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米Airgo Networks、既存の11a/g規格で100Mbps超を実現する無線LANチップ
Mini PCIタイプのリファレンスボード。向かって上の部分に2.4GHz帯用と5GHz帯用のアンテナが3組搭載されている。アンテナそのものは市販のパーツだという
ワイヤレス技術開発を専門に手がける米ベンチャーのAirgo Networks社は、既存の無線LAN規格であるIEEE 802.11a/gで100Mbps以上のリンク速度を可能する無線LANチップを開発した。年内にも正式発表し、無線LANシステムベンダーへの出荷を開始する予定だ。
無線システムで通信品質の低下を招いていた反射波や回析波などのマルチパスを逆に利用することで、高速化を図る仕組み。具体的には、アクセスポイントやクライアントに複数のアンテナを搭載し、これらに入ってくる電波を、同社が独自開発した「マルチアンテナ・デジタルシグナルプロセッシング(DSP)技術」で同時に処理する。
従来、このような処理は大規模なシステムでしか実現できなかったが、Airgoが開発したアルゴリズムにより、無線LAN製品に搭載できるまでにサイズダウンが可能になったという。同社マーケティング担当ディレクターのCarl Temme氏は、マルチアンテナDSP技術では「他社よりも3年先を進んでいる」としている。
Airgoでは、IEEE 802.11a/b/gに対応したリファレンスボードをすでに開発しており、ベンダー各社向けにデモンストレーションを行なっているという。17日には、Atheros Communications製のチップセットを搭載した製品との比較デモを報道関係者に公開し、そのパフォーマンスの違いをアピールした。
デモは、軽量鉄骨造りの2階建て住宅の1階にあるリビングルームにアクセスポイントを設置し、ノートPCで各部屋でのリンク速度を測定するというもの。アクセスポイントから3~4メートルほど離れた同じリビングルーム内では、Atherosが23Mbps程度だったのに対し、Airgoでは約73Mbpsに達した。また、もっとも電波状況が悪いという2階の端の部屋では、Atherosは出ても数十~数百kbpsでリンク不能になってしまったのに対し、Airgoは30Mbps弱に低下するに止まった。なお、デモはいずれも5GHz帯のIEEE 802.11aモードで行なわれた。2.4GHz帯のIEEE 802.11gモードを使えば、さらに性能は上がるとしている。
デモが行なわれた住宅の間取り図
各部屋からのリンク速度データ
AirgoのマルチアンテナDSP技術では、通信速度の高速化とともに、通信距離も大幅に延長される。同社のシミュレーションでは、54Mbpsの性能を出せる距離が5倍に伸びるという。リンク状態がアンテナの方向に左右されないのも特徴だ。また、従来のIEEE 802.11a/b/gとも互換性を持っているため、同仕様の既存のアクセスポイントやクライアントからでもレガシーモードで接続できる点もメリットだとしている。
ビジネスデベロップメント担当副社長のFrank P. Howley氏は、IEEE 802.11a/b/g対応製品があふれる現在の無線LAN製品市場について差別化ポイントが見あたらないうえ、「ベンダー自身も現在の無線チップセットの性能には満足していない」と指摘。無線LANチップセット市場での同社のシェア拡大に自信を見せている。
ただし、今後すぐに無線LAN製品がこのようなマルチアンテナ技術を採用したものに置き換わるわけではないようだ。これについてHowley氏は、3ComがEthernetのチップセット市場に参入した当時の事例になぞらえた。「3Comのチップはパフォーマンスが高いが、価格も高かった。しかし、コストパフォーマンスがもっとも高かったからシェアを拡大した」とし、Airgoの無線LANチップセットも同じ位置づけだと説明する。既存の低価格な無線LANシステムが今後も普及する一方で、高性能をうたう上位製品に採用されるものと思われる。
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URL
Airgo Networks
http://www.airgonetworks.com/
(永沢 茂)
2003/07/17 21:52
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