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【 2009/12/25 】 【 2009/11/13 】 【 2009/09/25 】 【 2009/07/01 】 【 2009/06/26 】
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元お笑い芸人マネージャーの社長が描く新たなコミュニティ「casTY」
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東京電力と吉本興業が設立した「キャスティ」が運営するブロードバンドコンテンツサイトが「casTY」だ。キャスティ自ら「異色のタッグ」と語る企業の組み合わせだが、2社の狙いはどこにあるのか。キャスティの方針について、代表取締役社長の中井秀範氏に話を伺った。
■ 発信する側も受信する側もイコールなコミュニティの実現を

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キャスティ代表取締役社長の中井秀範氏
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――キャスティの設立目的は
キャスティの設立については、東京電力、吉本興業それぞれに狙いがありました。東京電力では、光ファイバ接続サービス「TEPCOひかり」を推進していくにあたり、他社との差別化としてコンテンツサービスが必要だという考えを持っていました。ただ、そのために対応すべき著作権を初めとする複雑な権利やマネジメントが大きな障壁になっていたのです。
また、吉本興業は、90年以上の長い歴史の中でラジオやテレビなどの媒体を中心としてしてきましたが、これらはどちらかというと一方通行的なメディアです。ブロードバンド化が急速に進み、PCを中心とした双方向のメディアが発達する中で、ブロードバンドを利用した新しいエンターテインメントの形を模索していました。
こうした2社の思惑のもと、キャスティが誕生しました。東京電力では光ファイバのネットワークと電気事業で培った通信技術の運用ノウハウを、吉本興業は劇場でのライブや地上波向け番組製作などを通じたコンテンツ提供に関する幅広いノウハウを持ち、相互協力のもとTEPCOひかりの普及促進および加入者拡大を目指しています。
名前の由来は「Content Aggregate Service by TEPCO & YOSHIMOTO」の頭文字を取ったもので、吉本興業と東京電力のパートナーシップのもと、コンテンツ収集・開発サービス事業を行なうという意味でつけています。

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casTYのTOPページ画面
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――casTYのコンセプトは
casTYの月間ページビューは約2,000万以上で、現在のところ数万人のユーザーが登録しています。casTYはTEPCOひかりのプロモーションサイトという位置付けのため、ほとんどのコンテンツは無料の会員登録のみで利用できます。
以前は会員登録も必要ありませんでしたが、その結果として、サービス開始当初は掲示板“荒らし”が発生しました。現在はフリーメールアドレスでの登録を禁止しているため、1人で5つも6つも登録する事態は回避できていると思います。なにより、本当に新しいコミュニティを作り上げるには、ユーザーが安心して発信できることが重要だと考えています。
2ちゃんねるは匿名性が高く、言ってみれば“バカをバカといって何が悪い”という世界でしょう。そういう世界はそういう世界で必要だと思いますが、casTYは発信する側も受信する側もイコールな関係で、有名人も普通の人も同じ目線でいられるコンテンツを目指しています。今は名前を明らかにできないが、とある大物俳優から”ひかり荘に出たい”という希望もいただいています。マスコミの放送に出ている人だけがスターという時代が変化しつつあります。今はまさにインターネット時代で、一番面白い時代なのではないでしょうか。
また、登校拒否だった中学生から「いろいろな大人の人から意見を聞いてみたいので、ひかり荘に出演したい」という要望もいただきました。その子の親からも「家から出なかった子供が“行きたい”と言ってくれた。面接だけでもして欲しい」というお願いもありました。casTYを通じて外の世界と通じ合いたいといってもらえるならば、コミュニティとしてこれほど本望なことはありません。
キャスティの中井社長は1981年に吉本興業へ入社後、桂三枝や桂文珍、明石家さんま、ダウンタウンなどのマネージャーを歴任。そのかたわらでテレビ番組や舞台のプロデュースも務め、心斎橋2丁目劇場の設立にも携わるなど、まさにお笑いの現場を体験してきた人物だ。また、インターネットの世界では吉本興業のお笑いコンテンツを配信する「ファンダンゴ」の代表取締役を務めた経験もある。
■ コンテンツ提供者もユーザーの立場を考えるべき
――吉本興業出身という視点から、コンテンツについてのお考えは
お笑いなどのポップカルチャーは「売れたら勝ち」という側面があると思います。ファイル交換ソフトがあったとしても「ごっつええ感じ」のDVDは売上げを伸ばしています。音楽業界ではCDの売れない原因として不正コピーなどが槍玉に上がりますが、まずは自ら売れるものをがんばって作っていくことが大事ではないでしょうか。
また、権利保持者として言うべきではないのかもしれませんが、著作権については財産権の部分、つまり経済的側面だけが強調され過ぎているという気がします。著作権者は、作品の価値を金銭的な見返りで評価されたいという気持ちももちろんありますが、一人でも多くの人に見てもらいたい、聞いてもらいたい、楽しんでもらいたいという気持ちも強くあるのです。だから、自分が気に入った芸人をどうしても友達に紹介したくて、というのは心情的に許せる面があるのです。コンテンツ提供者も送り手側の論理ばかりでなく、ユーザーの立場に立ってどうしたらいいのかを考える必要があるでしょう。
今後インターネットが普及していけばますますユーザーとの軋轢が生じてしまう可能性もあります。コンテンツ提供者はもっとお金を払って見てもらえるものを作っていかなければならないと考えています。
ただし、コピーしたものを他人に販売することは別の話です。人の物を売ることは泥棒であって、断じて許されることではありません。
――吉本興業は非常にインターネットに積極的ですが
もともと吉本興業は新しいメディアに対して積極的でした。ラジオの時代には、「タダで落語を聞かれてしまうから、落語家をラジオに出さない」という考えもありました。その当時、桂春団児が勝手にラジオに出演してしまった結果、実際には劇場に落語を聞きに来るお客さんが増えたのです。吉本ではそれ以来マスメディアはパブリシティとして値打ちがあることに気づき、積極的に利用するようになりました。
また、戦後に吉本興業が映画をビジネスの中心にしていこうという方向性を打ち出していた時がありますが、テレビという新しいメディアによって、演芸が復活したという事情もあります。
CSやインターネットでは、メディアの免許が地上波ほど厳密ではありません。コンテンツ配信も地上波ほど費用はかからず、それなら自分のメディアを持ってしまおうとの考えから、CSで「ヨシモトファンダンゴTV」を始めました。インターネットでもお笑いコンテンツを配信するファンダンゴ」も、芸人から劇場まですべてを吉本興業が持っているため、権利処理が非常にスムースに実現でき、コストも抑えることができました。
TEPCOひかりプロモーションサイトのcasTYであれば、上りを利用した双方向の新しいコミュニティが実現可能で、以前からやりたかったコミュニティこそがcasTYだと考えています。
■ casTYでは“特名希望”なコミュニティを目指す

