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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
任天堂岩田氏「ゲーム人口の継続的拡大にはネット接続が重要」

 10月10日に開催された「Nintendo Conference」では、任天堂取締役社長の岩田聡氏が、ネット機能を活用したゲーム人口拡大の取り組みや今後の展開について説明。また、専務取締役の宮本茂氏は、12月1日発売の「Wii Fit」のデモを行なった。


DSとWiiの販売で「ゲーム人口の拡大」戦略を展開

任天堂の岩田聡取締役社長
 岩田氏ははじめに、これまで任天堂が基本戦略として進めてきた「ゲーム人口の拡大」について説明。戦略の第1ステップとして発売した携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」により、CESA調査による日本のゲーム市場規模は10年ぶりに増加へ転じたほか、「ポケットモンスター ダイヤモンド/パール」は全世界で1,400万本を出荷。ニンテンドーWi-Fiコネクションを通じて2,000万匹ものポケモンが交換され、世界中のDSユーザーの間でコミュニケーションが進んでいるとした。

 DSに次ぐ第2ステップとして発売されたのが、家庭用の据え置きゲーム機「Wii」。2007年はゲーム市場全体の売上高が前年比で25%増加した中で、WiiとPS3という新ハードの発売によって据え置き機の売上が5倍に成長。2007年における任天堂のプラットフォームは49%の伸びで、ゲーム機全体の任天堂シェアも64%に上昇したとした。

 一方で、「任天堂のゲーム機は任天堂のソフトばかり売れるというご批判がある」とコメント。「DSに関しては任天堂が先行して投資していたため、DSソフト市場の3/4が任天堂とポケモンのタイトルという状況。ご批判は無理もない」と認めた。

 しかし、最近ではソフトメーカーが過去に類を見ないほどDSへの投資を本格化しており、「2007年になって任天堂中心の状況は変わりつつある」と説明。「DSソフト市場の拡大とともにサードパーティーのシェアも拡大する」とし、Wiiに関しても「現状はハードが発売されたばかりでまだ任天堂のシェアが高いが、これもいずれDSと同じように変化するだろう」との見通しを示した。


日本のゲーム市場規模は10年ぶりに拡大 ニンテンドーWi-Fiコネクションを通じて2,000万のポケモンが世界中で交換

ゲーム市場における任天堂シェアが成長 DSソフトは任天堂以外のシェアが伸びる

ゲーム人口拡大は「一過性」でなく「継続」が重要

世帯あたりユーザー数と女性比率が高い任天堂のプラットフォーム
 こうした取り組みを踏まえた上で、岩田氏は任天堂が独自に行なっている市場調査のデータを紹介。ゲーム機の売上だけではユーザーの年齢や性別、人数などが正確につかめないとの考えから、東京と大阪で毎年2回、3,000人規模で実施している面接調査の結果を紹介した。

 2005年にはニンテンドーDSやnintendogsが発売されていたものの、携帯ゲーム機は「ゲームボーイアドバンスの存在感があった時期」(岩田氏)であり、この頃の年齢層は低年齢層が中心。一方で2007年のデータではDSのユーザー層が幅広い年齢層に広がっており、据え置き機のWiiにおいても同じ傾向が見られるという。また、世帯あたりのユーザー数もWiiが3.5、DSが3.0と「史上もっとも高い数値」とであるほか、どちらも女性の比率が50%を上回っており、岩田氏は「女性の支持をいただいたことはゲーム人口拡大と活性化に大きな力となった」とした。

 こうした施策によりユーザー層を拡大してきた任天堂だが、岩田氏は「お客様はいずれ飽きてしまうもの。業界でもこれは一過性のブームではないかという声もある」と指摘。「このままのアプローチを漠然と続けているだけではいけない。年間を通じて商戦期のような状況が続くと考えてはいない」とし、DS、Wiiという新型ゲーム機投入に続く第3のステップとして「継続的なゲーム人口の拡大」を目標に掲げた。


ニンテンドーDSのユーザー人口 Wiiのユーザー人口。「台数は300万程度だがDSとほぼ同じ傾向」(岩田氏)

Wiiのネット接続が継続的なゲーム人口拡大の重要な鍵に

Wiiのコンセプト
 「継続的なゲーム人口の拡大」の具体的な施策を語る前に、岩田氏はWiiを開発するにあたって設定した「1.家族とゲーム機の関係を変える」「2.テレビのゲーム機の関係を変える」「3.インターネットとテレビの関係を変える」というコンセプトを紹介。「1に関しては家庭内ユーザーが増え、2に関してもWiiのリビングルーム設置率が83%を超えるなど一定の成果を見せた」と評価した上で、「問題は最後のインターネットにある」と指摘した。

