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ネオモバイル IP電話トライアルをモニター機でテスト

 NTT-MEは10月23日より同社が運営する無線LANサービス「ネオモバイル」の一環として、無線LANを利用してPDAから通話できるIP電話サービス「ネオモバイル IP電話トライアル」を実施している。モニター機を利用してサービスの使用感をテストしてみた。

 この試験サービスでは、Pocket PC 2002を搭載したPDAを所有するユーザー向けの「HPコース」、ネオモバイルにすでに登録済みで、日立製のPDA「NPD-10JWL」を無償貸与されているユーザー向けの「日立コース」が用意されている。HPコースは時間制限があるものの一般加入電話に加えて携帯電話・PHSへの通話が可能、着信も受けることができる。日立コースは携帯電話・PHSへの通話や着信ができないが、一般加入電話へは無制限で通話することが可能。今回は日立コースの端末を利用して実験を行なった。

 実験エリアには東武東上線 池袋駅を選択。ここにはアクセスポイントが合計3カ所用意されているが、待ち合わせスポットとして人通りの多いマルチビジョン付近で実験を開始した。

 IP電話トライアルを利用する場合はまずネオモバイルの無線LANサービスにログインする。ログインにはESS-IDと128bitのWEPに加え、ネオモバイル専用の認証IDとパスワードの入力が必要で、これらの情報はあらかじめネオモバイルに登録して取得する必要がある。


ネオモバイルにログインする際の認証画面 東武東上線池袋駅 北口付近に設置された無線LANアクセスポイント

 まずは無線LANアンテナの真下から専用のマイク付きイヤホンを装着、一般加入電話への通話を行なった。音質は極めて高く、携帯電話はおろかPHS以上のクオリティに感じられた。ただし無線LANの電波状況のためか、30秒に1回程度の割合で会話が一瞬途切れることがあった。これは無線LANの電波状況が悪くなればなるほど顕著になり、無線LANの電波が届くギリギリのエリアでは会話が難しいほど瞬断が多くなった。また、音声遅延もわずかながら起きていたが、意識して聞き取れば実感できるという程度で、実際の利用に問題はないレベルだといえる。


通話先の電話番号はMessenger風の電話帳に登録 電話番号をダイヤルして通話もできる 電話がつながった場合の画面

 次に街行く人々にお願いして、IP電話トライアルをモニターしてもらった。回答者が普段から利用している携帯電話に加え、DDIポケットのPHS端末「KX-HV210」を用意。音質について「携帯並み」「携帯と同じ」「携帯以上」「PHS以下」「PHS並み」「PHS以上」の5段階で評価、使用感についてコメントをいただいた。

 10人ほどの人々に試用してもらったが、全員が音質について「PHS以上」と評価。イヤホンによる音質の向上も考えられるため、回答者の後半はPHSの通話もイヤホンを装着してテストしたが、答えは同じだった。IP電話トライアルについては「背後の音まで良く聞こえる」「すぐそばにいるように感じる」というコメントが多かった一方で、PHSは「(IP電話に比べて)すこしくぐもった感じがする」という意見が多数を占めた。

 今度は着信側について調査すべく、ネオモバイルのサービスエリアであるam/pm 一番町本社ビル店にご協力いただいてテストを実施した。ここでは無線LANのアンテナが店内に設置されているため、店舗の電話をお借りしてPDAからの通話をその場で受けてみた。やはり音声の品質は高く、側にいなければ普通の電話と区別がつかないクオリティで会話ができる。ただし、通話先がすぐそばにあるため、音声遅延がやや目立つ結果となった。また、駅での通話ほどではないが、通話の瞬断はここでも発生した。

 NTT-MEでは、音声の符号化には音声圧縮を行わないG.711を、呼制御用プロトコルにWindows Messengerなどで利用されているSIP(Session Initiation Protocol)を利用、ヘッダ情報などを含めた音声用の帯域として100kbpsを設けている。また、無線LANアクセスポイントから先のネットワークには同社の音声IPネットワーク「Xephion」を利用することで、音声遅延などのQoS制御が可能であり、総務省がIP電話に割り当てる「050」も取得予定だとしている。


am/pm 一番町本社ビル店 am/pm店内に設置された無線LANアクセスポイント

 テストの結果、音質については非常に高いクオリティで、モバイル環境で利用できる電話としては群を抜いていると感じられた。通話の途切れについても電波の問題かIP電話サービスによるものであるかは判明していないが、NTT-MEでは正式サービス中のIP電話サービスではそういった問題は発生しておらず、現在原因を調査中だという。試験サービス中ということもあり、商用サービスまでには解決される問題であることを期待したい。音声の遅延についても通常に利用する分にはほとんど問題なく、こちらの環境を何も告げなければ電話を受けた相手はまったく気づかないレベルといえる。

 気になるのは商用サービスも含めた今後の展開だ。現在のところネオモバイルのサービスエリアは相模鉄道、東武鉄道の数駅とam/pm2店舗、ゼロックスショールームとNTT-ME本社のみ。また、相互乗り入れを実施しているNTT-BPの「無線LAN倶楽部」や相模鉄道の「相鉄ワイヤレスインターネット」などではこのIP電話サービスは利用できない。モバイルで利用できるというメリットを最大限に生かすためには、今後このサービスを利用できるエリアがどれだけ拡大されるかにかかっている。加えてネオモバイルは試験サービス開始当初から「ISPに縛られないサービス」という方向性を打ち出しているため、正式サービス時にどれだけのプロバイダーが対応を開始するかも重要なポイントだ。なお、商用サービス後の料金はネオモバイルが月額1500円程度で、オプションとしてIP電話サービスが1000円程度で利用できる予定。

 公衆無線LANサービスは試験、商用を含め多くの企業がサービスを提供しているが、ネオモバイルはIP電話という付加価値を提供、また自社のプロバイダーにとらわれないサービス体系を構築することで独自の方向性を確立、公衆無線LANサービスのあり方に一石を投じたといえる。まだまだユーザーに身近だとは言いがたい公衆無線LANサービスであるが、他社も含めた今後の展開に期待したい。


関連情報

URL
  ネオモバイル
  http://www.coolspot.wakwak.com/
  関連記事:NTT-ME、携帯電話やPHSにも無料で通話できるIP電話試験サービス
  http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/10/21/nttme.htm
  関連記事:NTT-MEなど18社、利用ISPを限定しない無線LANサービス
  http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/07/01/nttme.htm


(甲斐祐樹)
2002/11/07 16:43
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