2画面液晶でタッチパネルを搭載、“画面に触る”という新たな操作方法を取り入れた「ニンテンドーDS」。動画や音楽、静止画の再生に対応したマルチメディアプレーヤーの性格を持った「プレイステーション・ポータブル」(PSP)。大きく特徴の異なる2つのゲーム機だが、どちらも共通するのは「ワイヤレス通信機能」を標準でサポートしている点だ。両ハードのワイヤレス通信機能を比較してみた。
■ 無線を意識させないDS、PCに近い無線設定のPSP
ニンテンドーDSのワイヤレス通信機能は、通信規格にIEEE 802.11を採用しているものの、設定画面ではワイヤレス関連の項目は見られない。電波状況もワイヤレス通信を開始した時に画面に表示されるのみで、本体にもワイヤレス機能の表記はない。ワイヤレス通信時は、電源ランプが変速点滅することで通信を確認できる程度だ。
もともと任天堂の携帯ゲーム機は、ゲームボーイの頃から通信ケーブルによる多人数プレイをサポートしていた。今回のワイヤレス通信は、この通信ケーブルをワイヤレスに置き換えた延長線上の機能、という印象だ。
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初期設定で電源起動時に表示される画面。ワイヤレス通信関連では「DSダウンロードプレイ」が表示される程度
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無線通信は電源ランプの変速点滅状態で確認できる
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これに対してPSPは、IEEE 802.11bに準拠した無線LAN機能を搭載し、端末同士で直接接続する「アドホックモード」、無線LANアクセスポイントに接続できる「インフラストラクチャモード」の2方式をサポート。インフラストラクチャモードではSS-IDと64/128bitのWEPが設定でき、MACアドレスも本体情報から確認できるなど、ワイヤレス通信の仕様は非常にPCに近い。外箱にはWi-Fi認証取得マークも表示されている。
ワイヤレス通信の詳細設定では、IPアドレスの手動設定のほかにPPPoE接続もサポート。直接PPPoEでインターネットへ接続する場面はなさそうだが、「PPPoEブリッジ」「ダイレクトPPPoE」といった名称で一部のルータがサポートする、クライアント端末からのPPPoE接続を可能にする機能を利用してグローバルIPアドレスで接続することも可能だろう。
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「アドホックモード」「インフラストラクチャモード」をサポートするPSP
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インフラストラクチャモードではSS-IDやWEPを設定できる
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SS-IDやWEPキーはソフトキーボードで入力する
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PPPoE接続もサポート
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MACアドレスも本体情報から確認できる
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外箱にはWi-Fi認証マークが
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ワイヤレス通信設定では、近くの無線LANアクセスポイントのSS-IDを検索して自動入力する機能も搭載。表示されるのはSS-IDと暗号化方式、電波強度のみでチャネルは確認できないが、付近の公衆無線LANサービスを探す時のツールとしても使えそうだ。
また、本体にはワイヤレス通信のオンオフを切り替えられるハードスイッチがあり、ワイヤレス通信専用のLEDも装備。ワイヤレス通信の存在をほとんど感じさせないニンテンドーDSとは好対照な仕様になっている。ワイヤレス通信のハードスイッチは、初期設定で「オフ」になっているので、ワイヤレス通信で対戦する場合はスイッチを切り替える必要がある。
なお、PSPでは消費電力を押えるために、初期設定ではワイヤレス通信が「省電力モード」に設定されている。設定が正しいにもかかわらずアクセスポイントや他のPSPと接続できない場合は電波が弱い可能性もあるので、省電力モードをオフにしてみよう。
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SS-IDを検索して自動入力する機能
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本体にはワイヤレス通信の切り替えスイッチと専用LEDを搭載
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ワイヤレスLAN省電力モード。初期設定では「オン」になっている
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インターネットへ接続テストした結果
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■ 多人数プレイは現時点でニンテンドーDSが充実
ワイヤレス通信による多人数プレイも、ニンテンドーDSとPSPでは違いが見られる。あくまで現段階ではの話だが、ニンテンドーDSのほうがワイヤレス通信の間口が広い印象だ。
ニンテンドーDSでは、「DSワイヤレスプレイ」「DSダウンロードプレイ」「ピクトチャット」というワイヤレス通信モードをサポート。DSワイヤレスプレイは、ユーザーそれぞれが同じカートリッジを持っている必要があり、DSダウンロードプレイは、ユーザー1人がカートリッジを持っていれば他のユーザーも楽しむことが可能な点が違いだ。
具体例を挙げると、「大合奏!バンドブラザーズ」では、「DSダウンロードプレイ」を使えば、ワイヤレス通信でそれぞれのニンテンドーDSへソフトを配信し、カートリッジ1本のみで最大8人まで同時に「採点モード」に参加できる。また、全員がカートリッジを持っている「DSワイヤレスプレイ」であれば、各自のニンテンドーDSへソフトをダウンロード配信する時間がかからなくなる上に、人数無制限で同時に合奏できる「大合奏プレイ」も可能だ。
