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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
イー・アクセス決算、ADSL契約数が純増を維持。モバイル契約は3万件

 イー・アクセスは14日、2007年3月期(2006年4月~2007年3月)の業績発表会を開催した。合わせて同社では、株式譲渡に伴うイー・モバイルの持分法適用子会社への変更、および代表取締役の異動などを発表した。


単体の営業/経常利益が過去最高。ADSLは192.5万件、モバイルは3万件

イー・アクセスの千本倖生 代表取締役会長
 2007年3月期の連結業績は、売上高が前期比6.8%減の562億5,000万円、営業利益は88.8%減の10億4,900万円、経常利益はマイナス15億6,400万円で、純利益は81.9%減の9億9,00万円となった。

 イー・アクセス単体の業績は、売上高が7.2%減の559億8,400万円、営業利益が15.1%増の125億3,200万円、経常利益は21.2%増の113億7,800円で、純利益は4.7%増の66億2,800万円。単体での営業利益と経常利益は過去最高の数値を達成したほか、連結では営業利益と純利益が当初予想を上回った。

 ADSL契約数は前期比0.7万件増の192.5万件で、ISP(AOL)契約数は4万件減の23万件で、合計値は215.5万件。年間平均解約率は当初見込みの2.0%を下回る1.91%で推移し、主な解約要因は引っ越し・その他の50%が大きく、FTTH移行が33%、他社移行が16%だった。同社では、「解約要因比率はこの数年で大きな変化はなく、FTTH移行に対する割合も横ばいの状況が続いている」と分析しており、「FTTHへの影響はないとは言わないが、2007年で解約率が大幅に変わるとは考えていない」としている。

 同社では、モバイルサービスとのセット販売や新12Mbpsサービスの拡販などを通じて、競合他社からの移行やインターネット未利用者やダイヤルアップユーザーの獲得を目指すとしている。ISP事業では、ブロードバンド比率が過去最高の32%となり、過去最高利益を達成したという。また、Yappaと共同開発した3Dインターフェイスを利用したポータルページを、2007年8月頃にAOLで提供するとしている。

 一方、モバイル事業は、売上高が5.2億円、営業利益がマイナス114億7,000万円、経常利益がマイナス129億3,000万円、純利益がマイナス129億4,000万円。イー・モバイルの契約数は4月末時点で3万件となり、同社では予想通りに推移しているとした。


2007年3月期の実績 ADSL・ISP事業の推移

イー・モバイルの一部株式を譲渡。代表権は安井社長のみに

イー・モバイル株式の一部譲渡について

2008年3月期の業績予想
 合わせて、特定子会社であるイー・モバイルの一部株式について、5月末日をめどに第2位株主であるゴールドマン・サックス・グループ関係会社に譲渡すると発表。1株12万円で、譲渡株数は10万株、総額は120億円。

 これにより、イー・モバイルはイー・アクセスの連結対象子会社から持分法適用会社に変更になるほか、議決権比率は43.5から37.6%に減少する。ただし、ゴールドマン・サックスの議決比率は29.8%から35.7%に留まるため、イー・アクセスが引き続き筆頭株主となる。

 千本倖生 代表取締役会長は、イー・モバイルの一部株式譲渡について「イー・アクセスの連結業績におけるバランスシートの悪化を回避しつつ、イー・モバイルの企業価値を株主に還元できる最良の方法である」と説明。この施策は2006年末頃から検討を重ねており、「初期段階の投資リターンを株主に還元し、2008年3月期の配当を前期比28%増の2,300円に増配予定」「売却益によって、イー・アクセスの単体および連結のバランスシートを強化」「イー・アクセスおよびイー・モバイルのガバナンス体制を明確化」の3点を理由に挙げた。

 売却先のゴールドマン・サックスに関しては、「イー・アクセスの創業当時から出資していただき、苦難の時も株主として留まってくれていた」と信頼関係が構築できている点を強調。エリック・ガン代表取締役副社長は「イー・モバイルは2011年をメドに黒字化、上場をしたいと考えている」と語り、「現時点において、ゴールドマン・サックスがイー・モバイルの株式を短期的に売却することは聞いていない」と述べた。