 任天堂の調査によれば、Wiiのネット接続率は40%で、「半分以上が接続していない状態」。岩田氏は「Wiiはネット接続でより楽しめるゲーム機で、ネット接続している人のほうが満足度が高いという調査結果も出ている」と説明。「ブロードバンドの世帯普及率は50%を超えている。また、Wiiがリビングに設置されている率が83%という数値から考えると、Wiiのネット接続率は満足水準ではない」とした。

 こうしたネット接続率が低い要因として岩田氏は「接続の技術的・心理的障壁と、それを克服するソフト不足」が課題だと指摘。技術的な面に関してはNTT東西と共同で、Wiiのネット接続に関するコールセンターを開設。新規回線手配から家庭での機器セットアップまでを提供する予定で、この詳細は後日発表するという。

 ソフト不足という面に関しては、過去のゲームタイトルをWiiでネット配信する「バーチャルコンソール」を紹介。「現時点で203タイトルを用意し、販売総数は世界全体で780万ダウンロード」との成果を示したのち、次の展開として新たに2008年3月から開始する「Wiiウェア」と発表した。


Wiiのネット接続率は40% バーチャルコンソールのダウンロード数は780万

Wiiのネット接続率向上への取り組み NTT東西と共同でコールセンターを設置

Wiiウェアでパッケージ販売を補完。Wiiチャンネル機能も拡充

Wiiウェアのメリット
 Wiiウェアは、バーチャルコンソールと同様の仕組みを用いて新作タイトルをWii向けに配信するサービス。岩田氏は「ソフト開発は参入リスクが巨大化しており、すぐれたアイディアが形にならないこともある。また、パッケージ販売も重要だが、パッケージソフトには自然とボリュームを求めてしまう」と指摘。「テトリスのようなシンプルで愛されるソフトが世にでるチャンスがほとんどなくなってしまう」との危惧を示し、「Wiiウェアはパッケージを補う新たな販売方法」とした。

 Wiiウェアは「メーカー規模にかかわらずアイディア優先のゲーム開発機会を作り出し、ソフト内容に応じて柔軟な価格付けができる」と説明。また、「在庫制約がなく機会損失もない。これはすでにバーチャルコンソールで実績を上げている」とし、ポイントを購入してダウンロードする仕組みにユーザーが慣れてきていると説明。「ゲーム開発者出身として、Wiiウェアは未来のゲーム開発者人口拡大に貢献できる」との展望を示した。

 Wiiウェア以外に、Wiiのチャンネル機能拡充も発表。11月より新たに「Miiコンテスト」「みんなのニンテンドーチャンネル」を開始する。Miiコンテストチャンネルは、ユーザーが作成したMiiを投稿できる広場を用意し、投稿されたMiiを他のユーザーが持ち帰ることも可能。テーマに沿ったMiiを審査することもできる。

 「みんなのニンテンドーチャンネル」は、ゲームに関する映像や体験版を楽しめるサービス。現在家電量販店などに設置された専用端末「DSステーション」で配布していたDSソフトの体験版などをみんなのニンテンドーチャンネルで配信するほか、実際にプレイしたソフトに1回だけ投稿できる仕組みを用い、収集したデータからユーザーの嗜好にあったソフトを紹介する機能なども用意する。ユーザーの確認を得た上で、Wiiに保存されたプレイ履歴を集計して、全国でそのゲームがどれだけ遊ばれたかを確認できる機能も用意される。


ポケモン牧場チャンネル(仮) ドクターマリオ&細菌撲滅

スターソルジャー 小さな王様と約束の国 ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル

miiコンテストチャンネル みんなのニンテンドーチャンネル

マリオカートは最大12人対戦。「スマブラX」もネット機能を重視

Wii Fit
 今後発売を予定する新作ゲームタイトルでは、Wiiで健康管理できる「Wii Fit」をはじめに紹介。「詳しくは宮本(専務取締役)が後で説明するが」と断った上で、「Wii Fitを使うのに毎回ディスクから起動するのでは、他のゲームで遊んだ時など交換が面倒になり続かなくなってしまう」と説明。Wii Fit専用のチャンネル機能をインストールすることでディスクがなくともWii Fitがプレイできるという機能を示し、「こうしたインターネットを使わないチャンネル拡充も進めていく」とした。

