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「livedoor Reader」「livedoor クリップ」担当者に聞くコンセプト

 ライブドアが4月にベータ版として公開した新型RSSリーダー「livedoor Reader」は、その多機能さから大きな注目を集めた。さらに6月には、大手ポータルとしては初めてソーシャルブックマークにも参入。両サービスのコンセプトについて担当者に聞いた。





すべてのRSSリーダーを上回る最高のRSSリーダーを

ライブドア コンシューマメディア事業部の有賀之和氏(左)と佐々木大輔氏(右)

livedoor Reader

携帯電話から利用できる「livedoor Reader モバイル」
――ライブドアにはすでに「livedoor Blogリーダー」というRSSリーダーがありましたが、新たにlivedoor Readerを開発した理由は。:すでにlivedoor Blogリーダーはサービスを終了しています)

有賀:livedoor Blogリーダーをリリースしたのは2004年9月ですが、あれからAjaxなど新しいアプローチが出ているにも関わらず、なかなかブラッシュアップできずにいました。それならばいっそイチから新しいRSSリーダーを作ってしまおう、と考えたのがlivedoor Reader開発のきっかけです。

 livedoor Readerは今のトレンドの粋を集めた仕組みです。使っていただいているユーザーもインターネットのリテラシという部分では尖った層が多く、まずはそういった層に「ライブドアはこういう技術寄りな方向もきっちりカバーしていく」ということを認識してもらえたらと思います。

――livedoor Readerでこだわった部分は。

有賀:すべてのRSSリーダーと比較してそれを上回るものを、という気持ちで開発しました。ストレスを感じさせない、思った操作を少ないステップでできる、といった部分にはこだわっていますし、それを実現するためのシステム構成は、大きなブログサービスを運営するノウハウが生きていると思います。普通に使っていて快適だけれど、実は裏側にはすごい技術がある、ということをユーザーに感じ取っていただけたら嬉しいですね。

佐々木:Web型のRSSリーダーの分野ではBloglinesがベストプラクティスだということになっていますが、2年以上も使っていると、「あれをこうすればもっといいのにな」という不満が募ってきて、その評価の高さほど使いやすくはないのでは、と思うようになりました。また、Bloglines以降、違った角度からのアプローチを狙ったRSSリーダーがいくつか登場してきていますが、実際に成功している例はまだまだ少ないと思います。そこでまずはBloglinesの路線を踏まえた上で、大量のフィードを読むことに特化した最高レベルのRSSリーダーを目指したのがlivedoor Readerです。

――livedoor Readerのユーザー数は。

佐々木:現在は5万人くらいです。モバイル版のリリースも非常に好評をいただいていて、ユーザー登録数はどんどん伸びています。現在では毎日500人くらいの方に新規登録をしていただいています。

――機能強化はモバイル対応で一段落したのでしょうか。

佐々木:まだまだ機能強化をしていきます。ただ、RSSリーダーは単体のサービスとしてだけでなく、livedoorの考えるCGMの位置付けの1つという側面もあります。livedoorではブログやwikiなどさまざまなサービスがRSSに対応していて、それらのRSSを読むツールとしてlivedoor Readerを提供しています。そういった他のサービスとの連携もこれから強化していきます。





中級者から上級者に特化した高機能型RSSリーダー

5段階で設定できるレートが多くのブログを読む秘訣
――高機能ゆえに初心者には敷居が高そうですが。

佐々木:普通の女の子が気軽に更新できるブログと違って、RSSリーダーは少なくとも今の形ではそこまで普及しないのではないかと思います。本格的に普及させるには、RSSリーダーであることを意識させないようなもっと別のアプローチが必要でしょう。現在のlivedoor Readerは広く普及することよりも、中級者から上級者に使ってもらえるツールと位置付けています。

 現在のlivedoor Readerは、ブログを数百から1,000近く読んでいるヘビーユーザーに最適化されています。ユーザーからはよく「フォルダをまとめて表示する機能が欲しい」という要望をいただくのですが、20か30程度のブログであればフォルダごとでも問題ありませんが、1,000近いブログを読んでいる人だと(フォルダごと表示では)ブラウザが固まったり表示が遅くなったりと、かえって読みづらい状態になってしまいます。たくさんのブログを読んでいるユーザーに特化しているサービスですので、あえてフォルダをまとめて表示する機能をつけていないのです。

