Broadband Watch logo
最新ニュース
【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
コミュニティFMのラジオ番組をネットで同時聴取できる「SimulRadio」

 コミュニティFM局の一部が参加する「Community SimulRadio Alliance(コミュニティ・サイマルラジオ・アライアンス)」は27日、地上波放送と同時にインターネットで番組を配信するサービス「SimulRadio」に関する発表会を開催した。SimulRadioサービスは6月2日より順次開始され、聴取は無料。


配信準備を進めるのは全国19局。来年には100局超の参加を期待

木村太郎氏
 「SimulRadio」が行なうサイマル配信は、1つの番組をラジオやインターネットなど複数のメディアに向けて同時に提供するというもの。サービス名称である、SimulRadioは「simulataneous(同時に)」と「Radio(ラジオ)」を造語になる。

 Community SimulRadio Alliance(コミュニティ・サイマルラジオ・アライアンス、以下CSRA)によれば、FMラジオによる地域密着型のコミュニティ放送局は全国で200局以上。ただし、これら放送局の中には放送エリア内であっても電波が到達しない地域があり、平成の大合併によって電波が届かないエリアが広がってしまった地域もあるという。

 コミュニティ放送自体は、1991年に行なわれた第3次行革審の「豊かな暮らしを創出するために地域にきめ細やかな情報提供が必要である」点を受けて、翌1992年に制度化された。しかし、上記のような放送エリアに関する問題がある点などから、CSRAでは制度の主旨に届かないと言えると指摘する。

 その上で、インターネットを活用することで「放送の補完」を行なうことを決定。2003年からインターネット配信する場合の音楽著作権使用料に関して権利者団体と調整を行ない、2008年4月に環境整備を完了。4月2日に説明会を開催した結果、第1グループとして19局がインターネット配信に向けて準備を行なっている。

 CSRAの正式発足は6月2日となるが、27日の発表会では逗子・葉山コミュニティ放送(湘南ビーチFM)の代表取締役社長を務める木村太郎氏が代表に就任することが明かされた。同団体では今後、サイマルラジオに使用する著作物使用の対応をはじめ、付加価値の模索、サイマルラジオ受信機の研究、将来のメディアスタイル研究などを目的に活動を進めていく。

 6月2日当初は、実証実験から参加している湘南ビーチFMと、フラワーラジオ(埼玉県鴻巣市)、三角山放送局(北海道札幌市)がサイマル配信を開始。6月中には10局まで拡大する予定となる。木村代表は今後の期待値として、「年末までに倍増、2009年には100局がサイマル配信をするのではないか」と述べた。

 配信はストリーミング形式で、ファイル形式はWindows Media Audio、ビットレートは24kbps(ステレオ)。なお、サイマル配信はラジオ番組と比較して若干の遅延が生じる。

 サービス提供にあたっては、フリービットがコミュニティFM局向けの「デジタル放送パッケージ for SimulRadio」を構築。CSRAの正式推奨環境にも選定された。同パッケージは、FTTHサービスとエンコーダPC、ストリームサーバー、専用サポート窓口を一括提供するものになる。

 フリービットの石田宏樹 代表取締役社長によれば、「原価ベースでは月額7万円前後になるが、合わせて開始するアドネットワーク『Ad SiP』に参加していただければ、月額5,000円で提供する」とした。なお、Ad SiPは各コミュニティFM局から1日2本、80秒分の広告枠を受けて、フリービットが実施する通話報酬型広告サービスになる。


フリービットの石田社長。木村氏とは学生時代から交流があるという フリービット子会社のDTIが手がけたインターネット放送における歩み 「デジタル放送パッケージ for SimulRadio」

同時3,000ストリーム超のアクセスにも対応する エンコーダPCにはソニーのTVサイドPC「VAIO TP-1」を利用 フリービットのEmotion Linkを活用してリモートサポートも行なう

ネットのサイマル配信によって、ラジオの可能性拡大も

SimulRadioのWebサイト。各局の番組は同サイトを通じて配信される

発表会にはJASRACの菅原氏も出席し、祝辞を述べた
 木村代表は、湘南ビーチFMを開局した1996年当初を振り返り、「放送に使用する出力は0.25Wで、半径500mまで届くか届かないかといったところだった」とコメント。このため、当初から補完的な手段で放送を広めることはできないかと、インターネット配信などに関する取り組みを行なっていたという。

 そうした中で、1997年の著作権法改正で自動送信可能化権に規定が盛り込まれるなど動向が変化し、木村代表は2004年頃から社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC)の菅原端夫 常務理事などから協力を得ながら「インターネット配信における解決方法」を探って勉強会を開始したという。

 サイマルラジオでは、ラジオ番組で紹介した楽曲も配信されるが、この場合、放送とは異なる権利(自動公衆送信権)をベースに権利者団体と取り決めを行なう必要がある。権利者団体の1つであるJASRACでは、すでに規定が定められており、サイマルラジオを行なう各社は同規定にもとづいて年額5万円(無料配信・情報量なしの場合)を使用料として支払う。

 一方、CPRAとRIAJではコミュニティ放送局の番組放送とストリーミング配信に関する使用料規定がなかったため、SimulRadioが利用者代表として約2年間にわたって交渉を実施。この結果、「放送の補完目的」のための配信であれば、地上波放送の2次使用料と同額(無料配信・情報量なし、年額5万円から上限24万円)の使用料を支払うことで合意に達したという。なお、湘南ビーチFM(年間売上高3,000万円)の場合では、CPRAとRIAJに年額6万5,000円ずつを支払っており、これと同額をインターネット配信の使用料として支払う形になるという。

 木村代表は、インターネットを利用したラジオのサイマル配信に関して、「実証実験を通じて気が付いたのは、放送波を利用した放送よりも音質が良かったこと」とデジタル配信によるメリットを指摘。これにより、「新たなメディアとして成立する可能性もあり、デジタル化によって私たちのコンテンツは、携帯電話やWiMAXなど多様な出口が見えてくるのではないか」と、ネット配信によるラジオの可能性拡大にも期待を寄せた。


関連情報

URL
  SimulRadio
  http://www.simulradio.jp/
  フリービット ニュースリリース(「デジタル放送パッケージfor SimulRadio」)
  http://www.freebit.com/press/pr2008/20080527_01.html
  フリービット ニュースリリース(「Ad SiP」)
  http://www.freebit.com/press/pr2008/20080527_02.html


(村松健至)
2008/05/27 14:59


BB Watch ホームページ
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.