Broadband Watch logo
最新ニュース
書き下ろし作品が無料で読める双葉社のWebコミック誌「COMIC SEED!」

 4月に双葉社から新創刊された「COMIC SEED!(コミックシード!)」は、毎月月末に配信されるWebコミック誌だ。掲載されている作品は、同誌向けに書き下ろされた新作で、ユーザー登録の必要なく、誰でも無料で読める。

 COMIC SEED!では、サピエンスが開発した専用ビューワー「プラグインフリー・ウェブリッシング・サービス」を採用。Internet ExplorerやFirefox、Netscape Navigator、SafariといったWebブラウザであれば、プラグインの必要なく利用できるのが特徴だ。

 そこで今回、「COMIC SEED!」を配信する双葉社に新創刊から3カ月経った7月下旬にコミック出版部の島野浩二部長兼編集長と、COMIC SEED!の野中郷壱編集長にお話を伺った。





Webコミック誌の将来性を感じて「COMIC SEED!」を新創刊

(写真左から)双葉社 コミック出版部の島野浩二部長兼編集長とCOMIC SEED!の野中郷壱編集長
――「COMIC SEED!」はペンギン書房から引き継いで新創刊されました。そこに至った経緯を教えてください。

島野:Webコミック誌に将来性があると考えたのが引き継いだ理由です。それにCOMIC SEED!自体、あのまま終わらせてしまっては作家さんや読者のためにならなかったと考えています。

――双葉社が独自でWebコミック誌を展開する予定はあったのでしょうか。

島野:弊社では「双葉社Webマガジン」というサイトを以前から運営し、作品単位で配信を行なっています。ただ、作品単位のため、全体としての統一性があまりなかったので、雑誌としての方向は模索していました。雑誌自体、今は売れるものではなく、コミックスだけが売れている状況がある中で、そうした分野に挑戦したかったという思いは持っていましたね。

――新創刊時に引き継いだ作品や新連載などについて教えてください。

野中:連載が中断してしまった作品の中には魅力的なものも多くあったので、それらを引き継いで新創刊する形を取りました。引き継いだのは「げーむ屋さん?(春風道人)」や「ゆーあい☆エトランゼ(晴瀬ひろき著)」など4本で、それに新連載や読み切りなどを加えて、創刊号の配信を開始しました。

 また、最新号の9月号(第4号)では、「ヴァイゼフラウ(原作:爲我井徹、漫画:鳥居チカ」と「妖狐爛乱(草凪蜻蛉著)」を新連載として加えました。同号では合計9本の書き下ろし作品を掲載しています。

――ユーザー評価はどのような感じですか。

野中:メールで寄せられる意見が主になりますが、その中での評価は高いと思います。特に専用ビューワーに対する技術的な評価が今のところ高いですね。ブログやホームページの感想などもチェックしていますが、概ね似たような感じです。

――評価が高いという専用ビューワーについて教えてください。

野中:専用ビューワーは、一般的なWebブラウザであればプラグインの必要なく、そのままCOMIC SEED!を読めるというのが大きな特徴です。また、当然ですが作品をコピーできないよう著作権保護処理を施しています。

 機能強化も継続して行なっており、8月号では誌面の拡大・縮小機能を改良しました。ちなみに、広告ページに設定したリンクは別ウィンドウで表示するようにしています。


7月号(第2号)から連載を開始した「ユメノクニ」は戦時下の昭和を舞台にした作品 9月号には「ヴァイゼフラウ(画像)」と「妖狐爛乱」の連載が開始された




COMIC SEED!は“立ち読み”歓迎。同人誌即売会を通じて作家募集も

「ゆーあい☆エトランゼ」は好評を集めている作品の1つだという
――COMIC SEED!のアクセス状況はでどのような感じでしょうか。

島野:ユニークユーザーで見ると、月間で5万人程度になります。ページビュー(PV)で見ると月間で数百万PVになりますが、無料のメディアということを考えると、今後もっと伸びることを期待しています。

――人気のある作品は。

野中:作品単位でのビューを見ると、創刊号と7月号(第2号)では、単行本未収録の回を掲載した「こどものじかん」が圧倒的でしたね(笑)。連載作品では「ゆーあい☆エトランゼ(晴瀬ひろき著)」が好評ですが、「こどものじかん」に集中していた初期の頃と比べると、すべての作品がおしなべて読まれているようです。

