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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
KDDI、「愛・地球博」向け無線LAN機能など搭載のハイブリッド情報端末

 2005年日本国際博覧会協会は、来年3月~9月に愛知県で開催される「2005年日本国際博覧会(愛称:愛・地球博)」で用いられるハイブリッド情報端末「愛・MATE」を発表した。KDDIが受託開発したもので、機能が異なる2機種が用意され、どちらもOSにWindows Mobileを採用している。

 同協会は8日、都内で記者会見を開催。同協会事務総長の中村 利雄氏から「愛・MATE」開発の目的やアテンダントのコスチュームデザインが紹介されたほか、KDDI 経営戦略本部 新ビジネス推進部長の森 克実氏から「愛・MATE」の仕様が説明された。


端末はオレンジとブルーを用意 オレンジはCDMA 1X WIN、IEEE 802.11b準拠の無線LAN、Bluetoothなどの複数の通信手段をサポート

来場者向けサービス、スタッフの業務支援に活用

あわせてアテンダントのコスチュームも公開された
 今回発表された「愛・MATE」は、愛知万博の会場内でスタッフや来場者に使用される情報端末。3,800台用意される「愛・MATEオレンジ」と、1,200台用意される「愛・MATEブルー」の2機種というラインナップになっている。KDDIがユーザーインターフェイスや全体的なデザインなどの仕様を策定し、富士通が端末製造を担当。開発にあたっては、富士通製PDA「Pocket LOOX」の開発チームが協力したほか、デザイン面ではKDDIの「au design project」担当者である小牟田 啓博氏が監修したという。

 幅広い業務に対応できるように、OSとして「Windows Mobile 2003 Second Edition Software for Pocket PCs」を搭載している。

 中村事務総長は、「愛・MATEは、アテンダントが第1線、つまり現場で使う端末。いわばパソコンと携帯電話がコンパクトな形で融合したもの。今回の博覧会では、先端技術を実証レベルで使い、来場者に体感してもらうことを考えており、愛・MATEはその一環」と説明。「愛・MATE」の活用によって、トランシーバーを中心に使ってきた従来の会場運営は、よりスムーズに行なえると語った。

 具体的な利用スタイルしては、どちらも来場者向けサービスと、スタッフの業務支援が想定されている。来場者向けサービスについては、「オレンジ」が日本館において、聴覚や視覚障害者へのバリアフリーサービス、あるいは外国人来場者向けの英文コンテンツサービスとして200台が来場者に貸与される。一方の「ブルー」は、長久手会場の日本館で、事前に同館のWebサイトで予約した来場者へ500台が貸与され、μ-chipを利用したコンテンツやサービスを味わえるようにする予定。

 また業務支援としては、「オレンジ」が通信機能を活かして、スタッフ間の連絡やメールによる一斉同報などPDAのような利用スタイルになる。「ブルー」は、各パビリオンの入り口において、アテンダントがμ-chip(ミューチップ)内蔵入場券をチェックして、予約確認などを行なうという。

 「愛・MATE」の概要を説明したKDDI森氏は、「愛知万博で実施することには、既存の携帯電話では対応しきれず、新たなモバイル端末が必要と判断した。幅広い利用スタイルを踏まえ、パソコンをベースとして開発した」と語った。Windows Mobileを採用したことによって、開発費の低減や開発期間の短縮が可能になったとしており、従来の携帯電話開発では1年半~2年かかるところが、今回は1年足らずで実用化できたという。


2005年日本国際博覧会協会 事務総長の中村 利雄氏 KDDI 経営戦略本部 新ビジネス推進部長の森 克実氏

オレンジとブルーが用意される 利用シーン例

オレンジとブルーの特徴

パソコンと携帯電話を融合させたとアピール

愛・MATEオレンジ
 「愛・MATEオレンジ」は、CDMA 1X WIN対応で、無線LAN(IEEE 802.11b)やBluetooth(バージョン1.2)もサポート。ACCESSの「NetFront3」をベースにした、パソコン向けサイトを閲覧できるフルブラウザやメーラーを搭載。FlashやJavaにも対応している。また、端末管理システムと連動しており、スタッフに新たな人員が参加した場合、システム側でアドレス帳を更新すると、ネットワーク経由で各端末のアドレス帳を書き換えられる。

 Bluetoothでサポートされているプロファイルは、現時点ではHeadsetとSerial Serial Port Profileの2種類。アテンダントがヘッドセットを付けて通話する際にBluetoothを用いるという利用シーンが想定されている。また無線LANとCDMA 1X WINという2種類のワイヤレスネットワーク通信では、自動的に通信方式を切り替える機能は用意されていないとのこと。パビリオン内と屋外とで用いられる端末は異なる予定で、セットアップ段階でどちらの通信方式を使うか、決めることになるようだ。音声通話については、基本的はCDMA 1X WIN方式によるものが利用されるとのことだが、無線LAN機能によるVoIPソフトの搭載も検討されているという。なお、ベースバンドチップとしてクアルコムの「MSM6500」が内蔵されている。

 画面内のメニューデザインは、一般ユーザーへの貸与が想定されていることもあり、ユニークなインターフェイスが採用されている。プレゼンテーションで披露されたトップメニューは、金魚鉢をモチーフにしたもの。泳いでいる金魚の数で電界強度を、漂う水草の数でバッテリー残量を表わしているとのことで、どちらも弱くなれば、数が減っていく。トップメニューは、金魚鉢のほかにも、愛知万博のシンボルマークをモチーフにした「カラーチップ」と、ドットの動きで表現する「ドットグラフィックス」が用意されている。またテンキーの数字を押すと、画面上にはダイナミックな動きで数字が表示されていくというギミックが用意されている。


