SCEJは8月下旬より、「プレイステーション 3」(以下、PS3)向けの3Dコミュニティサービス「PlayStation Home」のクローズドベータテストを国内で開始した。開発中の段階ではあるが実際にクローズドベータテストのアカウントを取得、PlayStation Homeの世界をレポートする。
■ 3Dの仮想世界でアバターを使ってコミュニケーション
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PlayStation Home
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PlayStation Home(以下PS Home)は、3Dのアバターを使って他のユーザーとコミュニケーションできるのが特徴の一つ。2007年3月に米国で開催された「Game Developers Conference 2007(GDC 2007)」で初めて発表され、当初は2007年秋に開始予定だったが、延期を重ねながらも2008年8月にクローズドベータテストが開始された。
仮想世界の中でアバターを利用してコミュニケーションするサービスは、Linden Labの「Second Life」が代表的な存在として挙げられる。また、国内でもsplumeやmeet-meなどのサービスが展開されており、最近ではスクウェア・エニックス100%子会社のスマイルラボによる「Nicotto Town」、ドワンゴの「ai sp@ce」などがベータテストを展開している。
これら3Dコミュニティサービスと比べてPS Homeは、専用機であるPS3で展開される点が大きな違いだろう。Second Lifeでは「ソフトがインストールできない」「PCのスペックが足りなくてまともに動作しない」といった意見もユーザーの中に見られたが、PS Homeの場合は同じPS3というハード上で動作するため、そうした問題の発生が避けられる。
また、「ログインしてから何をしていいかわからない」という声も多かったSecond Lifeに対し、ゲームメーカーが提供するPS Homeではゲームコンテンツの充実も期待できる。
今回はクローズドベータテストのアカウントを取得し、実際にPS Homeの世界を体験した。なお、PS Homeはまだ開発中の段階であり、今回のレビューが正式な仕様ではない点は注意して欲しい。
■ プロダクトコードを入力して専用アプリをダウンロード
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「アカウント管理」からプロダクトコードを入力
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初めにクローズドベータテストの流れについて説明していこう。クローズドベータテストの当選者にはメールでPS Homeダウンロード用のプロダクトコードが送られ、これをPLAYSTATION Network(PSN)の「アカウント管理」から入力すると、PS Homeのアプリケーションがダウンロードできるようになる。
プロダクトコードの利用は1回のみだが、一度プロダクトコードを設定したPSNのアカウントであればPS Homeのアプリケーションは何度でもダウンロード可能。複数台PS3を所有していれば、他のPS3でも当選したマスターアカウントでログインすることでPS Homeのアプリケーションをダウンロードできる。ただし、実際にログインできるのは当選したマスターアカウントのみ。
PS Homeのダウンロードとインストール終了後に起動するとPS Homeのログイン画面が表示。バージョンは「v00.98.0」と表示され、クローズドベータテストであることを感じさせる。なお、フルHD対応のBRAVIAで起動したところ、画面は720Pで表示されたが、
PS3の「設定」の「ディスプレイ設定」にある「映像出力設定」でカスタムを選び、720pをオフ、1080pをオンと進んでいくと、1080pで出力されるようだ。
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専用アプリケーションをダウンロード
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クローズドベータのバージョンは「00.98」
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■ アバターは細かいカスタマイズが可能
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アバターのカスタマイズ
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PS Homeの初回起動時にはアバターを設定する。設定項目はかなり細かく、体形や髪型に加えて顔のパーツだけでも「頭」「顔」「額・眉」「目」「耳」「鼻」「口」「あご」「ほほ」の9カ所をカスタマイズできる。また、女性キャラであればアイシャドーやアイライナー、口紅などのメイクも可能だ。アバターの動作も凝っていて、服装を変更すると自分の姿を見回し、ユーザーに向かって「これでいい?」と言わんばかりに目線を送ってくる。
PS Homeの開発は英国の開発チームが中心となっているということもあり、体のパーツも外国人的なものが多い。今後のサービス展開次第で、さらに日本人アバターが作りやすくなるパーツが増えることを期待したい。
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アナログスティックで細かいカスタマイズが可能
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プリセットのキャラクターも用意
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服を着替えるとアバターが自分の服装をチェックする
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アバターの作成が終わると自分の家となる「マイホームプレイス」に移動。部屋の扉を出ると、PS Homeの中心エリアである「ホームスクエア」へ移動できる。
なお、エリア移動時には初回のみエリアの情報をダウンロードするために待ち時間が必要。データはいずれも数十MB程度で、数分程度でダウンロードが完了する。2回目以降はダウンロードの必要はないが、エリアの切り替えには数秒から数十秒程度の読み込み時間が発生する。