 また、COMIC SEED!自体は、普通の雑誌と違って“立ち読み”用と位置付けています。ですから、好きな作品だけを読みに来てもらっても全然構わないと考えています。

――掲載作品を見ると魔法少女や巫女など男性向けの傾向が強い印象ですが。

野中:極端にどうこうという選び方はしていませんが、現状では少し偏っている状況にありますね。これは想定する読者層がPCを使いこなすユーザーという点があるのかもしれません。

 加えて、フルデジタルで作業を行なっており、基本的にデータ入稿が可能な作家さんにお願いしている点もあると思います。だからといって、そうした方向でやっていくのでははなく、幅のある作品を掲載したいと考えています。

――新連載の作家さんはどのように探しておられるのでしょうか。

野中:1つには同人誌即売会があります。「COMITIA」という同人誌即売会では、コミックハイ!と共同で出張編集部を設けていますが、「COMIC SEED!で描きたい」という持ち込みの方もいます。そうした方は、自分のサイトでWebコミックを掲載されている方もいます。将来的にはCOMIC SEED!大賞のようなものも設けて、間口を広げていきたいですね。

 ちなみに私自身、コミックハイ!と編集長職を兼務していますが、新連載をお願いする作家さんを探す際には完全に切り分けています。





携帯電話での配信に加え、PSPやニンテンドーDSでの可能性も

「COMIC SEED!」トップページ。作家からの近況コメントや次号コメントなどが掲載されている
――事業の収益としてはどのようにお考えでしょうか。

島野:基本的には広告収入で原稿料を含めてWeb掲載時点で収支のバランスをとった上で、単行本で収益をあげていければと考えています。

野中:単行本に関しては、ある程度点数が揃ってから刊行を考えています。時期としては年末ぐらいを予定していて、その際は書店でCOMIC SEED!の単行本だとわかって貰えるようにプロモーションを行なうつもりです。

――単行本展開とありましたが、それ以外にモバイル端末への展開はどうでしょうか。

島野:広告や電子書籍の取り次ぎをお願いしているデジブックさんと協力して、携帯電話向けに有料配信をまもなく開始する予定です。作品は1話単位での配信になり、価格は30~40円程度を考えています。また、PC向けにも配信が終了した号の作品を有料配信していく予定です。

――先ほど“立ち読み”というフレーズがありましたが、PSPやニンテンドーDSといった携帯ゲーム機での配信の可能性はどうでしょうか。

島野:研究というかアプローチはしています。基本的には無料で配信できればと考えていますが、決定しているわけではありません。その前にまずは技術的な検討、それに各プラットフォーム用にサイトを立ち上げる際の費用対効果の部分も考える必要があると思います。





今までの読者の思いを前提に継続的にCOMIC SEED!を発展させたい

――COMIC SEED!以外のターゲット層に向けた媒体創刊の考えはあるのでしょうか。

野中:現時点ではそこまで考えは及んでいません。COMIC SEED!自体がもう少し安定すれば、その先も可能性としてはありますが、ページ数自体を増やすのは雑誌と比べると簡単なので、COMIC SEED!でやれることやっていく考えです。

島野:コミック出版部では野中の言った通りですが、双葉社の他の編集部でも可能性は探っています。ただ、全社を挙げて「さぁ行くぞ!」といって結局駄目だったという事態もあり得るので、地道に進めていくという感じです。

――最後に今後の展開について教えてください。

野中:COMIC SEED!の新創刊にあたっては、ペンギン書房時代からの読者の思いを大事にしたいという前提が1つあります。その上で、今後も連載を充実させていきたいと考えています。また、インターネット上での配信ではリーチしない読者も多くいると思うので、単行本刊行時には、店頭プロモーションを通じて、COMIC SEED!としての、そして単行本としての価値をそれぞれ高めていければと思っています。

島野:私の方ではシステムや事業面を担当していて、COMIC SEED!をきっちりと推し進めていく立場にあります。ですので、まずはCOMIC SEED!が走り続けられるように広告をきちんととっていければと考えています。そうした中で、新しい広告形態の可能性もあるでしょうから、そうした部分も引き続き検討を進めていきます。


関連情報

URL
  COMIC SEED!
  http://www.comicseed.jp/
  双葉社
  http://www.futabasha.co.jp/

関連記事
双葉社、無料で購読が可能な月刊Webコミック誌「COMIC SEED!」


(村松健至)
2006/08/09 11:02
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.