画面サイズにあわせてパソコン向けサイトを表示できるフルブラウザ 「金魚鉢」と銘打たれたデザインの画面 万博のシンボルマークをモチーフにした「カラーチップ」。上下の弧で、バッテリー残量と電界強度を表現

こちらは「愛・MATEブルー」
 一方の「愛・MATEブルー」の特徴は、μ-chipリーダーを装備すること。オレンジと同じくWindows Mobile搭載だが、主な利用シーンがスタッフによる入場者チェックが想定されているため、通信機能は用意されていない。多くの来場者が詰めかけても、スムーズに入場処理が行なえるよう、「予約あり」「予約なし」「集合時間の間違い」と3種類のパターンに応じて、異なるバイブレーションが設定されている。画面を見つめることなく、リーダーに入場券をかざすだけで、手に伝わってくる感触から入場チェックが行なえることを目指したという。万一、入場券のμ-chipが読み取れなかった場合に備えて、タッチパネルから各入場券に割り当てられた数字を入力して、照合する機能も用意されている。

 全日程の入場券データが収録されているわけではなく、基本的に事前予約のある来場者をチェックすることになるため、当日分の予約データだけが端末内に保存されるという。


ハンドストラップ。ネックストラップも用意されるという 上部のCFスロットにμ-chipリーダーを装着

予約あり、と読み取ったときの画面 集合時間が異なる場合。バイブレーションのパターンも異なる 読み取れなかった場合は、入場券の番号を手入力

充実したハードウェア、和風をイメージしたデザイン

傾斜センサー搭載により、画面の天地を回転できる

ディスプレイはタッチパネル機能も備える
 ハードウェア面は、両機種のほとんどが共通仕様となっている。メインCPUはIntel PXA270 520MHzで、内蔵メモリはRAMが128MB、Flash ROMが64MB。ホスト・スレーブどちらでも機能するUSBポートを搭載するほか、傾斜センサーも内蔵されている。同センサーの働きによって、首から「愛・MATE」をぶら下げたまま、来場者に画面を見せた場合など、本体の天地が逆になっても、画面表示は回転して、閲覧しやすい状態をキープする。

 また外部インターフェイスとして、miniSDカードスロットとコンパクトフラッシュ(CF)スロットを装備。miniSDカードに保存されたコンテンツを楽しめるほか、CFスロットは、「愛・MATEオレンジ」では日立製1X WINカード端末「W02H」が、「愛・MATEブルー」では日立製のμ-chipリーダーが装着されている。

 ディスプレイは、2.8インチ、240×320ドット、65,536色表示でタッチパネル機能付きTFT液晶で、ディスプレイ右上に33万画素CMOSカメラを搭載しているが、現時点では対応アプリケーションが搭載されていない。どちらもテンキーを装備するほか、方向決定キーは圧力感知センサーが用いられており、なぞったり、タップしたりするといった操作も可能だ。

 バッテリーは、リチウムイオン電池(3.7V、1,950mAh)で、連続待受時間は約30時間、連続通話時間は約150分。「愛・MATEオレンジ」で無線LAN機能を利用する場合の駆動時間は約4時間、「愛・MATEブルー」でμ-chipリーダーを利用する場合の駆動時間は約3時間となっている。

 外観を見ると、端末の外側をぐるりと囲むように透明なアクリル素材が配されている。これは機能としてよりも見た目の印象を追求したために採用されたとのことで、端末開発を開始した当初、デザイナーが和風デザインをテーマとして、寒天や葛餅などをイメージしたことから生まれたという。端末前面を覆うパネルはゴム製とのこと。こちらも落下時の衝撃吸収という用途ではなく、手触りや質感の追求によって採用に至ったという。テンキーを押すと、青色のバックライトが光り、周囲のアクリルとあわせて、透明感を印象付ける仕上がり。

 大きさは67.4×155.3×25.2mmで、重さは「オレンジ」が約220g、「ブルー」が約190gで、携帯電話よりも二回りほど大きなサイズとなっている。


KDDIにとっては「絶好のテストマーケティング」

日本初のWindows Mobile搭載ケータイとアピール
 サイズや機能から見れば、携帯電話というよりもPDAに近い「愛・MATE」だが、パソコンをイメージして開発したという経緯から、KDDIは「パソコンケータイ」とアピール。森氏は「いつでもどこでもあらゆるサービスが利用できるというユビキタス時代に向けて、画期的な製品になったのではないか」と述べたほか、「愛知万博での利用は、良いテストマーケティングの場であり、事業化の検討を進めている」とも語り、将来的には「愛・MATE」を進化させた携帯端末の商用化もあり得るとした。

 一方、来場していたKDDI 取締役執行役員専務 長尾哲氏に話を聞いたところ、「ニーズ先行で開発され、非常に良い仕上がりの端末。ただし、商用化となれば、PDAが普及しない日本市場では、この手の端末がどれだけ受け入れられるか。一般向け端末としては、難しい面もあるだろう」と語る一方、「法人向けソリューションとしては期待できる。物流業の配送管理などでこのような端末へのニーズはあるだろう」とも述べた。


関連情報

URL
  ニュースリリース(KDDI)
  http://www.kddi.com/corporate/news_release/2004/1208/
  ニュースリリース(2005年日本国際博覧会協会)
  http://www.expo2005.or.jp/jp/N0/N2/N2.1/N2.1.133/


(関口聖/津田啓夢)
2004/12/08 20:04
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