――livedoor Readerはフォルダ分類しないほうが使いやすいのでしょうか。

佐々木:ブログの登録数が少ない人はフォルダも便利だと思いますが、多い人はカテゴリではなくレートで読むことをお勧めします。カテゴリ分けをしようとしても、1つのブログがいろいろな話題を含んでいてカテゴリ分けが難しいこともありますから。

 私の場合、「ブログ」「ニュース」「検索結果」「ソーシャルブックマーク」などフィードの種類でざっくり分けておくだけにして、個々のフィードに細かくレートを設定しています。仕事中はレート5、仕事でちょっと時間が空いたときは4まで、家に帰ったら3、土日に時間が空いたら1と2を読むなど分類しておいて、面白かったらレートを少しずつ上げていく。ちょっとしたコツさえつかめば、毎日2,000件くらいの記事をチェックすることも簡単にできると思いますよ。





APIの活用で同じデータを使った別のサービスも提供可能

ライブドアのSNS「フレパ」。招待制ではなくユーザー登録で利用できるオープンなSNS
――初心者向けのRSSリーダーを提供するという可能性は。

佐々木:実はlivedoor Readerは、データのやり取りをすべてAPI経由で行なっている、APIの固まりのような仕組みになっています。つまり、今のlivedoor Readerは、中級者から上級者に特化したRSSリーダーの1つの形であって、初心者向けに別のRSSリーダーを作ることも可能です。

有賀:livedoor Readerのモバイル版も、APIを使った別のRSSリーダーの形の一例でしょう。APIを使えば同じデータを違うアプリケーションで利用できるので、普段はSNSのような親しみやすいインターフェイスでブログを読んで、大量に読みたい時だけ現在のlivedoor Readerを使うといったことも可能です。未読・既読も同じデータで管理できますし、追加したフィードも同じように反映される。実際に開発するかは別として、そういった応用が理論上は可能です。

――外部へのAPI公開の準備は進めているのでしょうか。

有賀:livedoor Readerで提供するかはまだわかりませんが、他のCGM系コンテンツはすでにAPIによる連携を行なっているので、あとはそれを公開するかどうかですね。一般公開をいつにするか、というテーマはまだ出ていませんが、スピードで言えば(SNSの)フレパが一番早いと思います。

 API公開は、多くのユーザーを抱えているSNSでは難しいかもしれませんが、逆に外部に対してAPI情報を公開するというアプローチが可能なのはライブドアくらいかもしれません。ライブドアがSNSに特徴を出すとしたらそのあたりかもしれませんね。





他社の比較ではなくソーシャルブックマークの王道を目指す

ソーシャルブックマーク「livedoor クリップ」
――RSSリーダーと比べてソーシャルブックマークはまだ認知度も低いと思いますが、livedoor クリップを始めた理由は。

有賀:ライブドアが全社でCGMに取り組むというコンセプトの中、現状提供していないサービスといえばソーシャルブックマークだ、という認識は社内で全員一致していました。開発を始めたのは4月末か5月頭くらいで、約2カ月でリリースしました。

――ソーシャルブックマークでは「はてなブックマーク」が人気ですが、livedoor クリップのコンセプトは。

佐々木:王道的なサービスがあるから、こっちは対抗して別の特徴を出そう、ということはあまりこだわりませんでした。確かにはてなブックマークは非常に便利で面白いですし、私たちも毎日のようにチェックしています。しかし実際にリサーチしてみると、「まだソーシャルブックマークはまだそれほど普及しているサービスではない」という結果が得られました。サービスに対抗して変化球的なアプローチをするよりは、まず王道的なところを狙ってもっと上を目指したい、というのが我々の考えです。

有賀:livedooorポータルのリニューアルにタイミングを合わせるという理由から、今回は最低限の機能でリリースしましたが、今の機能は予定していた機能の2割程度です。今後は機能レベルで他とは違うものをどんどん投入していきますし、livedoorポータル内のニュースや映画といったインフォメーションサービスとも連携を進めていきます。


1人1人のコメントが集まることでコミュニティ要素が生まれる
――はてなブックマークなどを見ていると、ソーシャルブックマークはツールとしてだけではなくコミュニティ要素も強いように感じます。

