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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
【技研公開2007】
NHK放送技研、オンデマンド放送サービスなど研究開発中の技術を一般公開

NHK放送技術研究所の入り口。中央横断幕に写るのはマスコットキャラクター「Laboちゃん」
 日本放送協会(NHK)は、東京都世田谷区・砧にあるNHK放送技術研究所を一般公開する「技研公開2007」を、5月24日から27日にかけて開催する。各日10時から17時までで、入場は無料。

 技研公開は、NHK放送技術研究所の研究成果を一般に公開するもの。61回目となる今回は、「未知を探る・未来を創る」というテーマを掲げ、最新の研究成果36項目をテーマに分けて紹介するほか、体験型展示や専門家向けのポスター展示が行なわれる。

 22日には一般公開に先立ってプレスプレビューが開催。Broadband Watchでは、ネットワークに関連した展示を中心にお伝えする。


PCやアクトビラ、モバイルの利用も見据えたオンデマンド放送サービス

Media Center版の「アーカイブス・オンデマンドサービス」
 「アーカイブス・オンデマンドサービス」は、NHKが2008年のサービス開始を検討しているインターネット網を利用したサーバー型サービス。放送と通信の連携を視野に、最新ニュースやドラマなどに加えて、NHKが保有するドキュメンタリーや文化・芸能番組などのストリーミングおよびダウンロード提供が予定されている。

 会場では、PCとデジタルテレビなど利用シーンに分けてサービスを紹介。PC向けではWebブラウザ版のほか、Windows Vista向けに「Windows Presentation Foundation(WPF)」を利用したバージョンと「Windows Media Center」バージョンが用意されており、Media Center版ではリモコンによる操作も可能だった。

 デジタルテレビ向けでは、ポータルサービス「アクトビラ」で2007年度中に提供を予定する動画サービスを想定した展示も行なわれている。デモ展示では、動画再生機能が組み込まれていたが、現在発売されているアクトビラ対応デジタルテレビでは利用できない可能性がある。この点に関してテレビポータルサービスの担当者は、「必ず出すというわけではないが、動画サービスを利用できるSTBの提供も検討している」とした。

 また、NTTの次世代ネットワーク(NGN)環境におけるサービス展示も行なわれているほか、将来的な発展例として携帯電話端末向けサービス、衛星を利用した大容量ダウンロード型放送サービスのイメージも展示されていた。

 なお、今回の展示で利用したファイル形式とビットレートは、PC向けがWindows Media Videoで、ビットレートはストリーミングが1.5Mbps、ダウンロードが4Mbps。アクトビラ向けがMPEG-4で、ビットレートは6Mbps。NGN向けSTBがH.264で、14Mbps。


Webブラウザ版。動画再生時には別個プレーヤーウインドウが立ち上がる Windows VistaでサポートしたWPFを利用したバージョンも アクトビラ版の画面イメージ

NGNで利用されているタイプでは、STBを介した配信デモが行なわれていた 将来的には携帯端末向けのサービスも検討するという こちらは衛星を利用した大容量ダウンロード放送の画面。ハイビジョン放送などの提供を想定する

外出先で受信できるIP放送局を通知する「放送検索システム」

放送検索システムの概要
 IPネットワークを活用した展示では、位置情報を利用して外出先で受信できるIP放送を確認可能な「放送検索システム」が紹介されている。同システムに対応したDHCPサーバーから位置情報を取得したクライアント端末は、位置情報をチャンネル検索データベースに渡して放送局情報を取得する。

 データベース側は、SIPのプレゼンス機能を利用しており、放送局が放送局情報と受信パラメータを登録した「チャンネル情報」を参照して、該当する放送局情報をクライアント端末に返す仕組みだという。加えて、天候や交通の最新情報も放送局が情報を更新することで、該当地域にいる端末に対して通知も行なえる。

 また、現行のFTTHサービスを利用したデジタル放送の配信デモンストレーションも実施されていた。こちらのデモでは、誤り訂正用のデータを基本階層と補強階層に分けることで、使用する帯域の節減を図り、データを正しく受信できなかった場合に補強階層を受信して品質の確保を行なうという。デモ環境では、30Mbpsのデジタル番組がサンプルとして利用されており、説明員によれば補強階層を受信しない場合で約10%の帯域節減を確認したとしている。