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「手を握る泥棒の物語」主演の内山理名
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――ドラマや音楽といったコンテンツも無料で提供されていますが
ブロードバンドでお金を取ろうとすると、あまりお金にならないからコストを抑える、コストを抑えると面白いものが作れないから客がこないという悪循環が起こりがちですが、(casTYのオリジナルドラマである)「手を握る泥棒の物語」では、主演に内山理名、脚本に乙一、監督に犬堂一心など一流どころをあえて使いました。
ブロードバンドコンテンツのビジネスは体力勝負的なところもありますが、ここでふんばっておかないとブロードバンドのムービーというジャンルそのものが廃れてしまう危険性があります。コンテンツの本数を競うあまり、映画の予告編までコンテンツとして数えてしまうのは本末転倒でしょう。「木戸銭をもらって芸をお見せする」といった吉本の本質はブロードバンドでも変わりません。
――今後の方針をお聞かせください
今後は下りだけではなく、上り帯域を活かしたコミュニティを実現したいと思います。具体的にはWebカメラなどを利用し、ユーザー自身が映像を配信する形態を想定しています。(吉本興業が運営するお笑い芸人養成学校の)NSCには毎年1,500人も入学しており、顔を出したがる人間は必ずいるという実感があります。ただ、顔出しの文化は放っておいてはできないので、“ここだったら安心”という空気をcasTYが作っていきます。
昔、せんだみつおさんのラジオ深夜番組で「匿名希望ではなく、ぜひ名前を読んで欲しい“特名希望”」と書いて送ってきたリスナーがたくさんいました。キャスティも“特名希望”なコミュニティを作っていきたいという思いがあります。2004年中にはユーザー発信型のコンテンツを提供できるでしょう。
今後はさまざまな業界の枠組みが変わる中で、そのときキャスティのようなコミュニティが力を発揮すると考えています。様々なところから才能が現われ、勝手に作品ができあがっていくのがインターネットの理想だと思いますし、そういったことがキャスティで実現できるのではないかと期待しています。
――本日はありがとうございました。
■ URL
casTY
http://casty.jp/
■ 関連記事
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・ 「“まったり”したコミュニティ」を目指すcasTY
(甲斐祐樹)
2004/04/08 11:57
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