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インターネット経由で場所を問わず050発着信が可能な「G-LEX」レポート

 船井電機の子会社であるユーエフネットが、050番号で発着信が可能なインターネット電話サービス「FUNAI G-LEX」を開始した。「SkypeIn」など050番号で着信できるサービスは存在したが、発信も可能なサービスは珍しい。実際にアカウントを取得して使用感をレポートする。


PCソフトからインターネット経由で050番号の発着信が可能

 G-LEXは、PCにインストールしたソフトから利用できる電話サービス。専用IDを使ってPCソフト間でのみ無料通話が可能な「G-LEX Lite」、フュージョン・コミュニケーションズのIP電話ネットワークを利用し、一般加入回線や携帯電話・PHSとの発着信が可能になる「G-LEX Personal」という2種類のサービスが用意されている。

 G-LEX Liteはユーザー登録のみで使える無料サービス。一方のG-LEX Personalは初期費用1,050円、月額525円の有料サービスで、050番号が1つ割り当てられる。決済方法は現在のところクレジットカードのみだ。

 フュージョンのIP電話ネットワークを採用しているため料金はフュージョンに準じ、一般加入電話やIP電話には3分8.4円、携帯電話へは1分16.8円、PHSへは1通話10.5円と1分ごと12.6円、国際電話は米国で1分8円から通話できる。同じフュージョン回線を利用するIP電話とは無料通話が可能だ。なお、110や119といった緊急通報やフリーダイヤル、ナビダイヤルなど発信できない番号も存在する。

 今回は050番号が利用できるという点でG-LEX Personalに注目、同社のWebサイトからサービスに申し込んだ。まずは無料のG-LEX Liteに申し込むと、ユーザー登録が完了した時点でIDが発行される。この後に続けてG-LEX Personalを申し込んだところ、申し込んだ当日に同日中に登録完了の通知メールが送られてきて、050番号が利用できるようになった。


無料通話が可能な「G-LEX Lite」はユーザー登録のみで設定情報が送られてくる 050番号が使える「G-LEX Personal」はクレジットカード登録ののち、手続きが完了するとメールで通知される

遅延はほとんど感じられず。ボイスメールも利用可能

推奨ソフトウェアの1つ「SJphone」
 サービスの利用にはソフトフォンは「SJphone」「X Lite」という2つのソフトフォンが推奨されている。どちらも英語版のソフトだが、ユーエフネットが用意しているマニュアルではダウンロードから設定までを一通り説明しているため、マニュアルに従って進めればそれほど設定は難しくないだろう。

 IDやSIP ID、SIPパスワードやSIPドメインは、ユーザー登録完了時にメールで通知されたものを利用する。LiteもPersonalも設定に違いはなく、Personalを申し込んでいるアカウントであれば自動で050番号の利用が可能になっている。

 通話方法は通常の電話と変わらず。国番号などを入力することなく通話先の番号をダイヤルすればいい。また、PCソフトを起動していれば050番号で問題なく着信できる。また、PCソフトを起動していない場合はボイスメールが利用でき、90秒までの録音ファイルを登録したメールアドレスへWAV形式で送信してくれる。

 発着信時や通話時の遅延はほぼ感じられない。手元の電話機からG-LEXへ発信した際もダイヤルした直後に着信できており、目の前の相手との通話テストでもG-LEXの声と実際の声がほぼ同時に聞こえた。音質も良好で、会話時に相手先のキーボード打刻音も確認できるほどだ。感覚としてはPHSと同程度かそれ以上といったところだろう。

【お詫びと訂正】
 初出時、ボイスメールの秒数を30秒としておりましたが、90秒の誤りです。お詫びして訂正いたします。


「Accept」をクリックすると着信を受けられる

PCから050番号での発信が可能 ソフトを起動していない時はボイスメール転送が利用できる

制限はあるがW-ZERO3での050番号利用も可能

W-ZERO3にPocket PC 2003 SE版のSJphoneをインストール
 なお、ユーエフネットが推奨する2つのソフトのうち、SJphoneに関してはPocket PC版も用意されている。対応するPocket PCはPocket PC 2003SEまででWindows Mobile 5.0には対応していないが、試しにW-ZERO3へインストールして設定を行なってみたところ、2003版ではインストール時に「正常に動作しない可能性がある」とのメッセージが表示されたものの、2003SEではエラー表示もなくインストールが完了。設定もほぼPC版と同じで、特に問題なく設定が完了した。