広大なエリアで自分の建物なども建築できるSecond Lifeと異なり、PS Homeの世界は1つの街程度の大きさ。エリアはPS Homeの中心的エリアの「ホームスクエア」、ゲームのトレーラーなどが視聴できる「シアター」、PS Homeで利用できるアイテムを入手できる「マーケットプレイス」、ゲームが楽しめる「ゲームプレイス」、そして自分の部屋である「マイホームスペース」の5つで構成。すべてのエリアはホームプレイスにつながり、徒歩で移動できるようになっている。
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マイホームプレイス。初回は何も部屋にない状態だが、アイテムなどでカスタマイズできる
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他のエリアへ移動する際は初回のみダウンロードが必要
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ダウンロードが終わるとエリアに移動する
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■ テキストに加えてボイスチャットも可能。ジェスチャーも用意
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USBキーボードでテキストチャットが可能
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キャラクターの移動は左アナログスティックで行い、視点は右アナログスティックで切り替え。R3を押すとアバターとの距離を切り替えられる。移動に関する操作は非常にシンプルで、Second Lifeのように空を飛ぶ機能などは備えていない。
チャット機能はソフトキーボードやUSBキーボードに加えて挨拶や質問などの定型文も用意。チャット中は相手のアバターに自動で視線を向けながら身振り手振りをつけてくれる。
チャット支援機能としてジェスチャーも用意。投げキッスといった挨拶や拍手、大笑いに加え、ディスコやレイブ、ロボットといったダンスも用意されている。また、ヘッドセットがあればR2を押してボイスチャットも可能だ。
テキストチャットとボイスチャットは周囲のアバター全体が対象で、それぞれのアバターの頭の上にチャットの内容が表示されるほか、テキストチャットの履歴も確認が可能。アバターから離れるとテキストチャットやボイスチャットの内容も表示されなくなる。
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ソフトウェアキーボード
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定型文
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ジェスチャーは拍手やダンスなど多彩な動きが用意されている
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■ フレンドリストはPS3と共通。バーチャルPSPで機能を呼び出し
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バーチャルPSP
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アバターの操作やチャット以外の機能は、STARTボタンを押して表示される「バーチャルPSP」から行う。「バーチャルPSP」を選ぶと、画面にはPSPそっくりのインターフェイスが表示され、ここからゲームの設定や徒歩以外でのエリアの移動、フレンドへのメッセージ送受信など、さまざまな機能が利用できる。自分が起動している状態ではわからないが、他のアバターがバーチャルPSPを起動するとアバターが実際にPSPを取り出して操作を始めるなど、アバターの動作も細かく作り込まれている。
フレンド登録した相手とは、相手を自分のいる場所に招待できるほか、相手のいる場所へ移動することも可能。また、ヘッドセットを使ってフレンドと専用ボイスチャットを行う「電話」機能も利用できる。電話は指定したフレンド同士で行えるため、内容は他の人には聞こえないほか、電話しながらアバターを操作することもできる。また、自分の部屋に相手を招待すれば、他の人に内容を知られずにチャットすることも可能だ。自分の部屋は最大7人までアバターを招待できる。
なお、PS HomeのフレンドリストはPLAYSATION Networkと共通となっており、PS Homeで登録した相手はPS3のメニュー画面にもフレンドとして登録される。また、すでにPS3でフレンド登録しているユーザーもPS Homeのフレンドとして表示。PLAYSTATION Networkへのログイン状態がわかるほか、PS Homeにログインしている場合はHomeアイコンが表示される。
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フレンドリストはPS3と共通。登録依頼はSELECTボタンの「セキュリティオプション」から「システムフレンドリスト」で承認できる
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フレンドにはメッセージ送受信や場所移動が可能
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ヘッドセットを使って電話もかけられる
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■ ホームスクエアなどのエリア内で動画を配信
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ホームスクエアに設置されたビデオスクリーン。常に動画が流れている
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ホームスクエアを含むPS Homeのエリアでは、至るところにポスターやビデオスクリーンが設置されており、近づいて○ボタンを押すことで内容を確認できる。ポスターにはPS Homeの操作アドバイスや新着情報などが掲載されており、動画は新作ゲームのトレーラーやSCEJのゲームイベントレポートなどを表示。動画は自分で再生を開始するのではなく常に流れ続けていて、画面に近づくと音が聞こえてくるなどリアルに作られている。
