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ミクシィ笠原氏に聞くユーザー制限緩和とAPI公開の意味

 ミクシィは、11月27日に開催した発表会で、同社のSNS「mixi」のAPI公開や登録制への移行といったオープン化の施策を発表した。これまで最大手SNSとして招待制を採用してきたmixiにとって、登録制やAPI公開は大きな転換機と言える。今回の発表について、ミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏に伺った。





登録制で今までのコミュニティ以外へユーザーを広げる

ミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏

登録制で新規ユーザーの増加を図り、既存ユーザーの活性化も図る
――今回の発表では今までの招待制から登録制へ移行するとのことですが、ユーザーの伸びに頭打ちを感じていたのでしょうか。

 今回の発表は招待制を無くすということではありません。基本は招待制でmixiに入ってもらい、さらに登録制を併用することで招待制ではmixiに入れなかった方々に利用してもらうことが目的で、招待で友人のネットワークを広げていって欲しいという考えは変わりません。

 一方で招待制だけではユーザーが広がらないという課題も2つあります。1つは今のmixiを利用しているコミュニティと一歩離れた人には届かないという点で、例えば35歳以上の世代層では、10人に8、9人の割合でmixiを利用しておらず、mixiを利用したいと思っても招待が行き渡らないことがあります。

 また、mixi内でも、他のユーザーを招待するブームが落ち着くと、招待状が来れば受け取るけれど自分から招待してまでマイミクを増やすという思考回路に行き着かないことが多く、タイミングを逃した人などが後から入りにくいという雰囲気もあります。mixi全体も招待でユーザーを増やす時期から今は日々コミュニケーションを行う段階にあり、一方で利用したくてもできない人に対してもコミュニケーションの場を提供するということが今回の目的です。頭打ちを感じていないということもありませんが、むしろ友人とつながるための機会損失を防ぐための施策と考えています。

――登録制になることで、「現実の人間関係を再現する」というmixiのコンセプトが変化するのでは。

 そのコンセプトに変わりはありません。登録制で入ってきた方も、スムーズに現実の人間関係を再現できるように、今以上にリアルの友人知人と繋がりやすくなる仕組みを作っていくことが非常に重要になってくると考えています。

――登録制の場合他にユーザーがいないため、何をしていいかわからないというケースが想定されますが、そうした登録制ユーザー専用のインターフェイスの可能性は。

 ユーザーが増えることで初心者を意識してmixiのインターフェイスを2009年春までに改善し、より現実の友達とつながれるようにしていきたいとは思っていますが、登録制のユーザーのみインターフェイスを変更するということは今のところ考えておりません。mixiの中で現実の友人や知人を探し、日記などでコミュニケーションを見つけて欲しいと思います。招待制と登録制で機能的な違いも設ける予定はありません。

――登録制で新規ユーザーが増える一方で、既存のユーザーはいったんマイミクシィの登録が落ち着くと、あまり積極的にマイミクシィを増やさずに固定化している印象がありますが、こうした既存ユーザーのコミュニケーションを促進する施策は。

 そうした課題はmixiの運営側としても持っていて、新規ユーザーが増えることで仲の良い人が増え、活性化につながればいいと考えています。また、そうしたコミュニケーションは結局のところアプリケーションにひも尽くのではないかとも考えています。今はmixiで日記が一番のキラーアプリケーションですが、API開放などでサービスが多様化し、日記以外のキラーアプリケーションが増えることで、既存ユーザーも活性化するのではと考えています。





18歳未満はコミュニティ禁止。標準の公開範囲も制限

年齢制限の引き下げとともにサポート体制を強化
――18歳未満のユーザーもmixiを利用できるようになりますが、機能面での制限について詳細を教えてください。

 18歳未満のユーザーについては誤解を与えてしまっているようですが、18歳未満のユーザーはコミュニティには閲覧も含めて一切参加できず、友人検索の結果にも表示されません。基本はマイミクシィとの日記のやり取りがコミュニケーションの中心で、日記も標準ではマイミクシィのみに設定されており、自分で変更しなければ全体に公開されることはありません。

