2006年10月、日本初のサブスクリプション型音楽配信サービスとして登場したナップスター。ナップスター対応の携帯電話もNTTドコモから発売され、2007年1月には定額プランの楽曲数が250万を突破するなどの展開を見せている。ナップスターの現状や今後の展開について、事業推進本部の五味陽介シニアマネージャーとオペレーション部のアド・ティマリング部長に話を伺った。
■ 時限管理で定額サービスを実現
|
ナップスター 事業推進本部の五味陽介シニアマネージャーとオペレーション部のアド・ティマリング部長
|
――本日はよろしくお願いします。はじめに、ナップスターというサービスの特徴を教えて下さい。
五味:ナップスターの他社と異なる大きな特徴は、何と言ってもサブスクリプション(定額制)です。曲数も1月にリリースした通り、定額プランで250万曲もの楽曲が楽しめます。また、ほとんどのメジャーなレーベル様から楽曲をご提供いただいております。
定額プランの音楽を、PCだけでなく携帯端末に持ち出して楽しめる点も特徴です。携帯電話もNTTドコモの「F902iS」から始まり、903iシリーズでは5機種がナップスター対応になりました。携帯電話以外でもナップスターに対応したプレーヤーが続々と増えています。
――ナップスターのユーザー数、利用状況は。
五味:まだ数字を公表させていただける段階にはありませんので控えさせていただきたいのですが、段々と立ち上がってきています。サービスを開始した2006年秋から冬にかけてはNTTドコモのFOMAなどナップスター対応携帯端末が多く登場したおかげで、ポータブルプレーヤーでも使える定額プラン「To Go」が伸びていますね。
――定額プランの仕組みを教えて下さい。好きな曲をダウンロードし終わったら解約してしまう、という使い方の場合、ポータブルプレーヤーに転送した楽曲はどうなるのでしょうか。
ティマリング:定額プランの「Basic」「To Go」」では、Windows Media DRMに組み込まれている時限管理の仕組みを用いています。ナップスター専用のアプリを立ち上げる度にインターネットを介して時限公開の暗号鍵を取得しておき、ポータブルプレーヤーとPCを接続した際にその鍵を携帯端末へ送る、という仕組みです。
五味:定額プランで好きな楽曲をダウンロードしたあとにプランを解約した場合、一定期間が経過するとその楽曲は再生できなくなります。ただし、旅行などでしばらくPCにつなげない場合などもありますので、楽曲が聴けなくなるまでに多少の余裕はもたせてあります。
――定額プランでは3台までのPCでダウンロードした楽曲を共有できますが、1曲ごと購入できる「a la carte(アラカルト)」でも共有は可能なのでしょうか。
ティマリング:はい、定額プランでは、1人のユーザーが3台までのPCでサブスクリプションの音楽を聴くことができ、プレイリストを共有することができます。定額プランの場合、他のPCを立ち上げると定額プランの楽曲リストがライブラリへ自動的に登録されます。
ただし、a la carteで購入した楽曲はライブラリのコピーを手動で行なう必要があります。a la carte で購入された楽曲は合計3台のPCで聴くようにできますが、「マイアカウント ⇒ ライブラリーのコピー」という機能を利用し、自分でダウンロードする必要があります。
■ Webからの楽曲検索も対応を予定。日本独自のカスタマイズも可能
|
ナップスター専用クライアントソフト「ナップスターアプリ」
|
――ナップスターで配信されている楽曲はナップスターアプリを使わないと知ることができません。ユーザー以外でも配信楽曲を知ることができるよう、Web上での楽曲検索サービスなどの提供の予定は。
五味:そういったサービスはまだ提供できていませんが、米国ではすでにWebでの検索サービスも提供していますし、対応したいと思っております。音楽配信の楽曲数充実を心がけてきましたが、さらにサービスレベルでも日本でもお客様に喜んでいただけるよう各種検討をしております。
――米国とサービスが異なるとのことですが、ナップスターのプラットフォーム自体も各国で異なるのでしょうか。
ティマリング:基盤そのものは共通ですが、国ごと独自のカスタマイズは可能です。日本で言えば、ナップスターアプリを立ち上げたときのTOPページが異なります。日本ではタワーレコードと提携しているというメリットがありますから、タワーレコードの持つ音楽編集能力もナップスターで活用しています。
