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イー・アクセス株式会社 取締役(CTO)小畑氏 |
幕張メッセで19日より4日間にわたり、WORLD PC EXPO 2001と同時に「WORLD PC FORUM 2001」コンファレンスが開催されている。ここではイー・アクセス株式会社のCTO、小畑至弘氏による「ブロードバンド・アクセスサービスの実態」と題した講演の内容をレポートする。
■ 当面ブロードバンドの中心はADSL
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ADSLのアクセスインフラ構造図。ADSLでも、メタルワイヤー(銅線)なのは収容局から顧客宅までで、局間バックボーンはほとんどが光ファイバーになっている |
小畑氏はまず、ADSLサービスの概要について説明。上流ネットワークからNOC(Network Operation Center)から局間バックボーン、収容局から幹線、支線を経て各戸までつながる経路を図で示した。局間バックボーンはSONETなどの、光ファイバーのシステムがほとんどで、局からはメタルワイヤー(銅線)の線(アナログ加入回線)で接続される。ADSLが距離により減衰するのは知られているが、宅内でもコードレス電話のノイズなどが、速度低下の原因になりやすいという。インフラについては、イー・アクセスの場合はメトロリングやギガビットイーサなど、より一般的なネットワーク機器で構成することにより、コストを下げていると述べた。
またCATV、ISDN、ADSL、FTTHのサービスを比較。CATVはすでにテレビのインフラとして存在する同軸ケーブルを用いるため、すでに国内の2~3割のエリアカバー率を持ちインフラのある地域では導入も容易だが、その半面、日本では業界再編が進まず体力のない事業者が多いため、新技術を導入する技術力や資本力を維持するのが難しく、またセキュリティの確保が困難な面があると述べた。ISDNは急拡大しエリアカバー率もブロードバンド回線に比べて段違いに進んでいるが、速度を考えると割高感があり、ADSLに急速に取って変わられるだろうとの見方を示した。
ADSLについては、電話との共用が可能で今後G.dmt準拠の最大8Mbps接続サービスが普及する見込みで、ノイズに弱い面があり品質面での不安は残るものの、全国6000万と普及した一般加入回線をインフラとして使うため、カバー率も9割以上が達成可能だと述べた。小畑氏は、「CATVは6月までで90万加入、ADSLは現在50万加入ほどだが、2002年の1月か2月にはADSLが200万回線を超え、CATVを抜く」と見ている。
FTTH(Fiber to the Home)=光ファイバー回線によるサービスについては、現在のところ技術的にも加入者側の導入の条件もハードルが高いとした。ただし、イー・アクセスでもすでにFTTHの準備に着手しており、3カ月ほど前から10数回線を導入し実験運用を開始しようとしているところだという。
■ ISDNの多い日本ではAnnexCの方がサービス品質が安定
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イー・アクセスでは6割以上が1.5Mbpsで利用。ISDNとの干渉を考慮したAnnexCでは、640kbpsを下回るケースは非常に少ないという |
ユーザー動向では、イー・アクセスでの状況を紹介。手配工事と自前工事の比率では、すでにこの夏から逆転、自前工事の方が多くなっているという。設定は、「誰でもとまでは言わないが、モジュラージャックの抜き差しができれば大丈夫というほど簡単」なので、今後はさらに自前工事の率が高くなるだろうと述べた。また、イー・アクセスのユーザーではUSBタイプとルータタイプではルータタイプが6割を超えていると紹介。
ちなみにイー・アクセスでは正式には発表していないが、すでにPPPoAだけでなくPPPoEにも対応しているため、ADSLモデムがUSBタイプかルータタイプかに関わりなく、どちらでもつながるようになっているという。ADSLモデム内蔵ルータなどの機器については「いずれはISDNのターミナルアダプタ(TA)と同じように、ユーザーが好きな製品を購入してきて接続し、また自由に交換できるようになるだろう」と述べた。
気になる速度については、イー・アクセスのユーザーでは約6割程度が現在のG.lite AnnexCのサービスで1.5Mbpsを超えるパフォーマンスで利用できており、640kbps以下のユーザーは非常に少ないという調査結果を紹介。イー・アクセスが採用しているAnnexC規格はISDNとの干渉を避ける仕様になっているため、640kbps以下は非常に少ないと述べ、ISDNが1000万回線を超える日本では、ISDNとの干渉を考慮していないAnnexA規格よりも、AnnexC規格の方が安定した品質が得られると述べた。申込みから開通に要する時間でも、同社の場合は最短で9日間と、開通にかかる期間の短縮やサービスの品質に力を入れていることを強調した。
また、イー・アクセスの回線を利用しているユーザーの大手ISPのトラフィックを調査したところ、1日のうちでトラフィックが最多のところと最少のところで比較しても約2倍ていどの違いしかなく、明け方から昼間などもかなり利用されていると紹介。時間を気にせず利用できる常時接続環境を導入したことによって、明らかにユーザーの利用時間帯に変化が見られ、また接続時間も長くなっていると説明した。利用コンテンツでも、ADSL導入後では、動画やネットゲーム、インターネットラジオの利用が増えているとの調査結果を紹介した。
□WORLD PC EXPO 2001
http://www.wpc-bp.com/
(工藤ひろえ)
2001/09/19 16:55
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