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ライブドアの公衆無線LAN「livedoor Wireless」速攻レポート

 ライブドアが、公衆無線LANサービス「livedoor Wireless」の試験サービスを8月1日より開始した。月額525円という低料金や、最大54MbpsのIEEE 802.11g採用に加えて、山手線圏内80%カバーを謳う面的なエリア展開が特徴だ。試験サービスを実際に利用してみたので、使用感などをレポートする。


インターネット接続も試験期間中は無料で利用可能

 livedoor Wirelessは、「D-cubic」の名称でライブドアが発表した公衆無線LANサービス。ライブドアでは、今後個人向け以外に法人やOEMなどサービスを各方面に展開することから、開発コードとして社内で利用していた「D-cubic」の名称を新たに「livedoor Wireless」に統一した。

 10月1日に予定されている正式サービスの料金は、初期費用が1,050円、月額料金が525円。パワードコムとの提携により、屋外の電柱を中心に無線LANアクセスポイントを設置し、正式サービス時には2,200カ所でサービスを展開、山手線圏内の80%をカバーする予定という。

 8月1日から開始された試験サービスでは、livedoorのポータルサイト内のみアクセスできる「フリートライアル」と、インターネットに接続できる「有償サービス接続実験」の2サービスが用意されている。フリートライアルの場合、livedoorのIDを取得すれば無料で利用できるが、有償サービス接続実験はlivedoorのIDに加えて決済サービス「livedoor ウォレット」に申し込む必要がある。どちらも試験サービス期間中は無料で利用可能だ。

 試験サービス開始当初は、東京都港区に8カ所、新宿区に26カ所と合計34カ所にアクセスポイントが設置されている。今回は2つのアクセスポイント間の距離が近いと思われる新宿区のアクセスポイントを選択、実際にサービスを利用した。


新宿区歌舞伎町のアクセスポイント。近辺に別のアクセスポイントがもう1台設置されている


livedoorポータルのみ無料で利用できる「フリートライアル」

フリートライアルのポータル画面。livedoor IDのみでログインできる
 まずはフリートライアルから見てみよう。こちらはlivedoor WirelessのWebページで「livedoor-free」というSSIDが公開されている。WEPキーも設定されていないので、端末でSSIDを指定するだけですぐに利用が可能だ。あらかじめSSIDを用意していなくても、ユーティリティソフトなどのアクセスポイント検索ソフトから見つけるだけでも手軽にアクセスできる。

 SSID設定後にブラウザを起動、インターネットに接続しようとすると自動的にlivedoor Wirelessのポータルが表示される。ここでlivedoor IDとパスワードを入力すれば、livedoorポータル内のサービスが無料で利用可能だ。

 なお、フリートライアルはWEPキーで暗号化されていないために、ログインした直後には「Webサイトへ接続される際の通信が傍受される恐れがあります」との注意書きが表示される。livedoorのIDを取得していないユーザーは、フリートライアルのポータルアクセス時に登録することも可能だが、WEPキーで暗号化されていない通信であることは注意しておこう。


フリートライアルではWEPキーが設定されていないため、ログイン時には注意が表示される


 ちなみに、livedoor Wirelessのアクセスポイント付近では、フリートライアルと有償サービス接続実験に加えて、IEEE 802.1X認証用と思われるSSIDも存在した。現状ではIEEE 802.1X認証には対応していないが、サービス発表時でもサポートを表明していたことと、すでにSSIDが用意されていることから、IEEE 802.1Xへの対応も近そうだ。

 フリートライアルではlivedoor ポータル内のほぼすべてのサービスが利用可能で、livedoorポータル内で完結するサービスであれば、インターネットに接続しているのと変わりなく利用できる。livedoor メールを使えばメールの送受信も可能なほか、無料サービスでは最大3つまで設定できる外部メール受信機能を利用すれば、他プロバイダーのメールサービスの送受信も可能だ。ただし、繰り返しになるがフリートライアルでの通信は暗号化されていない点は認識しておこう。

