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「新たな音楽との出会いの場を」Last.fmのCOOが日本展開に向けて来日

 エキサイトは5月10日、英国Last.fmと提携し、日本国内でLast.fmを開始すると発表した。Last.fmの概要や日本でのサービス展開について、Last.fmでCOOを務めるMartin Stiksel氏に伺った。


人とのつながりで生まれる新たな音楽との出会い

Last.fm

PCで再生した楽曲のリストを表示、似た楽曲や似た趣味のユーザーを探すことができる
 Last.fmは、2002年にMartin Stiksel氏がにFleix Miller氏と設立した「Last.fm」と、2003年にRichard Jones氏が立ち上げた「Audioscrobbler」という2つのサービスが統合して生まれた音楽コミュニティ。現在は200万近いユーザーがLast.fmに登録しており、ユニークユーザー数は月間で約850万人に上るという。

 Audioscrobblerと統合する以前のLast.fmは、楽曲のストリーミング配信を中心としたサービスだった。ユーザーはLast.fmで流れる楽曲に対して「好き」「嫌い」と好みを設定していくことで、楽曲嗜好を自動でデータベースに蓄積。このデータを元にして、自分と楽曲の趣味が似ている他のユーザーや、好きなアーティストと楽曲のスタイルが似ている他のアーティストを推薦するという仕組みだ。

 「新しいアーティストや楽曲が増えていく中で、個々の楽曲やアーティストが埋もれてしまっている。いかにして自分の知らない音楽やアーティストを見つけられるか」と、Stiksel氏はLast.fmを立ち上げた経緯を語る。「“ベッドルームDJ”と呼ばれるような自宅で音楽を楽しむDJからメジャーレーベルまで幅広い音楽産業を対象に、自分が気に入る楽曲を見つけ出すためのサービスとして、Last.fmを始めた」。

 Last.fm設立の翌年となる2003年には、Richard Jones氏が「Audioscrobbler」というサービスを立ち上げた。こちらはPCで再生した楽曲データをデータベースに蓄積し、音楽の嗜好が似ているユーザーを探すというもの。サービスのコンセプトや目的が近いこともあり、同年にはLast.fmとAudioscrobblerは統合され、2005年にはサイトをLast.fmに一本化してリニューアル。現在に至っている。

 Last.fmの利用に必要なのは、Windows Media PlayerとiTunesに対応した専用プラグインと、Last.fmで配信されている楽曲を再生するための専用プレーヤー。プラグインをインストールしたPCで再生した楽曲は自動的にデータが蓄積され、このデータを元にして新たな音楽や共通した音楽の趣味を持つユーザーと出会うことができる。「新たな音楽との出会いが、人とのつながりの上で広がっていくコミュニティ」とStikselはLast.fmの魅力を語った。

 Last.fmでは許諾の取れた楽曲はフルコーラスで、そうでない楽曲は30秒の試聴が可能になっており、ユーザーは許諾の取れた楽曲を組み合わせることでオリジナルのインターネットラジオ局を作ることも可能だ。Last.fmで1日に再生される楽曲数は1,000万曲にも上り、こうした自動的に音楽を推薦しあうLast.fmの仕組みは、「アーティストにとって楽曲のプロモーションという観点からも魅力がある」。


アーティストごと用意されたページでは、そのアーティストに似たアーティストも「Similar Artists」として表示 ストリーミング配信されている楽曲を再生できる専用プレーヤー

iPod対応などPC以外の再生環境も拡充

Last.fmのCOOを務めるMartin Stiksel氏
 日本国内でのサービスは夏頃となる予定だが、すでにLast.fmには多くの日本人ユーザーが参加しているという。Stiksel氏は「数千人程度の規模であれば、音楽を推薦しあうというLast.fmの仕組みは十分成り立ち得る」と説明した上で、「現状でもLast.fmがこれだけ日本人に利用されている。日本でも受け入れられるサービスではないか」と自信を示した。

 楽曲のストリーミング配信も日本での展開を予定しており、著作権事業者やレコードレーベルと話を進め、同等のサービスを提供する方針という。ただし、Stiksel氏によれば「ストリーミングサービスは特徴的ではあるものの、実際にはそれほど使われている機能ではない」という見方を示す。「Last.fmの特徴は、自分の好きな音楽を友達に紹介する、もしくは友達から紹介されることで、新しい音楽を発掘できるという点。音楽を聴くというよりも、情報としての使われ方が支持されている」(Stiksel氏)。

 現状はPCで再生した楽曲データが中心だが、今後はPC以外にも対応機器を広げていく。すでにMac OS向けには、iPodの楽曲データをLast.fmに登録できるアプリケーションが提供されており、夏にはWindows向けのアプリケーションも提供される予定だ。「どの機器で楽曲を楽しもうと、最終的にはLast.fmにつながり、新しいアーティストや音楽を発見できるような展開を進めていきたい」。

 日本ではSNS最大手のmixiが「mixiミュージック」というサービスを開始した。プレーヤーで再生した楽曲情報を登録してコミュニケーションを図るというサービスの仕組みはLast.fmに近いが、Stiksel氏は「mixiミュージックはメッセージや友達探しといったSNSの機能のうちの1つという位置づけだろう。我々のLast.fmは音楽に特化したサービスであり、サービスとしてのアプローチがそもそも異なる」との見解を示した。

 音楽特化という観点から、映画や書籍など他のエンターテインメント分野でのサービスは考えていない。「音楽は1曲を何十回も聴いたりと、1つのコンテンツに対して何度も接する機会がある点が醍醐味」と語ったStiksel氏は、「映画も本も、日常的に何度も触れるコンテンツではないだろう」と指摘。「音楽の部分でもまだまだやることがたくさんある。今はまだ音楽に集中していたい」との方針を示した。


関連情報

URL
  Last.fm
  http://www.last.fm/

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(甲斐祐樹)
2006/07/04 11:02
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