 このほか、IPネットワークで番組を配信する際に、不正に改竄されたコンテンツを検出する技術も展示されていた。これは、コンテンツ配信時に暗号化に加えて、タイムスタンプとメッセージ認証子を付加し、受信機でこれらの整合性を確認して不正コンテンツの受信を防ぐというもの。今後は不正コンテンツを検知した際に、IP放送局側に検知できる機能などの研究を進めるという。


湘南地域を例にしたイメージ映像。左側にはSIPのプレゼンス機能を用いて通知される地域IP放送局の番組情報 大阪での受信イメージ 放送局側のイメージ。端末側に最新情報を知らせることができる

誤り訂正用パケットを基本階層と補強階層に分けることで、帯域節減や品質の確保を目指しているという IP網を利用した際の品質検証も行なわれている。今回のデモではBS放送波と比べて、遅延は7フレーム程度に留まっていた タイムスタンプとメッセージ認識子によって不正コンテンツの配信を検出する技術も

コンテンツ鍵を利用した携帯端末での放送再生技術

暗号化鍵を利用したコンテンツ共有技術
 携帯端末向けの技術では、パソコンに放送局から取得したコンテンツを利用する例として、コンテンツ鍵を利用したものが紹介されている。これは、事前に端末IDを登録した携帯端末で著作権保護されたコンテンツの再生を許可する仕組みで、パソコン側から渡されたドメイン鍵を用いてコンテンツ鍵を取り出し、コンテンツ鍵を用いてコンテンツの再生を許可する。

 コンテンツの暗号化・複合号化はファイルシステム上で実施。このため、アプリケーションを利用したコンテンツ保護技術と比較して、セキュリティ面での信頼性が確保できるという。

 また、携帯端末向けのコンテンツ配信サービスでの認証技術では、配信事業者と放送局側で連携IDを利用した視聴者情報管理も展示されていた。配信事業者を通じたコンテンツ配信では、現在のところ、放送局側にコンテンツの購入状況や視聴者の嗜好がリアルタイムで確認できない点を考慮し、放送局側でコンテンツ配信の認証可否や、これらの情報を蓄積できるようにした。

 携帯端末側からコンテンツ配信のリクエストが行なわれた場合には、連携IDを利用して、配信事業者、放送局の順にリクエストが通知される。この際、放送局側ではリクエストされた番組情報を解析。これらデータに基づいて、今後の番組編成や視聴者の好みにあった番組の制作などに繋げることが可能になるとしている。


ドメイン鍵を持つ登録済み端末であれば、左のようにコンテンツの再生が可能 視聴者情報をグラフ化した画面。これらの情報を得られることで、番組編成への反映も迅速化が可能になるという 利用者側はユーザー認証後にコンテンツが再生できる

複数の地点にある素材を組み合わせたシームレス番組編集システムなど

 また、ネットワークを利用した制作・送出システムとして、「プラグアンドプレイ型番組制作システム」と「分散サーバーシステム」も紹介されている。

 プラグアンドプレイ型番組制作システムは、番組素材の編集位置や時間・処理内容が保存された編集情報に応じて、ネットワーク上にある番組素材や利用可能な機器を自動的に探索して接続するというもの。合わせて、長距離ネットワーク上で動作する同期伝送プロトコルを利用することで、タイムラグを抑えて遠隔地にある複数の素材を用いたリアルタイム編集が可能になるという。

 分散サーバーシステムは、1Gbpsのネットワーク上にある複数のサーバーで構成されており、各サーバーが自律的にファイルを複製し、冗長化を図る。また、ファイル転送時には未使用のサーバーが選択されるため、輻輳の発生を防いで高速なファイル転送が可能になるとしている。


デモでは6台の分散サーバーを設置 分散サーバーシステムの動作イメージ プラグアンドプレイ型番組制作システム

このほか、スーパーハイビジョンシステムの視聴エリアも用意されている 辞書や過去の原稿、Webから翻訳候補を提示する「翻訳パレット」。国際放送などで翻訳をする場合の活用を想定するという 視覚障害者向けの受信提示システムも展示されていた。同システムでは、統一フォーマットによりWebでの活用も見据える

関連情報

URL
  技研公開2007
  http://www.nhk.or.jp/strl/open2007/
  NHK放送技術研究所
  http://www.nhk.or.jp/strl/


(村松健至)
2007/05/22 19:42
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