シックス・アパート、日本ベリサイン、野村総合研究所は28日、日本国内でOpenID技術を普及させるため、「OpenIDファウンデーション・ジャパン(仮称)」の設立に向けた活動を開始したと発表した。
■ 設立時にはミクシィやヤフー、ニフティ、ライブドアなども参加
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(左から)シックス・アパートの関氏、野村総研の崎村氏、OIDFのリコードン氏、日本ベリサインの石川氏
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OpenIDは、共通のユーザーIDを使って複数企業のWebサービスを利用できる技術で、米SixApartが2005年に開発した。OpenID対応サービスでID取得済みのユーザーは、他の対応サービスを利用する場合でも新たにユーザー登録を行なうことなく、同一IDでサービスの利用が可能になる。
2007年6月には、米国で非営利法人「Open ID Foundation(OIDF)」が設立。OpenID関連の新仕様の策定や、OpenID技術の普及・啓蒙活動などに取り組んでいる。また、米IBMやGoogle、Verisign、Microsoft、Yahoo!が法人理事として参加している。なお、米国の現況としては、1万以上のWebサイトがOpenIDに対応済みで、OpenIDに対応するID数は2億5,000万を超えるという(2008年2月7日時点)。
今回、設立の準備が発表された「OpenIDファウンデーション・ジャパン(仮称)」は、シックス・アパート、日本ベリサイン、野村総合研究所(野村総研)の3社が発起人。設立は4月を予定しており、ミクシィやヤフー、ニフティ、ライブドア、テクノラティジャパン、アセントネットワークス、イーコンテクスト、インフォテリアが参加を表明。また、IBM、Google、Microsoftも米国法人が賛同を表明している。
なお、同様の組織としては非営利団体「OpenID Europe」が設立済み。同団体では、欧州地域におけるOpenIDの普及・啓蒙強化に向けた活動を行なっている。
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日本団体の発起人と参加表明企業
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米国でのOpenID対応サイト状況。2007年以降に急速に伸びている
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■ 崎村氏「普及促進とともに、日本側のニーズをフィードバックする」
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OpenIDの概要
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OpenIDに対するニーズ
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発起人代表を務める野村総研の崎村夏彦氏によれば、2007年10月頃からOIDFとOpenID Europe、発起人3社に加えて、米Yahoo!、Yahoo! JAPANの間で、日本におけるOpenIDの商標・ブランディングを守る方策を、メーリングリストで議論し始めたという。
その後、12月初旬にOIDFの理事らと方向性を確認し、設立準備に向けた調整を開始。そして、2008年2月にOIDF許諾のもとに、同理事会と連絡を取りながら4月の設立を目指した活動を開始したとしている。なお、日本国内におけるOpenIDの具体的な利用状況も今後精査していく。
崎村氏は、「OpenIDに関する情報や実装方法、議論の多くは英語がベースになっている」と言語の壁を挙げたほか、各国ごとに法制度や文化的な違いがある点を指摘。このため、日本でのニーズをフィードバックするのは単独では難しく、「団体が設立されることで、スムーズに行なうことが可能になる」と語った。日本組織では、国内の法制度や文化を熟知した上で、OpenIDの正しい情報の伝達、普及・啓蒙を日本語を使って行なう考えだとした。
参加企業の増加については、「OpenIDのメンバーで、日本に活動拠点を置いている企業には是非参加して貰いたい」と呼びかけ。日本に拠点がない場合でも積極的に受け入れる方針を示した。なお、発起人副代表であるシックス・アパートの関信浩氏は「約3~4週間かけて複数の企業にコンタクトを取ったが、いずれも非常に高い関心を持っていた」と付け加えた。
崎村氏はまた、野村総研が2007年に実施したWebサービスにおけるID利用状況に関するアンケート結果を報告。それによれば、15~20程度のIDを利用しているのが現状で、確実に記憶できるID・パスワード数は「2~3組」が56%と最多だったという。また、利用登録が必要なサービスの登録状況は約1割程度に留まっている点なども紹介した。
その上で、OpenIDを1度取得すれば「IDの管理が容易になる」としたほか、Webサービス企業側でもOpenID対応で多くのユーザー獲得や維持が可能になるメリットを挙げた。一方、1IDを他サービスで使用するリスクに対しては、「どのような手法が安全なのか、認証プロバイダー側の認証が安全に行なわれるかを考えている」と語り、ベリサインなど一部企業ではワンタイムパスワードやビデオ認証などといった強固な手法を取り入れているケースを挙げた。
■ OIDF副会長、ヤフーなどが当初から参加する日本団体の拡大に期待
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日本側団体の具体的な活動案
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発表会にはOIDFで副会長を務める、米SixApartのデビッド・リコードン(David Recordon)氏も出席。「米国や欧州では、オープンソース開発者の間から利用されはじめ、Web2.0企業、大企業へと採用が広まったが、日本ではヤフーがすでに参加を表明している」と語り、「米国・欧州とは異なる形でOpenIDが普及するのではないか」と期待を示した。
2007年12月には「OpenID 2.0」が策定されており、リコードン氏は「従来バージョンと比べて個人情報をより強固に管理できるようになったほか、認証レベルの採用方法も選択が可能になる」と説明した。
なお、Yahoo!などではOpenIDは発行するものの、他社IDの受け入れ対応は行なっていない。「Googleの一部サービスでは発行と受け入れの両方を行なっており、大手企業としては良いモデル」と指摘し、「Yahoo!側でも、それほど待つことなく同様のモデルになるのではないか」と語った。
■ URL
ニュースリリース
http://www.sixapart.jp/press_releases/2008/02/28-1130.html
OpenID
http://openid.net/
(村松健至)
2008/02/28 14:49
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