パズルゲームの「直感ヒトフデ」の場合、対戦は「DSワイヤレスプレイ」のみで最大2人まで。「DSダウンロードプレイ」では対戦はできないものの、相手にチュートリアルモードと10問のトライアルを送信可能だ。受け取った相手は、電源を切らない限り、チュートリアルとトライアルを楽しむことができる。
「ピクトチャット」は、本体に内蔵されたチャット機能。最大16人まで参加できるチャットルームが4部屋用意されており、ソフトキーボードによる文字入力や手書きの文字・絵でチャットが楽しめる。ただし、ピクトチャットとゲームを同時に起動させることはできないため、ゲームをプレイしている最中に他のユーザーから通信を受ける、ということはできない。
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「大合奏!バンドブラザーズ」では「DSワイヤレスプレイ」「DSダウンロードプレイ」に対応
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全員がカートリッジを持っていれば人数無制限での合奏も可能
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DSダウンロードプレイでは、カートリッジを持っていなくても対応ソフトをダウンロードして参加できる
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本体内蔵の「ピクトチャット」。最大16人まで入室可能なチャットルームが4部屋用意されている。
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対するPSPでは、現状利用できるのはニンテンドーDSの「DSワイヤレスプレイ」に相当する「アドホックモード」のみ。IEEE 802.11bのチャネルを「1ch」「6ch」「11ch」「自動」から選択する方式で、相手と同じチャネルであれば対戦が可能になる。
ワイヤレス通信を行なう場合は、1つの端末がホストとなってゲーム開催を告知し、他の端末がゲストとして参加する。この動作自体はニンテンドーDSとほぼ同等だ。本体と同時発売されたソフトでは、「みんなのGOLF ポータブル」「リッジレーサーズ」は最大8人での通信が可能だ。
ただし、PSPでは、他のPSP端末から送られてきたデータを受信する「ゲームシェアリング」という機能も本体側で実装している。この機能に対応したソフトであれば、DSダウンロードプレイに近い通信や多人数プレイも可能になるかもしれない。
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PSP同士で通信するアドホックモード。チャネルは自動で選択されるほか、任意にチャネルを指定することも可能
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他のPSPへデータを送信できる「ゲームシェアリング」機能
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「リッジレーサーズ」でワイヤレス通信を開始。1人がホストとなってレース開催を宣言する
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ゲストのPSPは参加を受け付けているレースを検索
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■ インターネット接続を本体機能でサポートするPSP
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PSPのネットワークアップデート機能。現在は発売されたばかりのため最新版になっている
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インターネット接続環境もニンテンドーDSとPSPの大きな違いだ。PSPはアクセスポイントに接続できるインフラストラクチャモードをサポートしており、本体でインターネットへ接続する機能を実装している。現在では本体のネットワークアップデート機能が利用できる程度だが、今後はインターネットを介した対戦ゲームやオンラインゲームといった展開も期待できそうだ。
ニンテンドーDSは前述の通り、ワイヤレス通信を意識させない構成になっており、SS-IDやWEP、MACアドレスフィルタリングといった設定項目も存在しない。そのため現状では無線LANアクセスポイントを介したインターネット接続は利用できない。
ただし、ニンテンドーDSのリリースには、インターネットを利用したボイスチャットなどの展開が明示されていることから、将来的にはインターネットに対応したオンラインゲームの登場が期待できそうだ。現状の仕様ではインターネット接続をサポートしていないため、「カートリッジで無線LAN接続機能をサポート」「本体をアップデート」「ゲームボーイアドバンス用スロットを利用した通信モジュール」といった手段が必要になるかもしれない。
1カートリッジで対戦できる「DSダウンロードプレイ」や、本体内蔵のチャットソフト「ピクトチャット」など、多人数プレイの間口の広さは、現時点ではニンテンドーDSが勝る。対するPSPはインターネットとの親和性が高く、インターネットを介したネットワークアップデート機能も標準でサポート。ネットワークシェアリング対応ソフトによるPSP間のダウンロード通信も今後は期待できる。ただ、現状では両ハードとも、ワイヤレス通信の主軸は端末同士での多人数プレイに置いている。インターネット経由でのオンライン多人数プレイの展開も今後は期待したいところだ。
■ URL
ニンテンドーDS
http://www.nintendo.co.jp/ds/
PSP
http://www.playstation.jp/psp/
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(甲斐祐樹)
2004/12/13 15:22
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