ビデオスクリーンは近づいて拡大すると、画面に拡大して動画を再生できる。配信されている動画はダウンロードしてから再生しているようで、ダウンロード自体の速度は回線速度に左右されるものの、再生は回線速度の影響を受けないで視聴できているようだ。
また、「シアター」では最新ゲームの予告編などを視聴可能。シアターに入場した時点で動画のダウンロードが開始され、動画の最初から視聴できる。シアター内は動画のズームは可能だが、テキストチャットなどの機能は用意されておらず、画面のズームもエリア内に比べてやや小さくなっている。
マーケットプレイスでは、アバターやマイホームスペースをカスタマイズできるアイテムを販売。現在はクローズドベータのためかすべてのアイテムを無料で入手できるが、今後はここで有料アイテムの販売なども行われるのだろう。
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近づくと画面をズームできる
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ズーム後は画面いっぱいに動画を表示できる
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ポスターではPS Home内の告知や操作ガイドなどを掲載
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シアター
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シアター内の様子。こちらも動画をズームできる
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シアターの場合は劇場の様子も表示され、ビデオスクリーンのように画面全体をズームできない
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マーケットプレイス
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アバターの衣装やマイホームプレイスの家具などを販売
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さまざまなアイテムを購入できる。クローズドベータではすべて無料
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■ ボウリングやビリヤードなどが対戦できるゲームスペース
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ゲームスペース
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PS Homeの中でも重要な位置付けと思われる「ゲームスペース」では、大きく分けて2種類のゲームが楽しめる。1つはアバターのまま楽しめるゲーム、もう1つは画面が切り替わってプレイできるアーケードゲームだ。クローズドベータでは、バンダイナムコのゲームが楽しめる「ナムコミュージアム」が、PS Homeから実際にゲームを起動してプレイするスタイルとなる。
ゲームスペースは現在「ボウリング」「ダーツ」「ビリヤード」の3種類を用意。どれも1人の時は練習モードで、2人以上になると対戦が楽しめる。
ボウリングは動くゲージをタイミングよくボタンを押すシンプルな操作ながら、方向や回転、強さなども細かく決められる。慣れるまでは操作が難しいが、タイミングを覚えてくるとストライクも出せるようになり、対戦も白熱しそうだ。
ビリヤードのルールはエイトボールのみ。アバター視点のほか台の真上からの視点にも切り替えられるが、打ち方は球の強さだけで回転などはかけられず、本格的に楽しむというよりも雰囲気を味わうといった感じだ。ダーツに関しては照準を決めた後アナログスティックを上下に倒すだけとさらにシンプルなもので、ゲームとして楽しむよりも雰囲気を楽しむ位置付けのものかもしれない。
アーケードゲームでは、ヘリコプターで兵士を救出するアクション「EVAC」、2D視点のレースゲーム「Race Day」、電車の車両で色を合わせて消していくパズルゲーム「CARRIAGE RETURN」のほか、PSPとPS3で発売されているSCEの作品「無限回廊」をモチーフとしたパズルゲーム「無限回廊 変奏曲」の4種類がプレイできる。いずれもPS Home上で動作し、ゲームを選択するとゲームの画面がテレビに大きく映し出される。
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ボウリング
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ボタンを押すタイミングでコース、回転、強さを決定
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対戦時はアバターが席に座ったままボールだけが転がっていく
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ダーツとビリヤード
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ビリヤードは方向を選んで球を打つだけのシンプル操作
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ダーツ。アナログスティックの上下でダーツを投げられる
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アーケードゲーム
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アナログスティックで操作するレースゲーム「Race Day」
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無限回廊 変奏曲
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■ バンダイナムコのゲームも提供。一定スコアでアイテムをゲット
