総務省は、「平成16年度電気通信事業分野における競争状況の評価(案)」に対する意見募集の結果を公開した。光ファイバの在り方やIP電話に関して、事業者からさまざまな意見が寄せられた。
総務省は、平成15年度から電気通信事業の競争評価に取り組んでおり、平成15年度はインターネット接続領域を中心に評価が行なわれた。平成16年度はインターネット接続に加え、移動体通信やIP電話についても分析が行なわれており、競争評価を目的とした研究会が総務省主催で開催されている。
今回の競争状況の評価案は、これまで行なわれた競争評価の内容をとりまとめたもので、4月26日に意見募集が行なわれた。事業者からはこの評価案に関した意見が提出され、携帯電話・PHSなどの移動体通信事業では、既存事業者のNTTドコモおよびKDDIと、新規参入を目指すイー・アクセス、アイピーモバイル、ソフトバンクBBの3社との間で、垂直統合型の事業と水平分業型の事業に関して意見が繰り広げられている。
■ 光ファイバの開放に関してNTTとソフトバンクBBで意見が対立
光ファイバに関しては、NTT西日本がFTTHの設備開放について「自ら投資リスクを負って設備を構築するよりも借りる方が有利なルール」であり、さらには「NTT東西のみ採算割れの接続料金で貸し出し義務を負わせ、電力系事業者は自由な料金設定が可能な規制の在り方は中立性を欠く」と指摘。電柱や管路などもガイドラインに基づいて開放しており、電柱利用に関しては電柱添架手続きの簡素化に向けた取り組みが進んでいることから「光ファイバを敷設できる環境がいっそう容易になっており、指定電気通信設備の対象から除外すべき」と訴えている。
一方、 ソフトバンクBBでは「既存事業者と新規事業者がまったく対等な競争環境にある中では、新規事業者が新たな光ファイバを敷設するのは非常に困難」とコメント。競争の促進には設備開放が不可欠であり、設備ベースでの競争を進めていく際も、電柱の公平な利用に関するルールといった制度の整備が前提になるとした。
また、NTTが「コスト削減を進めても他社への回線貸出料の値下げに回るために投資インセンティブがない」としている点に対しても「投資の採算性はNTT自らの判断」「貸出料金は7年間の需要予測に基づいているほか、料金の見直しもあることから回収漏れは想定されない」「多くの事業者に貸し出した方がコストが下げられる」とのメリットを挙げ、NTTの意見を否定した。
KDDIは光ファイバに関して、総務省が「NTT東西はFTTHの料金を地域内で一律に設定しており、他事業者が存在せず独占的地位にある市場でも市場支配力は行使していない」としたのに対して、「営業体制などの経営リソースも有効競争を阻害する一因となり得るために留意する必要がある」と指摘。「価格面だけでなく、設備や営業面のルールから両面的に評価すべき」との意見を示した。
■ 050番号は「ロケーションフリーの特長が活かされていない」
IP電話については、ソフトバンクBBが「現状では他地域に引っ越した場合でも同一番号が利用できる程度で、050番号のロケーションフリーの特長が活かされていない」と指摘。イー・アクセスはP2P形式のIP電話を例に挙げ、「ユーザー利便性向上の観点や諸外国との整合性、国際電話を多用するユーザーの海外流出を回避する意味からも番号付与の検討を早急にすべき」とした。
NTTコミュニケーションズもP2P型のIP電話に関しては「050番号のIP電話との間の番号利用に関して注視して評価するべき」とコメント。また、050番号のポータビリティに関しては、総務省が「固定電話のポータビリティと比較して安価に実現できる」との考えを示したのに対して、「ポータビリティによりコストが増大するため、低廉なIP電話の料金水準からは経済性が不透明であり、ユーザーニーズや市場動向を注視しながら検討すべき」との意見を示した。
NTT西日本は、IP電話市場について「多数のプレーヤーがさまざまなサービスを提供し、ビジネスモデルの確立に向けた取り組みを進めているところであり、市場を確定して競争状況を是非するのは時期尚早」とコメント。0AB~J番号のIP電話についても、「ブロードバンド市場の競争戦略上のアプリケーションとして提供されており、ユニバーサルサービスを考慮していない現状では、050番号のIP電話と区分してユニバーサルサービスとしての対象に加えるかの検討も時期尚早」としている。
■ URL
総務省 報道発表資料
http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050607_3.html
関連記事:移動体通信の競争評価案、総務省が各社意見を公開[ケータイWatch]
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/24228.html
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(甲斐祐樹)
2005/06/08 18:25
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