 実際に発着信してみたところ、050番号を使った一般加入電話への発信は可能だった。が、逆に050番号での着信に関しては「accept」の文字が表示されず、着信音が鳴りはするが着信を受け取ることはできなかった。また、相手の音声は背面スピーカーから聞こえるため、会話にはイヤフォンが必要だった。

 Windows MobileでPocket PC 2003用ソフトを利用していることもあり、これが正常な動作とは言えないが、少なくとも050番号での発信は可能だった。また、相手からの番号通知も受けられるので、いったん着信を受けてからかけ直すといった使い方もできるだろう。

 なお、1つのアカウントで2つのソフトからログインした場合、発信はどちらからも可能だが、着信に関しては後からログインしたソフトが優先する。普段は家で立ち上げておき、急に出先で利用する場合なども便利そうだ。


050番号での発信は利用可能。番号も相手先に通知される 着信は通知されるものの、「Accept」が表示されず受けることができなかった

インターネット経由の発着信で050番号に新たな価値が

G-LEXの仕組み。インターネットからIP電話ネットワークへ“転送”することでPCソフトからの050番号発着信を実現している
 地域性を持たない050番号を使い、インターネット経由でどこからでも050番号での発着信が可能なG-LEX。PCベースの電話サービスであり、発信できない番号もいくつかあることから電話の代替とまではいかないが、インターネットでどこからでも使える利便性の高さは十分すぎるほど魅力的だろう。

 ただし、050番号をインターネットで利用できるという点で疑問を抱くユーザーもいるかもしれない。 総務省では、電話用の専用網を利用したサービスを「IP電話」、一部もしくは全部のネットワークでインターネットを利用するサービスを「インターネット電話」として区別しており、音声の品質や安定性といった問題から、インターネット電話には050番号の割り当てを許可していないからだ。

 G-LEXの場合、発着信はインターネットを利用するものの、実際の050番号はフュージョンから提供を受けているIP電話ネットワークに割り当てられており、発信も着信もインターネットとフュージョンのIP電話ネットワークを“相互転送”することで実現している。ユーエフネットでもG-LEXはIP電話ではなくインターネット電話であり、050番号にはG-LEXのSIP IDをサーバーへ転送することで発信すると説明している。


livedoor SIP フォン。当初はインターネット経由での050番号発着信サービスを予定していたが、途中でlivedoorのISP会員限定サービスに変更された

050番号発着信が可能なサービスを予定する「freep」
 とは言え、ネットワークの仕組みはユーザーから見えないため、1つのサービスとしては「インターネットを利用したサービスで050番号を利用できる」ようにも見える。実際、ライブドアが旧エッジ時代に、050番号を利用してインターネット経由で発着信が可能な「livedoor SIP フォン」を発表後、こうした問題からインターネットではなく自社のISP会員限定へとサービスを変更した過去もある。

 しかし、ブロードバンド環境が急速に普及し、固定電話と携帯電話の融合(FMC、Fixed Mobile Convergence)」という言葉も叫ばれる時代において、総務省の方針も以前と比べて変化しつつあるようだ。

 先頃発表された「IP時代における電気通信番号の在り方に関する研究会」の第二次報告書では、インターネットを利用してIP電話を転送するサービスの存在を前提とした上で、着信に関しては「既存網でいったん着信し、インターネット経由であることをガイダンスする」との条件付きで認めている。また、インターネット経由の発信についても、本題ではないとした上で「050番号のような0A0番号であり、着信転送サービスの利用者からの発信であることが確認できれば、既存網の番号を利用することも考えられる」と肯定的な立場を採っている。

 サービスの開始日こそG-LEXが先行したが、すでにエニーユーザーでも同様に050番号で発着信できる「freep」を発表しており、申し込みを受け付けている。また、050番号での着信をすでに実現しているスカイプも今後は何らかの動きが予想される。Windows Mobile搭載端末や携帯型のIP電話端末への対応が進めば、モバイルでの利用が活性化する可能性もあるだろう。通話料無料といった低額さが注目されてきた050番号だが、加入回線による制限なくインターネット経由で発着信が可能にになることで新たな利用方法が生まれそうだ。


関連情報

URL
  G-LEX
  https://www.g-lex.net/

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(甲斐祐樹)
2006/06/23 11:54
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