――コミュニティが一切参加できないことは、コミュニティとしてのmixiの魅力を損なうのでは。

 その点は悩んだところですが、まずは青少年の安全性を担保することを第一として今回の仕様としました。コミュニティに対しては今後改善の可能性もあります。

――ユーザーの年齢詐称を防ぐための施策は。

 あくまで例ですが、クラス対抗のアプリケーションなどを用意し、そこに参加するには地域と年齢を正しく入力しなければいけないなど、年齢を正しく登録することがメリットになるような展開を考えています。

――登録した生年月日はユーザーが自由に変更できるのでしょうか。

 開始当初は自由に変更できますが、将来的には見直すかもしれません。いったん登録した生年月日が未成年だった場合は生年月日の変更ができないようにするといった固定制にする可能性もあります。もなお、18歳の誕生日を迎えた時点で未成年に対する機能制限は解除されます。

――今回の下限は15歳ですが、中学生3年生では同じ学年にも関わらず誕生日の違いによってmixiに参加できなくなる可能性があります。

 その点は現状設定している18歳未満という制限でも同じことが言えるでしょう。今回の仕様では、高校生以上であれば必ずmixiを利用できる、という条件で考えています。

――年齢制限によってサポート体制を強化するとのことですが、具体的な内容は。

 サポート人数の拡大に加えて、新たなセキュリティツールの導入を考えています。これまでもそうしたツールは導入済みで、アクセスが異常に伸びているユーザーなどを検知していましたが、今後は書き込み全体のチェックをより強化し、ベイジアンフィルタのような学習型のシステムも取り入れていきたいと考えています。

――未成年ユーザーは日記の公開範囲が初期設定で制限されますが、一般ユーザーは登録時に全体公開が標準となる点は変わらないのでしょうか。

 どの公開範囲が一番適切かは再度検討の余地があると思いますが、全体公開で問題が発生するのは100万件のうちわずかなケースです。今は日記ごとに公開範囲も設定できますし、何よりも公開範囲を自分で設定できるということが浸透しているのではないでしょうか。全体公開していることでコミュニケーションが活発化するという面もあり、マイミクシィにのみ限定して日記を公開するという設定を標準とするのは今のところ未成年ユーザーのみです。





mixi アプリは有料も可能。広告収益の還元も

mixi内で企業や個人がmixiのデータを利用宇下サービスを開発できる「mixi アプリ」
――mixi上でサービスを開発できる「mixi アプリ」と外部サービスを開発できる「mixi Connect」では、取得できるデータの違いはあるのでしょうか。

 詳細は2009年1月に予定している発表会で説明しますが、mixi Connectのほうが制限が増え、mixi アプリのほうがより複雑な機能を開発できることになると思います。

――具体的にどういったデータが利用できるのでしょうか。

 マイミクシィ情報といったオーソドックスな情報は基本的に出していきたいと思いますが、今はパートナー各社からどういった情報を利用したいかというニーズを集めているところです。12月10日には、パートナー企業に開発環境を公開する予定です。

――mixi アプリはmixi上でどのように表示されるのでしょうか。

 今のところは左の列に利用するアプリ一覧を表示し、最新日記情報などを表示する中央の列でも何かしらアプリケーションを表現できる場所を設けたいと思っています。

――mixi アプリで有料のアプリは開発できるのでしょうか。

 もちろん開発できます。アプリ自体を有料で提供するだけでなく、アプリのページで得られた広告収入を還元することも考えています。決済についても当初はmixi側で課金し、手数料をいただく形になりますが、今後はアプリ提供者側での課金システムにも対応できる方向で考えています。

――課金の具体的な方法は。

 mixiモバイルですでに「mixiポイント」というシステムを提供しており、これをPCにも展開していく形を考えています。

――mixi アプリの公開にはmixiの承認を得る必要があるのでしょうか。

 承認の詳細については内部で決定していますが、今はまだ公開していません。mixi アプリ発表のタイミングで情報を提供でいると思います。ただし、公序良俗に反するようなスパム的なアプリに関しては承認しない、もしくは削除するといった対応は決定しています。

――mixiのサービスと競合するようなアプリが登場した場合、mixiとしては承認するのでしょうか。

 まずはユーザー間のコミュニケーション総量が増えることを第一としているので、サービスがバッティングしてもコミュニケーション総量が下がるのでなければ良しとする方向です。

