グーグルは2日、YouTube日本語版の事業説明会を開催した。説明会にはYouTubeとのパートナー企業も出席し、YouTubeと提携した経緯や今後の展開、YouTubeへの期待などが示された。
■ 日本語版向けにコンテンツを公式提供。mixiもYouTube対応機能を実装
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説明会の出席者
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YouTube日本語版は、ブラジルやフランスなど米国以外の9カ国語版として6月19日にスタート。日本語版専用のURLが用意されたほか、メニュー画面などもすべて日本語で表示されるようになった。
日本語版の開始に合わせてスカイパーフェクト・コミュニケーションズでは、国内メディアでは初というパートナーページをYouTubeに開設し、Jリーグやドラマのプロモーション映像などを配信。また、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)も7月12日より自社制作のニュースや都知事の会見映像、立川談志・野末陳平が出演するコンテンツなどの配信を開始した。
GDHは、公式チャンネル「GONZO DOGA」でアニメのプロモーション映像などを8月1日より配信。吉本興業グループも8月2日より「吉本興業」「ZZZ.TV」の2ブランドで動画配信を開始した。
コンテンツ提供以外でも、mixiが8月2日からYouTubeの動画を日記で表示できる機能を実装した。また、カシオ計算機は米国でYouTube対応デジタルカメラを発表。YouTubeに最適化したサイズで動画を撮影できるほか、付属のソフトウェアを使って2ステップでYouTubeへ動画をアップロードできる。
今回の事業説明会では、YouTubeを担当する米Google Inc. コンテント担当副社長 デービッド・ユン氏とグーグル日本法人で代表取締役社長を務める村上憲郎氏、YouTubeとの提携パートナーが出席。YouTubeからは日本での事業展開について説明が行なわれた。
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日本語版のパートナー
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海外のパートナー事例
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■ 米国の次にYouTube人気が高い日本は重要な戦略市場
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Google Inc. コンテント担当副社長 デービッド・ユン
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ユン氏は、「世界中の情報を整理してアクセス可能にする」というGoogleのミッションを掲げた上で、「GoogleはWebページだけでなくニュースやブック検索、地図などさまざまな分野に展開しており、動画に関してもYouTubeによって有益な情報を共有できるようになった」とコメント。「パーソナルビデオの共有から始まったYouTubeが、今ではメディア企業がコンテンツの販売促進に役立てている」とYouTubeの現状を説明した。
ユン氏が強調したのは、「YouTubeはコミュニティを重要視する」ということ。「YouTubeはユーザーに耳を傾け、ユーザーが何を必要としているのかに基づいて開発を続けてきた」と述べたユン氏は「パートナー企業もユーザーと同様大事にしている」とし、「ユーザーとパートナーのニーズ双方に見合うものがYouTubeのビジネスの基本になる」と語った。
YouTubeのユーザーと視聴数は今も上昇を続けており、視聴数は1日数億、アップロードされる動画の数は1日数十万にも上るという。米国以外でのYouTube利用率も高く、ユン氏は「特に日本は米国を除けばもっともYouTubeの人気が高い」と説明。YouTubeにとって日本は重要な戦略市場であり、今後も継続的に日本での展開を進めていく方針。そのためにパートナーとの関係を構築し、コンテンツの多様性を強化していくとした。
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YouTubeのミッション
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ユーザー数と視聴数は増加中
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■ 著作権問題も積極的に取り組み。認識技術は秋頃に導入予定
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著作権に対するYouTubeの取り組み
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一方で、「著作権問題についてはYouTubeが誤解されている面もある」と指摘。「YouTubeは違法コンテンツがサイト上にあることを望まない」との姿勢を示した上で、ユーザーに対しては権利を有するコンテンツのみアップロードするよう表示する、権利者がYouTubeにアップされた自分のコンテンツを特定して削除を請求するツールを提供しているといった取り組みを紹介した。
音声認識技術および動画認識技術も数カ月中に開始を予定しており、JASRACを初めとする日本の権利保有者と協議中。自らのコンテンツを発見した場合、動画の削除だけではなく、収益分配やプロモーション目的での利用を認めるといった選択が可能だとした。
なお、これら認識技術を利用するには、認識の元となるデータを事前に用意しておく必要があり、そうした手間やコストがコンテンツ提供側にとって負担になる可能性がある。この点についてユン氏は「インターネットビデオというジャンルがまだ始まったばかりであり、コンテンツを保護するという点においては、まだ最も低いレベルにも達していないだろう」との見解を示した上で、「100%完璧なソリューションは存在せず、解決してもまた別の問題が出てくる」とコメント。「現状ではこの認識技術がベストだと考えている」とし、「この問題は最高の技術陣を揃えて最高の努力をしていきたい」とした。
■ 短い動画が好まれるYouTubeはテレビ・映画と補完関係に
また、「YouTubeでは短い動画を好む風潮があり、数分経過するだけでトラフィックは大きく落ちる」という傾向があるという。ユン氏はこの点を踏まえ「時間の長いテレビ番組や映画に対してYouTubeは補完的な関係にある」との考えを示し、「YouTubeはパワフルなプラットフォームだが独占を求めているわけではない。パートナーとの最高の利益を意識しながら協力関係を結んでいきたい」との姿勢を強調した。
ロングテールもYouTubeの特徴であり、「ニッチなコンテンツで視聴者が限られていても、スペースが無限であるインターネットであればユーザーに好きなものを選択してもらえる」と説明。「YouTubeと組むことで世界へ向けて情報を発信でき、ヒット作品にならなくとも特定のユーザーに届けられることでビジネスを確立できる」とした。
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YouTubeは短い動画が好まれる傾向に
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ロングテールで新たなビジネスチャンスを創出
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■ URL
YouTube日本語版
http://jp.youtube.com/
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(甲斐祐樹)
2007/08/02 19:19
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