 今後の展開として任天堂が重視するのは、「初心者と熟練者の両方を満足させる」アプローチ。その一例としてタッチペン操作によるDS向けゼルダ「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」を紹介し、「今までのゼルダは初動で売れるタイプだったが、今作は長期間売れ続けている」と説明。また、既存のゼルダシリーズの中では女性比率が圧倒的に高く、「ニュースーパーマリオブラザーズやおいでよ どうぶつの森などでDSに触れた人が購入しているのではないか」と指摘。一方、「タッチペン操作を不安に思われていた熟練者層にも満足いただいている」とした。

 11月1日に発売される「スーパーマリオギャラクシー」もこうした初心者と熟練者の両方をターゲット。「3Dゲームは酔ってしまうという人もおり、誰でも遊べる3Dゲームの開発は難しいが、それは挑戦したい長年の夢でもあった」とコメント。2人同時でプレイできる「アシストモード」を「アクションゲームの2人同時プレイの新しい姿」と評した上で、「あまりアピールしていないが、ボリュームも上級者に十分満足いただける」とした。

 2008年春発売の「マリオカートWii」ではWiiリモコンを使ったハンドル操作とすることで、「テレビゲームはしないが日常ハンドルを持っている人もいる。そういった人の敷居を下げる直感操作」を狙う。マリオカートDSで好評だったというオンライン対戦も最大12人対戦と強化、「DSで課題だったマッチングスピードも向上している」とした。

 「しばらく詳細を発表していなかったが」と断った上で、Wiiリモコンを使ってオーケストラを指揮する「Wii Music」も披露。また、「大乱闘スマッシュブラザーズX」は「任天堂の歴史をすべて詰め込んだソフト」と評価した一方、「ファンの期待に応えられるよう徹底的に作り込んだために延期させていただくことをお詫びしたい」としながらも、発売日を2008年1月24日と公表。オンライン機能では「対戦が話題だが、対戦だけでなくオンラインでの共有が大きなテーマ」と説明した。


スーパーマリオギャラクシー マリオカートWii。本作では2輪車も登場

Wiiミュージック 新たにセガのキャラクター「ソニック」の参戦が決定した「大乱闘スマッシュブラザーズX」

宮本氏がWii Fitをデモ。「サプリメントとして楽しむ変わったゲーム」

自身や岩田社長、Nitendo Of America(NOA)社長のレジー氏のMiiが印刷されたTシャツを披露する宮本氏
 コンファレンスの後半では、宮本茂専務取締役が12月1日発売のWii Fitをデモ。2006年に開催された「Wii Preview」でも司会を務めた中井美穂が今回も司会を担当し、宮本氏が「去年よりスリムになったと思いませんか?」と話しかける形でWii Fitのデモがスタートした。

 デモにはスポーツコメンテーターでオリンピック金メダリストの森末慎二と、モデルの相沢紗世が登場。Wiiフィットで重心を保つデモとBMI測定のデモでは、重心が乱れがちでBMIも「太りぎみ」と判断された森末慎二に対し、相沢紗世は体の重心をほぼ真ん中にたもちつつ、BMIも「やせすぎ」をギリギリ上回る「標準」と診断。左右のバランスで年齢を診断するデモでも、相沢紗世が実年齢を2歳下回る「27歳」となったものの、森末慎二は5回の計測のうち1回が計測不能となったこともあり「74歳」と診断され、残念がっていた。

 診断以外にもスキーのジャンプやサッカーのヘディング、フラフープを使ったミニゲームのデモも披露。ゲーム以外にも筋肉トレーニングやヨガのポーズなど、40種類以上のメニューが用意されているという。森末慎二は「単純で楽しいけれど負けると悔しい。思わず汗をかいてしまう」とコメント。宮本氏は「Wiiフィットはゲームというより家族の健康チャンネル。サプリメントとして楽しんで欲しい、非常に珍しいゲームです」と説明した。


Wii Fitに同梱する「バランスWiiボード」を紹介 司会は中井美穂、ゲストは 森末慎二と相沢紗世

他のメンバーの「なかなかやせられない」という会話に「私も最近やせにくくなってきた」と合わせる相沢紗世 「まだまだ鍛えてますよ」と筋肉をアピールする森末慎二

宮本氏がスキージャンプの手本を披露 ヨガを体験する森末慎二

立ち方のバランスが評価された相沢紗世 最後は宮本氏を除く3人でフラフープ勝負。商社は300ポイントを超えた相沢紗世

関連情報

URL
  任天堂
  http://www.nintendo.co.jp/

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(甲斐祐樹)
2007/10/10 19:54
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