――mixi アプリで提供している機能を、mixiが公式アプリとして提供することもあるのでしょうか。

 同じ機能のアプリが複数存在し、ユーザーが分散してしまうと面白くなくなる可能性もありますので、メジャーな機能についてはmixiが公式に提供することで1つに集約することもあるかもしれません。





mixi Connectはログイン前提。PV減少よりも利用増大を目指す

外部サービスにmixiのデータをAPI提供する「mixi Connect」
――mixi Connectはmixiのデータを外部で利用できますが、公開する情報に制限はあるのでしょうか。

 元々mixiは会員向けサービスですので、外部に情報を提供する場合もデータの閲覧にはmixiへのログインが前提となります。また、マイミクシィによる人間関係を利用したデータも提供する方針です。こちらも承認が必要かどうかについては社内で検討している最中で、1月の発表時にお話できると思います。

――外部にデータを提供することでmixiにアクセスしないユーザーが増え、mixiのPVが減少するという懸念は。

 APIの出し方次第だとは思いますが、まずはコミュニケーションの総量を伸ばすことを前提に考えたいと思います。

――外部へのAPI公開は大きな負荷が予想されますが、回数や時間などAPIへのアクセス制限などを設ける予定は。

 詳細はまだ検討中ですが、今でもmixiでは大量のアクセスがあり、相当の負荷は耐えられる仕組みにはなっていると思います。

――外部API公開でPVが減少した場合、広告収益にも影響が出る可能性がありますが、今後広告以外の有料サービスへ注力する可能性は。

 有料サービスももちろん重要ですが、広告の収益はまだまだ伸ばしていけると考えていますし、当面は収益の柱としてあり続けるでしょう。今の想定としては収益の半分以上は以前として広告になると考えています。

――有料課金サービスで収益を伸ばしているSNSもあります。

 アイテム課金はmixiモバイルの「ミクコレ」などで提供していますが、いわゆるアバターを使った仮想世界での仮想コミュニケーションといった方向へ持っていくことはありません。リアルなコミュニケーションを促進できるアバターであれば可能性はありますが、それがどういうアバターかが課題でしょう。

――家庭用ゲーム機ではアバターを使ったSNS化が進んでいます。

 例えばWiiの「Mii」などは現実の自分を投影しているケースが多く、それがmixiに連携して、ということであれば可能性として面白そうだとは思います。





エコーも正式サービスを準備中。物流サービスも興味

――プレミアム会員の特典だったメッセージの無期限保存が全会員向けに提供されましたが、現状でのプレミアム会員の位置付けは。

 プレミアム会員は容量を拡大できますので、写真などをたくさん使う方にはメリットのある話だと思います。また、プレミアム会員の機能改善も考えてはいます。将来的にはmixiポイントとmixiプレミアムを融合する形も考えています。

――一言コミュニケーションの「エコー」もAPI公開の対象でしょうか。

 APIとして提供するかの詳細は決まっていませんが、エコー自体は正式版の公開に向けて機能改善を行っています。

――mixi OpenIDを提供していますが、OpenIDの仕組みが広がると、一方でmixiの名を語ったフィッシングサイトが増える可能性も考えられます。

 今のOpenIDは完成系ではないと思っていますし、今後機能の改善もあるでしょう。ただ、mixiとして現状考えているのは、mixアプリから外部サイトへアクセスする際にOpenIDをうまく利用したいと考えており、それであればフィッシングの危険もないでしょう。フィッシング自体が違法であり、そうした行為については厳しく対応していきたいと考えています。

――mixiモバイルで外部サイトを閲覧できるようになりましたが、外部サイトはすべてmixi内のコンテンツとして表示され、外部サイトへアクセスできない仕様になっています。こうした仕様を採用した理由は。

 従来のmixiモバイルでは外部サイトを一切閲覧できず、外部ブログを更新してもmixiではわかりませんでした。まずはそれを見られるようにするための第一段階としての施策で、今後改善は考えておきたいと思います。

――mixi年賀状が始まりましたが、今後mixiを利用した物流サービスの可能性は。

 発表会では暑中見舞いなどの例を挙げましたが、マイミクシィにプレゼントを贈れるギフト展開も考えています。友達とのコミュニケーションが発生するためのもののやり取りは手がけていきたいと思いますし、物流サービスも興味はあります。そうした施策も早い段階でやっていきたいと思います。

――ありがとうございました。


関連情報

URL
  ミクシィ
  http://mixi.co.jp/

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(甲斐祐樹)
2008/11/28 15:05
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