 プレイステーション・ポータブル(PSP)の最新バージョン「2.00」で搭載されたブラウザ機能から接続したところ、「サーバーの提示したルートCA証明書を持っていない」との注意が表示されるものの、サービス自体は問題なく利用できた。外出先から地図や天気、ニュースなどを確認したい場合、PSPやPDAといった無線LAN対応モバイル端末からlivedoorのポータルサービスすべてが利用できるのは非常に便利ではないだろうか。ただし、PSPで閲覧するにはlivedoorのポータルは少々容量が大きく、特に地図などデータ量の大きいサービスの利用はかなり待たされることがあった。


livedoorメールでは、オプション設定で外部メールの送受信も可能 PSPからのアクセス時には、ルートCA証明書を持っていないという注意が表示される

インターネット接続はクレジットカード登録が必要

有償サービス接続実験のポータル画面。フリートライアルと異なり、ログイン時に「@livedoor.com」をつけたIDを入力する
 続いてインターネットに接続可能な有償サービス接続実験を利用した。こちらはあらかじめlivedoor IDとlivedoor ウォレットに登録し、livedoor Wirelessのポータルから申し込むことで利用が可能になる。なお、livedoor ウォレットは電子マネー「ビットキャッシュ」でも利用できるが、livedoor Wirelessの利用にはクレジットカードの登録が必要になる。

 livedoor IDとlivedoor ウォレットの手続きを済ませた上でlivedoor Wirelessに登録すると、有償サービス接続実験のSSIDとWEPキーが表示される。WEPキーは128bitのASCIIもしくは16桁の英数字から選択可能だ。ほとんどの公衆無線LANが旧機種への対応から64bitのWEPをサポートしているのに対してlivedoorは128bitのWEPのみだが、現行の無線LAN機器のほとんどが128bitのWEPをサポートしていることを考えれば、128bitのWEP設定のほうが適切と感じた。

 現在は試験サービスのため、インターネット接続も無料で利用できるが、10月1日の正式サービスで有料化された際には自動継続で料金が課金される。あくまで試験期間中だけ無料で試したい、というユーザーは、9月末までの解約を忘れないようにしよう。

 なお、livedoor ウォレットおよび有償サービス接続実験の登録も、フリートライアルから利用可能だ。前述のWEPキーの暗号化がされていない点を踏まえた上で、自己責任でこれらの登録サービスも利用しよう。


フリートライアルからのlivedoor Wireless登録も可能 登録が完了するとSSIDとWEPキーが発行される

スループットは上下ともに10Mbpsを下回る結果に

 インターネット接続時に気になるのは接続スピード。サービス発表時には最大54Mbpsという高速性がアピールされていたが、実際はどの程度の速度で通信できるのだろうか。CPUにモバイルPentium III-M 1.20GHzを搭載したノートPCと、IEEE 802.11a/b/g対応の無線LANカード「Aterm WL54AG」を利用してスループットを測定した。

 初めに編集部で導入している100Mbps占有型のBフレッツ ベーシックタイプと、IEEE 802.11a/b/g同時利用が可能なNECアクセステクニカ製の無線LANルータ「Aterm WR7800H」を使用して、同一PCでのスループットを測定した。Super GはオフにしてIEEE 802.11gで接続し、「speed.rbbtoday.com」で計測している。編集部にはIEEE 802.11b/gのアクセスポイントが多数存在しているため、無線LAN利用にはあまり良い環境ではないのだが、それでも上下ともに14Mbps近い数値が得られた。

 次にlivedoor Wirelessのアクセスポイントから同様にspeed.rbbtoday.comを利用し、スループットを10回測定した。その結果が以下の通りだ。10回の平均値は下りが4.76Mbps、上りが6.82Mbpsという結果になった。この結果はlivedoor Wirelessのアクセスポイントのあくまで1つであり、さらには他のユーザーが同時に利用していた可能性もあるために、この結果を持ってlivedoor Wirelessのスループットということはできないが、少なくともIEEE 802.11gのスループットをフルには活かせていないように感じた。