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ナムコミュージアム
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一方、バンダイナムコの「ナムコミュージアム」では、「ゼビウス」「ギャラガ」「ディグダグ」「パックマン」の4タイトルがプレイできる。こちらはプレイ前に専用のアプリケーションをインストールしておく必要があるほか、ゲームはPS Home上ではなく、PS Homeをいったん終了した後で自動的にゲームが立ち上がる仕組み。ゲームを終了すると再びPS Homeに戻ってくることができるが、基本的にはPS Homeから別のゲームに変更したと変わらない感覚でのプレイすることになり、ゲーム中にバーチャルPSPを呼び出すといったPS Homeの機能は利用できない。
また、「ナムコミュージアム」と「無限回廊 変奏曲」では、一定のスコアを残すとPS Home内で利用できるアイテムが手に入る「ホームリワードシステム」に対応している。確認した限りではナムコのゲームがデザインされたTシャツや、マイホームスペースに設置して実際にプレイできるゲーム筐体、無限回廊のキャラクター衣装などが手に入った。
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ナムコミュージアムでプレイできる「ゼビウス」。ステージは2面まで
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一定スコアでアイテムを獲得。部屋にゲームを設置することも可能
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「無限回廊 変奏曲」で入手できる無限回廊キャラクターの衣装
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「ゲーム起動」はバーチャルPSPから選択
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もう1つ、PS Home内で注目のゲーム関連機能が、バーチャルPSPからPS3のゲームを呼び出せる「ゲーム起動」だ。選べるゲームはBlu-ray Discのゲームのほか、PS3にインストールされているゲームも対象。ゲームセッションを作成したアバターにはコントローラのアイコンが表示され、他のアバターがそのセッションに参加できる。
ただし、残念ながら現在のところはそこからオンラインゲームを同時にプレイするような機能はないようで、セッションに参加したユーザーはそれぞれ個別に同じゲームを起動するだけの機能に留まる。ただし、ゲームセッションからナムコミュージアムを起動すると、「製品版ではフレンドのリストが表示されます」と表示されるため、ゲーム起動から対戦できる機能も予定されているようだ。
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Blu-ray DiscのゲームやPS3にインストールされたゲームを起動できる
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ゲームセッションを作成するとコントローラのアイコンが表示され、他のユーザーがセッションに参加できる
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ナムコミュージアムはフレンドリストに対応予定
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■ PS3すべてのゲームにつながる「PS Home」の存在
以上、PS Homeの基本的な流れを紹介した。あくまでクローズドベータテストのため機能やサービスも限定されてはいるものの、3Dによる仮想世界でリアルなアバターでコミュニケーションするという点ではSecond Lifeに似ているが、そのコンセプトは大きく異なると感じた。
Second Lifeの場合は、広大な世界の中で他のユーザーとコミュニケーションしたり、自分自身で街を作り出したりと、「Second Lifeという世界の中で生きる」ことそのものが楽しみとなっている。これに対してPS Homeはアバターによるコミュニケーションという点では共通だが、それは他のユーザーと一緒にゲームをプレイする、一緒に動画を視聴して楽しむなど、PS3のコンテンツをより楽しむための手段として提供されているように感じた。
そういう意味ではSecond Lifeよりも、セガのMORPG「ファンタシースターオンライン」(PSO)シリーズに近い印象を受けた。PSOでは「ロビー」と呼ばれる場所にユーザーが集まり、気の合った仲間たちとロビーから冒険の旅に出かけていく。PS Homeの場合は冒険にあたるのがPS3のゲームや動画であり、PS3のコンテンツへ出かけるための「PS Home」としての存在に感じた。
他のユーザーとオンラインプレイするための機能はPS3は標準で備えてはいるが、こちらはプレイしたいゲームが前提であり、どのゲームをプレイするかはメニュー画面で他のユーザーのオンライン状況を見て判断したり、もしくはゲームの前にどのゲームをプレイするか決めておく必要がある。
それに対してPS Homeであれば、まずは仲の良い友達で集まって会話を楽しみながら、その日一緒にプレイするゲームを決める、という流れが作り出せる。オンラインでゲームをより楽しむためのポータル的存在として、PS Homeは今までにない興味深い存在だと感じた。
今はまでクローズドベータテストのため最低限の機能しかないが、今後はゲームセッションでPS Homeからオンラインプレイを起動したり、シアターで最新の映画を楽しめるようになるかもしれない。PS3だけでなくPSPも、ファームウェアによるアップデートで大幅な進化を遂げてきた歴史があるだけに、PS Homeに関しても正式サービスに向けて、そして正式サービス後もさらなるサービスの拡充を期待したい。
■ URL
PlayStation Home
http://www.jp.playstation.com/ps3/home/
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(甲斐祐樹)
2008/09/04 11:49
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