――mixiやMySpaceなどのコミュニティーサービスやブログとの連携機能などの予定は。
五味:既に現在のサービスにもコミュニティー機能をもっておりますが、そうした機能も考えてはいます。
ティマリング:ナップスターは日本独自でカスタマイズしている部分もありますが、基本的には世界共通のサービスですから、全世界のナップスターユーザーに愛用してもらえるような機能拡充は常々考えてはいます。
■ ナップスター認定携帯端末の拡充がプロモーションにつながる
|
ナップスターに対応したNTTドコモの携帯電話
|
――ナップスター対応の携帯電話は今のところNTTドコモだけですが、他の事業者への対応予定は。
五味:相手のあるお話で大変難しいことですが、携帯電話は非常にわかりやすく魅力的な端末だとは思います。。多くのWMAを搭載できるメーカー様とお話を進めており、ナップスターを快適に使える認定携帯端末を増やしていくことを目指しています。
ただ、ナップスター対応の携帯電話を買っただけでは、「To Go」を楽しんでいただけないいことも、我々にとっては課題の1つです。携帯電話で音楽を楽しむためには、メモリカードやPCとの接続ケーブル、イヤフォンなども合わせてご用意いただく必要があります。
そうしたこともあって、ハギワラシスコムにお願いして、FOMAの接続ケーブルやmicroSDカード、平型イヤフォン変換アダプタ、microSDカード用のminiSDカード変換アダプタなどをセットにした「音楽ケータイセット for Napster」を発売いただきました。端末の拡充ももちろんですが、それだけではなくお客さまがナップスターを使いやすいような施策も進めていきます。
――ナップスター認定携帯端末の認定条件は。
ティマリング:基本的にはメーカーが認定を受けたいかどうかですね。海外ではMicrosoftの認定プログラム「Plays for Sure」がありますが、日本ではPlays for Sureが実施されていませんので、時限管理や基本的な操作などをチェックして認定を行なっています。ナップスターの定額聴き放題の便利さ、楽しさをユーザーに充分に体験して頂けるプレイヤーであることも確認しています。
――認定を取得するのに費用などは発生するのでしょうか。
五味:そういった費用はいただいていません。我々としても認定携帯端末が増えることはプロモーションメリットがありますし、そこから加入者増につなげたいと思っていますから、認定携帯端末の申請は喜んでお受けしています。
■ 邦楽の充実も視野に。音楽の楽しみを伝える「音楽メディア」を目指す
――ナップスター対応の携帯電話でも、楽曲の購入はPCから行ないます。携帯電話から直接購入できるようにはなるのでしょうか。
五味:とても魅力的なサービスですし、検討していきたいお話です。ただ現段階ではお話できる段階にはございません。
――定額プランに関して、JASRACへ支払う料金体系はどのようになっているのでしょうか。
五味:これも詳しくはお話できないのですが、JASRACさんとは定額プランの開始に際して、新しいスキームを構築した上で定額サービス独自の処理を行なっています。
――ナップスターでは洋楽が圧倒的ですが、邦楽の充実は。
五味:海外ではナップスターがすでに始まっていましたので、邦楽に比べて洋楽のほうが権利処理も早く進んではいますが、邦楽もどんどん増えてはいます。ただし、定額の音楽配信サービスというのは日本で初めてですから、さまざまな調整が必要で時間がかかっています。
もちろん楽曲の数がすべてではないですが、たくさんあるからこそ好きな楽曲を見つけられますし、定額で自由に音楽に触れられるからこそ、音楽の楽しみを伝えられると思います。ナップスターは単なる音楽配信サービスではなく、新しい音楽メディアとしての価値をご提供していきたいと思っております。タワーレコードのノウハウも活かし、独自に編集してご提供する特集やプレイリストなどを通じて音楽の楽しみを伝えていくことを大事に考えています。
――ありがとうございました。
■ URL
ナップスター
http://www.napster.jp/
■ 関連記事
・ ハギワラシスコム、ナップスターとコラボした「音楽ケータイセット」
・ ナップスター、定額制プランに対応した楽曲が250万曲超に
・ NTTドコモ、903iシリーズなど新モデル14機種。5機種がナップスター対応
・ 定額制の音楽配信サービス「ナップスター」速攻レポート
・ ナップスターが定額制音楽配信スタート。料金は月額1,280円から
(甲斐祐樹)
2007/02/15 11:12
|