で対応。また、書く時間がないユーザーに対しても、Flickrなど外部サービスのコンテンツを再利用できることで時間をかけずにブログが書けるとの特徴を示したほか、QotDやVox Hutといった日替わりの質問機能も「完璧に答えようとするのではなく、気軽に答えてもらうことでブログを楽しんで欲しい」とした。
一方、「今ブログを使っていない人に、急にブログを使わせるのも難しい」(アンカー氏)」との考えから、まずはブログを理解しているユーザーをターゲットとしてVoxを展開。「ブログを使っていない層には、まずブログを読むところから始めて欲しい」とし、初心者層への展開はその後に順次行なっていくとした。
■ 各国のローカルサービスも積極的に対応
Voxのユーザー数は、招待制から登録制へ移行した時点での米国ユーザー数が約8万5,000人で、現在では日米仏合わせて約15万人がVoxを利用。そのうち10~15%程度が日本のユーザーだという。海外での反響についてトロット氏は「予想していた以上に反応が良かった」と感想を述べ、「新しいサービスに対して懐疑的だった人たちもファンになってくれているようだ」とした。
外部サービスとの連携は現在のところ海外サービスが中心だが、将来的には国ごとローカルなサービスとも連携していく方針。関氏は「すでに日本のパートナーとの話も進んでいる」したほか、アンカー氏も「日本にも写真の良いサービスがあるので、ぜひ対応していきたい」と積極的な姿勢を見せた。
Voxは無料サービスのため、収益は広告が中心。単なるバナー広告だけでなく、海外ではQotDに企業スポンサーからの質問を取り入れるという試みも行なわれているという。QotDにはスポンサー企業名が告知され、QotDに回答したブログをタグで一覧できる仕組み。また、VoxのAmazon連携機能ではユーザーIDを設定することができないが、「基本的に無料サービスのため、そうしたIDを設定してユーザーが報酬を受けられるという仕組みは考えていない」(トロット氏)」とした。
■ URL
Business Blog & SNS World
http://www.idg.co.jp/expo/bbsns/
Vox
http://www.vox.com/
シックス・アパート
http://www.sixapart.jp/
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(甲斐祐樹)
2006/11/16 18:03
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