SNS「MySpace Japan」を運営するマイスペース株式会社は20日、新人アーティスト/クリエイターを発掘・支援するためのオフィシャルパートナーシップ制度を発足し、エイベックス・エンタテインメントやHMVジャパンをはじめとする33社が参加すると発表した。オーディションやコンテスト、イベント、海外進出プロモーションなどの支援策を推進し、CDデビューや番組出演といった「才能の出口」となるビジネスの拡大を目指す。
参加企業は、上記2のほか、EMIミュージック・ジャパン、トイズファクトリー、ビクターエンタテインメント、フォーライフミュージックエンタテイメントといったメジャー音楽レーベルをはじめ、インディーズレーベルやCDショップ、芸能プロダクションのホリプロ、放送メディアのスペースシャワーネットワーク、出版社の竹書房のほか、映画配給会社や映像・アニメ制作会社、ライブハウス、アパレル会社など広い分野に及ぶ。さらに20社と現在話し合いを進めており、1カ月以内に参加表明を見込んでいるという。
■ プロフィールページに、ライブ配信やCD販売のアフィリエイト機能提供
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プロフィールページにおけるCD/DVDアフィリエイト販売画面
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プロフィールページで利用できる生中継ツール
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同日、都内で開かれた記者会見には、マイスペースのほか、パートナー企業のHMVジャパンなどが出席し、具体的な取り組みを説明した。
例えばHMVジャパンでは、渋谷店における店内イベントや街頭ビジョンによる宣伝のほか、Webサイト「HMVオンライン」でも連携するアーティストのプロフィールページなどにCD/DVDのアフィリエイトリンクを掲載したMyストアを表示し、HMVオンラインから購入できるようにする仕組みだ。HMVジャパンの雨宮雄一代表取締役社長は、同店の顧客が音楽のコアなファンが多いことを挙げ、アーティストの最新情報などを提供するにあたり、「MySpaceでアーティストとファンをつなげる場を提供できるのではないか」と述べ、コラボレーションに至った理由を説明した。
また、ライブハウスを運営するイクスピアリからは、舞浜にある「Club IKSPIARI」の支配人である竹川潤一氏が出席。「ライブハウスの出演者を見つけるツールとしてMySpaceを使っている」と述べ、これまで海外のアーティストが多かったが、国内のアーティストも増えている状況にあると説明した。竹川氏がMySpace上で知り合ったアーティストらによるコンピレーションCDも近く発売予定だという。
映像コミュニケーション事業を手がけるブイキューブとは、MySpace上の映像配信システムで連携する。特別なソフトをインストールすることなく、プロフィールページ上でライブイベントや記者会見の模様を中継できるようにするという。これは、MySpace上で配信したX JAPANの記者会見で採用実績があるもので、これを他のアーティストにも有料で利用できるようにしていく。ブイキューブの間下直晃代表取締役社長は、X JAPANの記者会見をMySpace上で告知したのが前日だったにもかかわらず、1万人が視聴したと報告。今後は、数十人規模の小さなライブから大規模なライブまで対応するとともに、音質や画質の向上を図る予定だ。
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HMVジャパンの雨宮雄一代表取締役社長(右)、イクスピアリ「Club IKSPIARI」支配人の竹川潤一氏(左)
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ブイキューブの間下直晃代表取締役社長(右)、フォーライフミュージックエンタテイメント宣伝本部宣伝部部長の関光志氏(左)
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■ MySpaceの「本当のすごさ」は機能面ではないと大蘿社長
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マイスペースの大蘿淳司代表取締役社長(左)、同マーケティング部エグゼクティブプロデューサーの後藤匡氏(右)
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記者会見の最後にはSweet Vacationも登場、ライブを行なった
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マイスペースの大蘿淳司代表取締役社長は、日本でもMySpaceにおけるアーティストやクリエイターの活動が活発化していることをアピール。登録している日本のアーティストやクリエイターは5万5,300組に達したとともに、月間3,500組が新規登録し、そのペースも毎月増加していることを明らかにした。
具体的な事例としては、MySpaceで音楽活動を開始した後に人気が高まり、4月にメジャーデビューした「たむらぱん」、さらに今夏メジャーデビュー予定の「Sweet Vacation」を紹介。たむらぱんは、6カ月でMySpaceのフレンド登録を1万人獲得したと言い、以前はライブをやっても数人しか集まらなかったのが、バイラル効果もあり、MySpace上で告知することで数百人規模のライブハウスがすぐに埋まったり、自主制作CDが完売するほどになったという。「MySpaceで支持基盤を作り、それをもとに大きく羽ばたいていく事例が日本でも出てきている」。
さらに、MySpaceでは世界でデータベースが統合されている点も強調。プロフィールを日本語・英語で併記することで「日本にいながらにして、世界を狙える」とし、MySpaceを足がかりに米国に進出したPOLYSICSなどを紹介した。なお、MySpaceのフレンド数に制限はないため、世界には300万人のフレンドがいる事例もあるとう。「もはや、プロフィールがメディアになっている」とした。
ただし大蘿氏は、機能面だけがMySpaceの「本当のすごさ」ではないと強調する。「MySpaceでは、いろいろな人が作品に対する感想や励ましの声を書いており、感動を共有したり、人をつなげる場になっている。それをアーティスト自身が見て、さらに創作意欲を高めている」。
大蘿氏は、これまで個々に発生していたこのような流れを、「太い流れにしたい」と述べ、今回のオフィシャルパートナーシップ制度の目指すところを表現した。
■ MySpaceは、実名でなくても楽しい場
記者会見の質疑応答では、ちょうど前日にSNS「Facebook」が日本語版を開始するにあたり、実名登録による差別化を掲げたことに関して、大蘿氏は「いちがいに実名がいいとか悪いという議論ではない」との考えを示した。
大蘿氏は、SNSの市場がいろいろなタイプに分化し始めており、目的によっては嘘の経歴では不都合があり、実名でないと成り立たないサービスもあることを認めながら、「どこまでプロフィールを明かすのが心地いいのかは、サービスによって違う」と指摘。「MySpaceはイベント会場のようなもので、あるアーティストのライブに行った時、互いに名前や出身地、職業を知らなくても、ファン同士で交わされる会話は非常に楽しい。我々が目指しているのはそのような場。極端な話、ニックネームで呼び合ってもかまわない」と説明した。
■ URL
MySpace Japan
http://jp.myspace.com/
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(永沢 茂)
2008/05/20 19:18
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