 ただし、個人的には上り速度が高速な点には注目したい。他の公衆無線LANサービスでは、喫茶店などに設置する際にバックボーンにADSLを利用しているケースも多く、下りはある程度の速度を確保できても、大容量のファイルを業務で送りたいときなどには非常に不便に感じることもある。パワードコムの光ファイバを利用していることもあるのだろうが、すべてのエリアで上下とも高速なスループットを実現していれば利便性は高そうだ。

1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 8回目 9回目 10回目 平均値
下り(ISP→PC) 5.23 9.28 3.86 3.83 4.58 3.98 3.65 2.06 4.83 6.32 4.76
上り(PC→ISP) 6.48 7.53 5.86 7.80 6.65 7.56 6.52 6.68 5.52 7.60 6.82
livedoor Wirelessのスループット測定結果(単位:Mbps)。太字が10回測定した中でもっとも高速な数値


もう1つのアクセスポイントは直線距離で100メートル程度の距離
 次に、アクセスポイント間を移動するテストを行なった。面的展開を謳うlivedoor Wirelessだが、試験サービスではかなり離れた位置にアクセスポイントが敷設されており、現時点ではサービス発表時に示されたイメージほど密には展開されていない。その中でも新宿の同じ住所に存在するアクセスポイント2カ所を選び、片方のアクセスポイントからもう片方へ動画を再生しながら移動してみた。

 2つのアクセスポイントの距離は直線距離で約100数十メートルといったところで、片方のアクセスポイントからもう1つのアクセスポイントのSSIDは確認できない。アクセスポイントが設置された電柱の真下で、インプレスTVの番組を300kbps・Windows Media Playerで再生し、もう片方のアクセスポイントまで徒歩で移動したところ、2つのアクセスポイントの中間地点で一旦映像が止まったものの、もう1つのアクセスポイントに近づいた時点で自動でアクセスポイントに接続、続きの映像が再生された。

 ただし、テストに選んだ環境は他の無線LANアクセスポイントも少なく、livedoor Wirelessにとっては良い環境と言える。アクセスポイントが切り替わる時点で、登録済みの他の公衆無線LANサービスのアクセスポイントが存在すれば挙動は変わるだろうし、Windows Media Playerの機能そのものの影響も大きいため、あくまで参考として捉えて欲しい。


試験サービスでエリアは少なめながらも実用性は十分

サービス発表時に示された六本木周辺のアクセスポイント設置予定図
 低額な料金に加えて、エリアの面的展開で期待されているlivedoor Wireless。現状の試験サービスでは、アクセスポイントが中心部とは少し外れたところへ設置されているために、エリアの観点からの判断は難しい。“山手線圏内80%カバー”を謳う10月の正式サービスに期待したいところだ。スループットも54Mbpsとまではいかないが、実用には十分だと感じた。

 個人的に面白いと感じたのは、無料で利用できるフリートライアル。livedoor内の充実したコンテンツを外出先から見られるのは非常に便利だと思うし、無線LANに対応したモバイル端末が増えてくればより面白い使い方ができそうだ。

 気がかりなのは他のアクセスポイントとの干渉問題。今後エリアを拡大していく際に、オフィス街の集まる山手線圏内で密にアクセスポイントを設置していけば、既設のアクセスポイントとのチャネルが重なることもあるだろう。これはlivedoor Wirelessだけではなく、2.4GHz帯を利用する無線LANすべてに関わる問題ではあるが、面的展開を掲げ、屋外を中心として密にアクセスポイントを展開するlivedoor Wirelessではその影響も大きそうだ。この点はlivedoor Wirelessの正式サービス時に改めてチェックしてみたい。


関連情報

URL
  livedoor Wireless
  http://wireless.livedoor.com/

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(甲斐祐樹)
2005/08/03 14:55
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