有賀:コミュニティ的な使われ方も面白いと思います。あるサイトについてブログに書くほどでもないけれどコメントを残しておきたいという時に、一言だけコメントを残せるソーシャルブックマークは便利ではないでしょうか。

佐々木:はてなブックマークは始まった当初から自分も使っていたのですが、すぐには面白さが理解できませんでした。はてなブックマークをツール的な部分でしか見ていなかったんですね。しかし、ユーザーが増えるにしたがって、クチコミメディア的な面白さに気づくようになりました。

 ソーシャルブックマークというサービスの面白さの本質の一部は、「個人的な行為が、実は全体の奉仕になっている」ということにあると思っています。でもそれはユーザーが集まってこそ実感できるものですので、クチコミメディア的な側面ではまだまだはてなブックマークには敵わない。まずはツールとしての使い勝手の良さやインターフェースを磨いてユーザーを集め、次第にクチコミメディアとしての側面を育てていければと考えています。





使いやすさと機能がユーザーを集め、メディア化につながる

ニフティのソーシャルブックマークサービス「ニフティクリップ」
――最近ではソーシャルブックマークもさまざまなサービスが登場し始めています。

佐々木:サービスが増えて競争が始まった時に、ツールとしての便利さとクチコミメディア的な面白さはあまり関係がないのではないかと思っています。例えば自分の場合、ツールとしてはlivedoor クリップをメインにしていますが、クチコミニュースサイトとしてははてなブックマークも利用し続けています。そこにチャンスがあると思っていますので、サービスを利用していただくためにも、機能や使い勝手といったツール的な側面を大事にしていきたいと思っています。

有賀:鶏が先か卵が先か、みたいな話ではありますが、メディアとして盛り上がる状態を作るためには、まずはコメントを投稿しやすくするインターフェイスが重要だと思います。

佐々木:名前にも気を遣いました。ソーシャルブックマークの「ブックマーク」という言葉は一般に馴染みが薄いかもしれませんし、「エントリー」という言葉も普通はあまり使わないでしょう。一般の人に使ってもらうためにも「クリップ」や「ページ」という言葉を考えました。蓋を開けてみるとニフティさんの「ニフティクリップ」も同じ名前の付け方だったんですが(笑)。

有賀:我々はポータルサイトを運営しているので、ニフティクリップと最終的に目指す方向は違うかもしれませんが、同じ時期に始まったサービスだけにいいライバルだと個人的には思っています。





個人のネット上の力を全社を挙げて支援

ニュースやブログを軸にリニューアルされたlivedoorのトップページ
――ライブドアがめざすCGMの方向性についてお聞かせ下さい。

有賀:livedoorのポータルリニューアルを機に、「「個人のチカラを開放するナンバーワンメディア」というコンセプトに基づいて、全社を挙げてCGMに注力していきます。今のところはコンセプトに基づいた組織作りを行っている最中で具体的な実施項目までは進んでいませんが、まずはライブドアとしてのCGMの枠組みを構築し、その後で収益性など具体的な数字を考えていく方向です。


――収益は広告中心でしょうか。

有賀:一般的なバナーの広告モデルはCGMでは少し大きすぎるというか、ロングテールでいうとヘッドの部分ですね。それよりはコンテンツマッチ広告のようなもので、PVやユーザー数に対して具体的に収益となるようにしていきたい。

 ただ、それだけで単体のコンテンツが収益化できるかというと難しい。実際にやるかどうかはまた別の話ですが、自社でコンテンツを解析して広告を出す、有料プランを提供するということもまた重要でしょう。実際、livedoor Blogの有料サービスは伸びてきていますし、今はそういうサービスの方向性を社内で詰めている段階です。

 もちろん、バナー広告も今後は継続しますし、無くなることはないでしょう。いかに広告によるビジネスモデルをCGMに取り込み、ユーザーに最適化できるか。ライブドアとしてこの部分を具体的な形にしていきたいと思います。

――ありがとうございました。


関連情報

URL
  livedoor
  http://www.livedoor.com/
  livedoor Reader
  http://reader.livedoor.com/
  livedoor クリップ
  http://clip.livedoor.com/

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(甲斐祐樹)
2006/07/27 10:43
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