 また、6月27日を予定日に代表取締役の異動が行なわれる。今回の異動では、千本倖生 代表取締役会長が取締役会長に、エリック・ガン代表取締役副社長が取締役へと役職が変更になり、代表権は安井敏雄 代表取締役社長の1人に変更する。千本氏は、「ガバナンス体制を明確にするため、実施するものだ」とその理由を語った。

 2008年3月期の連結業績予想は、売上高が12%増の630億円、営業利益が90.7%増の20億円、経常利益が570.9%減のマイナス105億円、純利益が903.1%減のマイナス73億円を見込む。単体業績は、売上高が8.4%増の607億円、営業利益が46.5%減の67億円、経常利益が50.8%減の56億円で、純利益は18.5%減の54億円とした。

 なお、エリック・ガン副社長によると、イー・モバイルが連結子会社だった場合の連結業績予想値は、売上高が866億円と上昇するものの、営業利益がマイナス220億円、経常利益がマイナス270億円、純利益がマイナス100億円になり、設備投資費も300億円から1,000億円へと増大するという。ガン副社長は、「イー・モバイルが連結対象の場合では巨大な損失が発生するが、今回の一部株式譲渡によって売上高や営業利益の増益が見込めるようになる」と付け加えた。


イー・アクセスで事業再編。新たにデバイス事業を立ち上げへ

2007年6月以降の事業体制
 6月1日付けでの組織改正も発表され、ADSL・ISP事業に加え、伝送事業とWiMAX事業を加えた4事業を「ネットワーク事業」とし、イー・モバイルの商品開発本部をイー・アクセスへと移管した「イー・デバイス事業本部」が新設される。

 これら各事業の展開については、安井敏雄 代表取締役社長から説明が行なわれた。ネットワーク事業のうち、伝送サービス事業では現在、東名阪および主要都市部におけるイー・モバイル基地局とスイッチングセンターを結ぶバックボーンを提供している。しかし、将来的にはイー・モバイル以外のパートナー企業に対しても活用を呼びかけていくという。

 WiMAX事業に関しては、WiMAX Forumにおける標準化活動に積極的に参加している点を改めてアピール。「モバイルWiMAXは第2四半期の免許申請に向けて、準備を着実に進めていきたい」と、同事業に対する意気込みを示した。

 イー・デバイス事業本部では、固定通信/WiMAX/モバイルで共通したアプリケーションプラットフォームやデバイスの開発を含め、MVNOにおけるパートナー企業に対してサービスを提供していく。また、オープン・水平型のビジネスモデルを採用することで事業領域を拡大する考えで、安井社長は「2007年8月期は売上が80億円、EBITDAがマイナス27億円と見込んでいるが、将来的にコア事業となるよう育てていきたい」と抱負を語った。


モバイルWiMAXビジネスのロードマップ 同社グループが目指す事業モデル

イー・モバイルは国道16号圏内のエリア化を完了

イー・モバイルのエリア展開状況
 このほか、イー・モバイルに関しては契約数が3万件に達した点に加え、当初予定で2006年6月を完了時期としていた国道16号線圏内のサービスエリア化がほぼ完了したことが明らかにされた。

 千本会長は、「この週末に湘南のゴルフクラブまで出向いたが、1.6Mbps以上の速度が確認できた」と自らの体験談を披露。また、同氏は都内にある49階建ての高層マンションに居住しているとのことだが、「他の携帯電話事業者では1社が窓際でかろうじてアンテナが入るのみだったが、イー・モバイルは部屋中どこでも受信感度が良好だった」と語るとともに、「通信速度も平均で2.6Mbpsを計測でき、あまりの感動に翌日固定通信サービスをすべて解約してしまった」と発言した。

 千本氏は、イー・モバイルについて「2007年の当初は基地局の設置契約が思うように進まず、3月31日にサービスインできるかどうか不安だった」とコメント。「今日時点で目立った障害が発生することなくサービスが提供できたのは私の期待以上で、非常に有り難い気持ちになっている」とした。


関連情報

URL
  投資家情報ページ
  http://www.eaccess.net/ir/index.html

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(村松健至)
2007/05/14 20:05
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